原音を正確に、そして情熱的に再現する。
その理念を体現してきたULTRASONE(ウルトラゾーン)のSignatureシリーズに、新たな旗艦モデル「Signature MASTER MkII」が登場しました。
前作「Signature MASTER」から約3年、プロフェッショナル用途だけでなくハイエンドリスナーの間でも高い評価を受けたモデルの進化版として、多くのオーディオファンが注目しています。
ULTRASONEはドイツ・バイエルンに拠点を置く老舗オーディオメーカーで、独自技術「S-Logic 3」や「ULE(Ultra Low Emission)テクノロジー」を搭載し、空間表現と聴覚への負担軽減を両立させてきました
「Signature MASTER MkII」は、その哲学をさらに洗練させ、スタジオモニターとしての精度とリスニングヘッドホンとしての心地よさを両立したモデルです。
この記事では、筆者自身が実際に「Signature MASTER MkII」を長期間使用して感じた印象をもとに、音質の特徴・使い勝手・前モデルからの進化点を徹底的にレビューします。
また、「実際の使用環境での体験的な違い」や「音の立体感・定位感のリアルさ」にも焦点を当て、“ユーザー目線で本質を伝えるレビュー”をお届けします。
「Signature MASTER MkII」が本当に“究極のリファレンスヘッドホン”と呼べるのか。
この記事を読み終えるころには、その答えが明確になるはずです。
- ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」のデザインと装着感:プロ仕様を感じる質感と快適性
- ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」の音質レビュー
- ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」の初代Signature MASTERとの比較と進化点
- ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」を使用した私の体験談・レビュー
- ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」に関するQ&A
- 「Signature MASTER MkII」はリスニング用? それとも制作向けですか?
- 初代「Signature MASTER」との一番の違いは何ですか?
- 密閉型なのに音場が広く感じるのはなぜですか?
- どのようなジャンルの音楽に向いていますか?
- 長時間のリスニングでも疲れませんか?
- 「Signature MASTER MkII」を最大限活かすにはどんな環境が必要ですか?
- イヤーパッドやケーブルの交換は可能ですか?
- 他のULTRASONEモデルと比べて、どのポジションになりますか?
- 開放型のような音の抜けを求める人にも向きますか?
- Bluetooth対応モデルやワイヤレス版はありますか?
- 他社ヘッドホン(HD 800SやFocal Clearなど)と比べてどうですか?
- 音量を上げるときの歪みやピーク感はどうですか?
- 音漏れはどの程度ありますか?
- ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」レビューのまとめ
ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」のデザインと装着感:プロ仕様を感じる質感と快適性

外観の高級感と堅牢性 ― ドイツ設計の精密さ
「Signature MASTER MkII」のデザインは、プロフェッショナルツールとしての信頼感と高級感が共存しています。
派手さではなく、実用性と耐久性を重視した“機能美”が印象的です。
全体的な質感はマットで落ち着きがあり、ハウジングの成形精度やジョイントの剛性感には、ドイツ製らしい緻密さが感じられます。
スタジオでの酷使に耐える堅牢性を備えつつ、ホームリスニング環境でも所有欲を満たす存在感です。
主な特徴
- ハウジング素材:キズが目立ちにくく、指紋も付きにくいマット仕上げ。
- ヒンジ部:スイーベル機構が滑らかで、片耳モニターにも対応。
- ヘッドバンド構造:芯材は強靭ながら、外側は柔らかい合皮で包み、快適性と強度を両立。
- メンテナンス性:イヤーパッドやケーブルなど交換しやすく、長期運用に向く設計。
見た目は控えめながら、実際に手に取ると“現場で使うための機材”であることが伝わる、まさに職人気質な造りです。
装着感とフィット感 ― 長時間リスニングにも耐える設計
「Signature MASTER MkII」は、モニタリング用途だけでなく長時間のリスニングにも適した快適性が追求されています。
側圧・イヤーパッドの形状・ヘッドバンドの荷重分散など、細部まで「疲れにくさ」を意識した仕上がりです。
まず側圧はややしっかりめで、レコーディング環境でも安定した装着を実現。しかし、イヤーパッドのクッション性が高く、痛みや圧迫を感じにくいのが特徴です。
また、耳がドライバー面に触れにくい奥行き設計で、密閉型にありがちなこもり感を軽減しています。
快適性のポイント
- 側圧バランス:適度な締め付けで安定性を確保しつつ、長時間使用でも痛みが出にくい。
- イヤーパッド:深めで弾力のあるクッションが耳を包み込み、眼鏡使用時も干渉しにくい。
- ヘッドバンド:広めの接地面で圧力を分散。頭頂部が痛くなりにくい。
- 遮音性:外音を程よくカットし、リスニング・制作の両方に対応。
- 通気性:密閉型としては優秀で、蒸れを最小限に抑える。
| 使用時間 | 快適性の印象 |
|---|---|
| 約1時間 | 側圧が程よく安定。初期の違和感はほぼなし。 |
| 約2時間 | 蒸れが少なく、集中を維持できる。 |
| 約4時間 | 軽い休憩を挟めば作業継続が可能。圧迫痛はほぼなし。 |
“モニター的な安定感”と“リスニングの快適さ”が両立しており、作業用としても趣味用としても違和感なく使える万能設計です。
ケーブル・付属品・ビルドクオリティの進化点
「Signature MASTER MkII」は、プロの現場で使われることを想定し、メンテナンス性と運用のしやすさがしっかりと考えられています。
取り回しのしやすさや、付属品の品質からも「業務機」としての信頼性が伝わります。
付属品と仕様
- ケーブル:着脱式で、用途に応じて交換可能。断線時の対応も容易。
- アダプタ:標準/ミニプラグ変換を同梱し、オーディオインターフェースやDAPに柔軟対応。
- キャリングケース:耐衝撃構造で、ケーブル・アダプタも収納できる実用的デザイン。
- パーツ精度:ロゴ印刷・ステッチ・パーツ合わせなど製造精度が高く、外観の完成度が高い。
- 交換部品の流通性:イヤーパッド・ケーブルが容易に入手可能で、長期使用に安心。
ビルドクオリティ総評
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| ハウジングの精度 | ★★★★★ | 左右のバランスが良く、きしみ音なし |
| 可動部の強度 | ★★★★☆ | スムーズに動き、耐久性も高い |
| ケーブル品質 | ★★★★★ | しなやかで取り回し良好 |
| メンテナンス性 | ★★★★★ | 部品交換が容易で長期使用に適する |
日常的に使い込む人ほど、その“扱いやすさ”を実感できるはず。
使うほどに信頼感が増していく設計です。
「Signature MASTER MkII」のデザインは一見シンプルですが、手に取ってみると細部の作り込みに驚かされます。
プロ現場の“道具”としての耐久性、そして日常使いの“快適性”を兼ね備えた、まさにハイブリッドなモニターヘッドホンといえます。
「長く使える機材を選びたい」「装着感に妥協したくない」――そんな人にとって、「Signature MASTER MkII」は確かな選択肢となるでしょう。
ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」の音質レビュー

「Signature MASTER MkII」のサウンドは、「分析的な正確さ」と「音楽的な心地よさ」を兼ね備えています。
プロフェッショナルな制作環境でも通用する解像度を持ちながら、一般の音楽リスニングでも自然に没入できる柔軟さが魅力です。
ここでは、低音・中音・高音の帯域別にその特徴を詳しく見ていきます。
低音 ― 引き締まりと存在感を両立したベースライン
「Signature MASTER MkII」の低域は、量感よりも制御とスピードを重視した設計です。
ベースやキックがしっかりと沈み込みながらも、もたつきやブーミーさは感じません。
音の芯が明確で、リズムのグルーヴを的確に捉えられます。
主な特徴
- タイトなレスポンス:キックドラムのアタックが速く、リズムの輪郭がクリア。
- 程よい量感:量は控えめながら、低音の“圧”はしっかりと伝わる。
- 沈み込みの深さ:サブベースのレンジも再現し、クラブ系サウンドでも破綻しない。
- 解像度の高さ:ベースの弦振動やキックの皮鳴りが明瞭に分かる。
| 評価項目 | 印象 |
|---|---|
| 低音の量感 | 控えめで上品 |
| スピード感 | 非常に速い |
| 解像度 | 高く、音の輪郭が明瞭 |
| サブベースの表現 | 深く沈むが誇張なし |
全体として、派手さよりも正確さを重視した「プロ仕様の低域」。
リスニングでは引き締まった心地よさを、制作では定位判断のしやすさを発揮します。
中音 ― ボーカルと楽器が自然に調和する立体的な中域
「Signature MASTER MkII」の中音域は、まさにこのモデルの“心臓部”。
ボーカル、ギター、ピアノなどが明瞭で、空間の「間(ま)」を感じられる余裕があります。
モニターヘッドホン特有のドライさはなく、程よい温かみが感じられる点も魅力です。
中音の印象
- ナチュラルな定位:ボーカルが中央に自然に定位し、伴奏との距離感が心地よい。
- 濁りの少なさ:中域がクリーンで、各パートの音が重なっても分離が良い。
- 倍音の美しさ:ピアノやアコースティックギターの響きが伸びやか。
- 聴き疲れしにくい:中域がフラットで、耳への刺激が少ない。
| 評価項目 | 印象 |
|---|---|
| ボーカル表現 | 立体的で明瞭、定位が安定 |
| 楽器の分離 | 優秀。各パートが独立して聴こえる |
| 音の厚み | 適度で自然 |
| EQバランス | 編集時の判断がしやすいフラット設計 |
「Signature MASTER MkII」の中域は、音を“観察する”というより音楽を理解できる帯域。
情報量が多いのに耳障りではなく、長時間聴いても疲れにくいのが大きな魅力です。
高音 ― 滑らかで伸びやか、空間の奥行きを描くS-Logic効果
高域は、「Signature MASTER MkII」の個性を最も感じるポイントです。
S-Logic 3テクノロジーによって、前後・上下方向の奥行きをリアルに表現します。
高音の伸びが自然で、ハイハットやストリングスが広がるように響きます。
高域の特徴
- 滑らかさと伸び:10kHz以上がしっかり伸び、刺さる感じがない。
- 金属音のリアリティ:シンバルやベルが自然に響き、金属の質感が伝わる。
- 定位の立体感:左右だけでなく前後方向にも広がる。
- 情報量:高域の細かな残響や余韻まで再現可能。
| 評価項目 | 印象 |
|---|---|
| 高音の伸び | 滑らかで自然 |
| シンバル表現 | メタリックでリアル |
| 空間表現 | 奥行きが明確に感じられる |
| 聴き疲れ | ほぼなし。長時間リスニングに適する |
高域は「見せる」ための派手さではなく、“実際に空間で鳴っているような自然さ”が際立っています。
モニター的にも、リスニング的にも完成度の高い仕上がりです。
総合的な音質バランスと評価
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 解像度 | ★★★★★ | 細部までクリアに描写 |
| 音場の広がり | ★★★★☆ | 密閉型とは思えない立体感 |
| バランス | ★★★★★ | 全帯域が滑らかにつながる |
| ダイナミクス | ★★★★☆ | 小音量でも情報量が維持される |
| リスニング快適性 | ★★★★★ | 長時間でも疲労感が少ない |
低域はタイト、中域はナチュラル、高域は滑らか――。
すべての帯域が一体となり、まるでスタジオの空間がそのまま耳元に広がるようです。
音源や機材との相性
- ポップス・ロック:リズムのキレとボーカルの明瞭さが際立つ。
- ジャズ・クラシック:ホールトーンの再現が秀逸で、定位の奥行きが分かりやすい。
- EDM・ヒップホップ:低域の輪郭が明確で、リズムの正確さを確認しやすい。
- 機材相性:高出力でノイズの少ないDAC/AMPと組み合わせると、より音場の奥行きが増す。
「Signature MASTER MkII」は、単なる「スタジオ向けヘッドホン」にとどまらず、“音楽の中に浸りながら分析できる”特別なバランスを持っています。
その両方を求める人にとって、「Signature MASTER MkII」はまさに理想的な一台です。
ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」の初代Signature MASTERとの比較と進化点

初代「Signature MASTER」は、ULTRASONEが“音楽的モニター”として確立したモデルでした。
そして「Signature MASTER MkII」では、その哲学を継承しつつより正確でリファレンス志向のサウンドへと進化しています。
ここでは、チューニング・空間表現・シリーズ内での立ち位置の3点から詳しく見ていきます。
チューニングの方向性の違い ― “音楽を楽しませる初代”と“音を見抜くMkII”
初代は温かみと包容力を持つリスニング寄りのチューニングでした。
一方、「MkII」は帯域バランスを再構築し、より解析的で正確なリファレンスサウンドに仕上がっています。
音質の傾向比較
| 項目 | 初代 Signature MASTER | Signature MASTER MkII |
|---|---|---|
| 低音 | やや豊かでふくよか、量感重視 | タイトでスピード感重視。量より輪郭 |
| 中音 | 温かみがあり、ボーカルが前に出る | ニュートラルで濁りが少なく、定位が正確 |
| 高音 | 滑らかで優しい | 伸びが良く、細部の情報量が増加 |
| 全体バランス | リスニング向けの心地よさ | モニター志向の正確性とスピード感 |
| 音の印象 | 音楽的で包まれるサウンド | 精密で空間の奥行きを明確に描く |
初代=聴かせるチューニング
MkII=分析するためのチューニング
という立ち位置で、方向性は明確に分かれています。
空間表現と定位感 ― “包まれる初代”と“焦点の合うMkII”
Signatureシリーズの象徴である「S-Logicテクノロジー」は、「MkII」でさらに進化。
空間の立体感は維持しつつも、音像のピントが一段とシャープになっています。
空間表現の比較
| 指標 | 初代 Signature MASTER | Signature MASTER MkII |
|---|---|---|
| 横方向の広がり | ゆったりとした広がり | 広いが定位がより正確 |
| 前後の奥行き | 包まれるような距離感 | 奥行きと層の分離がより明確 |
| 音像のピント | やや柔らかい焦点 | 鋭く、細かい定位が取りやすい |
| 音場の構成 | 音の“塊”が心地よく広がる | 音の“輪郭”が立体的に浮かぶ |
実際の使用感
- 初代は「音楽に包まれる」ような心地よさが特徴。
- MkIIは「空間のどこに何が鳴っているか」がより明確に分かる。
- ミックス作業やパン振り確認など、制作用途での精度が格段に向上しています。
初代は“音楽を聴く喜び”、「MkII」は“音の構造を理解する快感”。
どちらも魅力的ですが、制作・分析に特化するなら「MkII」が圧倒的に有利です。
Signatureシリーズ内での立ち位置 ― “最もバランスの取れたリファレンスモデル”
Signatureシリーズには「PRO」「STUDIO」「MASTER」といった複数の系統があります。
その中で「MkII」は、リスニングとプロユースのちょうど中間に位置する万能機です。
シリーズ内比較
| モデル | 特徴 | サウンド傾向 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| Signature PRO | 現場志向。力強く輪郭の立つサウンド | エネルギッシュで直線的 | ライブ・録音現場 |
| Signature STUDIO | バランス重視で扱いやすい | フラットで軽快 | DTM初心者〜中級者 |
| Signature MASTER(初代) | 音楽的でリスニング寄り | 包まれるような音場 | 高級リスニング |
| Signature MASTER MkII | 精度と立体感を両立 | 正確・滑らか・自然 | 制作/高解像リスニング両対応 |
こんな人におすすめ
- ミキシングやマスタリングで、判断の再現性を重視する人
- リスニング時にも音楽の深部まで感じ取りたい人
- 密閉型でも開放的な音場を求めるリスナー
「MkII」は、シリーズの中で最も“フラット”かつ“高解像”な立ち位置。
まさにULTRASONEが目指した次世代リファレンスの完成形といえるでしょう。
「Signature MASTER MkII」は、初代の温かみや音楽性を残しつつ、
「制作判断の正確さ」と「空間再現のリアルさ」を磨き上げたモデルです。
進化の要点まとめ
- チューニングがリスニング寄りからリファレンス寄りへシフト
- 空間表現がより立体的かつフォーカスの合った構成に
- 低域のスピード感と中域の透明度が向上
- 制作現場での再現性・信頼性が格段にアップ
初代は“音楽に浸るヘッドホン”、MkIIは“音楽を見抜くヘッドホン”。
聴く人の目的が明確なら、進化の意味は一聴でわかるでしょう。
ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」を使用した私の体験談・レビュー

「Signature MASTER MkII」を数週間にわたり、リスニング・ミキシング・日常使用という3つのシーンで集中的に使い込んでみました。
結果として感じたのは、単なる高音質ヘッドホンではなく、「音楽を理解するための道具」としての完成度の高さでした。
リスニングで感じた没入感と心地よさ
まず印象的だったのは、密閉型なのに閉塞感が少ないこと。
夜の静かな環境で小音量再生しても、音場が潰れず立体感が保たれます。
ボーカルの定位がピタッとセンターに収まり、楽器のレイヤーも自然。
特に印象的だった点
- 小音量でも情報が減らない
- シンバルやギターの高域が滑らかで刺さらない
- ベースの輪郭が明確で、リズムが心地よく揺れる
- 長時間聴いても耳が熱くなりにくく、装着ストレスが少ない
| 評価項目 | 印象 |
|---|---|
| 音の広がり | 自然で奥行きがある |
| 解像度 | 細部まで明瞭でバランス良好 |
| 聴き疲れ | ほとんど感じない |
| 使用時間(目安) | 3〜4時間連続でも快適 |
まるで“部屋の空気ごと鳴っているような自然さ”。
イヤホンでは得られない包まれ方があり、夜のリスニングが楽しみになりました。
ミックス/マスタリングでの精度と信頼性
制作環境でも、「Signature MASTER MkII」は判断の再現性が高いヘッドホンでした。
特に小音量でも帯域バランスが崩れず、EQやコンプレッサーの微調整が素直に反映されます。
制作時に感じた強み
- 60〜80Hzのベースレンジが正確で、ローの過多を早期に把握できる
- ボーカルの2kHz付近がわずかに前に出るため、声の存在感が読み取りやすい
- スネアやハイハットのリリース、残響の長さを細かく確認できる
- 左右定位だけでなく、前後感も明確→パンニング判断が容易
作業メモ
- ミックス時の音量は中〜小音量でも十分情報が残る
- 音像の“厚み”より“形”を捉えるタイプ
- 長時間セッション(2〜3時間)でも集中力を維持できる
| チェック項目 | 初代比の改善点 |
|---|---|
| 解像度 | 微細な残響が明瞭に |
| 定位精度 | パン振りの角度差を掴みやすい |
| 空間情報 | 残響の層が明確 |
| ノイズ感 | 背景がより黒く静か |
編集やミキシング時の「音の重なり」を視覚的に想像しやすくなる。
仕事用のモニターとして信頼できる完成度です。
他モデルとの比較で見える個性
これまで使ってきた他の密閉型(HD 620S、DT 700 PRO Xなど)と比較しても、「MkII」は“立体の奥行き”が一段上。
同じ密閉でも、空間が壁の中で鳴っているような息苦しさがありません。
比較して分かったポイント
- 低音:DT 700 PRO Xより量感は控えめだが、輪郭が明確で制御しやすい
- 中音:HD 620Sよりナチュラルで、EQ補正なしでもフラットに聴ける
- 高音:派手すぎず滑らか。シンバルや弦の余韻が自然に消える
| モデル | 特徴 | MkIIとの違い |
|---|---|---|
| HD 620S | 明るく抜けの良い開放感 | MkIIはより密度が高く正確 |
| DT 700 PRO X | 低域が量感豊か | MkIIは情報量と定位の正確さが上 |
| MDR-MV1 | 開放的で広い音場 | MkIIは密閉ながら奥行きが自然 |
“密閉なのに閉じない”という矛盾を最も上手く解消したモデル。
様々なモニターを使ってきましたが、最終確認はいつも「MkII」に戻ってきます。
長時間使用でわかる快適性と集中力
日々の作業では「どれだけ長く集中できるか」が重要です。
「Signature MASTER MkII」は、側圧・パッド・重量バランスが絶妙で、4時間を超える使用でも物理的な疲れが非常に少ない。
していることを忘れる瞬間があるほど自然なフィット感です。
快適性のポイント
- 側圧が均一で、頬骨やこめかみへの負担が少ない
- イヤーパッドの深さが十分で、耳がドライバーに触れにくい
- ヘッドバンドのクッションが柔らかく、頭頂の痛みを防ぐ
- 蒸れにくく、長時間リスニングでも集中が途切れない
長く使うほど“疲れにくさ”の意味を実感します。
聴くほどに耳と一体化していく感覚があり、まさに“長距離ランナー”のような安定感です。
日常使いと実用性 ― スタジオ以外でも活躍
自宅作業や通勤中にも試しましたが、遮音性が高いため周囲の雑音を自然に遠ざけてくれる点が好印象。
また、着脱式ケーブルや頑丈なケースなど、運用面の使い勝手も非常に良好です。
日常で便利に感じた点
- 着脱ケーブルで持ち運び・交換が容易
- キャリングケースがしっかりしていて、外出時も安心
- 手触りの良いマット仕上げで、指紋や汚れが目立たない
- パッドやケーブルの交換パーツが流通しており、長期使用に安心感
| 使用シーン | 使い勝手の印象 |
|---|---|
| 自宅作業 | 長時間作業でも快適。集中力が続く |
| 外出・カフェ | 遮音性が高く、周囲の音に邪魔されにくい |
| 持ち運び | ケース収納で傷や型崩れの心配が少ない |
体験を通じての総括
「Signature MASTER MkII」を長期間使って感じたのは、音の「正確さ」と「心地よさ」を高次元で両立しているということです。
リスニングでは、ボーカルの定位が安定し、低域から高域まで自然に溶け合うような広がりを体感できました。
密閉型でありながら音場が詰まらず、静かな夜に小音量で聴いても音楽の輪郭が失われません。
制作では、EQやコンプレッサーの細かな変化を正確に聴き分けられ、ミックス判断の再現性が高い点が特に印象的でした。
装着感についても、側圧や蒸れが程よく抑えられ、数時間の作業でも集中を切らさずに使い続けられます。
さらに、着脱式ケーブルやしっかりしたケースなど、日常使いの利便性も優秀で、スタジオと自宅の両方で頼りになる存在でした。
総じて、「Signature MASTER MkII」は「音を楽しむ耳」と「音を分析する耳」を自然に共存させてくれるヘッドホンです。
感性と理性のバランスが絶妙で、使うほどに“音を信頼できる”という感覚が深まっていく――そんな稀有な一台でした。
ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」に関するQ&A

ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」に関してよく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
「Signature MASTER MkII」はリスニング用? それとも制作向けですか?
どちらにも対応します。「Signature MASTER MkII」は、リスニングヘッドホンの心地よさとスタジオモニターの精度を両立しています。ミックスやマスタリング時の判断に使えるほど解像度が高く、同時に音楽鑑賞でも疲れにくい自然な音作りがされています。つまり、“聴く”と“創る”を一台で完結できるバランス型モデルです。
初代「Signature MASTER」との一番の違いは何ですか?
最大の違いはチューニングの方向性です。初代はやや温かみのある音でリスニング寄り、MkIIはよりニュートラルで、音の輪郭や定位の精度が向上しています。S-Logicテクノロジーの進化により、密閉型ながら前後の奥行きがさらに自然に感じられる点も大きな進化ポイントです。
密閉型なのに音場が広く感じるのはなぜですか?
ULTRASONE独自の「S-Logic 3」という技術によるものです。これはドライバーを耳の中心から少しズラして配置することで、外耳反射を利用して自然な立体感と前後定位を再現します。結果、密閉型でありながら開放型に近い空間表現が得られます。
どのようなジャンルの音楽に向いていますか?
「Signature MASTER MkII」は、ジャンルを選ばない万能型です。ただし特徴を活かせるのは以下のようなジャンルです。
- ジャズ/クラシック:ホールトーンの再現が自然で奥行きが感じられる
- ポップス/ロック:ボーカルの定位とリズムの分離が明確
- アコースティック系:楽器の質感や空気感がリアル
- EDM/ヒップホップ:低域のスピード感があり、サブベースのコントロールがしやすい
一言で言えば、「どのジャンルでも“録音の意図”を正確に感じ取れる」タイプです。
長時間のリスニングでも疲れませんか?
疲れにくい設計です。イヤーパッドの深さ・クッションの弾力・側圧のバランスが非常に良く、4時間以上の使用でも痛みや蒸れを感じにくいです。ヘッドバンドの圧も均一で、頭頂部への負担が少ないため、制作・リスニングのどちらでも長時間快適に使用できます。
「Signature MASTER MkII」を最大限活かすにはどんな環境が必要ですか?
小型のDAPでも鳴らせますが、本領を発揮するのは高S/N・高出力のDAC/AMP環境です。特に低域の制動感や音場の立体感は、出力に余裕のあるアンプで顕著に向上します。また、ノイズの少ない電源環境(USBノイズ対策やリニア電源使用)も効果的です。
イヤーパッドやケーブルの交換は可能ですか?
はい、どちらも交換可能です。「Signature MASTER MkII」は着脱式ケーブルを採用しており、断線時の交換も容易です。イヤーパッドも別売で入手可能なので、長期使用にも安心。メンテナンス性が高いのもプロ向けモデルとしての魅力です。
他のULTRASONEモデルと比べて、どのポジションになりますか?
Signatureシリーズの中では、最上位の“リファレンスモデル”に位置します。「PRO」は現場向けで力強さ重視、「STUDIO」はバランス型、そして「MASTER MkII」は正確さと自然さの両立がテーマ。制作現場でも最終チェック機として使用できる完成度です。
開放型のような音の抜けを求める人にも向きますか?
密閉型としては例外的に空間表現が広く、閉塞感をほとんど感じません。ただし、完全な開放型(HD 800Sなど)のような「空気の抜け感」を求める場合は別カテゴリになります。一方で、開放型のような広がりを保ちながら外部ノイズを遮断できる点がMkIIの強みです。
Bluetooth対応モデルやワイヤレス版はありますか?
いいえ、「Signature MASTER MkII」は有線専用モデルです。音質劣化の要因を排除し、プロフェッショナル用途でも使えるようにアナログ伝送に特化しています。Bluetooth接続を求める場合は、別シリーズ(例:ULTRASONE ISARなど)を検討するとよいでしょう。
他社ヘッドホン(HD 800SやFocal Clearなど)と比べてどうですか?
「Signature MASTER MkII」は、これら開放型ヘッドホンに比べて密度感と定位の安定性に優れます。一方で、空気感やスケールの広がりではHD 800Sなどが有利です。つまり、開放型は“空気を聴く”タイプ、MkIIは“構造を読む”タイプといえます。制作・分析寄りのモニタリングを重視するなら、MkIIのほうが実用的です。
音量を上げるときの歪みやピーク感はどうですか?
非常に安定しています。高出力アンプで音量を上げても、歪みや圧迫感がほとんど発生しません。低域が膨らまず、高域の刺激も出にくいため、ボリュームを上げても耳が疲れにくいのが特徴です。これは、ドライバーの高精度化とハウジング内部の共振抑制設計によるものです。
音漏れはどの程度ありますか?
密閉型の中でも音漏れは非常に少ない部類です。外への音漏れは最小限で、静かな室内や夜間でも安心して使用できます。ただし、完全防音ではないため、公共交通機関など極めて静かな環境では微かに漏れることがあります。
ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」レビューのまとめ

「Signature MASTER MkII」は、ULTRASONEの哲学である「原音忠実」を現代的に再構築したモデルです。
域のタイトさ、中域の透明感、高域の滑らかな伸び――そのすべてが正確でありながら心地よいバランスで成り立っています。
密閉型でありながら空間が閉じないS-Logicの立体感が、音場の自然さを支えています。
特筆すべきは、リスニングとモニタリングの両立性。
音楽を楽しむリスナーにも、制作で音を見極めたいエンジニアにも、それぞれの視点で応えてくれる一本です。
向いているユーザー/向かないユーザー
このモデルは、用途や求めるサウンドによって評価が変わります。
自分の使用環境に合わせて判断するのが理想です。
おすすめできる人
- 長時間聴いても疲れない、ニュートラルなサウンドを求める人
- DTM・ミックスなどで微細な変化を聴き取りたい制作者
- 密閉型でも開放的な音場や奥行きを重視するリスナー
- 小音量再生でも解像度と定位を維持したいユーザー
あまり向かない人
- EDMやロックで重低音の迫力を最優先する人
- 高域を強調した“華やかな音作り”を好む人
- とにかく開放型の広大な音場を求める人
「Signature MASTER MkII」は、派手さではなく“正確さと安定感”で魅せるヘッドホン。
音の整合性を大切にする人ほど、その真価を感じられます。
購入時に確認しておきたいポイント
購入前に、以下のポイントを意識しておくと後悔がありません。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 装着感 | 側圧とイヤーパッドの深さが自分に合うか |
| 駆動力 | 手持ちのDAC/AMPで十分なドライブが可能か |
| 使用音量 | 小音量でも定位が崩れず、細部まで聴き取れるか |
| ケーブル | 着脱式の長さやプラグ形状が環境に合うか |
| メンテ性 | 交換パッドやケーブルの入手性を事前に確認 |
“音が良い”だけでなく、“使い続けられる設計”であることも「Signature MASTER MkII」の強みです。
初代モデルとの違い ― 進化の方向性
「Signature MASTER MkII」は、初代の「音楽的な厚み」を保ちつつ、よりリファレンス的な精度へと進化しました。
定位の明確さや残響の見通しが改善され、制作現場での再現性が高まっています。
| 比較項目 | 初代 Signature MASTER | Signature MASTER MkII |
|---|---|---|
| 低音 | やや豊かでリスニング寄り | タイトで制動感がある |
| 中音 | 温かく滑らか | 透明でフラット |
| 高音 | 柔らかく自然 | 微細な情報量が増加 |
| 音場 | 包まれるような広がり | 奥行きが明確で立体的 |
| 用途 | リスニング中心 | 制作・鑑賞の両立 |
初代が“音を楽しむ”ヘッドホンなら、MkIIは“音を見極める”ヘッドホン。
両者の違いは明確ですが、どちらもULTRASONEらしい誠実な音作りが息づいています。
総合評価とおすすめシーン
「Signature MASTER MkII」は、単に高解像度なだけでなく、音楽の温度を失わない“聴きやすい正確さ”が魅力です。
ジャンルや環境を問わず、常に安定した再現性を発揮します。
特におすすめのシーン
- 自宅での長時間リスニング
- DTM・ミックス・マスタリング用途
- スタジオでのリファレンス確認
- ハイエンドDAPやDACとの組み合わせ試聴
| 評価項目 | 総合評価 | コメント |
|---|---|---|
| 音質バランス | ★★★★★ | 全帯域が自然に繋がるフラットチューニング |
| 音場表現 | ★★★★☆ | 密閉型としては驚くほど広い |
| 装着感 | ★★★★★ | 側圧・重量バランスとも理想的 |
| メンテナンス性 | ★★★★★ | 消耗品交換が容易で長期使用に最適 |
| コストパフォーマンス | ★★★★☆ | 価格に見合う完成度と耐久性 |
ULTRASONE 「Signature MASTER MkII」レビューの
「Signature MASTER MkII」は、ULTRASONEが長年培ってきたモニタリング技術の集大成といえる存在です。
初代モデルの温かみや音楽的な包容力を受け継ぎながらも、音像の精度や定位の安定性、そして長時間の装着でも疲れにくい快適性を一段高いレベルへと引き上げています。
リスニングでは自然で広がりのある音場を描き、ミックスやマスタリングではわずかなEQ差や残響の変化までも明確に捉えられる――まさに“聴くこと”と“創ること”をシームレスにつなぐヘッドホンです。
また、デザインや耐久性、メンテナンス性といった実用面も抜かりなく、プロフェッショナルな現場だけでなく、音楽を日常的に楽しむリスナーにも寄り添う完成度を誇ります。誇張のないフラットなサウンドでありながら、冷たさを感じさせない柔らかい音の質感は、ULTRASONEならではの魅力といえるでしょう。
音の正確さ、装着の快適さ、そして使い込むほどに信頼が増していく安心感。そのすべてが「一度聴いたら戻れない基準」を築き上げています。
「Signature MASTER MkII」は、音楽を愛するすべての人にとって、“真実の音を日常に届けるための最良の選択肢”といえる一台です。


