数々の革新的なイヤホンを世に送り出してきた「BQEYZ(ビーキューアイズ)」。
そのBQEYZが「天候」をテーマにしたシリーズの最新作として発表したのが、今回レビューする「BQEYZ Cloud」です。
「Cloud(雲)」という名の通り、軽やかで広がりのあるサウンドを予感させますが、その実力はどうなのでしょうか。
本機最大の特徴は、スピーカーでよく使われる「パッシブラジエーター(受動振動板)」をイヤホンという小さな筐体に搭載してきた点です。
「Cloudの音が気になるけど、実際のところどうなの?」
「ボーカルが綺麗って聞くけど、低音は弱いの?」
「WinterやWindといった他のBQEYZ製品とどう違うの?」
こうした疑問を持つ方は多いはずです。
実際、オーディオコミュニティでもそのユニークな構成と音質が大きな話題となっています。
この記事では、そんなBQEYZ Cloudを筆者が実際に数週間じっくりと聴き込み、その実力を徹底的に検証しました。
音質の詳細な分析はもちろん、装着感、付属品の品質、ライバル機との比較、そして「どんな音楽に合うのか」というリアルな体験談まで、忖度なしでレビューしていきます。
この記事を読み終える頃には、あなたがBQEYZ Cloudを「買うべきかどうか」の明確な答えが出ているはずです。
- BQEYZ 「Cloud」とは?主な特徴と革新的技術
- BQEYZ 「Cloud」の音質を徹底解剖
- BQEYZ 「Cloud」の装着感・付属品・ライバル機との比較
- BQEYZ 「Cloud」を実際に使用した私の体験談・レビュー
- BQEYZ 「Cloud」に関するQ&A
- Cloudはスマートフォン(iPhoneやAndroid)直挿しでも十分鳴らせますか?
- エージング(慣らし運転)は必要ですか?
- 「低音が弱い」という評価を見かけますが、実際どうですか?
- 装着感はどうですか? メガネをかけていても干渉しませんか?
- 音漏れや遮音性はどれくらいですか? 通勤・通学で使えますか?
- BQEYZの他のモデル(WindやWinter)とは、どう違いますか?
- リケーブル(ケーブル交換)はおすすめですか?
- 購入時に3.5mmプラグと4.4mmプラグを選べますが、どちらが良いですか?
- ズバリ、BQEYZ Cloudが最も輝く音楽ジャンルは何ですか?
- BQEYZ Cloudはゲーム(FPSなど)や動画視聴(映画、ASMR)にも使えますか?
- 音の傾向は「モニターイヤホン」と「リスニングイヤホン」のどちらに近いですか?
- BQEYZ 「Cloud」レビューのまとめ
BQEYZ 「Cloud」とは?主な特徴と革新的技術

まずはBQEYZ Cloudがどのようなイヤホンなのか、その核となる技術とスペックを見ていきましょう。
BQEYZ Cloudの主な仕様とスペック
BQEYZ Cloudの基本的な仕様は以下の通りです。
ミドルクラスの価格帯ながら、意欲的なスペックが目を引きます。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| ドライバー構成 | 1DD(10mm LCP振動板) + 1PR(6.8mm パッシブラジエーター) |
| 再生周波数帯域 | 7Hz – 40,000Hz |
| インピーダンス | 32Ω |
| 感度 | 110 dB |
| 筐体(シェル)素材 | 5軸CNC加工 アルミニウム合金 |
| ケーブル | 高純度単結晶銅&銀メッキ銅 混合同軸ケーブル |
| コネクタ | 0.78mm 2Pin |
| プラグ | 3.5mm または 4.4mm(購入時選択) |
| カラーバリエーション | シアン(青)、ブラック(黒) |
| 価格帯 | ミドルクラス(約2万円~) |
革新技術:パッシブラジエーターが音にもたらす効果とは
本機の心臓部であり、最大の注目点が「パッシブラジエーター(Passive Radiator)」の搭載です。
Q. パッシブラジエーターって何?
A. 簡単に言えば、「エンジンを持たないスピーカー(振動板)」です。
- 通常のドライバー (DD): 電気を流してコイル(エンジン)を振動させ、音を出します。
- パッシブラジエーター (PR): 自身の力では音を出しません。
では何のためにあるのかと言うと、「他のドライバーが動く時の”空気の圧”を利用して振動する」のです。
BQEYZ Cloudにおける役割:
- メインの10mmダイナミックドライバー(DD)が前後に動くと、イヤホン内部の空気圧が変動します。
- この空気圧の変化(風)を受けて、6.8mmのパッシブラジエーター(PR)が受動的に振動します。
- このPRの振動が、主に低音域を補強・増強する役割を果たします。
メリットは?
イヤホンのような密閉された小さな空間では、豊かな低音を出そうとすると空気が詰まったようになり(背圧)、音がこもったり、ドライバーの動きが悪くなったりすることがあります。
パッシブラジエーターは、この空気圧を「逃がす」のではなく「利用」することで、以下のような効果を生み出します。
- 弾力のある低音: ブンブンと響くのではなく、弾むような質の高い低音を実現します。
- 自然な音の広がり: 空気の流れがスムーズになり、音場(サウンドステージ)の拡大に貢献します。
- 中高域のクリアさ: 低音域をPRに任せることで、メインのDDは中高域の再生に集中でき、ボーカルや楽器の明瞭度が上がります。
従来のBQEYZが得意としてきたピエゾ(圧電)ドライバーや骨伝導ドライバーとは全く異なるアプローチであり、この技術がCloudのユニークなサウンドの根幹となっています。
ビルドクオリティ:高級感あるアルミニウム合金ハウジング
音質だけでなく、手にした時の満足感もイヤホン選びの重要な要素です。
BQEYZ Cloudの筐体(シェル)は、安価な樹脂製ではなく、5軸CNC(コンピュータ数値制御)ミルド加工されたアルミニウム合金で作られています。
- 質感:
サンドブラスト(梨地)仕上げが施されており、サラサラとした非常に心地よい手触りです。
安っぽさは一切なく、価格以上の高級感があります。 - デザイン:
フェイスプレートには「Cloud」をイメージした緩やかな曲線が彫り込まれており、光の当たり方で表情が変わります。
派手すぎず、シンプルで洗練されたデザインです。 - 耐久性:
金属製のため非常に堅牢で、長期間の使用にも耐えうる安心感があります。 - 音響的メリット:
樹脂に比べ、金属は不要な共振を抑え込む性質があります。
これにより、音の輪郭がボヤけず、クリアで引き締まったサウンド(特に高音域のキレ)に貢献しています。
筆者が手にしたシアンカラーは、鮮やかでありながら深みのある青緑色で、所有欲を満たしてくれる美しい仕上がりでした。
BQEYZ 「Cloud」の音質を徹底解剖

ここからは、本題である「音質」について、帯域別に詳しくレビューしていきます。
高音域と中音域:刺さらずクリア、ボーカルが際立つサウンド
BQEYZ Cloudの最も輝くポイントは、間違いなくこの中高音域、特にボーカル表現です。
高音域 (Treble):
非常にクリアで、抜け感が素晴らしいです。
シンバルやハイハットの音は、シャリシャリと耳障りになる一歩手前で見事にコントロールされており、キラキラとした粒子感を保ちつつ、どこまでも伸びていくような印象を受けます。
「刺さらない高音」のお手本のようなチューニングで、長時間のリスニングでも全く聴き疲れしません。
アルミニウム合金ハウジングの恩恵か、音の立ち上がりが速く、キレの良さも感じられます。
中音域 (Mids) & ボーカル:
このイヤホンの真骨頂です。
ボーカル(特に女性ボーカル)は、他の楽器より一歩前に出て、非常に生々しくクリアに聴こえます。
息遣いやブレス、声の微細なニュアンスまでもしっかりと描写しきります。
- 軽やかさと透明感: 「Cloud」の名にふさわしく、湿っぽさや重さがなく、非常に軽やかで透明感のある歌声です。
- サ行の刺さり皆無: 「サ・シ・ス・セ・ソ」といった歯擦音が全く刺さりません。これにより、ボーカルの音量を上げてもストレスなく楽しめます。
- 楽器の分離: ピアノの粒立ちやアコースティックギターの弦を弾く音も明瞭で、ボーカルの周りで美しく響きます。
J-POPやアニソン、女性ボーカルのバラードなどを聴くと、その表現力にハッとさせられることでしょう。
低音域:パッシブラジエーターが効いた弾力と深み
「ボーカルが良いイヤホンは低音が弱い」という定説がありますが、Cloudは一味違います。
ここでパッシブラジエーターが真価を発揮します。
低音域 (Bass):
まず前提として、重低音で鼓膜を激しく揺らすような「量」を求めるイヤホンではありません。(EDMやヒップホップでズンズン響かせたい人には向きません)
Cloudの低音は「質」で勝負するタイプです。
- 弾力とアタック感:
パッシブラジエーターの効果により、ベースラインは非常に弾力的(バンジー)で、アタック感が明瞭です。
ボワつくことが一切なく、タイトで引き締まっています。 - 深みと余韻:
量は多くないものの、「深い」ところから鳴っている感覚があります。
バスドラムの「ドン」という音の後に、「フワッ」と広がる空気感や余韻が非常に心地よいです。 - 中高域を邪魔しない:
これが最も重要ですが、低音が中高音域に一切被りません(マスキングしない)。
ボーカルのクリアさを保ったまま、楽曲の土台となるリズム隊をしっかりと支えてくれます。
「軽やかさ」と「深み」という、相反するように思える要素を両立させている点に、このイヤホンの面白さがあります。
音場と解像度:空間表現と音の粒立ち
音場:
左右に(横に)極端に広いタイプではありません。
その代わり、上下と前後の奥行きに優れた空間表現を持っています。
ボーカルが目の前(やや高めの位置)に定位し、その周囲や奥まった位置に各楽器が配置されるような、立体的な鳴り方です。
頭の中で鳴るというよりは、頭の周囲にふわりと「雲」のように音が広がる感覚で、圧迫感がなく非常に快適です。
解像度 (Resolution):
価格を考えれば非常に高いレベルにあります。
特に中高音域の解像度は素晴らしく、これまで聴こえていなかったような微細な音や、コーラスの重なりまではっきりと聴き分けることができます。
低音域もボヤけないため、全体の情報量として多く、音の粒立ちが非常に明瞭です。
BQEYZ 「Cloud」の装着感・付属品・ライバル機との比較

音質が良くても、使い勝手が悪ければ意味がありません。ここでは実用面をチェックします。
装着感と遮音性:小型・軽量ボディの実力
装着感:
非常に良好です。 金属製ハウジングと聞くと重そうに思えますが、Cloudは驚くほど小型かつ軽量です。
人間工学に基づいて設計されたシェルは、耳の凹凸(耳甲介)に吸い付くようにフィットします。
- 安定性:
いわゆる「シュア掛け(耳掛け)」タイプであり、ケーブルが耳を支えるため安定感は抜群です。
歩きながら使用してもズレることはありませんでした。 - 注意点:
一部の競合機と比較すると、ノズル(音が出る筒の部分)がやや短めに設計されています。
そのため、人によっては付属のイヤーピースが合わない可能性もあります。
その場合は、より耳の奥まで入るタイプのイヤーピース(例: SpinFit, SednaEarfitなど)に交換すると、フィット感と低音の量感が劇的に改善する場合があります。
遮音性:
カナル型イヤホンとして標準的なレベルです。
適切にフィットしていれば、電車内の騒音やカフェでの話し声などは音楽を流せば気にならないレベルまで低減されます。
付属品(ケーブル・イヤーピース)の品質をチェック
この価格帯としては、付属品が非常に豪華なのもBQEYZ製品の魅力です。
- 付属ケーブル:
高純度単結晶銅と銀メッキ銅の混合同軸ケーブルが付属します。
本体カラーがシアンなら白、ブラックなら黒のケーブルです。 このケーブルが非常にしなやかで柔らかく、取り回しが抜群に良いです。
クセがつきにくく、タッチノイズ(ケーブルが服に擦れる音)もほとんどありません。
音質的にも変な味付けがなく素直で、リケーブル(交換)の必要性を感じないほど高品質です。 - 付属イヤーピース:
イヤーピースが3種類も付属します。- リファレンス(白色): 音のバランスが良く、最も標準的なサウンド。
- 雰囲気(グレー): 開口部が広く、音場が広がり、より響きが豊かになる。
- フォームタイプ(黒色): 低反発素材。遮音性を高め、低音を強化したい時に。 これだけあれば、大抵の人は自分に合うものを見つけられるでしょう。イヤーピースを収納する専用の小型ケースが2つも付いてくる点も、細やかな配慮が感じられます。
- キャリングケース:
しっかりとした作りのセミハードケースが付属します。
イヤホンをカバンの中に無造作に入れても潰れる心配がなく、安心して持ち運べます。
BQEYZ他モデルや同価格帯ライバル機との違い
「BQEYZ Cloud」の立ち位置を明確にするため、他のモデルと比較します。
- vs BQEYZ Wind (骨伝導搭載):
Windは中低域用に骨伝導ドライバーを搭載しています。
Cloudよりも「響き」や「空気感」が強く、よりウォームで広がりのあるサウンドです。
一方、Cloudはボーカルの明瞭度や音のキレ、軽快さにおいてWindを上回ります。 - vs BQEYZ Winter (骨伝導+PZT搭載):
Winterは骨伝導とピエゾ(高音域用)を搭載した上位モデルです。
音場の広さや高音域の超繊細な表現力はWinterが上ですが、Cloudの方がボーカルが近く、中音域にフォーカスが当たった聴きやすいバランスです。 - vs 同価格帯のボーカル機 (例: SeeAudio Yume IIなど):
Yume IIのような多BA機と比較すると、BA特有の硬質さや分析的な鳴り方に対し、CloudはDD(ダイナミック)ならではの音の滑らかさや、パッシブラジエーターによる低音の自然な響きが強みです。
より「音楽的」で「聴き疲れしない」サウンドと言えます。
Cloudの立ち位置:
「軽快なボーカルのクリアさ」と「弾力のある質の高い低音」を、聴き疲れしないバランスで両立させた、ボーカル特化のリスニングイヤホンというのがCloudの明確なポジションです。
BQEYZ 「Cloud」を実際に使用した私の体験談・レビュー

ここからは、スペックや分析だけでは伝わらない、筆者が実際に様々なシチュエーションで使い込んだ「生の声」をお届けします。
開封の儀:パッケージとデザインの第一印象
パッケージは天候シリーズ共通の、清潔感のあるデザイン。箱を開けると、スポンジに守られた美しいシアンカラーの本体とご対面です。
「お、小さいな!」というのが最初の感想。
そして、手に取るとアルミニウム合金のひんやりとした質感と、適度な重量感(重すぎず、軽すぎない)が伝わってきます。
CNC加工の精度が非常に高く、エッジの処理も滑らかで、この時点での満足度は非常に高いです。
最初の音出し:ファーストインプレッション
DAPに接続し、まずはいつも聴いているリファレンス曲を再生。
一聴して「あ、これはボーカルのイヤホンだ」と確信しました。
声がとにかく近い。
そしてクリア。
霞がかったフィルターを1枚剥がしたかのような透明感です。
懸念していた低音は、確かに量は少ないですが、「いない」のではなく「質が良い」ことがすぐに分かりました。
ベースラインがしっかり追え、タイトにリズムを刻んでいます。
これがエージング(慣らし運転)なしの音とは驚きでした。
得意な音楽ジャンル:J-POP・アニソンでの試聴
数日間鳴らし込んだ後、本機が最も得意とするであろうジャンルを聴き込みました。
- YOASOBI「アイドル」:
圧巻。
情報量の多い複雑な楽曲ですが、ボーカルが一切埋もれません。
早口の歌詞も明瞭に聴き取れ、キラキラしたシンセの音とタイトなドラムが完璧に分離します。
この曲の疾走感をここまで心地よく再生できるイヤホンはミドルクラスでは稀有です。 - Ado「唱」:
地声からファルセットまで激しく行き来するAdoのボーカル。
Cloudは、そのハスキーな質感から高音の伸びまで、刺さることなく生々しく描き出します。
低音もパッシブラジエーターのおかげでしっかりとしたグルーヴを感じさせ、迫力不足はありません。 - 結束バンド「青春コンプレックス」:
女性ボーカルのロックとも相性抜群。
ギターリフのキレが良く、ボーカルの芯もしっかりと前に出てきます。
音が団子にならず、軽快にロックを楽しめます。 - アコースティック系(女性ボーカル):
最もハマったかもしれません。
息遣い、声の震え、ギターの弦が擦れる音。
その全てがリアルで、まるで目の前で歌ってくれているかのような没入感でした。
苦手な音楽ジャンル?:ロック・EDMでの試聴
次に、低音の量が求められるジャンルも試しました。
- ヘヴィメタル (Metallicaなど):
正直なところ、ツーバスの「ドコドコ」という地響きのような圧力や、重いギターリフの迫力を求めるにはパワー不足です。
音自体はクリアに聴こえるのですが、「熱量」や「重さ」が足りないと感じます。 - EDM (Martin Garrixなど):
サブベース(超低音)の「ズーン」という響きは弱めです。
ただし、ミッドベース(中低音)のアタックはしっかりしているので、ビートは楽しく感じられます。
迫力重視でなければ、むしろクリアで聴きやすいEDMサウンドとして楽しめました。
結論として、重低音の「圧」や「量」を最優先するジャンルには明確に向きません。
リケーブル(交換)による音質変化の検証
付属ケーブルのままで完成度は高いですが、イヤホンのポテンシャルを探るためリケーブルも試しました。
- 純銀線に交換:
高音域の透明感がさらに増し、見通しが良くなります。
ボーカルの輪郭がよりシャープになりますが、やや線が細くなる印象も。 - 高品質な銅線に交換:
これが面白い変化でした。
付属ケーブル(銅+銀メッキ)の軽やかさを少し抑え、中低音域に厚みと温かみが出ます。
ボーカルの生々しさはそのままに、低音の「深み」がもう一段階増し、よりリスニングライクなバランスになりました。
Cloudはリケーブルにも素直に反応するため、自分好みの音に育てる楽しみもあるイヤホンだと感じました。
体験談の総括
BQEYZ Cloudは、「圧倒的なボーカルの明瞭度」と「聴き疲れしない軽快なサウンド」を求める人にとって、これ以上ない選択肢の一つです。
特にJ-POPやアニソン、女性ボーカルをメインで聴くならば、この価格帯での満足度はトップクラスです。
パッシブラジエーターによる低音は、決して「弱い」のではなく、「上品で質が高い」ものです。
このバランス感覚こそがCloud最大の魅力だと、使い込んでみて確信しました。
BQEYZ 「Cloud」に関するQ&A

BQEYZ 「Cloud」に関してよく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
Cloudはスマートフォン(iPhoneやAndroid)直挿しでも十分鳴らせますか?
はい、十分鳴らすことができます。 BQEYZ Cloudは感度が110dBと高く、インピーダンスも32Ωと標準的であるため、スマートフォンのイヤホンジャックや変換アダプタ経由でも十分な音量と音質を得られます。 ただし、より高音質なDAP(デジタルオーディオプレーヤー)やポータブルDAC/アンプを使用することで、音の解像度や低音の深み、音場の広がりといったイヤホン本来のポテンシャルをさらに引き出すことができます。
エージング(慣らし運転)は必要ですか?
必須ではありませんが、行うことで音が変化する可能性はあります。 BQEYZ Cloudは、ダイナミックドライバーとパッシブラジエーターという物理的に可動する部品を使っています。そのため、数十時間程度(例:50~100時間)鳴らし込むことで、振動板がほぐれ、特に低音域の沈み込みや高音域の滑らかさが増す場合があります。 箱出し直後から良い音で鳴りますが、じっくりと音の変化を育てていくのも楽しみ方の一つです。
「低音が弱い」という評価を見かけますが、実際どうですか?
「迫力ある重低音(サブベース)」は控えめですが、「音楽的な低音」はしっかり鳴ります。 EDMやヒップホップで求められるような、空気が震える「ズーン」という重低音の「量」は多くありません。 その代わり、パッシブラジエーターの効果により、ベースラインのアタック感や弾力、タイトさといった「質」は非常に高いです。ボーカルや中高音域を邪魔せず、楽曲の土台をしっかり支える上品な低音と言えます。
装着感はどうですか? メガネをかけていても干渉しませんか?
装着感は非常に良好です。 筐体がアルミニウム合金製ながら非常に小型かつ軽量に設計されています。耳の形にフィットしやすく、長時間の使用でも疲れにくいです。 また、シュア掛け(耳掛け)タイプですが、ケーブル自体がしなやかで耳の後ろに回り込む部分も細いため、メガネのツルと干渉することはほとんどありません。多くの方にとって快適な装着感が得られるでしょう。
音漏れや遮音性はどれくらいですか? 通勤・通学で使えますか?
音漏れは少なく、遮音性はカナル型として標準的です。 適切にご自身の耳に合うイヤーピースを選べば、電車内やカフェなどでも音楽に集中できるレベルの遮音性を発揮します。常識的な音量で聴いている限り、周囲に音が漏れる心配もほとんどありません。通勤・通学での使用にも全く問題なく適しています。
BQEYZの他のモデル(WindやWinter)とは、どう違いますか?
ドライバー構成と音の傾向が異なります。
- Wind(骨伝導搭載): Cloudよりも響きが豊かで、よりウォーム(温かみ)なサウンドです。
- Winter(骨伝導+PZT搭載): Cloudよりも音場が広く、高音域の超微細な表現力に優れます。
- Cloud(本作): 上記2モデルと比べて、ボーカルが最もクリアで近くに聴こえます。中音域の明瞭さと軽快さを重視するならCloudが最適です。
リケーブル(ケーブル交換)はおすすめですか?
付属ケーブルの品質が非常に高いため、必須ではありません。 付属ケーブルはしなやかで取り回しが良く、音質的なクセもありません。 ただし、リケーブルによる音質変化は楽しめます。例えば、「より高音の透明感が欲しい」なら純銀線、「低音の厚みや音の温かみが欲しい」なら高品質な銅線に交換することで、自分好みのサウンドにチューニングする楽しみがあります。
購入時に3.5mmプラグと4.4mmプラグを選べますが、どちらが良いですか?
あなたがお持ちの再生機器(DAPやDACアンプ)によって選びます。
- 3.5mmプラグを選ぶべき人:
- 主にスマートフォンやPC、安価なDAPで聴く人。
- 「バランス接続」という言葉を聞いたことがない、または対応機器を持っていない人。
- (3.5mmは最も一般的な規格で、ほぼ全ての機器に接続できます)
- 4.4mmプラグを選ぶべき人:
- ソニーのウォークマンやFiiO、Shanlingなど、**「4.4mmバランス出力端子」**を備えたDAPやDACアンプを持っている人。
- バランス接続による、よりクリアでパワフル、かつ左右の分離が良いサウンドを楽しみたい人。
よく分からない場合は「3.5mm」を選んでおけば間違いありません。将来的に4.4mmバランス接続を試したくなった場合は、リケーブル(ケーブル交換)で対応することも可能です。
ズバリ、BQEYZ Cloudが最も輝く音楽ジャンルは何ですか?
筆者の体験上、最も相性が良いと感じたのは「J-POP(特に女性ボーカル)」と「アニソン」です。 ボーカルの声が非常にクリアで近く、息遣いまでリアルに感じ取れます。また、音の立ち上がりが速く軽快なサウンドのため、アップテンポな楽曲の疾走感を損なうことなく楽しませてくれます。 アコースティックなバラードや、音数の少ないシンプルな編成の曲も、ボーカルと楽器の分離が素晴らしく、非常に得意です。
BQEYZ Cloudはゲーム(FPSなど)や動画視聴(映画、ASMR)にも使えますか?
用途によりますが、動画視聴やASMRには非常に適しています。
- 動画視聴・映画: ボーカル(セリフ)が非常にクリアで聞き取りやすいため、ドラマや映画の視聴に最適です。効果音のキレも良いため、臨場感も楽しめます。
- ASMR: 声の息遣いや耳かき音などの微細な音の描写が非常に得意です。定位感(音の方向)も掴みやすいため、高い没入感が得られます。
- ゲーム(FPSなど): 音楽用としては定位感が良い方ですが、FPSなどで敵の足音の方向を厳密に聞き分けるような「ゲーミングイヤホン」専門機と比べると、音のシャープさや定位の正確さ(特に左右の広がり)は一歩譲るかもしれません。ただし、ゲームの世界観を楽しむRPGやアクションゲームなどには十分すぎる性能です。
音の傾向は「モニターイヤホン」と「リスニングイヤホン」のどちらに近いですか?
明確に「リスニングイヤホン」寄りです。 「モニターイヤホン」は、楽曲の粗探しやミックス作業のために、音をフラットかつ分析的に鳴らすことを目的としています。 一方、BQEYZ Cloudは、パッシブラジエーターによる弾むような低音や、ボーカルを艶やかで魅力的に聴かせる中高音域など、音楽を楽しく心地よく聴くためのチューニングが施されています。解像度は高いですが、分析的になりすぎず、「聴き疲れしない楽しさ」を優先したサウンドです。
BQEYZ 「Cloud」レビューのまとめ

最後に、BQEYZ Cloudの評価を総まとめします。
購入を検討している方は、ここを最終チェックとしてください。
BQEYZ Cloudの優れた点(メリット)
- ボーカルが主役のサウンド: とにかくボーカルがクリアで近い。息遣いまで感じられる生々しさは圧巻。
- 刺さらない美しい高音: キラキラしていながら耳障りな音が一切なく、長時間のリスニングが非常に快適。
- 質の高い弾力のある低音: パッシブラジエーターにより、量感は控えめながら弾力と深みのある低音を実現。
- 優れたビルドクオリティ: CNC加工のアルミ合金シェルは、見た目も質感も価格以上。
- 快適な装着感: 小型・軽量設計で、耳への収まりが非常に良い。
- 高品質な付属品: しなやかなケーブルと豊富なイヤーピースで、追加投資が不要。
購入前に考慮すべき点(デメリット)
- 重低音の迫力不足: EDMやヘヴィメタルに求められる「地響きのような重低音」は出ません。
- ノズルが短め: 人によっては(特に耳穴が深い人)、付属イヤーピースではフィット感が浅くなる可能性がある。
- 音場が左右に広くはない: 奥行きや上下の広さはあるが、左右に広大なサウンドステージを求める人には物足りない可能性がある。
おすすめできる人:ボーカル重視派・軽快サウンド好き
以下のような方には、BQEYZ Cloudを強くおすすめします。
- J-POPやアニソン、女性ボーカルの曲をメインで聴く人
- とにかくボーカルがクリアに聴こえるイヤホンを探している人
- ドンシャリサウンドに疲れた人、聴き疲れしないイヤホンが欲しい人
- 低音は「量」より「質」や「タイトさ」を重視する人
- デザインや質感にもこだわりたい人
おすすめしない人:重低音の圧を求める方
逆に、以下のような方には別の選択肢をおすすめします。
- EDM、ヒップホップ、ヘヴィメタルを「重低音の迫力」で楽しみたい人
- イヤホンにウォーム(温かみ)で濃厚なサウンドを求める人
- 広大なコンサートホールのような音場(左右の広がり)を最優先する人
BQEYZ 「Cloud」レビューの総合評価:ミドルクラスの新たな優等生
BQEYZ Cloudは、「軽やかなボーカル表現」という明確な強みを持ちつつ、パッシブラジエーターという革新的な技術で「質の高い低音」という土台を見事に両立させた、ミドルクラスにおける非常に優秀なイヤホンです。
「Cloud(雲)」という名前は、単に「軽い」という意味だけでなく、その隙間から差し込む光のような「クリアなボーカル」と、雲が持つ「奥行きと立体感」をも表現しているのかもしれません。
ボーカル曲を愛するすべての人に、一度は聴いてみてほしい。
BQEYZ Cloudは、あなたのリスニング体験をより豊かにしてくれる、確かな実力を持った一台です。


