スマートフォンからイヤホンジャックが消えて久しい現代において、「有線イヤホン」をあえて選ぶという行為は、ある種の「儀式」に近い特別な意味を持ち始めています。
利便性や手軽さを追求するなら、完全ワイヤレスイヤホン(TWS)に軍配が上がるのは明白です。
ノイズキャンセリング機能やケーブルレスの快適さは、日常のストレスを軽減してくれます。
しかし、私たちはなぜ、未だにあえてケーブルに縛られることを選ぶのでしょうか。
それは、空気の振動を電気信号に変え、それを余すことなく鼓膜へと届ける過程に、無線転送では決して到達できない「純度」と「熱量」、そして「実在感」が存在するからです。圧縮されたデータが飛び交う空中の波ではなく、物理的な銅線を通って流れ込む音には、魂を揺さぶる何かが宿ります。
日本のロックシーンを牽引し続けるバンド「凛として時雨」のドラマー、ピエール中野氏が情熱を注ぎ込む「ピヤホン」シリーズ。
その最新作にして、ブランドの最高到達点となる「有線ピヤホン5(Hi-Unit 003-pnk)」がついにそのベールを脱ぎました。
これまでのピヤホンシリーズは、「低音の暴力」とも称される圧倒的な迫力で、ロックファンの心を鷲掴みにしてきました。
しかし、今回の「5」は単なるマイナーチェンジやアップデートではありません。
静寂と轟音のコントラスト、アーティストの微かな息遣い、そしてライブハウスの床を伝わる振動までも描き出す、真の「フラッグシップ」としての品格を纏って登場しました。
価格は5万円台後半。
エントリークラスのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)や、ミドルレンジのスマートフォンが買えてしまう価格帯です。
「たかが有線イヤホンにそこまで出す価値があるのか?」「過去のモデルと何が決定的に違うのか?」と、購入ボタンの前で躊躇している方も多いはずです。
この記事では、オーディオブログを運営し、数々のハイエンドイヤホンを聴き込んできた筆者が、有線ピヤホン5を100時間以上じっくりと使い込み、その音質、デザイン、使い勝手を徹底的にレビューします。
カタログスペックの解説にとどまらず、競合機種との緻密な比較や、リケーブルによる変化、さらにはゲームや映画での使用感など、実際に使い込んで初めて見えてきた「真の価値」を、余すことなくお伝えします。
結論から申し上げましょう。
このイヤホンは、「ライブハウスの最前列で浴びる音」を、いつでもどこでも持ち歩きたいと願う人にとって、人生のサウンドトラックを激変させる「劇薬」となり得る存在です。
- Hi-Unit 「有線ピヤホン5」の概要と進化点
- 【音質レビュー】ライブ会場の最前列へ誘う「有線ピヤホン5」のサウンド
- Hi-Unit 「有線ピヤホン5」の徹底比較!他機種・ライバル機との違いを検証
- Hi-Unit 「有線ピヤホン5」を使用した私の体験談・レビュー
- Hi-Unit 「有線ピヤホン5」に関するQ&A
- スマートフォン(iPhoneやAndroid)に変換アダプタで直挿ししても、十分な音質を楽しめますか?
- 「ロックに最適」と聞きますが、バラードや女性ボーカル曲には合いませんか?
- リケーブル(ケーブル交換)を考えていますが、バランス接続の効果はありますか?
- FPSなどのゲームや、映画鑑賞にも使えますか?
- 開封直後は音が硬いと感じました。エージング(慣らし運転)は必要ですか?
- 有線ピヤホン3と迷っています。2万円近い価格差分の価値はありますか?
- 4万円クラスの高級ワイヤレスイヤホン(SONYやBoseなど)よりも音は良いですか?
- 音楽だけでなく、ASMRやシチュエーションボイスには向いていますか?
- 付属のイヤーピースが合わない場合、おすすめの他社製イヤーピースはありますか?
- 高音やサ行(刺さる音)が耳に痛くないか心配です。聴き疲れしますか?
- 筐体の「金継ぎ」デザインの金色の部分は、使っているうちに剥げませんか?
- Hi-Unit 「有線ピヤホン5」レビューのまとめ
Hi-Unit 「有線ピヤホン5」の概要と進化点

ピエール中野氏監修!シリーズ最高傑作の「フラッグシップ」
「有線ピヤホン」シリーズは、これまでポータブルオーディオ界に旋風を巻き起こしてきました。
その第5弾となる本作「Hi-Unit 003-pnk」は、Hi-Unitのブランドラインナップにおいて、名実ともにハイエンド・フラッグシップモデルに位置づけられます。
過去のモデル(特に有線ピヤホン1や2、そして大ヒットした3)は、クラウドファンディングで驚異的な支援額を集めるなど、話題性と勢いが先行していた側面がありました。
それは「アーティストグッズ」としての成功例とも言えました。
しかし、今回の「5」は違います。
開発期間を十分に設け、既存のファン層だけでなく、耳の肥えたオーディオ愛好家(オーディオファイル)をも唸らせる「純粋なオーディオ機器としての完成度」で真っ向勝負を挑んできています。
- 開発の核心的テーマ:
ピエール中野氏がドラマーとして求める「ドラムのキックやスネアの打撃音のリアリティ」と、一人のリスナーとして求める「ボーカルの艶やかさ・感情表現」の完全な両立。 - ターゲット層の拡大:
従来のロック、ライブ音源を愛するファンに加え、解像度や分離感を重視するハイエンドオーディオの入り口に立つユーザーまでを射程に捉えています。
単なるコラボモデルの枠を完全に超越し、一つのオーディオブランドの顔として君臨する。
それが有線ピヤホン5の立ち位置です。
基本スペックと独自の新ドライバー技術
有線ピヤホン5のサウンドを決定づけているのは、心臓部であるドライバーユニットの革新的な技術です。
今回は、マニアックな音作りと技術力で知られる中国のオーディオブランド「Daruma Audio(ダルマオーディオ)」との技術協力により、非常にユニークかつ高度な機構が採用されました。
| 項目 | スペック詳細 | 解説 |
| モデル名 | Hi-Unit 003-pnk (有線ピヤホン5) | シリーズ第5弾を示すフラッグシップ機 |
| ドライバー | φ10mm ダイナミックドライバー | 振動板にはベリリウムコーティングドームを採用 |
| インピーダンス | 16Ω | スマホでも音量は取れるが、DAP推奨の低抵抗 |
| 出力音圧レベル | 105dB | 高感度で、微細な信号も音に変える能力が高い |
| 再生周波数帯域 | 20Hz – 20,000Hz | 可聴域をフルカバーする広帯域再生 |
| コネクタ | 2Pin (0.78mm) | リケーブル市場で最も標準的な規格を採用 |
| ケーブル | 銀メッキOFC (無酸素銅) | 伝導率と音の暖かみを両立するハイブリッド素材 |
| 重さ | 片側 約6.5g | 金属筐体としては標準的で負担の少ない重量 |
【注目の技術ポイント1:空中配線技術によるレスポンスの極致】
このモデルの最大のトピックは、ドライバーへの通電方法にあります。
通常、ダイナミックドライバーのボイスコイルから伸びるリード線は、振動板に接着されて固定されます。
しかし、この接着剤やリード線の重さが、微細な振動を妨げる「抵抗」となっていました。
有線ピヤホン5では、Daruma Audioの「Vento Conductor」シリーズ等で見られる技術を応用し、リード線を振動板に接着せず、空中に引き出すような特殊な構造(空中配線)を採用していると言われています。
これにより、振動板は物理的な足枷から解き放たれ、電気信号に対して瞬時に反応することが可能になりました。
これが、後述する「立ち上がりが速く、余韻がスパッと消えるキレのある低音」の正体です。
【注目の技術ポイント2:ベリリウムコーティング】
ドーム部分に採用されたベリリウムは、音の伝播速度が非常に速い金属素材です。
これにより、高音域における「分割振動(音が歪む現象)」を抑制し、クリアで伸びやかな高音を実現しています。
硬い素材でありながら軽量であるため、細かい音の描写に優れているのが特徴です。
「金継ぎ」をモチーフにしたデザインの美学
パッケージを開封し、本体を手に取った瞬間に感じるのは、ガジェットというよりは圧倒的な「工芸品」としての美しさです。
筐体はマットな質感のブラックで統一されており、そのフェイスプレートには、不規則に走るゴールドのラインがあしらわれています。
これは日本の伝統技法「金継ぎ(きんつぎ)」をモチーフにしたデザインです。
金継ぎとは、割れたり欠けたりした陶器を漆と金粉を使って修復し、その傷跡を隠すのではなく、新たな「景色」として愛でる、日本独自の美意識に基づく技法です。
このデザインには、以下のような深いメッセージが込められているように感じ取れます。
- 再生と肯定:「壊れても直し、長く愛用する」というサステナビリティと愛着。
- 歴史の受容:「過去の経験や傷を含めて、現在の自分を肯定する」という、ピエール中野氏の人生哲学や音楽観。
派手なロゴが主張するのではなく、黒の中に金が静かに輝くその様は、ステージ上の暗闇で照明を浴びる楽器のような緊張感と色気を放っています。
所有する喜びを視覚的にも満たしてくれる、非常に満足度の高いビルドクオリティです。
【音質レビュー】ライブ会場の最前列へ誘う「有線ピヤホン5」のサウンド

ここからは、実際にAstell&KernのDAP(SP3000など)や、iPhone 15 Pro+スティック型DAC(FiiO KA17、iBasso DC-Elite等)を使用し、100時間以上のエージング(慣らし運転)を行った上での詳細な音質レビューをお届けします。
一言で表現するなら、「暴力的なまでの熱量と、ガラス細工のような繊細な美音が同居する、奇跡のサウンド」です。
脳を揺らす圧倒的な低域の深みと重厚感
有線ピヤホンの代名詞とも言える「低音」ですが、今回の進化はこれまでの比ではありません。
単に「量が多い」だけの低音とは次元が異なります。
- サブベースの沈み込み(超低域):
「ドゥーン」という地響きのような超低域が、鼓膜だけでなく、頭蓋骨を直接揺らすように深く沈み込みます。
EDMや映画のサントラを聴くと、まるで映画館のサブウーファーを耳元に置いたかのような重力感を感じます。 - バスドラムのアタック感(中低域):
ドラマー監修の面目躍如たるポイントです。
バスドラムのビーターがヘッドを叩く瞬間の「ドムッ」「バシッ」という空気の塊が、圧倒的な実体感を持って迫ってきます。
ベースの弦が弾かれる指のタッチまで見えるようです。 - 驚異的な制動力(トランジェント):
特筆すべきは、その「キレ」です。
一般的に低音が豊かなイヤホンは、音が膨らんでボワつき、次の音に被ってしまう(マスキング現象)ことが多々あります。
しかし、有線ピヤホン5は前述の新ドライバー技術により、音が鳴った瞬間にピタッと止まります。
高速なツーバス連打やスラップベースの連奏でも一音一音が団子にならず、粒立ちよく聴き取ることができるのです。
埋もれないボーカルと鮮明な中高域の分離感
強烈なドンシャリ(低音と高音が強調された音)傾向のイヤホンで最も懸念されるのが、「ボーカルが奥に引っ込んでしまう(中域の埋もれ)」現象です。
しかし、有線ピヤホン5はこの課題を見事に解決しています。
- ボーカルのポジショニング:
低音の壁が背後にそびえ立つ中、ボーカルは一歩前に出て、非常に近い距離感で歌っているように聞こえます。
女性ボーカルの繊細なブレス(息継ぎ)や、男性ボーカルの喉の震え、リップノイズに至るまで、生々しいリアリティを持って描写します。 - 高域の煌めきと分離感:
ベリリウムコーティングの効果により、高域は非常に伸びやかです。
シンバルやハイハットの金物音は、「シャリシャリ」とした安っぽい音ではなく、「シャン!」「チン!」という金属本来の硬質でクリアな響きを持っています。
刺さる一歩手前の絶妙なエッジ感が、楽曲にスリリングな緊張感と華やかさを与えています。
ロック・ライブ音源との相性と空間表現力
このイヤホンの真骨頂は、やはり「ライブ音源」の再生において発揮されます。
音場(サウンドステージ)は、左右に無限に広がるようなタイプではありません。
むしろ、ライブハウスやレコーディングスタジオの密度感を再現するような、濃密な奥行きと立体感に優れています。
観客の「ウォーッ」という歓声、アンプから漏れる「ジーッ」というノイズ、そして演奏が始まった瞬間の爆発的な音圧。
それらが渾然一体となって押し寄せてくる没入感は、他の分析的なモニターイヤホンでは決して味わえない「熱狂」そのものです。
ジャンル別相性診断:
- ◎ ロック / メタル / ラウド系:最強です。ギターのディストーションの粒立ちと、ベースのうねりが最高に気持ち良い。
- ◎ ライブ音源全般:会場の空気感まで再現します。
- ◎ EDM / ヒップホップ:重厚なビートを楽しみたいなら最適解の一つ。
- ◯ J-POP / アニソン:ボーカルが際立つため、意外なほどマッチします。
- △ クラシック(大編成):低音が支配的になりすぎるきらいがあり、繊細なホールの響きを求めるなら他の選択肢も検討の余地あり。
Hi-Unit 「有線ピヤホン5」の徹底比較!他機種・ライバル機との違いを検証

有線ピヤホン5の立ち位置をより明確にするため、過去の名機や、同価格帯の強力なライバル機との比較検証を行いました。
有線ピヤホン3・4(過去モデル)からの正統進化
ピヤホンシリーズからの乗り換えを検討している方のために、歴代モデルとの違いを整理します。
| 特徴 | 有線ピヤホン3 | 有線ピヤホン4 (参考) | 有線ピヤホン5 |
| 当時の価格帯 | 3〜4万円台 | 5万円台(FitEarコラボ) | 5万円台後半 |
| 低音の質 | 重く、太い、少し緩め | バランス型、モニター寄り | 深く、重く、かつ速い |
| 高音の質 | 刺激的で華やか | 滑らかで聴きやすい | 鮮明かつ分離が良い |
| 音の傾向 | 分かりやすいドンシャリ | 全帯域フラット寄り | 超高解像度ドンシャリ |
- vs 有線ピヤホン3:
「3」も名機ですが、「5」と比較すると、「5」の方が「音の密度」と「解像度」が明らかに一段階上です。
「3」は勢いで聴かせるタイプでしたが、「5」は勢いに加えて「音の質感」まで緻密に描写します。
特に低音の締まり具合は別物です。 - vs 有線ピヤホン4:
「4」はプロ用モニターメーカーFitEarとのコラボということもあり、整ったモニターライクな音が特徴でした。
対して「5」は、再び「ピエール中野らしさ(ロックな楽しさ)」に回帰しつつ、オーディオ性能を極限まで底上げした印象。
リスニングの楽しさなら間違いなく「5」です。
HiBy「Project Ace」など同価格帯イヤホンとの比較
5〜6万円クラス(ミドルハイクラス)には、世界中のメーカーから強力なライバルが登場しています。
- vs HiBy × FAudio「Project Ace」:
同時期に話題となったProject Aceは、より広大な音場と、自然で滑らかな鳴り方が特徴です。
クラシックやジャズを優雅に楽しみたいならProject Aceに分があります。
しかし、脳汁が出るような興奮や、ロックの初期衝動を求めるなら、圧倒的に有線ピヤホン5です。
キャラクターがはっきり分かれるため、使い分けも可能です。 - vs FiiO FHシリーズ(FH7sなど):
FiiOなどのハイブリッド型(BAドライバー+ダイナミックドライバー)は、機械的な正確さと、音の分離感が強みです。
対して、有線ピヤホン5(シングルダイナミック)は、クロスオーバー(音の継ぎ目)のない音のつながりの良さと、低音の自然な厚みで勝負しています。
スマホ+DAC環境でのパフォーマンス検証
「高価なDAP(音楽プレーヤー)を持っていないとダメなのか?」という疑問に対しては、「鳴るけれど、本領発揮にはDACが必須」と答えます。
- スマホ直挿し(変換アダプタ使用):
音量は十分に取れますし、迫力も楽しめます。
しかし、低音が少し膨らんで支配的になり、高域の繊細な表現が隠れてしまいがちです。
ポテンシャルの60%程度しか出せていない印象です。 - スティック型DAC使用(例:FiiO KA, iBasso DC, L&P Wシリーズなど):
世界が激変します。
駆動力のあるDACを通すことで、低音が「ドムッ」と引き締まり、音のベールが一枚剥がれたようにクリアになります。
特に4.4mmバランス接続をした時の空間の広がりは感動的です。
チップ別で言うなら、ESS製のDAC(クッキリ系)ならよりソリッドに、AKM(旭化成)製のDAC(艶やか系)ならボーカルの艶が増します。
有線ピヤホン5の真価を味わうなら、最低でも1万円前後のスティックDACの導入を強くおすすめします。
Hi-Unit 「有線ピヤホン5」を使用した私の体験談・レビュー

ここからは、私が実際にオーナーとして有線ピヤホン5と過ごした日々の中で感じた、リアルな体験談をお届けします。
数値やスペックではない、肌感覚のレビューです。
開封して最初に感じた高級感と付属品の質
パッケージは黒を基調としたシックなデザインで、蓋を開けると黒いクッションに鎮座する筐体の「金継ぎ」模様が目に飛び込んできます。
光の当たり方で表情を変えるその姿は、単なる工業製品というより、作家が作ったアクセサリーのような佇まいです。
付属品も抜かりがありません。
特にイヤーピースは、装着感や音質の異なる数種類(シリコンタイプ、フォームタイプなど)が同梱されており、自分の耳に合うものを探すプロセス自体が楽しい時間でした。
付属のキャリングケースも実用的で、大切なイヤホンをしっかり保護してくれます。
ケーブル自体もしなやかで取り回しが良く、タッチノイズ(衣擦れ音)が少ない点も評価できます。
実際の装着感:長時間使用での耳への負担をチェック
筐体は金属製(アルミニウム合金などを想定)で、プラスチック製の安価なイヤホンに比べると、手に持つとずっしりとした重み(片側約6.5g)を感じます。
「重くて長時間着けていると疲れるのでは?」と少し不安でしたが、実際に装着してみると、その懸念は杞憂に終わりました。
耳のくぼみにピタッと収まるエルゴノミクスデザインが優秀で、重さが一点に集中せず、耳全体に分散されます。
また、ケーブルを耳の後ろに回す「シュア掛け」スタイルのおかげで、ケーブルの重みも軽減されます。
実際に新幹線での移動中など、2〜3時間の連続リスニングテストを行いましたが、耳が痛くなることはありませんでした。
さらに、ヘドバンをするような激しい動きをしてもズレにくい装着安定性は、さすがライブ仕様と言えるでしょう。
リケーブルによる音質変化の可能性を探る
有線イヤホンの醍醐味である「リケーブル(ケーブル交換)」も積極的に試してみました。
コネクタは汎用性の高い2Pin(0.78mm)なので、選択肢は無限大です。
- 純銀線ケーブルへの変更:
高域の伸びがさらに良くなり、女性ボーカルのアニソンなどがより煌びやかでクリスタルな響きになりました。
しかし、ピヤホン特有の泥臭い低音の厚みは少しスッキリしてしまい、「綺麗すぎる」音になる印象も。 - 純銅線(高純度銅)への変更:
低音の厚みがさらに増し、ウォームで濃厚なサウンドに。
ジャズや古いロックには合いますが、現代的なポップスでは少し重すぎるかもしれません。 - 4.4mmバランス接続(純正バランスケーブル or サードパーティ製):
これが最も効果的でした。
バランス接続にすることで、左右のセパレーション(分離感)が向上し、音が団子にならず、一つ一つの楽器が定位置で見えるようになります。
有線ピヤホン5+4.4mmバランス接続は、個人的に最強の組み合わせだと確信しました。
様々なジャンルを聴き込んで分かった得意・不得意
100曲以上のプレイリストを聴き込みましたが、やはり「凛として時雨」の楽曲とのシンクロ率は異常なレベルです。
TKの突き抜けるようなハイトーンボイス、345のゴリゴリとしたベース、そしてピエール中野氏の手数の多いドラム。これらが一切喧嘩することなく、完璧なバランスで再生されます。
「この曲は、こういう音で聴いてほしかったんだ」という制作者の意図がダイレクトに伝わってくるようです。
また、意外な伏兵だったのが「ゲーミング用途」です。
FPSゲーム(Apex LegendsやValorantなど)で使用してみたところ、低音の足音が非常に聞き取りやすく、かつ銃声の方向も定位感が良いため明確に分かりました。
爆発音の迫力は映画館並みで、没入感が凄まじいです。音楽鑑賞だけでなく、エンタメ全般を底上げしてくれるポテンシャルがあります。
一方で、静寂を活かしたアコースティックなジャズや、繊細なニュアンスが求められるクラシックの小編成などは、低音の主張が強すぎて、少し雰囲気が合わない場面もありました。
決して音が悪いわけではありませんが、「万能優等生」というよりは、「得意分野で120点、いや200点を叩き出す一点突破型」という印象です。
所有欲を満たすデザインとビルドクオリティへの感想
普段使いしていて嬉しくなるのは、ふとした瞬間に鏡などで耳元を見た時です。
ブラック×ゴールドのデザインは、決して子供っぽくなく、大人のファッションアイテムとしても非常に優秀です。
コネクタ部分やプラグ部分の加工精度も高く、ケーブルを抜き差しする時の「カチッ」とハマる感触には、安価な中華イヤホンにはない信頼感があります。
指紋が目立ちにくいマット塗装も、実用面で高評価です。
体験談の総括
このイヤホンを使っていて最も強く感じたのは、「音楽を聴く時間が長くなった」ということです。
これまで何百回と聴いてきたはずのプレイリストから、「こんなベースラインが裏で鳴っていたのか」「ここでハイハットが絶妙に開いていたのか」という新しい発見が次々と出てくる。
そのワクワク感が、私を音楽に釘付けにしました。
通勤時間の電車の中が、一瞬にしてライブハウスに変わる。
そんな魔法のような体験を、有線ピヤホン5は提供してくれました。
Hi-Unit 「有線ピヤホン5」に関するQ&A

Hi-Unit 「有線ピヤホン5」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
スマートフォン(iPhoneやAndroid)に変換アダプタで直挿ししても、十分な音質を楽しめますか?
音は十分に出ますが、ポテンシャルを引き出すならDACの導入を強く推奨します。
有線ピヤホン5はインピーダンスが16Ωと低く、スマホでも音量は取りやすい設計です。しかし、このイヤホンの持ち味である「深い低音のキレ」や「高域の微細な表現」は、スマホ内蔵のアンプでは鳴らしきれない場合があります。 数千円〜1万円クラスのスティック型DAC(USB-DAC)を挟むだけで、膜が取れたように音がクリアになります。
「ロックに最適」と聞きますが、バラードや女性ボーカル曲には合いませんか?
女性ボーカルやバラードとも相性は良好です。
確かに低音の迫力が特徴的ですが、ボーカル(中域)が埋もれないチューニングが施されています。特に女性ボーカルの息遣いや艶やかさは、ベリリウムコーティングドームの効果で非常に美しく再生されます。ただし、低音が支配的なため、「完全にフラットな音」や「静寂を重視するクラシック」を好む方には、少し演出過剰に感じるかもしれません。
リケーブル(ケーブル交換)を考えていますが、バランス接続の効果はありますか?
非常に高い効果があり、最もおすすめのカスタマイズです。
4.4mmなどのバランス接続にすることで、左右の音の分離感が向上し、音場(空間)が広がります。有線ピヤホン5の濃厚な低音に「見通しの良さ」が加わり、より立体的なサウンドを楽しめます。コネクタは汎用的な2Pin(0.78mm)なので、多くのケーブルが使用可能です。
FPSなどのゲームや、映画鑑賞にも使えますか?
実はゲーミングや映画鑑賞に非常に向いています。
低域の解像度が高いため、FPSでは「足音」が聞き取りやすく、定位感(音の方向)も優秀です。また、映画のアクションシーンでは、映画館のサブウーファーのような迫力を味わえます。音楽鑑賞以外でも、没入感を高めるデバイスとして活躍します。
開封直後は音が硬いと感じました。エージング(慣らし運転)は必要ですか?
はい、100時間程度のエージングをおすすめします。
搭載されているダイナミックドライバーの振動板やエッジが馴染むまで、少し時間がかかる傾向があります。開封直後は高音が刺さったり、低音が少し暴れることがありますが、鳴らし込むことで角が取れ、繋がりが滑らかなサウンドへと変化します。
有線ピヤホン3と迷っています。2万円近い価格差分の価値はありますか?
「音の解像度」と「質感」にこだわるなら、間違いなく価値があります。
有線ピヤホン3は「勢いと迫力」が魅力の名機ですが、有線ピヤホン5はそこに「緻密さ」と「音の立ち上がりの速さ」が加わっています。 ドラムで言えば、3は「ドーン!」という爆発音を楽しむもの、5は「バスドラムの皮の震えや、ビーターが当たる瞬間の硬さ」まで見えるものです。より深く音楽に没入したいなら、5を選ぶ価値は十分にあります。
4万円クラスの高級ワイヤレスイヤホン(SONYやBoseなど)よりも音は良いですか?
「音の密度」と「情報量」において、有線ピヤホン5が圧倒的に上回ります。
ワイヤレスイヤホンは便利ですが、音声データを圧縮して転送するため、どうしても一部の情報が欠落します。有線ピヤホン5はロスレス(無圧縮)で音を届けるため、アーティストが録音したそのままの空気感や、微細な余韻まで再生できます。「利便性」を捨ててでも「感動」を取りたいなら、こちらに軍配が上がります。
音楽だけでなく、ASMRやシチュエーションボイスには向いていますか?
「声の距離」が近いため、ボイスコンテンツとの相性は抜群です。
ボーカルが耳元で鳴るチューニングなので、ASMRや声優のシチュエーションボイスを聴くと、まるで耳元で囁かれているようなゾクゾクする臨場感を味わえます。ただし、低音が強いため、環境音(雨の音など)がメインのASMRでは低音が響きすぎて眠れないかもしれません。
付属のイヤーピースが合わない場合、おすすめの他社製イヤーピースはありますか?
「AZLA SednaEarfit」シリーズや「SpinFit」シリーズがおすすめです。
有線ピヤホン5は低音が強力なため、密閉度が高まるイヤーピースと相性が良いです。
- AZLA SednaEarfit XELASTEC II:体温で変形して吸い付く素材。低音を逃さず、遮音性が最強クラスになります。
- SpinFit W1:耳の奥まで入りやすく、高音の伸びが良くなります。 ノズルの太さは標準的なので、多くの市販イヤーピースが装着可能です。
高音やサ行(刺さる音)が耳に痛くないか心配です。聴き疲れしますか?
刺激はありますが、不快な「刺さり」は抑えられています。ただし、濃厚なので休憩は必要です。
高域はかなりクリアに出ますが、ベリリウムコーティングのおかげで耳障りなピーク(歪み)は抑えられています。ただ、音の密度が濃く、情報量が凄まじいため、BGMとして聞き流すよりは「ガッツリ音楽と対峙する」タイプです。長時間聴き続けると、脳が音の情報処理で疲れるという贅沢な悩みが出るかもしれません。適度な休憩を挟んで楽しんでください。
筐体の「金継ぎ」デザインの金色の部分は、使っているうちに剥げませんか?
通常使用では剥げにくい加工ですが、硬いものとの接触には注意してください。
しっかりとした塗装・コーティングが施されていますが、金属筐体同士がカチャカチャとぶつかったり、鍵などの硬いものと一緒にポケットに入れたりすると、傷がついたり塗装が欠ける可能性があります。持ち運ぶ際は、必ず付属のケースや、左右の筐体が接触しないタイプのケースに収納することをおすすめします。
Hi-Unit 「有線ピヤホン5」レビューのまとめ

Hi-Unit 「有線ピヤホン5」は、音質、デザイン、使い勝手、コストパフォーマンスなどの面で、非常に高い満足感を提供するイヤホンです。
特に、ピエール中野氏とのコラボレーションによるこの製品は、彼の音楽経験やこだわりが反映された「音楽愛好者向けのフラッグシップモデル」として、多くの面で秀逸な体験を与えてくれます。
ここでは、「有線ピヤホン5」の特長と魅力を振り返りつつ、総評をお伝えします。
有線ピヤホン5のメリット:唯一無二の没入感
- 唯一無二の重低音:他の追随を許さない、深く、速く、重い低音再生能力。
- 解像度の高さ:低音に埋もれず、中高域もしっかりと主張するバランスの良さ。
- デザイン性:「金継ぎ」モチーフの高級感あふれるルックスと所有欲。
- リケーブル対応:好みに合わせてケーブルを変え、音をカスタマイズできる拡張性。
有線ピヤホン5のデメリット:購入前に知るべき点
- 再生環境を選ぶ:スマホ直挿しでは真価を発揮しきれないため、DAC等の追加投資が望ましい。
- ジャンルの偏り:ロックやEDMには最高だが、完全フラットなモニターサウンドを求める人には低音が過多に感じる可能性がある。
- 価格:5万円台後半という価格は、有線イヤホン初心者には心理的なハードルが高い。
このイヤホンが「絶対におすすめ」な人
以下のような方には、自信を持っておすすめします。
- ロック、メタル、ライブ音源をこよなく愛する人:人生が変わるレベルで感動します。
- 「低音」の質にこだわりがあり、量感だけでなくキレも求める人:サブベースの質感は特筆ものです。
- ピエール中野氏のファンであり、氏が理想とする音を共有したい人:アーティストとの繋がりを感じられるアイテムです。
- 人とは違うデザインのイヤホンを所有したい人:金継ぎデザインは唯一無二です。
価格に見合う価値はあるか?コスパの最終判断
57,200円(税込・執筆時点)という価格は、一般的に見れば高額です。
しかし、ハイエンドオーディオの世界では、このクオリティの音が10万円を超える機種でしか聴けないことも珍しくありません。
独自ドライバー技術、ベリリウムコーティング、そしてこの絶妙なチューニングの完成度を考えれば、コストパフォーマンスは決して悪くありません。
むしろ、この音をこの価格で出してくれたことに感謝したいレベルです。
「音楽に没頭して、日常のストレスを吹き飛ばしたい」。その体験への投資と考えれば、十分に元は取れるでしょう。
リセールバリュー(再販価値)も、ピヤホンシリーズは人気が高いため比較的安定しており、その点でも安心感があります。
購入後の楽しみ方とメンテナンスのポイント
購入後は、まずイヤーピースのフィッティングを徹底してください。
低音の質は「耳への密閉度」で決まります。付属のものだけでなく、SpinFitやAZLAなどのサードパーティ製イヤーピースを試すのも一興です。
自分の耳に完璧にフィットした瞬間、低音が覚醒します。
また、DAPやポータブルアンプを変えることで、音の表情がガラリと変わります。
将来的に上流機材(プレイヤー側)をグレードアップしていく楽しみも、このイヤホンは受け止めてくれる懐の深さを持っています。
長く使うために、使用後は乾いた布で皮脂を拭き取るなどのメンテナンスも忘れずに。
有線ピヤホン5 レビューの総評
有線ピヤホン5は、単なる音楽を再生するためのガジェットという枠を大きく超え、アーティストがステージ上で感じている熱狂や衝動をそのまま鼓膜へと直結させる、極めて感情的なデバイスでした。
これまでのシリーズが築き上げてきた「脳を揺らすような低音の迫力」という絶対的なアイデンティティを継承しつつ、フラッグシップモデルにふさわしい繊細な解像度と静寂の表現力を手に入れたことで、その音質は完全に新しい次元へと到達しています。
5万円台後半という価格は、決して気軽に手が出せる金額ではないかもしれません。
しかし、このイヤホンを通して聴く音楽には、今まで聞き逃していたベースの指使いやドラムの空気感、そしてボーカリストの微細な息遣いまでもが鮮明に浮かび上がり、聴き慣れたはずのプレイリストがまるで初めて聴く曲のような新鮮な輝きを放ち始めます。
利便性が優先されがちな現代において、あえてケーブルを繋ぎ、純度の高い音に浸る時間は、何にも代えがたい贅沢な娯楽と言えるでしょう。
もしあなたが、理屈や数値上のスペックではなく、魂を震わせるような音楽体験を求めているのであれば、有線ピヤホン5は間違いなくその期待に応え、あなたの音楽人生をより豊かで色鮮やかなものへと変えてくれる最高のパートナーとなります。
さあ、日常の喧騒を遮断し、あなただけの特等席で、ライブハウスの最前列でしか味わえないあの熱狂に身を委ねてみてください。


