音楽を聴くスタイルがスマートフォン中心になって久しい現代。
「わざわざ音楽専用のプレーヤー(DAP)を持ち歩く意味はあるのか?」という問いに対し、FiiOが驚くべき回答を提示しました。
それが、エントリークラスの常識を覆すDAP、FiiO JM21です。
これまで、3万円前後のDAPといえば「動きが遅いのは我慢」「ストリーミングは非対応(または激重)」「3.5mmシングルエンドのみ」といった妥協が当たり前でした。
音質を求めてドングルDACをスマホにぶら下げるスタイルが定着していましたが、それも「スマホのバッテリー消費」や「ケーブルの煩わしさ」という課題を抱えています。
FiiO JM21は、それらの課題を全て過去のものにします。 Android 13による高いアプリ互換性、Snapdragon 680による高速処理、そしてオーディオマニア待望の4.4mmバランス接続への対応。
これらを実売3万円以下という「価格破壊」レベルで実現しました。
しかし、我々ユーザーが真に知りたいのはカタログスペックの数字ではありません。
「CS43198デュアルDACは本当に感動できる音なのか?」
「プラスチックボディの質感は所有欲を満たせるのか?」
「2400mAhのバッテリーで本当に1日持つのか?」
この記事では、ポータブルオーディオ機器のレビュー経験豊富な筆者がFiiO JM21を実際に購入し、2週間徹底的に使い込んだ実体験をもとに、その実力を丸裸にします。
メリットだけでなく、コストダウンの影に見え隠れするデメリットや、長期使用で見えてくる課題まで、忖度なしで検証していきます。
- FiiO 「JM21」のスペック検証:3万円切りで実現した「価格破壊」の正体
- FiiO 「JM21」の音質徹底レビュー:CS43198デュアルDACと4.4mmバランスの実力
- FiiO 「JM21」の操作性と機能性:Snapdragon 680搭載Android DAPの使い心地
- FiiO 「JM21」を使用した私の体験談・レビュー
- FiiO 「JM21」に関するQ&A
- Amazon MusicやApple Musicなどのストリーミングアプリは使えますか?
- 3.5mm接続と4.4mmバランス接続で、音質に大きな違いはありますか?
- 内蔵ストレージが32GBと少ないですが、microSDカードは必須ですか?
- スマホにドングルDACを繋ぐのと、JM21を使うのでは何が違いますか?
- バッテリーの持ちはどうですか?充電しながら使っても大丈夫ですか?
- Bluetoothイヤホンで聴く場合も高音質になりますか?
- 初期のセットアップで気をつける点はありますか?
- 付属品にケースは含まれていますか?
- 電源オンからの起動時間が遅いと聞きましたが、実際どうですか?
- PCと接続してUSB DACとして使えますか?遅延はありますか?
- 長時間使っていると本体は熱くなりますか?
- なぜこれほど安いのですか?どこか大きな欠点はありますか?
- 音質の微調整(イコライザー)はできますか?
- 動画視聴やゲームもできますか?画面は綺麗ですか?
- 防水・防塵機能はありますか?
- FiiOのBluetoothレシーバー「BTR17」と迷っています。どちらが良いですか?
- FiiO 「JM21」レビューのまとめと総評
FiiO 「JM21」のスペック検証:3万円切りで実現した「価格破壊」の正体

まず、この製品がなぜこれほどまでに騒がれているのか、その技術的背景とコストパフォーマンスの異常さを紐解いていきましょう。
Snapdragon 680とAndroid 13がもたらすサクサクの操作感
DAPにおける「SoC」の重要性は、年々高まっています。
特にApple MusicやAmazon Musicなどのストリーミングサービスを主力にする場合、アプリの起動速度、楽曲検索のレスポンス、オフライン保存の処理速度は、すべてSoCの処理能力に依存するからです。
これまでのエントリー〜ミドル帯DAPは、コストを抑えるために数世代前のSoC(Snapdragon 430や660など)を採用することが多く、最新の重いアプリを動かすとカクつきや発熱が発生していました。
特にSnapdragon 660は一時期のスタンダードでしたが、製造プロセスが14nmと古く、電力効率の面で不利でした。
しかし、JM21はQualcomm Snapdragon 680を採用しました。
- プロセスルール:6nm(省電力性が非常に高い)
- CPUコア:8コア(Kryo 265 / 最大2.4GHz)
- RAM:3GB
特筆すべきは「6nmプロセス」である点です。微細化されたプロセスルールにより、同等の処理能力でも消費電力と発熱を大幅に抑えられます。
これはバッテリー容量に制約がある小型DAPにとって決定的な恩恵です。
実際に操作してみると、その差は歴然です。
例えば、「Apple Music」でハイレゾロスレス音源をライブラリに追加し、高速でスクロールした際の描画追従性。「Amazon Music」のような比較的動作の重いアプリでの検索スピード。
これらが最新のハイエンドスマートフォンと比べても遜色のないレベルで動作します。
キーボードの入力遅延も皆無で、「音楽を聴こうとしたのに操作でイライラして聴く気をなくす」というDAPあるあるが見事に解消されています。
さらに、OSにAndroid 13を採用している点も見逃せません。多くのDAPがいまだにAndroid 10や11に留まる中、最新に近いOSを搭載することは、セキュリティ面だけでなく、アプリのサポート期間が長く続くことを意味します。
「買ったけれど、数年後にSpotifyの最新版が動かなくなった」という悲劇を回避できる安心感は、スペック表以上の価値があります。
フルバランス設計とデュアルDAC構成が生む本格オーディオ性能
「3万円以下だし、音質回路は簡略化されているだろう」と予想していましたが、良い意味で裏切られました。内部回路は上位機種のノウハウを惜しみなく投入した、驚くほど本格的な構成です。
■ DACチップ:Cirrus Logic CS43198 × 2基
FiiOはここで、ESS系(カリッとした解像度重視)でもAKM系(艶と響き重視)でもなく、Cirrus Logicのフラッグシップ級チップCS43198を選択しました。
このチップは「アナログライクで聴き疲れしない音」「低消費電力」に定評があり、ポータブルオーディオ界隈では非常に人気のある品番です。
これを左右独立で2基搭載(デュアルDAC)することで、左右の信号の混線(クロストーク)を物理的に排除し、S/N比(信号対雑音比)を極限まで高めています。
■ オペアンプ:SGMICRO SGM8262 × 2基
DACで作られた信号を増幅するアンプ部にも、妥協はありません。
SGMICRO製の高出力オペアンプSGM8262をデュアルで搭載しています。
これにより、以下の高出力を実現しています。
- バランス出力(4.4mm):最大 700mW (32Ω時)
- シングルエンド(3.5mm):最大 245mW (32Ω時)
- S/N比:130dB以上
700mWという数値は、USB給電に頼る「ドングルDAC」では物理的に到達困難な領域です。
独立したバッテリーからクリーンな電源を供給できるDAPだからこそ実現できる、深みのあるパワーと言えます。
これにより、高インピーダンスのヘッドホンでも余裕を持って駆動させることが可能になりました。
156gの軽量ボディと質感:プラスチック筐体は許容範囲か?
JM21のもう一つの強力な武器は、その「軽さ」です。
- 重量:約156g
- サイズ:約120.7 × 68 × 13mm
近年のDAPは高音質化の代償として「レンガ」のように重くなる傾向にありました(300g超えも珍しくありません)。
その中でJM21は、iPhone 13 miniやiPhone SEに近い軽さを実現しています。
質感については、正直に言えばコストカットの最大のポイントです。
側面は美しいブルーのアルミニウム合金で剛性感がありますが、背面はプラスチック製です。
背面を指で弾くと、金属筐体特有の詰まった音ではなく、少し軽い「コツコツ」という音がします。高
級機のようなひんやりとした金属の質感や重厚感を求める人には物足りないかもしれません。
しかし、このプラスチック筐体には機能的なメリットもあります。
それは「通信感度の向上」です。
金属筐体はWi-FiやBluetoothの電波を遮断しやすいため、アンテナ設計が難しいのですが、樹脂素材であれば電波の通りが良く、ストリーミング再生時の安定性が増します。
また、最初から付属しているクリアケースを装着すれば、手触りはガラスやTPUの感触になります。
日常使いにおいて「安っぽくて恥ずかしい」と感じることはまずないでしょう。
むしろ、冬場に持っても冷たくない点や、落とした時の衝撃吸収性など、実用面での利点の方が大きいと感じました。
FiiO 「JM21」の音質徹底レビュー:CS43198デュアルDACと4.4mmバランスの実力

ここからは、実際のサウンドについて詳細にレビューします。
試聴環境は以下の通りです。
- イヤホン:qdc SUPERIOR(ダイナミック型)、Campfire Audio Andromeda(高感度BA型)、Sennheiser IE 600
- ヘッドホン:Sennheiser HD 660S2、HIFIMAN Sundara
- 音源:Apple Music ロスレス、ローカルFLACファイル(クラシック、ジャズ、EDM、J-POP)
3.5mmシングルエンド:ニュートラルで聴き疲れしない万能サウンド
まずは基本となる3.5mmシングルエンド接続です。
一聴して感じるのは、「絶妙なチューニングバランスと素直さ」です。
CS43198チップの特性が色濃く反映されており、ESSチップ搭載機のような「粒子を細かく分解して突き刺すような解像度」とは対極にあります。
音の角が丁寧に研磨されており、長時間聴いても耳が痛くならない、非常に滑らかなサウンドです。
- 高域:
シンバルの余韻やピアノの倍音が綺麗に伸びますが、耳に刺さる刺激成分(歯擦音など)は見事に抑えられています。
キラキラしすぎず、自然な輝きを持っています。 - 中域:
ボーカル表現は非常にナチュラルです。
J-POPの女性ボーカルなどを聴くと、声の厚みが適度にあり、楽器の中に埋もれることなく中央に定位します。
息遣いやリップノイズなどの「生々しさ」よりも、「歌声の心地よさ」にフォーカスした印象です。 - 低域:
必要十分な量感ですが、3.5mm接続では少し輪郭が緩く感じる場面もありました。
バスドラムのアタック感は少しマイルドです。
全体として「優等生」なサウンドであり、ポップス、アニソン、ジャズボーカルなど、歌モノとの相性が抜群です。
BGMとして長時間流し聴きする用途には最適解と言えるでしょう。
4.4mmバランス接続:駆動力向上による圧倒的な音場と低域の沈み込み
4.4mmジャックに切り替えると、JM21は「覚醒」します。
3.5mmとは明確にキャラクターが変わります。
① 音場の拡張と定位の明確化
最も分かりやすい変化は音場です。
3.5mmでは頭の中にコンパクトに収まっていた音が、頭の外側までフワッと広がります。
クラシックのオーケストラ音源(ストラヴィンスキー「春の祭典」など)を聴くと、各楽器の配置が明確になり、第一バイオリンと第二バイオリンの距離感、コントラバスの奥行きが立体的に浮かび上がります。
② 低域の制動力(ダンピングファクター)の劇的な向上
700mWのハイパワーが真価を発揮するのはここです。
イヤホンの振動版を完全に支配下に置いている感覚があります。
Billie Eilishの「Bad Guy」のような重低音が特徴的な楽曲を再生すると、3.5mmでは少し膨らんでいた低域が、4.4mmでは「ドンッ!」とタイトで芯のある音に激変します。
ボワつきが消え、リズムのキレが良くなるため、EDMやロックの疾走感が段違いです。
③ 静寂性の高さと分離感
高感度なイヤホンをバランス接続すると、回路設計の甘いDAPではホワイトノイズ(サーっという音)が目立つことがありますが、JM21はゲインLow設定でほぼ無音です。
背景が真っ黒だからこそ、微細な音が浮き立ちます。
また、クロストークの改善により、複雑なバンドサウンドでもギターとベースが団子にならず、それぞれのラインを追いかけやすくなります。
この音質変化を体験すると、もう3.5mmには戻れないかもしれません。
それほどまでに、4.4mmバランス出力の実装はJM21の核心部分であり、この価格帯でこの体験ができること自体が事件です。
競合・上位機比較:FiiO M23や同価格帯DAPとの決定的な違い
「上位機種や、他社のDAPと比べてどうなのか?」という疑問にお答えするため、具体的な比較を行います。
| 比較対象 | 音質の傾向 | 操作性 | 携帯性 | 選ぶべき理由 |
| FiiO JM21 | ニュートラル・軽快・バランス重視 | ◎ (Snapdragon 680) | ◎ (156g) | コスパ、軽さ、ストリーミング重視 |
| FiiO M23 | 重厚・高解像度・艶やか・ダイナミック | ◎ (Snapdragon 660) | △ (重い) | 据え置き級の音質と拡張性を求めるなら |
| Shanling M3X | ウォーム・低音豊か・アナログ感 | △ (Snapdragon 430) | ○ (168g) | 生産終了だが、アナログ的な余韻が好きなら |
対 FiiO M23(実売約11万円)
上位機M23は「THX AAAアンプ」やAKM製フラッグシップDAC(セパレート構成)を搭載しており、音の「密度感」「艶」「情報量の多さ」においては明確に格の違いを見せつけます。
特にハイレゾ音源の空気感や、余韻の消え際の美しさはM23が圧倒的です。
しかし、JM21はその1/3以下の価格です。解像度やパワー感において、価格差ほどの絶望的な差は感じません。
「外で聴くなら、ノイズのある環境だしJM21で十分すぎる」と思わせる説得力があります。
対 ドングルDAC(1〜3万円帯)
同価格帯の高級ドングルDAC(例えばFiiO KA17など)と比較した場合、音質そのものは好勝負です。
しかし、JM21は「独立電源」を持っています。スマホのバッテリー残量や電圧変動に左右されず、常に安定した電力をアンプに供給できるため、低域の安定感や音の力強さにおいて、ドングルDACよりも一枚上手です。
特に低音の「腰の座り方」に差が出ます。
FiiO 「JM21」の操作性と機能性:Snapdragon 680搭載Android DAPの使い心地

スペックでは語りきれない、ソフトウェア面や機能面の使い心地、FiiO独自の便利機能について深掘りします。
ストリーミングアプリの挙動と「純音モード」の活用法
Android DAPの最大の敵である「SRC(サンプリングレートコンバーター)問題」。
通常、Android OSはシステム上の制約で全ての音声を48kHzに変換して出力してしまいますが、JM21はFiiO独自のカスタマイズ(DAPS)により、システムレベルでSRCを回避しています。
これにより、Amazon Music UnlimitedやApple Musicのハイレゾ音源を、アプリ側で特別な設定をせずともビットパーフェクト(無劣化)でDACに送り込むことが可能です。
「ランプが黄色(ハイレゾ)に光らない」というストレスから解放されます。
また、アプリ操作に疲れた時や音質を追求したい時におすすめなのが「純音モード(Pure Music Mode)」です。
このモードをプルダウンメニューからオンにすると、Androidのホーム画面や他のアプリが全てシャットダウンされ、FiiO純正の音楽再生アプリ「FiiO Music」だけが立ち上がります。
余計なバックグラウンド処理(Wi-Fi通信の一部や通知サービスなど)が停止するため、CPU負荷が下がり、音の純度がわずかに向上します。
バッテリー持ちも改善するため、ローカルファイルをじっくり聴く際は必須の機能です。
バッテリー持ちと発熱対策:パススルー充電機能の恩恵
バッテリー容量2400mAhは、数値だけ見れば心許ないですが、6nmプロセスのSnapdragon 680の恩恵で実用上は問題ありません。
- ストリーミング(Wi-Fi ON / 4.4mm接続):約8〜9時間
- ローカル再生(Wi-Fi OFF / 3.5mm接続):約12時間以上
そして、FiiO製品の大きな強みが、近年実装が進んでいる「バッテリー保護機能」です。
設定画面で「充電上限を80%に制限」することで、満充電によるバッテリー劣化を防げます。
さらに素晴らしいのが、「給電モード(デスクトップモード的な挙動)」の存在です。
充電ケーブルを接続した状態でこの設定をオンにすると、バッテリーを経由せず、USBからの電力を直接システムとアンプに供給します。
これにより、例えばデスクでPCと繋いでUSB DACとして使う際、バッテリーの充放電サイクル(寿命)を一切消費せず、かつ充電による発熱も防ぐことができます。
この価格帯でここまで高度な電源管理機能を搭載しているのは、FiiOの技術力の高さの証明です。
Bluetoothレシーバー&USB DAC機能:スマホとの連携力
JM21は単体だけでなく、スマホやPCの周辺機器としても極めて優秀です。
- Bluetoothレシーバー機能:
スマホのYouTubeやNetflix、ゲームの音声をBluetoothでJM21に飛ばし、有線イヤホンで高音質に楽しめます。
コーデックはSBC/AAC/LDACに対応。aptX Adaptiveには非対応ですが、LDAC対応Androidスマホであれば、96kHz/24bitのハイレゾワイヤレス転送が可能です。
動画視聴時の遅延もLDAC接続であれば許容範囲内です。 - USB DAC機能:
PCやスマホとUSBケーブルで接続すれば、遅延ほぼゼロの高音質アンプになります。
最大768kHz/32bit、DSD512まで対応しており、据え置き機顔負けのスペックです。
PCでのFPSゲーム(足音の方向が重要)や、動画編集作業のアウトプット用としても活躍します。
FiiO 「JM21」を使用した私の体験談・レビュー

ここでは、カタログスペック解説ではなく、私が実際に2週間ほど毎日持ち歩いて感じた「生の感想」を綴ります。
開封から初期設定へ:ファームウェア更新とタイムゾーンの罠
パッケージはシンプルですが、開封して好印象だったのは、最初から保護フィルムが気泡なく貼られ、透明ケースも装着済みだったことです。
追加出費なしですぐに持ち出せるのは、ユーザー心理をよく理解しています。
初期設定では一つ注意点がありました。
Wi-Fiに接続しても時刻がズレており、確認するとタイムゾーンがデフォルトで「中国標準時」になっていました。手動で「設定→システム→日付と時刻」から日本時間に変更する必要があります。
また、Google Playストアはプリインストールされていますが、初回起動時にGoogleアカウントの認証などで少々待たされる場面もありました。
しかし、一度設定を終えてしまえば、その後はFiiO独自のOTAアップデート機能により、システムの更新もワンタップで完了しました。
通勤時の持ち運び:スマホと重ねても苦にならない軽さの衝撃
私の通勤カバンには、これまで300g級のハイエンドDAPが入っていましたが、JM21に変えてから肩の荷が降りました(文字通り)。
スマートフォン(Pixel 8 Pro)と背中合わせで重ねて持っても、まだ以前のDAP単体より軽いのです。
シャツの胸ポケットに入れても生地が下に引っ張られず、改札を通る時や乗り換えの時もスムーズ。
「良い音を持ち歩くこと」が「重さを我慢すること」とイコールではなくなった。
この物理的・心理的な解放感は、音質以上に日々の満足度を高めてくれました。
相性チェック:感度の高いIEMと駆動力を要するヘッドホンでの試聴
実際に手持ちの機材を片っ端から繋いで相性をチェックしました。
- BA多ドラ型イヤホン(Campfire Audioなど):
ホワイトノイズが心配でしたが、ゲイン設定を「Low」にすれば完全な静寂が得られました。
ボリュームステップも細かく(120段階)、小音量派の人でも「音が大きすぎる」という悩みとは無縁です。 - 平面駆動型ヘッドホン(HIFIMAN Sundaraなど):
4.4mmハイゲインで接続。ボリューム位置80/120程度で十分な音圧を確保できました。
低域の量感もしっかり出ており、「スカスカで鳴らしきれていない」という感じはありません。
もちろん据え置きアンプほどの広大な音場や重厚感までは出せませんが、出張先のホテルでリラックスして楽しむ分には十分すぎるクオリティです。
操作のリアル:起動時間の長さとアプリ動作の快適性のギャップ
正直にお伝えしなければならないデメリットもあります。
それは「電源オフからの起動時間」です。
完全に電源が落ちた状態から、FiiOのロゴが出てホーム画面で操作できるようになるまで、約35秒〜40秒ほどかかります。
最近のスマホが瞬時に起動することに慣れていると、少し待たされる感覚があります。
そのため、私は基本的に電源を切らず、スマホと同じようにスリープ状態で運用しています。
Snapdragon 680の省電力性能のおかげで、スリープ中のバッテリー減りは一晩(約8時間)放置しても2〜3%程度でした。
これなら、いちいち電源を落とす必要はありません。
また、物理ボタン(再生・停止、ボリューム)のクリック感も良好です。ポケットに入れたまま手探りで曲送りをする際も、ボタンの形状が分かりやすく、誤操作はほとんどありませんでした。
ストレージ問題:microSDカード運用で感じたライブラリ読み込み速度
内蔵ストレージ32GB(システム領域を除くと実質20GB強)は、ハイレゾ音源を入れると瞬殺です。
私は512GBのmicroSDカード(Sandisk Extreme)を挿入して運用しています。
ここで驚いたのが、FiiO Musicアプリのライブラリ更新速度です。
約3000曲が入ったカードを挿入した直後のスキャンが、わずか数分で完了しました。
読み込み後のアルバムアート表示も、スクロールに合わせてパパパッと遅延なく表示されます。
大量のライブラリを持ち歩くユーザーにとって、この「データベース構築の速さ」は非常に快適なポイントです。
体験談の総括:サブ機としての優秀さと割り切りが必要なポイント
JM21を使って感じたのは、「メイン機にもなれる実力を持つが、最強のサブ機である」という結論です。
音質を極限まで追求するなら、やはり10万円以上のクラスには敵いません。
しかし、満員電車、カフェでの作業中、散歩中、旅行など、「日常の9割のシーン」においては、JM21の軽快さと必要十分以上の高音質が最適解になります。
通知に邪魔されず、スマホのバッテリーも気にせず、良い音で音楽に没頭できる。
この体験が3万円以下で手に入ることに、改めて驚きと感謝を感じました。
FiiO 「JM21」に関するQ&A

FiiO 「JM21」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
Amazon MusicやApple Musicなどのストリーミングアプリは使えますか?
はい、問題なく使用できます。
FiiO JM21はAndroid 13を搭載しており、Google Playストアからお好みのアプリをインストール可能です。SoCにSnapdragon 680を採用しているため、Amazon Music UnlimitedやApple Music、Spotify、YouTube Musicなどもスムーズに動作します。 また、FiiO独自の「DAPS(Digital Audio Purification System)」により、Android特有のダウンサンプリング(SRC)を回避し、ストリーミング音源も高音質(ビットパーフェクト)で再生可能です。
3.5mm接続と4.4mmバランス接続で、音質に大きな違いはありますか?
明確な違いがあります。
3.5mmシングルエンド接続は、聴き疲れしにくいニュートラルで優しいサウンドが特徴です。 一方、4.4mmバランス接続にすると、最大出力が700mW(32Ω時)まで向上します。これにより、音場の広がり(立体感)、低音の沈み込みとキレ、楽器の分離感が劇的に向上します。JM21のポテンシャルを最大限に引き出すなら、4.4mm接続での使用を強くおすすめします。
内蔵ストレージが32GBと少ないですが、microSDカードは必須ですか?
はい、実質的に必須です。
スペック上の容量は32GBですが、システム領域を除くとユーザーが使用できる空き容量は約20GB程度です。ハイレゾ音源を保存したり、ストリーミングアプリでオフライン保存を行うとすぐに一杯になってしまいます。 microSDカードスロットは最大2TBまで対応していますので、予算に合わせてカードを別途用意することをおすすめします。
スマホにドングルDACを繋ぐのと、JM21を使うのでは何が違いますか?
「安定性」と「スマホのバッテリー消費」が大きく異なります。
ドングルDACはスマホのバッテリーを消費して駆動するため、スマホの電池減りが早くなります。また、スマホの電源供給能力に依存するため、低音のパワーが出し切れない場合があります。 JM21は独立したバッテリーと電源回路を持っているため、スマホの電池を消費せず、かつ安定した強力な電源供給により、音の厚みや静寂性が優れています。また、通知音に音楽を邪魔されないのもDAPならではの利点です。
バッテリーの持ちはどうですか?充電しながら使っても大丈夫ですか?
実用十分な持ちですが、充電しながら使う際は「給電モード」が推奨です。
再生時間は、3.5mm接続時で約12.5時間、4.4mm接続時で約9.5時間です(公称値)。 また、JM21には「バッテリー保護機能(給電モード)」が搭載されています。これをオンにすると、充電ケーブルからの電力をバッテリーを介さずにシステムへ直接供給できます。これにより、バッテリーの劣化や発熱を防ぎながら、据え置き機のように長時間使用することが可能です。
Bluetoothイヤホンで聴く場合も高音質になりますか?
はい、LDAC対応イヤホンならハイレゾ相当で楽しめます。
JM21は高音質コーデック「LDAC」や「aptX HD」の送信に対応しています。対応するワイヤレスイヤホンやヘッドホンと接続すれば、スマホ(iPhoneなどLDAC非対応機)で聴くよりも高音質で再生できます。 また、Bluetoothレシーバー機能も搭載しているため、スマホの音をJM21に飛ばして、有線イヤホンで聴くという使い方も可能です。
初期のセットアップで気をつける点はありますか?
タイムゾーン(時刻)の設定にご注意ください。
開封直後の初期状態では、タイムゾーンが「中国標準時」になっていることが多く、日本時間と1時間のズレが生じます。 「設定 > システム > 日付と時刻」から、タイムゾーンを日本に変更してください。また、動作の安定性を高めるため、Wi-Fiに接続してファームウェアを最新版にアップデートすることを推奨します。
付属品にケースは含まれていますか?
はい、透明なクリアケースが最初から装着されています。
さらに、画面保護フィルムも貼付済みです。開封してすぐに傷を気にせず持ち出すことができます。背面がプラスチック素材のため、質感が気になる場合はこの付属ケース、または別売りの専用レザーケースの使用がおすすめです。
電源オンからの起動時間が遅いと聞きましたが、実際どうですか?
はい、完全に電源が切れた状態からは約35〜40秒ほどかかります。
最新のスマートフォンのような瞬時の起動ではありません。そのため、使用のたびに電源を切るのではなく、スリープモード(スタンバイ)での運用を推奨します。 Snapdragon 680の省電力性能が高いため、スリープ状態であれば一晩放置してもバッテリーは数%しか減りません。スマホと同じ感覚で、常に電源オンのまま運用するのが快適に使うコツです。
PCと接続してUSB DACとして使えますか?遅延はありますか?
はい、高性能なUSB DACとして使用可能です。
PCとUSBケーブルで接続することで、PC内の音声をJM21の高音質回路を通して再生できます(最大768kHz/32bit, DSD512対応)。 遅延は非常に少なく、音楽鑑賞はもちろん、動画編集やFPSなどのゲーム用途でも問題なく使用できます。PCのサウンドカードや安価な外付けDACからのアップグレードとしても最適です。
長時間使っていると本体は熱くなりますか?
ほんのり温かくなる程度で、激しい発熱はありません。
金属筐体のハイエンドDAPは「手で持てないほど熱くなる」ことがありますが、JM21は省電力なSoCと効率的な放熱設計により、発熱は穏やかです。 ただし、「充電しながら4.4mmバランス接続で高負荷なヘッドホンを駆動する」といった状況では熱を持つことがあります。その場合は、設定から「給電モード(デスクトップモード)」をオンにすることで、発熱を大幅に抑えることができます。
なぜこれほど安いのですか?どこか大きな欠点はありますか?
筐体素材と一部スペックのコストカットによるものです。
3万円を切る価格を実現するために、以下の点がコストダウンされています。
- 筐体背面がプラスチック製(高級感はアルミ削り出しに劣る)
- RAMが3GB(重い3Dゲームなどは厳しい)
- 内蔵ストレージが32GB(microSD前提) しかし、「音質(DAC/アンプ)」と「操作性(SoC)」というDAPの核心部分には一切妥協していません。「高級感よりも実用性と音質」を重視するユーザーにとっては、デメリットよりもメリットが圧倒的に上回る設計になっています。
音質の微調整(イコライザー)はできますか?
はい、高度な調整が可能です。
FiiO純正アプリには強力なパラメトリックイコライザー(PEQ)が搭載されており、特定の周波数を細かく調整できます。 さらに、DACチップ(CS43198)に内蔵された「デジタルフィルター」の切り替えも可能です(設定 > オーディオ > デジタルフィルター)。「Fast Roll-off」や「Slow Roll-off」などを切り替えることで、音の立ち上がりや余韻の響き方を微妙に変化させ、好みのサウンドに追い込むことができます。
動画視聴やゲームもできますか?画面は綺麗ですか?
可能ですが、過度な期待は禁物です。
4.7インチのディスプレイ(解像度750×1334)は、YouTubeの動画やアルバムアートを見る分には十分な綺麗さです。 ただし、リフレッシュレートは60Hzで、最新スマホのようなヌルヌル動く画面ではありません。また、音ゲー(リズムゲーム)などのタイミングがシビアなゲームは、タップ判定の精度やSoCの処理能力的にあまり向きません。あくまで「音楽再生がメイン」の端末と割り切るのが良いでしょう。
防水・防塵機能はありますか?
いいえ、防水・防塵には非対応です。
雨の日や、湿気の多い場所(お風呂など)での使用には十分ご注意ください。水没による故障は保証対象外となるケースが一般的です。 もし水回りでの使用を想定している場合は、防水対応のスマホ+防水Bluetoothスピーカー、あるいは完全ワイヤレスイヤホンでの運用をおすすめします。
FiiOのBluetoothレシーバー「BTR17」と迷っています。どちらが良いですか?
「スマホの電池を気にするか」と「画面操作の有無」で選びましょう。
- FiiO JM21がおすすめな人:
スマホのバッテリーを減らしたくない人、アルバムアートを見ながら選曲したい人、ストリーミングを単体で聴きたい人。 - BTR17がおすすめな人:
スマホの操作性をそのまま活かしたい人、とにかく荷物を最小・最軽量にしたい人。
音質面では、独立電源とデュアルDACを持つJM21の方が、特に駆動力を要するヘッドホン等では有利になる傾向があります。
FiiO 「JM21」レビューのまとめと総評

FiiO JM21は、エントリークラスDAPの「基準」を完全に書き換えてしまいました。
最後に、購入を検討している方のために要点を整理します。
FiiO JM21を選ぶべき最大のメリット(コスパと機能性)
- 異次元のコストパフォーマンス:Android 13、Snapdragon 680、4.4mmバランス出力を3万円以下で実現。他社が追随不可能なレベルです。
- 実用十分な駆動力:700mWの高出力で、イヤホンを選ばない万能性。
- ストレスフリーな操作感:スマホ同様のサクサク動作で、重いストリーミングアプリも快適。
- 究極のポータビリティ:156gの軽量ボディは、毎日持ち歩く相棒として最適。
購入前に知っておくべきデメリット(質感と内蔵容量)
- 高級感の欠如:プラスチック主体の筐体は、所有欲を満たす工芸品レベルではありません(実用性特化)。
- ストレージ必須:内蔵容量が少ないため、microSDカードの購入予算(数千円)も見ておく必要があります。
- 起動の遅さ:電源オフからの起動は時間がかかるため、スリープ運用を前提とするのが正解です。
「ドングルDAC」ではなく「DAP」を選ぶ意味と優位性
「スマホ+ドングルDAC」と比較して、JM21を選ぶ最大の理由は「独立性」と「安定性」です。
スマホのバッテリーを吸われることなく、通知音に音楽を中断されることもない。
そして、独立電源によるクリーンで力強い低音再生能力。
これらは、どれだけ高級なドングルDACでも物理的に超えられない壁です。
「音楽を聴くための専用空間」を持ち歩く贅沢さが、DAPにはあります。
バッテリーケア機能から見る長期的な愛機としての適性
バッテリーバイパス機能や充電上限設定など、バッテリー寿命を延ばす機能が充実している点は、長く使いたいユーザーにとって非常に大きなメリットです。
安価な製品だからといって使い捨てにさせない、FiiOのメーカーとしての良心と技術力が詰まっています。
初めてのDAPとしての適性とサブ機としてのポジショニング
- DAPデビューの方へ:
これほど失敗のない入門機はありません。
操作に迷うことなく、スマホ直挿しやワイヤレスイヤホンとは別次元の音を体験できます。
「沼」への入り口として最高です。 - ベテランの方へ:
ハイエンド機のサブとして、あるいは「夏場の軽装用」として、これ以上ない選択肢です。
4.4mmリケーブル資産をそのまま活かせるのも魅力です。
FiiO 「JM21」レビューの総括
FiiO JM21は、エントリークラスの常識を覆す革命的な一台です。
Snapdragon 680によるスマホ並みの快適な操作性と、4.4mmフルバランス接続による本格的なサウンドを両立し、これまでの「低価格DAPは操作が重い」という概念を完全に過去のものにしました。
独立電源ならではの力強い駆動力と静寂性は、スマホに繋ぐドングルDACでは決して味わえない「音楽専用機」だけの特権です。
また、156gという圧倒的な軽さは、高音質を日常に持ち出すハードルを劇的に下げてくれます。
スマホの通知やバッテリー残量を気にせず、純粋に音楽と向き合える時間は、現代において何よりの贅沢と言えるでしょう。
初心者にとっては最高の入門機として、玄人にとっては頼れるサブ機として、これほど完成された選択肢は現状他にありません。
迷っているなら、ぜひその手に取ってみてください。
この小さなDAPは、あなたの音楽生活をより身軽に、そして劇的に鮮やかに変えてくれるはずです。


