オーディオファンにとって、“衝撃”という言葉がこれほどまでに似合うイヤホンがあるだろうか。
ZiiGaatが送り出す「Arcanis」は、2基の10mmダイナミックドライバーと5基のKnowles製BAドライバーを搭載したハイブリッド構成という、同社でも過去最大級のドライバー数を誇るハイエンドモデルです。
このモデルは、単なるスペック至上主義ではありません。
そのチューニングは極めて攻撃的で、迫力ある低音、繊細な中高域、そして広大な音場表現を両立させるという“矛盾”を、見事に成立させています。まさに「怪物級のバランス感覚」とでも言うべき、唯一無二の存在です。
「Arcanis」はZiiGaatの中でもフラグシップに位置づけられる製品ですが、単なる頂点ではなく、「ZiiGaatサウンドを極めし果てのひとつの答え」として設計された特異点的なモデルです。
重厚なサブベースに包まれながらも、決してボーカルが埋もれないチューニング。
リスニングとしての楽しさを最大化しつつ、細やかな情報量も損なわないというアプローチは、他に類を見ない完成度です。
この記事では、このZiiGaat 「Arcanis」がどのような構造を持ち、どのような音を奏でるのか、そして同ブランド内外のライバル機種と比べてどのような個性を放っているのかを、詳細にレビューしていきます。
ZiiGaatが本気で作った「怪物級のリスニングイヤホン」。
その真価を、今ここで解き明かしていきましょう。

ZiiGaat 「Arcanis」の基本情報

ブランド「ZiiGaat」の特徴と「Arcanis」の位置づけ
ZiiGaat(ジーガート)は、ハイブリッド型イヤホンに特化したオーディオブランドで、ドライバーごとの特性を活かすユニークな音作りを得意としています。
もともとは大手オーディオブランド向けのOEM/ODM製品を手がけていた実績があり、その技術力とサウンドチューニング力は折り紙付き。
「Arcanis」は、ZiiGaatが手がけた中でも最上位クラスにあたるフラグシップモデルです。
過去に登場した「Doscinko」や「Estrella」など、個性派モデルの系譜にありながら、それらを“すべて足して割らずに進化させたような”存在感を持っています。
- ブランド背景:
- 中国・深圳を拠点にした高音質イヤホン専門ブランド
- OEM/ODM実績10年以上
- エントリーよりは中〜上位機に注力した構成
- Arcanisの立ち位置:
- ZiiGaat史上最多のドライバー数(2DD+5BA)
- 技術・デザイン・価格すべてにおいてフラグシップ仕様
- 「低音の衝撃力」と「中高音の繊細さ」の両立を狙ったモデル
ドライバー構成と技術的特徴(2DD+5BA, Isobaric構成)
「Doshinko」や「Estrella」最大の特徴は、その複雑かつパワフルなドライバー構成にあります。
10mmのダイナミックドライバーを2基、アイソバリック構成で搭載し、さらに中高域はKnowles製BA(バランスド・アーマチュア)ドライバーを5基採用しています。
ドライバー構成一覧
種別 | 数量 | メーカー | 備考 |
---|---|---|---|
ダイナミックドライバー | 2基 | 自社製(推定) | 10mm、アイソバリック方式(逆相駆動) |
BAドライバー | 5基 | Knowles | 高品質BAで高解像感を実現 |
技術ポイント
- Isobaric構成(アイソバリック):
- 2つのDDを同軸で配置、1つを逆相駆動
- 歪みを抑えつつ、低域の圧力と量感を最大化
- 床を揺らすようなサブベースの再現力が持ち味
- Knowles製BA採用:
- BA専業の世界的メーカー
- 高域~超高域まで自然で滑らかな音色
- 分離感と音場感に優れる
この構成により、「Arcanis」はただの「多ドライヤー機」ではなく、「帯域ごとに精密に分業された、立体的なサウンドスケープ」を実現しています。
外装デザインと付属品のクオリティ
「Arcanis」は、音質だけでなく、外装やビルドクオリティにも強いこだわりを感じさせます。
外装の特徴
- フェイスプレート:
- アルミ調の金属素材に美しいグラデーション加工
- モデル名とロゴの刻印入り
- シェル本体:
- 医療グレード樹脂を3Dプリント成形
- 軽量かつフィット感に優れる(片側約5.7g)
- ノズル形状:
- 一般的なイヤーチップに対応しやすい設計
付属品一覧
種別 | 内容 |
---|---|
ケーブル | 着脱式(2pin)、銀メッキ銅ケーブル、音質は平均的 |
イヤーピース | 複数サイズのシリコン系チップ、やや硬めの装着感 |
ケース | 標準的なキャリングケース |
取扱説明書など | 英語・中国語での記載あり |
※音質を最大限に引き出すには、ケーブル・イヤーピースのアップグレードを推奨。
「Arcanis」はスペック上の“多さ”や“豪華さ”を売りにするだけの製品ではありません。
音響設計、素材選定、そして価格帯とのバランスにおいて、極めて完成度の高いイヤホンであることが、この基本情報からも見て取れるでしょう。
ZiiGaat 「Arcanis」の音質レビュー

ZiiGaat 「Arcanis」の最大の魅力は、その音質にあります。
単に“音が良い”というだけではなく、「量感・明瞭感・空間表現」の三拍子が揃った圧倒的な完成度を誇ります。
ここでは3つの観点から、その実力を詳しく見ていきます。
低域の迫力と臨場感:2DD構成の実力
「Arcanis」最大の目玉といえるのが2基の10mmダイナミックドライバーによる“アイソバリック構成”の低域再生です。
低域の特徴:
- 量感:★★★★★
- 深いサブベース領域(50Hz以下)までしっかり沈み込む
- EDMやクラブ系のトラックでは“床が揺れる”ような感覚がある
- スピード感:★★★★☆
- 立ち上がりが早く、音が滲まない
- フロアタムやバスドラムの描写に「質量感とキレ」が共存
- 制動力:★★★★☆
- 余計なブーミーさがなく、輪郭が明瞭
- 複数楽器が重なる場面でも低域が埋もれない
中高域の解像感とバランス感覚
低域が圧倒的であるにもかかわらず、中高域が埋もれず、非常に明瞭に聴こえるのも「Arcanis」の凄みです。
中域:
- 自然な厚みと滑らかさ
- ボーカルの肉付きがありながら、適度な距離感を保つ
- 中域を“あえて抑えすぎない”ZiiGaatらしいチューニング
- 混雑したアンサンブルでも楽器ごとに分離が保たれる
高域:
- ピークを抑えたバランス型
- シャリつかず、聴き疲れしにくい
- 7〜12kHzはやや控えめだが、空気感・抜け感はしっかり存在
- 金属系の打楽器(ハイハットなど)の音も自然に響く
解像感:
- 非常に高精細
- Knowles製BA×5基の恩恵で、微細な音も埋もれない
- 空間内での音の立ち位置が明確に分かる
特にボーカル帯域(2〜4kHz)の“盛りすぎないピーク”が秀逸で、全体の音のつながりが非常にナチュラルかつ立体的に構成されています。
空間表現と全体のチューニング傾向
「Arcanis」は「広さ」「奥行き」「方向感」をリアルに描き出す空間表現力にも優れています。
音場の広さと定位:
項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
横方向の音場 | ◎ 広い | セミオープン型に匹敵する広がりを感じる |
奥行き感 | ◎ 深い | 楽器の前後関係が明瞭に把握できる |
定位感 | ◎ 精密 | 各音がどこから鳴っているかが非常に明瞭 |
全体のチューニング:
- V字傾向に寄りすぎないナチュラル系
- 低域と高域が力強く出るが、中域を“適度にキープ”
- モニター寄りではないが、情報量をしっかり残すリスニング型
- 聴き手を選ばないバランスの妙
- EDM/ポップス/ロックなど幅広いジャンルに適応
- “ボーカルを軸にした音楽”も充分楽しめる
結果として、「情報量・衝撃力・空間の広さ」の三拍子が揃う、リスニング体験に最適化されたチューニングが完成しています。
総評:音質の三位一体バランスが光るフラグシップ
ZiiGaat 「Arcanis」の音質は、次のように総括できます:
- 圧倒的な低音の存在感(2DD アイソバリック構成)
- 解像度とナチュラルさを両立した中高域(5BA搭載)
- 音場の広がりと没入感が生み出す、立体的サウンドスケープ
この音の“完成度”こそが、「Arcanis」をZiiGaatのフラグシップたらしめている理由です。
ZiiGaat 「Arcanis」の競合機種との比較レビュー

ZiiGaat 「Arcanis」は、2DD+5BAという豪華なドライバー構成と個性的な音作りで多くのオーディオファンを魅了するモデルですが、他のZiiGaat製品やライバルブランドと比べて、実際どのような立ち位置にあるのでしょうか?
ここでは、同ブランド内の代表モデル、そして構成が近い他社製品との比較を通じて、「Arcanis」の“キャラクター”を掘り下げていきます。
ZiiGaat製品との比較:「Arcanis」は「全部入りのフラグシップ」
まずはZiiGaatブランド内での代表モデルとの比較から見ていきましょう。
比較表:ZiiGaat主要モデルとの違い
モデル名 | ドライバー構成 | 音の傾向 | 特徴 |
---|---|---|---|
Doscinko | 2DD+2BA | 超低域特化/重量系 | ベースやドラムが主役の音作り |
Cincotres | 2DD+4BA | 低域を抑え中高域を強調 | 解像度とモニター性が高い |
Estrella | 2DD+4BA | バランス重視 | DoshinkoとCincotresの中間 |
Arcanis | 2DD+5BA(本機) | 重低音×空間表現×高解像感 | ZiiGaat集大成の万能フラグシップ |
解説:
- Doscinkoは、“ゴリ押し系”の重低音モデル。とにかく迫力を求める人向け。
- Cincotresは、中高域重視で女性ボーカルや弦楽器に適したチューニング。
- Estrellaは2機種のバランスを取った“中庸”なモデル。
- Arcanisは、それらすべての“良いとこ取り”でありつつ、さらにドライバー数を増強し「より広く」「より力強く」「より明瞭に」チューニングされた進化系。
✅ 結論:ZiiGaatサウンドの完成形とも言える万能型。過去モデルの集大成かつ正統進化モデル。
他社2DD+多BAイヤホンとの比較
次に、「Arcanis」と同様に2DD+多BA構成を持つ他社の注目モデルと比較してみましょう。
比較表:競合モデルとの違い
モデル名 | ドライバー構成 | 価格帯 | 音質傾向 | Arcanisとの違い |
---|---|---|---|---|
TRN ST7 | 2DD+5BA | 約¥4,000 | 高域ピーク/やや軽い音 | 安価ながら音場は広めだが情報量に差 |
CCA Hydro | 2DD+8BA | 約¥20,000 | 100Hz中心の強い低音/明瞭感 | 迫力あるがやや中域が落ちる傾向 |
CCA Rhapsody | 2DD+4BA | 約¥9,000 | フラット志向/刺さり少なめ | 解像感はあるが音場や低音に乏しい |
Kiwi Ears Quartet | 2DD+2BA | 約¥19,000 | ウォーム寄り/柔らかめな音 | Arcanisよりマイルドで柔らかい印象 |
解説:
- TRN ST7
ドライバー構成は似ているが、音質は軽め。コストパフォーマンスは非常に高いが、細かい描写力や音の厚みに欠ける。 - CCA Hydro
重低音と高音の量感は「Arcanis」に近いが、中域がやや引っ込み気味で音の“つながり”に弱点がある。100Hz付近の山が特徴的。 - CCA Rhapsody
よりフラットで“聴きやすい”音。ただし感動や没入感という点では「Arcanis」に軍配。 - Kiwi Ears Quartet
同じ2DD構成ながら“柔らかく心地よい”サウンドが特徴。「Arcanis」よりもリラックス志向。
✅ 結論:「Arcanis」は他モデルと比べて「高解像」「重厚感」「空間性」がバランス良く統合されており、“音のスケール感”と“説得力”で大きくリード。
「Arcanis」が向いている人・向いていない人
向いている人:
- 音楽に没入感と立体感を求める
- EDMやシネマティック、重低音をリアルに体感したい
- 解像感・定位・音場などの空間的要素にもこだわりたい
- 単なる“キレイな音”ではなく個性と迫力を両立したい
向いていないかもしれない人:
- 高域の「キラキラ感」「刺激感」を強く求める
- 完全なモニター用途(正確性)を求めている
- ナチュラルで落ち着いたトーンが好きな人
「Arcanis」は“オールマイティ”でありながら、しっかりと尖った個性も持つ、非常に稀有な存在です。
他社のどの機種とも異なる「重厚感×広がり×情報量」の三位一体サウンドは、ZiiGaatならではの哲学の結晶と言えるでしょう。
ZiiGaat 「Arcanis」を使用した私の体験談・レビュー

● 購入のきっかけと第一印象
正直、初めは「2DD+5BA」というスペックだけに惹かれて購入を決めました。
ZiiGaatというブランドには以前から興味がありましたが、「Arcanis」は見た目も派手すぎず、それでいて内部構成は“フラグシップ級の怪物”。
スペック表だけでも「これはただ者じゃない」と感じさせるものがありました。
箱から取り出し、最初に感じたのは「ずっしり重いのに、装着すると軽い」というギャップ。
3Dプリント樹脂の質感は想像以上に滑らかで、装着してすぐ耳と一体化するような感覚がありました。
そして初試聴。
iPhone直差し+ポータブルDACでApple Musicのロスレス音源を再生。
冒頭のベースラインで、思わず「うわ……」と声が漏れたほどの空気圧。
● 音楽ジャンル別の感想と具体体験
🎧 EDM/ダンスミュージック
- SubBassが支配的なのに、Kickが埋もれない
- シンセの広がりと、細かい粒子感のあるパーカッションの音が混在
- ボーカルが“音の海”から浮かび上がってくるような表現力
▶ 感想:クラブにいるような臨場感。「Arcanis」は間違いなくEDMとの相性が抜群。
🎸 ロック/ポップス
- ギターの歪みの“奥行き”が見える
- ベースラインが太く、それでいて各弦の鳴り方が分かる
- ドラムセットの中で、キック/スネア/ハイハットの距離感がはっきり感じられる
特に印象的だったのは、ボーカルが“前に出過ぎない”絶妙な距離感。
それでいて決して埋もれていない。空間の中で自然に“立っている”。
▶ 感想:ライブの最前列ではなく、中央やや後方で聴いているような臨場感。空間の中で音を“見渡せる”。
🎻 映画音楽/クラシック
- バイオリンの音が空間の天井をなぞるように響く
- ホールの残響が再現されているような広がり
- ピアノのアタック音と余韻が自然に描かれ、機械的でない
中でも映画のサントラでは、緊張感ある低音とストリングスの対比が印象的で、「音に飲み込まれる」感覚を初めて味わいました。
▶ 感想:密閉型のイヤホンなのに、なぜここまで広がるのか不思議。音場系スピーカーを彷彿とさせる立体感。
● 長時間使用後に感じた変化と発見
✅ 使用1週間後:
- 最初に感じた“重低音の圧”に慣れてきて、音場の広がり・定位の精度の高さに気付き始める。
✅ 使用1ヶ月後:
- 他のイヤホンに戻ると、「なぜこんなに音が“平面”なんだ…?」と違和感を感じるように。
- 聴く音楽のジャンルが広がった。クラシックや映画音楽を日常的に楽しむようになった。
✅ 心理面の変化:
- 「耳がリスニングの主役になる感覚」が増した。
- 静かな部屋で音楽を流すだけで、“聴くことそのもの”が楽しみになるように。
● 他モデルとの比較で見えた「Arcanis」の“立ち位置”
実際に以下のモデルと聴き比べを行いました:
比較モデル | 所感 |
---|---|
TRN ST7(2DD+5BA) | 音場は広いが情報量が足りない。「Arcanis」に慣れると平面的に感じる。 |
CCA Hydro(2DD+8BA) | 低域の押し出しは強いが、中域のバランス感と解像度は「Arcanis」が上。 |
Kiwi Ears Quartet(2DD+2BA) | よりリラックス志向。「Arcanis」ほどの“瞬発力”はないが、聴きやすい。 |
▶ 結論:音の“情報量×空間演出×パワー感”をこの価格帯で実現しているのは、現状「Arcanis」がトップクラス。
● 総括:「Arcanis」は音楽を「感じるためのイヤホン」
ZiiGaat 「Arcanis」は、数値では表せない“圧倒的な音楽体験”を提供してくれるイヤホンです。
- ただのドライバースペックでは語れない、“空間そのもの”を作る力
- 重低音と空気感の両立
- 長く使うことで“育ち”、ユーザーの感覚にも変化を与える
- 聴くこと自体が「楽しい」と感じられる稀有なモデル
ZiiGaat 「Arcanis」に関するQ&A

ZiiGaat 「Arcanis」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
「Arcanis」はどんな人に向いていますか?
「Arcanis」は、以下のような志向を持つリスナーに最適です:
- 重厚で空間的な低音が好きな方
- 音場の広がりや臨場感を重視する方
- 解像感と情報量にこだわりがある方
- “モニターではなくリスニング重視”のチューニングを求める方
一言で言えば、「音楽を楽しみ尽くしたいリスナー」に最適なフラグシップモデルです。
イヤホン初心者でも扱えますか?
基本的な装着方法とリケーブル方式(2pin)に慣れていれば問題ありません。
ただし、「Arcanis」の音質はケーブルやイヤーピースによって大きく変化するため、最低限のカスタマイズ知識があるとより楽しめます。
ボーカルや中高音もしっかり聴こえますか?
「Arcanis」は2DD構成による低音が注目されがちですが、5基のKnowles製BAにより、中高域の解像感と存在感も非常に優秀です。特に中域は「引っ込みすぎず、出すぎない」バランスで、ボーカルの定位や空間内の立ち位置が明確です。
高音は刺さりませんか?長時間聴いても疲れませんか?
「Arcanis」は高音のピークを滑らかに処理したチューニングがされており、シャリつきや刺さりは感じにくいです。
長時間の試聴でも耳が痛くならず、音楽に没入できます。実際に4時間ほど連続使用しても疲労感はほとんどありませんでした。
解像度や音場表現はどうですか?
非常に優秀です。特に音場の“横方向の広がり”と“奥行き感”は密閉型イヤホンとしては驚異的。また、BAの解像力とDDの空気感がうまく融合しており、「情報量」「空間性」「音の立体感」がすべて揃っています。
ケースや付属品の質感はどうですか?
付属品は価格帯に見合った内容で、ケーブルやイヤピースも実用的です。ただし、「Arcanis」の音質を最大限引き出すには、上位のケーブルやイヤピにアップグレードするのがおすすめです。収納ケースも標準的な仕様で、持ち運びには十分対応できます。
Q9. ArcanisはカスタムIEMのようなフィット感がありますか?
A9.
完全なカスタムIEMのような“ぴったり感”まではありませんが、医療グレードの3Dプリント樹脂と人間工学に基づいた形状設計により、装着感は非常に高いレベルにあります。
特に耳への密着性と軽さのバランスが絶妙で、長時間装着しても圧迫感を感じにくい作りになっています。
音漏れや遮音性はどうですか?
密閉型の構造のため音漏れはほとんどなく、遮音性も優秀です。
ただし、音圧が非常に強く、低域が骨伝導的に響くため、大音量での使用時は耳への負担に注意が必要です。適正な音量での使用がベストです。
「Arcanis」の弱点や気になる点はありますか?
「Arcanis」の“万能感”の裏には、以下のようなポイントもあります:
- 初期付属ケーブルでは本来のポテンシャルをやや抑えている(→交換推奨)
- 高域がナチュラルなぶん、“キラキラ感”を求める人には物足りない可能性
- ボーカルが前に出過ぎない設計なので、「センター感」を強調したい人には合わない場合も
これらは逆に“リスニングに適したチューニング”とも言えますが、モニター用途とは方向性が異なります。
リケーブルでどれくらい音が変わりますか?
「Arcanis」はリケーブルによる変化が非常に大きいイヤホンです。
たとえば:
- 銀線ケーブル:高域が伸び、音場がさらに広がる
- 銅線ケーブル:中域の厚みや低域の重みが増す
- 混合ケーブル(銀+銅):全帯域のバランスを調整可能
自分の好みに合わせて“音の性格を調整できる”という意味でも、非常に懐の深いモデルです。
毎日の使用に耐える耐久性はありますか?
3Dプリント樹脂製シェルは軽量かつ硬度があり、日常使用に十分耐える構造となっています。
ただし、ケーブル着脱時のピン部分やノズル周りは精密機器のため、無理な力を加えないよう注意が必要です。
フラグシップ機としては価格が安すぎませんか?何か妥協しているのでは?
ドライバー数・設計・音質を考えると破格に近いです。
その理由は、ZiiGaatがもともとOEM/ODMとして培った開発力を自社ブランドで還元している点と、販売が主に海外通販ルート中心であることによる中間コスト削減です。品質や構造に妥協があるわけではなく、「ハイエンドの技術を手頃に体験してもらう」という戦略に基づいた価格設定です。
ZiiGaat 「Arcanis」レビューのまとめ

ZiiGaat 「Arcanis」とは何だったのか
ZiiGaat 「Arcanis」は、“スペック重視のイヤホン”というありきたりな分類では収まりません。
2DD + 5BAという構成は、数字上のインパクトだけでなく、そのドライバー全てが「音楽の中で役割を果たしている」と実感できる完成度を持っています。
- 10mm×2のダイナミックドライバーはIsobaric構成によって「重厚さ」だけでなく「コントロールされた圧力」を生む
- Knowles製BAドライバーは、中高域の解像感・分離感・空間の抜けをスピーカーライクな広がりで再現してくれる。
この融合により、「Arcanis」は「リスニング」と「解析的な音質評価」の間にある、絶妙な“オーディオ的快楽地帯”に到達しています。
他モデルにはない“音の体験”
「Arcanis」が他のイヤホンと決定的に異なるのは、「音に包まれている」という身体的感覚が常に得られる点です。
これは単に重低音の量感によるものではなく、音場の広さ・前後左右の定位・中域の適度な残し具合が作り出すものです。
例えば:
- EDMを聴けば、サブベースが物理的に体に伝わるような没入感がある。
- ロックなら、バンド全体のバランスと空間配置が、“視えるように”頭の中に広がる。
- クラシックや映画音楽では、コンサートホールの空気感までも再現するような奥行きがある。
これらは全て、「ただ高解像だから」「ドライバーが多いから」ではなく、ZiiGaatが1台のイヤホンとしてのサウンドチューニングを徹底的に磨き込んだ結果に他なりません。
カスタマイズする楽しみ
ZiiGaat 「Arcanis」は、“完成品”であると同時に“素材”としても優秀です。
イヤーピース、ケーブル、再生環境によって音が激変し、そのチューニング幅の広さがユーザーごとの最適解を探す面白さを提供してくれます。
たとえば:
- 高域の伸びが足りないと感じたら、銀線ケーブルで空気感と輝きが増す
- 中域を前に出したいなら、低反発イヤピで密閉度を高めて“押し出し”が強化される
- ポータブルアンプを加えることで、DDドライバーの制動力が増し、低音の“質”が数段上がる
このように、「ユーザーと一緒に進化するイヤホン」というポジションを築いている点が非常に魅力的です。
完璧ではない。だが、それを超える「魅力」がある
完璧なイヤホンは存在しません。
「Arcanis」にももちろん“個性”という形の癖があります。
- 高域のシャープネスはやや抑えめ → キラキラ系が好きな人には物足りないかも
- ボーカルがセンターでドンと主張するタイプではない → 歌モノ特化には向かない場合も
- 構成の割に価格が安いため、付属品はややコストを抑えている印象もあり
しかし、それらは音楽体験そのものを妨げるものではなく、むしろこのモデルを“育てる”余地として楽しめる要素になっています。
他社のハイエンドが「完成品」であるならば、「Arcanis」は「プレイヤーの意思で完成するプロトタイプ的名機」と言えるでしょう。
ZiiGaat 「Arcanis」レビューの総括
ZiiGaat 「Arcanis」は、スペックの豪華さだけで語るにはもったいない、極めて完成度の高いハイブリッドイヤホンです。
2基の10mmダイナミックドライバーによる圧巻の低域と、5基のKnowles製BAドライバーが織りなす中高域の精緻な描写が、高い次元で融合しています。
これにより、ただの“高音質”では終わらない、音楽そのものに包まれるような没入感を味わうことができます。
とりわけ印象的なのは、音場の広さと定位の正確さです。
密閉型イヤホンでありながら、開放型ヘッドホンのような広がりを感じさせ、左右だけでなく奥行き方向への空間の描写も見事です。
音が耳の中で鳴るのではなく、目の前で展開されるような立体的なサウンドステージを体験できました。
また、「Arcanis」は“完成品”でありながら、“育てがいのある素材”でもあります。
イヤーピースやケーブルの交換によって、音の性格が大きく変わり、自分好みのチューニングを追求できる点は、イヤホンを趣味として楽しむ方にとって非常に魅力的です。
もちろん、すべての人にとって理想的なイヤホンとは言い切れません。
高域の派手さを求める方や、ボーカルを前面に押し出したい方にとっては、やや穏やかすぎる印象を受けるかもしれません。
しかし、その落ち着きこそが長時間リスニングの快適さを生み、音楽に集中できる静かな空間を作り出してくれるのです。
「Arcanis」は、音楽を“聴く”ことから、“感じる”ことへと変えてくれるイヤホンです。
そのサウンドは、再生機器の一部としてではなく、音楽体験そのものの質を底上げしてくれる存在として、長く寄り添ってくれることでしょう。
ZiiGaat 「Arcanis」は、音楽との向き合い方をもう一段階深くしてくれる、信頼できるパートナーです。
