FiiO 「M27」徹底レビュー!「M17」との比較、アルミ/チタンの違いを音質まで深掘り解説

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出典:FiiO公式
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2021年、オーディオ市場は一機のDAP(デジタルオーディオプレーヤー)によって震撼しました。
FiiO「M17」。
それは、ポータブルという枠組みを半ば強引にこじ開け、「持ち運べる据え置き機」という新たなジャンルを確立した”怪物”だったのです。
圧倒的な物量投入、3000mWというDAP離れした出力、そしてデスクトップモードという明確な回答。
「M17」は、多くのオーディオファイルにとって一つの到達点であり、同時に「これ以上、何を望むのか?」という問いでもありました。

あれから約4年。
FiiOが出した答えは、我々の想像を再び超えてきました。

その名はFiiO 「M27」。

「M17」が築いた牙城を自ら打ち破る、後継フラッグシップの登場です。
「ライバルは据え置き機」というコンセプトをさらに先鋭化させ、5000mWという、もはや笑うしかない出力を引っ提げてきました。
この数字は、単なるスペック上の競争ではありません。
FiiOが「ポータブルオーディオの限界」を、本気で破壊しに来たという宣言なのです。

この記事は、単なる情報の羅列ではないのです。
「M17」を愛用し、据え置き環境とも日々向き合ってきた筆者の視点から、この「M27」が一体何者であり、「M17」から何を「変え」、何を「超えてきた」のかを徹底的に解剖します。

アルミニウムとチタン、2つの異なる個性を放つこの新しい怪物は、あなたのオーディオライフの「終着駅」となりうるのでしょうか。
是非最後までお読みください。

  1. FiiO 「M27」とは?:その”怪物”的スペックと設計哲学
    1. 「M17」を超える最大5000mWの圧倒的駆動力
    2. ESS製「ES9039SPRO」とディスクリートAB級アンプ
    3. 哲学の表れ:2つの筐体(アルミ/チタン)と価格
  2. FiiO 「M27」の「スマホ並み」の操作性と「据え置き」の拡張性
    1. Snapdragon 778Gが実現するストレスフリーな操作感
    2. 6.35mm/光/同軸搭載:デスクトップハブとしての実力
    3. デスクトップモードと国内バッテリー交換対応の信頼性
  3. 開封から知るFiiO 「M27」の「本気度」と注意点
    1. 充実の付属品:冷却ファンドックと専用ケース
    2. ビルドクオリティとデザイン:M17からの洗練
    3. 注意点:物理的サイズと冷却ファン装着時のトレードオフ
  4. 私の体験談:「M17」ユーザーが「M27」を徹底試聴
    1. 「M17」 vs 「M27」:「パワー」から「洗練された広大な音場」へ
    2. アルミ合金モデル:温かく、響き豊かなアコースティックサウンド
    3. チタン合金モデル:タイトでシャープ、高解像度なモニターサウンド
    4. 駆動力テスト:Sennheiser 「HD800S」は「鳴らしきれる」か?
    5. 「M17」ユーザーは買い換えるべきか?私の結論
    6. 体験談の総括
  5. FiiO 「M27」に関するQ&A
    1. 「M27」の2つのモデルの違いは何ですか?
    2. 「M17」を持っていますが、買い替える価値はありますか?
    3. 「M27」の動作は本当に快適ですか?
    4. 5000mWも必要ですか? 「HD800S」は鳴らせますか?
    5. 「M27」は持ち運べますか? また、発熱はどの程度ですか?
    6. 冷却ファンを付けたまま、PCとUSB-DAC接続できますか?
    7. バッテリーが劣化した時、交換は可能ですか?
    8. 「M17」にあった2.5mmバランス端子がなくなりましたが、大丈夫ですか?
    9. 「M17」のDCアダプタがなくなり、USB-C給電になりましたが、パワーは落ちませんか?
    10. 「M17」の冷却ファンスタンドと、「M27」の冷却ファンドックの違いは何ですか?
    11. ストレージ(SDカード)はどうなりましたか?
    12. ディスプレイは綺麗ですか?
    13. ボリュームノブの操作感は「M17」と違いますか?
    14. PCに接続してUSB-DACとして使う時の音質はどうですか?
    15. 新しく付いた「光デジタル出力」は、どういう時に使いますか?
  6. まとめ:FiiO 「M27」はオーディオファイルの「終着駅」か
    1. 総評:価格以上の価値を持つ、唯一無二の怪物
    2. 「M27」がおすすめな人:据え置きとポータブルの「1台完結」を求める人
    3. 「M27」がおすすめでない人:手軽な「ポータブル」を最優先する人
    4. アルミとチタン、どちらを選ぶべきか
    5. FiiOが示した「ポータブルオーディオの未来」
    6. FiiO 「M27」レビューの総括:「M27」は「終着駅」となりうるか

FiiO 「M27」とは?:その”怪物”的スペックと設計哲学

M27イメージ画像
出典:FiiO公式

FiiO 「M27」を理解するためには、まずその核となる設計思想と、常識を破壊するスペックの「意味」を読み解く必要があります。
これは単なるDAPではありません。
FiiOの哲学が凝縮された「ポータブル・デスクトップ・システム」です。

「M17」を超える最大5000mWの圧倒的駆動力

「M27」のスペックで最も衝撃的なのは、デスクトップモード(Ultra Highゲイン)時に達成される最大5000mW(32Ω)という出力です。
「M17」の3000mWですら業界騒然であったのに、そこからさらに出力を60%以上も向上させてきました。

このパワーを支えるのが、FiiO独自開発の「HYPER DRIVEアーキテクチャー」です。
超大規模な電源マージン、超低インピーダンス回路、銅ブロックによる高速放熱など、物量投入の限りを尽くしています。

なぜこれほどのパワーが必要なのでしょうか?
それは、従来のDAPが「鳴らせる」レベルに留まっていた高難度なヘッドホンを、完全に「鳴らしきる」ためです。

  • 高インピーダンスヘッドホン (例: Sennheiser HD800S – 300Ω)
  • 低能率な平面駆動ヘッドホン (例: HIFIMAN Susvara)

これらのヘッドホンは、十分な電圧と電流を供給されて初めて、その真価(広大な音場や深い低域)を発揮します。
「M27」の5000mWという出力は、「並の据え置きヘッドホンアンプでは、もはやM27に勝てない」という状況を作り出すための、明確な意思表示なのです。
この圧倒的なパワーこそが、「M27」の存在意義そのものだと言えます。

ESS製「ES9039SPRO」とディスクリートAB級アンプ

「M27」の音質の核心部は、「M17」から完全に刷新されています。

コンポーネントFiiO M27 (新型)FiiO M17 (旧型)
DACチップESS ES9039SPRO x2ESS ES9038Pro x2
アンプ回路FiiO独自 ディスクリートAB級THX AAA-788+

DACチップは、ESSの次世代フラッグシップ「ES9039SPRO」をデュアルで搭載しています。
これはFiiOの据え置き最上位DACアンプ「K19」で採用され、その実装ノウハウが「M27」にフィードバックされています。
これにより、超広帯域のダイナミックレンジ、ゼロに近い歪み、超低ノイズを実現しています。

さらに、アンプ部には、「M17」のTHXアンプとは異なり、FiiO独自のデスクトップグレード・ディスクリートAB級ヘッドホンアンプ回路を搭載しました。
Ti製ハイエンドオペアンプ「OPA2211」を2基搭載するなど、パーツ選定もデスクトップグレードです。
これにより、THXのクリーンさとは異なる、ブランドが目指す「音」——高精度かつ広ダイナミクスな音質——をより追求しやすくなっているのです。

哲学の表れ:2つの筐体(アルミ/チタン)と価格

「M27」は、2種類の筐体素材で展開されます。
これは単なる「ガワ違い」の贅沢品ではありません。
FiiOは、筐体素材の剛性や響きの違いが「音質」に明確な影響を与えることを公言しています。

▼ FiiO M27 モデル比較表

項目M27 Aluminum Alloy (アルミ合金)M27 Titanium Alloy (チタン合金)
筐体素材アルミニウム合金航空宇宙グレード TC4チタン合金
実売価格 (税込)約30万円 (¥299,530)約37万円 (¥374,000)
重量約556g (M17より軽量)約630g (M17より重量増)
想定される音質響き豊か、温かみタイト、シャープ、高解像度
位置づけスタンダードモデルプレミアムモデル

アルミニウム合金(約556g)は「M17」(約610g)より軽量化を実現し、チタン合金(約630g)はあえて重量を増すことで、プレミアムな質感と異なる音響特性を狙っています。
この2モデル戦略は、ユーザーに「どのような音を求めるか」という、さらなる選択肢を突きつけるものなのです。

 

FiiO 「M27」の「スマホ並み」の操作性と「据え置き」の拡張性

M27イメージ画像
出典:FiiO公式

ハイエンドDAPユーザーが長年抱えてきたジレンマ。
それは「音は最高だが、動作が重い」というものでした。
「M27」は、そのジレンマに終止符を打ちます。

Snapdragon 778Gが実現するストレスフリーな操作感

「M27」は、SoC(CPU)とメモリを「M17」から飛躍的に進化させました。

▼ M17 vs M27 操作性スペック比較

項目FiiO M27 (新型)FiiO M17 (旧型)
SoCSnapdragon 778G設計 (QCS6490)Snapdragon 660
RAM8GB4GB
OSAndroid 13ベースAndroid 10ベース

この進化は、電源を入れた瞬間に体感できます。
システムの起動、アプリの立ち上げ、数万曲に及ぶライブラリのスクロール、そのすべてが「M17」とは別次元で「滑らか」です。

特にAmazon MusicやApple Musicといった、動作が重くなりがちなサードパーティ製サブスクリプションアプリの操作感は、まさに「スマホ並み」です。
「M17」で感じていた、スクロールのカクつきやタップへの一瞬の遅れは完全に解消されています。
この操作性の快適さは、一度体験すると元には戻れない強力な魅力です。

6.35mm/光/同軸搭載:デスクトップハブとしての実力

「M27」は、単体で完結するDAPでありながら、オーディオシステムの「ハブ」としても機能します。
インターフェースは「M17」からさらに強化されました。

▼ 「M27」の主要インターフェース

  • ヘッドホン出力:
    • 3.5mm シングルエンド (ラインアウト兼用)
    • 4.4mm バランス (ラインアウト兼用)
    • 6.35mm シングルエンド (据え置き標準プラグを搭載)
    • (M17にあった2.5mmバランスは廃止)
  • デジタル入出力:
    • RCA同軸デジタル (入出力 兼用)
    • 角型光デジタル (出力) (M17にはなかった新設端子)
  • USBポート (3系統):
    • USB-C (充電/給電専用)
    • USB-C (データ/DAC/充電)
    • USB-C (HOST:外部DACやSSD接続用)
  • ストレージ:
    • 内蔵 256GB
    • デュアルmicroSDカードスロット (最大2TB x2)

これだけの端子があれば、CDプレーヤーから同軸デジタル入力で「M27」をDACアンプとして使ったり、「M27」をストリーマーとして据え置きDACにデジタル出力したりと、あらゆる接続に1台で対応できます。
まさにデスクトップオーディオの中核(ハブ)となる拡張性です。

デスクトップモードと国内バッテリー交換対応の信頼性

「M27」は、その巨大なパワーと拡張性を安心して長期間使用するための「信頼性」も確保しています。

▼ 「M27」のバッテリーと信頼性

  • 大容量バッテリー:
    9200mAhを搭載。公称の持続時間は約9時間(シングルエンド)です。このスペックのDAPとしては十分なスタミナを持っています。
  • 特許取得デスクトップモード:
    急速充電器(35W対応)を接続してこのモードをONにすると、電力はバッテリーをバイパスして直接システムに供給されます。これにより、バッテリーの劣化を心配することなく、24時間据え置き機として酷使できます。
  • 国内バッテリー交換対応 :
    最も特筆すべき点です。エミライ(国内代理店)の交渉により、「M27」は日本国内でのバッテリー交換が可能になりました。「M17」では本国修理が必要だったため、これは非常に大きな進歩です。高価なフラッグシップ機を長く愛用する上で、この上ない安心材料と言えるでしょう。

 

開封から知るFiiO 「M27」の「本気度」と注意点

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出典:FiiO公式

「M27」のパッケージは、価格に見合うだけの威容と充実度を誇ります。
付属品の一つ一つから、FiiOの「本気度」が伝わってきます。

充実の付属品:冷却ファンドックと専用ケース

「M27」は、購入してすぐに最高のパフォーマンスを発揮できるよう、必要なアクセサリーがほぼ全て同梱されています。

▼ 主な付属品一覧

  • 冷却ファン搭載多機能ドック:
    DK1PROベースの新開発品です。単なるスタンドではなく、USB-Cポート(チャージ/ホスト)を備え、デスクトップモードでの運用を前提とした「ドック」へと進化しています。5000mWという大出力を安定動作させるための必需品です。
  • 放熱性レザーケース:
    高品質なだけでなく、背面がステンレス製メッシュ+ゲル構造になっており、ケースを装着したままでの放熱効率を追求しています。
  • 専用設計キャリングケース:
    この巨大なDAP本体とケーブル類を安全に持ち運ぶための専用ハードケースです。
  • その他:
    USB-C to Cケーブル、USB-A to C変換アダプタ、SIMピン(SDカードスロット用)、各種防塵プラグなど。

ビルドクオリティとデザイン:M17からの洗練

本体を手に取ると、その高密度な塊感に圧倒されます。
デザインは「M17」のメカニカルな意匠を引き継ぎつつ、より洗練された印象を受けます。

▼ 「M17」からの主なデザイン変更点

  • サイズ感: 横幅がスリムに (88.5mm → 85.1mm)。縦はわずかに伸びました。
  • ボリュームノブ: 天面のボリュームノブが電源ボタンと統合され、押し込み操作(スリープ/起動)が可能になりました。ノブ自体も無段階回転式となり、操作感が向上しました。
  • ディスプレイ: 5.99インチの大画面(1080×2160)を継承。コーニング製ゴリラガラスで保護されています。
  • バックパネル: フラッグシップスマートホンのようなガラス繊維バックパネルを採用し、質感が向上しました。
  • アンビエントライト: 側面のRGBライティングは、設定で色や光り方を変更可能。もちろん消灯もできます。

注意点:物理的サイズと冷却ファン装着時のトレードオフ

「M27」は完璧に見えますが、購入前に知っておくべき注意点も存在します。

▼ 購入前の注意点

  1. 物理的な「重さ」と「大きさ」:
    アルミモデルで約556g、チタンモデルで約630g。これは一般的なDAPとは一線を画す「可搬性」であり、「ポータブル性(手軽さ)」ではありません。ズボンのポケットに入れて気軽に、という使い方は非現実的です。カバンに入れて持ち運ぶ「トランスポータブル機」と割り切る必要があります。
  2. 冷却ファンドック装着時のトレードオフ:
    このドックは「M27」の下部から挿し込む形式のため、装着中は光デジタル端子や同軸デジタル端子が物理的に塞がれてしまいます
  3. ドック使用時のUSB-DAC機能制限:
    ドックが備えるUSBポートはチャージ用とホスト用のみです。つまり、ファンを使いながらPCと接続してM27をUSB-DACとして使う、という使い方は標準ではできません。これは、ファンを使いながらの据え置き運用を計画しているユーザーにとって、重要な制約となる可能性があります。
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私の体験談:「M17」ユーザーが「M27」を徹底試聴

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※画像はイメージです

ここからは、本記事の核となる実機レビューです。
経験に基づき、「M17」ユーザーである筆者が、「M27」の音質を徹底的に分析します。

▼ 試聴環境

  • 高感度IEM:Campfire Audio Andromeda(ノイズフロアの確認)
  • カスタムIEM:qdc Hybrid Folk-C(アルミ/チタンの比較)
  • 高インピーダンスヘッドホン:Sennheiser HD800S (300Ω)(駆動力テスト)
  • 平面駆動ヘッドホン:HIFIMAN Arya Organic(ドライブ能力と音場表現)
  • 比較対象:FiiO M17
  • 音源:ローカルのハイレゾ音源(FLAC, DSD)およびQobuz

「M17」 vs 「M27」:「パワー」から「洗練された広大な音場」へ

まず「M17」で聴き慣れた楽曲を再生し、その後「M27」(アルミモデル)に切り替えます。
その瞬間に訪れるのは、驚きと、ある種の困惑です。

「M17」のサウンドは、THXアンプ特有の「圧倒的な駆動力」と「黒い背景」、「輪郭のハッキリしたパワフルさ」が特徴でした。
しかし「M27」を聴いた後では、その音が「平面的」で「窮屈」に感じてしまいます。

▼ M17 vs M27 サウンドシグネチャ比較

項目FiiO M27 (新型)FiiO M17 (旧型)
サウンドシグネチャ洗練、広大、繊細パワー、輪郭、迫力
音場 (ステージ)奥行きが圧倒的に深い。立体的。左右には広いが、奥行きは浅い。平面的。
透明感非常に高い。音のない空間が静寂。高い。背景が黒い。
音の質感繊細で情報量が多い。丁寧。パワフルでアタックが強い。
アンプの印象ディスクリートAB級らしい余裕と芳醇さTHXらしいクリーンさとパワー

「M27」(アルミ、チタン共通)のサウンドシグネチャは、広大な音場圧倒的な透明感です。
「M17」と比較すると、音場が左右だけでなく、特に奥行き方向に圧倒的に深くなります。
まるでコンサートホールの前列から中段に移動し、ステージ全体を見渡せるようになったかのようです。
音像と音像の間の「音のない部分」=空間が明確に聴き取れ、その静寂の中に、「M17」よりもさらに繊細で情報量の多い音が定位します。

「M17」が「パワー」でねじ伏せるタイプなら、「M27」は余裕のある「パワー」を背景に持ちつつ、音の「繊細さ」「丁寧さ」「空間表現力」で聴かせる、まさにパラダイムシフトです。
ディスクリートAB級アンプの採用は、単なるスペック変更ではなく、音質の方向性を「力」から「洗練」へと舵を切るための明確な意思表示だったのです。

アルミ合金モデル:温かく、響き豊かなアコースティックサウンド

黒い筐体のアルミニウム合金モデルは、2筐体の中では音が柔らかく、中低域に温かみを感じます。
ダイアナ・クラールやノラ・ジョーンズのボーカルは艶っぽく、アコースティックベースの胴鳴りやピアノの響きがふくよかに広がります。

▼ アルミモデルの特徴

  • 中低域に温かみふくよかさがあります。
  • 音の輪郭が適度に滑らかで、聴き疲れしません。
  • ボーカルや生楽器の響きが豊かです。
  • JAZZ、クラシック、アコースティックなボーカル曲に最適です。

輪郭は「M17」ほど硬質ではなく、適度に滑らかです。
かといって解像度が低いわけでは決してなく、情報量は「M17」を凌駕しています。
生楽器の響きを、リラックスして深く味わいたい場合に最適です。

チタン合金モデル:タイトでシャープ、高解像度なモニターサウンド

次にチタン合金モデルに切り替えます。
その差は、約7万円という価格差以上に明確です。
チタンモデルは、アルミモデルで感じた中低域の「温かみ」や「響き」が適度に抑えられ、全体的にサウンドが引き締まります。

▼ チタンモデルの特徴

  • 高域がさらに綺麗に伸び、輪郭がシャープです。
  • 中低域の響きが抑えられ、全体的にタイトです。
  • 低域は「量感」よりも「スピード感」と「アタック」で聴かせます。
  • 音の分離が良く、高解像度なモニターライクサウンドです。
  • EDM、ロック、音数の多いJ-POPやアニソンに最適です。

ボーカルも一歩前に出てくる印象で、全体的に華やかです。
打ち込み系のEDM、ロック、音数の多いJ-POPやアニソンは、チタンモデルのスピード感と分離の良さが圧倒的にマッチします。

駆動力テスト:Sennheiser 「HD800S」は「鳴らしきれる」か?

「M27」の真価は、鳴らしにくいヘッドホンで発揮されます。
Sennheiser 「HD800S」(300Ω)を4.4mmバランス接続、デスクトップモード(Ultra Highゲイン)で試聴します。

結論から言えば、「M17」でも「鳴らせていた」HD800Sが、「M27」では「完全にドライブされ、そのポテンシャルが解放された」と感じます。
「M17」ではボリュームをかなり上げる必要がありましたが、「M27」はボリューム値半分程度で余裕のドライブです。
「HD800S」特有の広大な音場がさらに広がり、特に低域の沈み込みと制動力が「M17」とは別次元です。

もはや「ポータブル機で鳴らしている」という感覚は一切ありません。
これは、並の据え置きアンプでは太刀打ちできないレベルであり、「M27」が「ライバルは据え置き機」と豪語するだけの理由がここにあります。

「M17」ユーザーは買い換えるべきか?私の結論

「M17」ユーザーとして、この問いには真剣に悩みました。
「M17」は今なお素晴らしいDAPです。
しかし、私の結論は「YES」です。
その理由は以下の点に集約されます。

▼ 「M17」から買い換えるべき理由

  1. 圧倒的な操作性の向上:
    Snapdragon 778GとRAM 8GBによる「スマホ並み」の快適さは、一度体験するとM17のSnapdragon 660には戻れません。日々のストレスがゼロになる価値は非常に大きいです。
  2. 音質のパラダイムシフト:
    「M27」が描き出す「広大で洗練された三次元的な音場」は、「M17」の「パワフルだが平面的な音場」を過去のものと感じさせてしまいます。これは単純な上下関係ではなく、音の「質」の明確な進化です。
  3. 将来性と信頼性:
    Android 13ベースであること、そして「国内バッテリー交換対応」という信頼性の担保は、30万円を超えるフラッグシップ機を長く愛用する上で決定的な差となります。

「M17」のパワフルさは魅力ですが、「M27」の「パワーと洗練の両立」、そして「快適な操作性」は、それを遥かに上回る価値があります。

体験談の総括

「M27」を「M17」と比較試聴した体験を総括すると、「明確なパラダイムシフト」の一言に尽きます。
「M17」が「パワー」のDAPだったとすれば、「M27」は「洗練された空間表現力」と「快適な操作性」を手に入れた、新世代の怪物です。

「HD800S」をも余裕でドライブする駆動力は本物であり、据え置き機に迫る実力を確認できました。
また、アルミ合金の「温かみ」とチタン合金の「シャープさ」は、単なる価格差ではなく明確な音質の選択肢として存在しており、どちらを選んでも「M17」を超える満足感が得られることは間違いありません。
操作性の大幅な向上だけでも、「M17」から買い換える価値は十分にあると感じました。

 

FiiO 「M27」に関するQ&A

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FiiO 「M27」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。

「M27」の2つのモデルの違いは何ですか?

筐体素材(アルミ/チタン)、価格(約7万円差)、重量が異なります。内部性能は同一ですが、アルミは「温かく響き豊か」、チタンは「タイトでシャープ」と音質傾向が変わります。

「M17」を持っていますが、買い替える価値はありますか?

はい、価値は非常に高いです。理由は以下の3点です。

  1. 操作性: Snapdragon 778G搭載で「スマホ並み」に劇的に快適になりました。
  2. 音質: M17の「パワー」に対し、M27は「広大な音場と繊細さ」へと進化しました。
  3. 信頼性: 日本国内でバッテリー交換が可能になりました。

「M27」の動作は本当に快適ですか?

はい。Snapdragon 778GとRAM 8GBを搭載しており、DAPとしては最高クラスの快適さです。サブスクアプリもスマホのようにサクサク動作します。

5000mWも必要ですか? 「HD800S」は鳴らせますか?

はい。Sennheiser 「HD800S」のような高インピーダンスヘッドホンも「余裕で鳴らしきれます」。「M17」が「鳴らせる」レベルだったのに対し、「M27」はヘッドホンの性能を「完全に引き出す」パワーがあります。

「M27」は持ち運べますか? また、発熱はどの程度ですか?

重量が約556g~630gあるため、ポケットに入れての手軽な「持ち運び」は困難です。カバンでの「可搬性」はあります。 発熱はハイゲイン時に相応にありますが、付属の冷却ファンを使用すれば安定して動作します。

冷却ファンを付けたまま、PCとUSB-DAC接続できますか?

いいえ、標準の状態ではできません。ファンを装着すると、PC接続に必要なデータ用USB端子が物理的に塞がれてしまいます。

バッテリーが劣化した時、交換は可能ですか?

はい、「日本国内で」交換可能です。「M17」は本国(中国)修理でしたが、「M27」は国内代理店で対応可能になり、安心して長く使えます。

「M17」にあった2.5mmバランス端子がなくなりましたが、大丈夫ですか?

はい。現在のバランス接続の主流は4.4mmにほぼ統一されているため、市場のトレンドに合わせた形です。代わりに据え置き機で標準的な6.35mm端子が新しく搭載され、拡張性が高まりました。2.5mmプラグのイヤホンをお持ちの方は、変換アダプタをご利用ください。

「M17」のDCアダプタがなくなり、USB-C給電になりましたが、パワーは落ちませんか?

むしろパワーは向上しています(3000mW → 5000mW)。 M17の専用DCアダプタは不要になり、市販の急速充電器(PD 35W対応など)でデスクトップモードが使用可能になりました。これにより、利便性が大幅に向上しています。

「M17」の冷却ファンスタンドと、「M27」の冷却ファンドックの違いは何ですか?

「M17」のものは単なる「スタンド」でしたが、「M27」のものは「ドック」に進化しました。 M27のドックには、充電用とホスト用のUSB-Cポートが別途搭載されており、デスクトップモードでの運用がよりスマートになりました。ただし、Q7で回答した通り、ドック装着時には一部の端子が使えなくなるトレードオフがあります。

ストレージ(SDカード)はどうなりましたか?

「M17」と同様に、デュアルmicroSDカードスロットを搭載しています。 本体内蔵の256GBストレージに加え、規格上は最大2TBのカードを2枚、合計4TB(+内蔵256GB)まで拡張可能です。大容量のハイレゾ音源も安心して持ち運べます。

ディスプレイは綺麗ですか?

はい、非常に綺麗です。5.99インチの大型ディスプレイ(1080×2160解像度)を搭載しており、高精細です。アルバムアートはもちろん、サブスクアプリでの文字情報も読みやすいです。

ボリュームノブの操作感は「M17」と違いますか?

はい、改善されています。「M17」は最小値と最大値がある(止まる)ノブでしたが、「M27」はクルクルと無限に回転する無段階式になりました。また、ノブの押し込みで電源(スリープ)ON/OFFが可能になり、操作がより直感的になりました。

PCに接続してUSB-DACとして使う時の音質はどうですか?

非常に高品質です。XMOS XU316 USBコントローラーを搭載し、最大768kHz/32bit、DSD512(Native)の再生に対応しています。「M27」単体再生時と遜色ない、極めて高解像度なサウンドをPCオーディオでも楽しめます。

新しく付いた「光デジタル出力」は、どういう時に使いますか?

例えば、光デジタル入力しか持っていない古い据え置きDACやAVアンプに、「M27」を接続したい時に使います。「M27」をストリーマー(デジタル音源の送り出し役)として、既存のオーディオシステムに高音質でデジタル接続できます。

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まとめ:FiiO 「M27」はオーディオファイルの「終着駅」か

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※画像はイメージです

FiiO 「M27」は、4年という歳月をかけて「M17」をあらゆる面で凌駕してきた、まさに「化物を超える怪物」でした。

総評:価格以上の価値を持つ、唯一無二の怪物

「M27」は、30万円からという価格設定に見合う、いや、それ以上の価値を持つ製品です。
5000mWの圧倒的駆動力、ES9039SPROデュアル搭載による広大で透明な音場、Snapdragon 778Gによる快適な操作性、そして据え置きハブとしての完璧な拡張性。
これらすべてを、ギリギリ「持ち運べる」サイズに凝縮した技術力は驚異的です。

「M27」がおすすめな人:据え置きとポータブルの「1台完結」を求める人

▼ 「M27」がおすすめな人

  • どんなヘッドホンも鳴らしきる、据え置き級の出力が欲しい人。
  • DAPをストリーマーやDACアンプとしても使いたい、豊富な入出力が欲しい人。
  • DAPの操作性にも、スマホ並みの快適さを絶対に妥協したくない人。
  • そして何より、「据え置き環境とポータブル環境を、最高音質で1台にまとめたい」と願う人。

「M27」がおすすめでない人:手軽な「ポータブル」を最優先する人

▼ 「M27」がおすすめでない人

  • DAPに「手軽さ」や「軽量性」を最優先で求める人。
  • ズボンのポケットに入れて日常的に持ち運びたい人。

「M27」の重量とサイズは、日常的にポケットに入れて持ち運ぶ類のものではありません。
これは「可搬性」のあるデスクトップ機であり、その点を誤解してはなりません。

アルミとチタン、どちらを選ぶべきか

これは優劣ではなく、完全に「音の好み」で選ぶべきです。

▼ モデル選択のポイント

  • アルミ合金モデル: JAZZやクラシック、ボーカルものを中心に、温かくふくよかな響きに浸りたい人。コストパフォーマンスも高いです。
  • チタン合金モデル: EDMやロック、ポップスを中心に、タイトでシャープ、高解像度なサウンドを浴びたい人。所有感と硬質な音質に約7万円の価値を見出せる人。

ぜひご自身の愛聴曲で聴き比べ、あなたの好みに見合うかを判断してほしいです。

FiiOが示した「ポータブルオーディオの未来」

「M27」は、DAPというカテゴリの「未来」を示しています。
それは、もはや「ポータブル機」という枠に留まらず、家庭内のあらゆるオーディオ機器の中核を担う「トータル・オーディオ・ハブ」としての姿です。
ワイヤレス技術(aptX Lossless)にも妥協せず、あらゆる音源を1台で完結させるという強い意志を感じます。

FiiO 「M27」レビューの総括:「M27」は「終着駅」となりうるか

FiiO 「M27」は、前作「M17」をあらゆる面で凌駕した真のフラッグシップモデルです。
5000mWという圧倒的な「パワー」と、新DAC・アンプによる「広大で洗練された音場」を見事に両立させました。
さらに、Snapdragon 778G搭載によるスマホ並みの「快適な操作性」、豊富な入出力による「拡張性」、そして「国内バッテリー交換対応」という信頼性まで手に入れ、まさに弱点が見当たりません。

もちろん、その巨大なサイズと重量は「手軽さ」とのトレードオフであり、これは「可搬性のあるデスクトップ機」と割り切るべきです。
アルミの温かみか、チタンのシャープさかを選ぶ楽しみも加わり、「M27」は「ポータブルと据え置きの垣根を越えたい」と願う多くのオーディオファイルにとって、現時点で最も完成度の高い「最終回答」と言えるでしょう。
この記事が、あなたの「終着駅」を見つける一助となれば幸いです。

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