近年のワイヤレスヘッドホン市場、特に1万円以下の「エントリー〜ミドルクラス」の価格帯は、まさに群雄割拠の時代を迎えています。
かつて、この価格帯のワイヤレスヘッドホンといえば、「音はそこそこで機能全部入り」か、「デザインは良いが音はスカスカ」といった、何かしらの大きな妥協を強いられる製品がほとんどでした。
しかし、技術の進歩とサプライチェーンの成熟により、今やこの価格帯こそが最もコストパフォーマンスの高い「激戦区」となっています。
そんな中、ポータブルオーディオ愛好家の間で絶大な支持を集めるブランド「MOONDROP(水月雨)」から、市場の常識を揺るがす製品が投入されました。
それが今回ご紹介する「MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edge」です。
MOONDROPといえば、数万円〜数十万円クラスのハイエンド・イヤホンも手掛ける中国のオーディオブランドです。
彼らが作る製品は、単にスペックが高いだけでなく、「水月雨サウンド」と呼ばれる透明感あふれる高音域、そして所有欲を刺激する美しいアルミニウム筐体やパッケージデザイン(通称「美少女パッケージ」)で知られています。
そのMOONDROPが「初めて手掛けるワイヤレスヘッドホン」であり、しかも価格が1万円を切る(税込9,900円、セール時は8,000円台)ということで、発売前からオーディオ界隈では大きな衝撃と共に迎えられました。
しかし、冷静な消費者であれば、いくつかの疑問が浮かぶはずです。
- 「イヤホンの名門が作るヘッドホンは、ドライバー径が変わってもその繊細さを維持できているのか?」
- 「機能面(ノイズキャンセリングや接続性)は、ガジェットメーカーの製品に比べて劣るのではないか?」
- 「3.5mmジャック廃止という割り切った仕様は、実際の運用で不便ではないのか?」
本記事では、これらの疑問に正面から答えるべく、MOONDROP Edgeの実機を徹底的にレビューします。
カタログスペックの数値をなぞるだけでなく、実際に様々なジャンルの音楽を聴き込み、電車やカフェ、自宅といった生活空間で使い倒したからこそ分かる「手触り」や「空気感」を、余すところなくお伝えします。
結論から申し上げますと、このヘッドホンは「1万円以下で買えるヘッドホンの中で、最も『音楽的な美しさ』と『所有する喜び』を両立させた製品」です。
機能の数では他社に譲る部分もありますが、音質とデザインという「ヘッドホンの本質」において、頭一つ抜けた存在であることをお約束します。
MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edgeのデザインとスペック

まずは、製品の基本となるスペックとデザインについて詳細に検証していきます。
通常、コスト制約の厳しい1万円以下の製品では、筐体のプラスチック感や塗装の甘さが目立ちがちですが、Edgeはその常識をどのように覆しているのでしょうか。
1万円以下で味わう「水月雨」の美学と質感
箱から取り出した瞬間に感じるのは、価格帯を超越した「ビルドクオリティの高さ」です。
筐体は軽量化のためにプラスチック素材がメインではありますが、安価な家電製品に見られるようなテカテカした光沢感は一切ありません。
全体にしっとりとしたマット加工が施されており、光の当たり方によって柔らかな陰影が生まれます。
| カラー | 特徴と印象 |
| ブラック | 単なる漆黒ではなく、ややグレーがかった「チャコールブラック」に近い色味。 指紋や皮脂汚れが目立ちにくく、スーツやモノトーンコーデにも馴染むシックで都会的な印象です。 |
| ホワイト | 白すぎない、わずかにクリーム色がかった「オフホワイト」や「アイボリー」に近い色合い。 肌馴染みが良く、女性が身につけてもガジェット特有の「重さ」を感じさせない、ファッションアイテムとして成立する柔らかさがあります。 |
ハウジング部分には、主張しすぎない筆記体でシンプルに「MOONDROP」のロゴがプリントされています。
また、サイズ調整を行うスライダー部分や折りたたみヒンジには合金製の金属パーツが使用されています。
プラスチックと金属という「異素材の組み合わせ」が巧みで、これがガジェットとしての剛性感と、アクセサリーのような繊細さを両立させています。
ヘッドバンド上部には、布地(ファブリック素材)があしらわれており、ここも一般的な合皮だけのヘッドホンとは一線を画すおしゃれなポイントです。
LDAC対応・最大48時間再生の基礎体力
見た目だけでなく、中身の音響設計も本格派です。
MOONDROPが長年のイヤホン開発で培ってきた技術が、このヘッドホンにも惜しみなく投入されています。
ドライバーユニットの秘密:ベリウムメッキドーム
このヘッドホンの心臓部には、40mm径のダイナミックドライバーが搭載されていますが、注目すべきはその振動板素材です。
「ベリウムメッキドーム + 軽量CCAWボイスコイル」という構成を採用しています。
- ベリウム(Beryllium)とは?
非常に軽量かつ高剛性(硬い)な金属素材です。
高級オーディオの世界では理想的な振動板素材の一つとされています。
音が立ち上がるスピード(トランジェント)が速く、かつ余計な振動(分割振動)を抑えることができるため、歪みのないクリアな高音域を実現します。 - CCAWボイスコイルとは?
銅被覆アルミニウム線を使用したボイスコイルです。
通常の銅線よりも軽量なため、振動板のレスポンスを向上させ、繊細な音の強弱を表現するのに適しています。
これらを採用することで、1万円以下のヘッドホンにありがちな「ボワついた低音」や「刺さる高音」を排除し、クラスを超えた解像度を実現しています。
充実のスペックシート
| 項目 | スペック詳細 | 解説・メリット |
| Bluetooth Ver | 5.4 | 最新規格により、混雑した場所でも接続が切れにくく、省電力性も向上しています。 |
| 対応コーデック | SBC / AAC / LDAC | 最大の強みです。LDAC(最大990kbps)に対応しており、Android端末であればハイレゾ相当の情報量で音楽を楽しめます。 |
| 再生時間 | 最大約48時間 | ノイズキャンセリングOFF時。1日2時間使用しても約3週間充電不要というタフネスさです。 |
| 充電性能 | 急速充電対応 | わずか5分の充電で約4時間の再生が可能。朝の支度中に充電すれば、その日の通勤分は余裕で賄えます。 |
| 重量 | 約257g(実測値) | 公称値より若干重めですが、オーバーイヤー型としては標準的。首への負担は少ない部類です。 |
特にLDACコーデックへの対応は、この製品の大きなアドバンテージです。
SBC(標準コーデック)と比較して約3倍の情報量を伝送できるため、音の余韻や空間の広がりなど、微細なニュアンスが潰れずに再生されます。
付属品とビルドクオリティの検証
開封体験(Unboxing Experience)も、ユーザーの満足度を左右する重要な要素ですが、ここでもEdgeは手抜きがありません。
- キャリングポーチ:
多くの同価格帯製品が薄いナイロン製の巾着袋を付属する中、Edgeには厚手の合皮製ポーチが付属します。
内側はマイクロファイバーやベロアのような起毛素材になっており、ヘッドホン本体を傷から優しく守ります。
紐の先端に金属パーツが付いているなど、細部の装飾にもこだわりを感じます。 - ケーブル類:
充電用のUSB Type-Cケーブルは、MOONDROPらしいしっかりとした作りです。 - パッケージング:
外箱のデザインには、MOONDROPの象徴であるアニメ調のイラストが採用されていますが、派手すぎず洗練された線画風のタッチで、部屋に飾っておきたくなるデザインです。
これら付属品の質感が、製品を手に取った瞬間の「良い買い物をした」という実感を強く後押ししてくれます。
音質レビュー:MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edgeの女性ボーカルを彩る繊細さ

ここからは、ヘッドホンの核心である「音質」について、より深く、具体的に掘り下げていきます。
今回、試聴環境には「Xperia 1 VI(LDAC接続 / 音質優先モード)」および「Amazon Music Unlimited」を使用し、複数のジャンルで検証を行いました。
透明感あふれる中高域の解像度
一聴して感じるのは、「非常に滑らかで、湿度を感じさせる上品なサウンド」です。
低価格帯のヘッドホンによくある、「低音を過剰にブーストして迫力を演出する(その結果、ボーカルが埋もれる)」というドンシャリ傾向とは対極にあります。
MOONDROP Edgeは、中高域の見通しが驚くほど良く、音が団子にならずに綺麗に分離して聞こえます。
- 高音域:
ベリウムメッキドームの恩恵か、キラキラとした粒立ちの良さがあります。
しかし、決して耳に刺さるような鋭さ(サ行の刺さりなど)はありません。
「シャンシャン」と金属的に響くのではなく、「スーッ」と空気に溶け込んでいくような、伸びやかで繊細な表現です。 - 中音域:
このヘッドホンの真骨頂であり、最大の魅力です。
ボーカル、特に女性ボーカルの声が、適度な艶(ウェット感)を帯びて再生されます。
ドライでカサカサした音ではなく、歌手の唇の動きや息遣い(ブレス)までが生々しく伝わってくるような感覚です。 - 低音域:
量感は控えめです。
「ズズーン」と地響きのような重低音を期待すると、最初は物足りなさを感じるかもしれません。
しかし、質は非常に高く、タイトで輪郭のはっきりした低音です。
ボワつかないため、ベースラインの動きが見えやすく、楽曲全体のグルーヴを損ないません。
具体的な楽曲での試聴インプレッション
ご提供いただいた情報にある楽曲を含め、いくつかのジャンルで検証しました。
- BUMP OF CHICKEN『天体観測』
冒頭のギターのリフの分離感が素晴らしく、左右のチャンネルで鳴っている音が立体的に聴こえます。
藤原基央氏のボーカルは少し遠くに定位しますが、埋もれることなく歌詞の一語一語が明瞭です。
ドラムのキック音は軽めですが、スネアの抜けが良く、疾走感があります。 - スピッツ『楓』
音場の広さと、アコースティックギターの響きの美しさにハッとさせられます。
草野マサムネ氏のハイトーンボイスが、天井知らずに伸びていく感覚は快感です。
楽器の余韻が綺麗に残るため、切ないバラードの世界観に深く浸れます。 - 藍井エイル『IGNITE』(アニソン)
女性ボーカル+スピード感のあるロックサウンドという、MOONDROPが得意とするジャンルです。歪んだギターの音が綺麗に整理され、ボーカルがその一歩前に出てくる絶妙なバランス。
サビでの高揚感は素晴らしく、情報量の多いアニソンでも音が飽和しません。 - シュトラウス『美しく青きドナウ』(クラシック)
音場の広さは「そこそこ」ですが、楽器の分離が良いのでオーケストラの配置が目に浮かぶようです。
特に弦楽器(ストリングス)の繊細な擦れる音や、管楽器の煌めきが美しく、優雅な時間を過ごせます。
ANCオン・オフで変化する低域の表情
試聴中に気づいた重要な特性があります。
それは、アクティブノイズキャンセリング(ANC)のON/OFFによって、音の周波数バランスが明確に変化するという点です。
- ANC OFF時(ノーマル):
全体的にフラットで、よりスッキリとした音です。低音がかなり控えめになり、中高域の繊細さが際立ちます。
静かな自室で、ピアノソロや弾き語りをじっくり聴くのに適しています。 - ANC ON時:
DSP(デジタル信号処理)による補正が入るためか、低域の量感がグッと増します。
ベースやバスドラムに厚みが生まれ、音楽全体の土台がしっかりします。
屋外の騒音下では低音がマスクされやすいため、このチューニングは理にかなっています。
個人的には、音楽的な楽しさと迫力を求めるなら「常時ANC ON」がおすすめです。
アプリ連携とEQ設定「Old Studio Style」の推奨
専用アプリ「MOONDROP Link」を使用することで、5つのイコライザー(EQ)プリセットから好みの音を選択できます。
また、より高度な「パラメトリックEQ(PEQ)」機能も搭載しており、マニアであれば周波数帯域ごとのゲインやQ値を細かく調整することも可能です。
しかし、一般ユーザーに私が強く推奨したいのは、プリセットの一つである「Old Studio Style」です。
| プリセット名 | 音の傾向と特徴 |
| Balance (Default) | ボーカル重視。中域がやや張り出す「カマボコ型」。聴きやすいが、少し音が近い印象。 |
| Old Studio Style | ★筆者推奨。フラット傾向に近づき、高域の伸びと低域の締まりが向上。音のベールが一枚剥がれたようなクリアさを獲得し、MOONDROPらしい「美音」が最大化されます。 |
| Basshead | 低音増強モード。低域の量感は増すが、全体的なバランスが少し崩れる印象。重低音好きにはこれでも足りない可能性あり。 |
「Old Studio Style」に設定することで、まるで高級モニターヘッドホンのような、分析的でありながらリスニングの楽しさも兼ね備えたバランスに変化します。
購入後はぜひ、まずこの設定を試してみてください。
MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edgeの機能性と使い勝手の徹底検証

音質が良いことは分かりましたが、ワイヤレスヘッドホンは「日常の道具」です。
機能面での使い勝手はどうでしょうか。競合ひしめく1万円以下の市場において、機能性は十分に戦えるレベルなのかを厳しくチェックしました。
実用ラインのノイズキャンセリングと外音取り込み
ノイズキャンセリング性能
評価:★★★☆☆(3.5/5.0)
ハイブリッド方式(フィードフォワード+フィードバック)のANCを搭載していますが、その強度は「マイルド〜中程度」です。
SONYやBOSE、Appleのような「スイッチを入れた瞬間に世界から音が消える(真空状態のような)」強力な消音性能を期待すると、肩透かしを食らうでしょう。
- 消える音: エアコンの空調音、PCのファンノイズ、遠くを走る車のロードノイズなど、一定のリズムで続く低周波の騒音。
- 残る音: 人の話し声、カフェでの食器の音、電車のアナウンス、突発的な高音ノイズ。
とはいえ、電車内で使用した場合、耳障りな「ゴーッ」という走行音は「サーッ」程度にまで軽減されます。
そこに音楽を流せば、周囲の音はほとんど気にならなくなるレベルです。
通勤・通学やカフェでの作業用としては、十分に実用的な性能を持っています。
外音取り込み機能
評価:★★★★☆(4.0/5.0)
マイクで周囲の音を拾う機能ですが、こちらはかなり自然なチューニングです。
安価な製品にありがちな、ホワイトノイズ(サーッという音)の強調や、音が不自然に反響するような感覚は少ないです。
ヘッドホンをしたままコンビニで会計を済ませたり、駅のアナウンスを聞いたりするには十分実用的です。
ただし、音楽を聴きながら流暢に会話ができるほどクリアかと言うと、そこまでは期待しない方が良いでしょう。
あくまで「ワンポイントでの使用」に適しています。
マルチポイントとゲームモードの実力
マルチポイント接続
PCとスマホ、あるいはスマホとタブレットなど、同時に2台のデバイスに接続できる機能です。
例えば、PCでWeb会議の音声を聞きつつ、スマホにかかってきた電話着信も逃さない、といった使い方が可能です。
切り替えも比較的スムーズで、現代のテレワーク環境において必須級の機能をしっかり押さえています。
※重要な注意点として、アプリ設定で「LDACコーデック」と「マルチポイント」は排他仕様(どちらか一方しか選べない)となっています。LDACの高帯域伝送にはチップの処理能力を多く割く必要があるためと思われますが、高音質を取るか、利便性を取るかの選択が必要です。
ゲームモード(低遅延モード)
本体操作(ANCボタン3回押し)またはアプリから切り替え可能です。
実際に音ゲー(リズムゲーム)やFPSをプレイしてみましたが、遅延は体感でかなり抑えられています。
ガチ勢でなければ違和感なくプレイできるレベルで、YouTubeやNetflixでの動画視聴時の口パクのズレなどは全く気になりません。
本体操作だけで切り替えられる点も便利です。
物理ボタン操作とマイク性能の課題
ここで、少し厳しめの評価もしなければなりません。
デザイン優先の弊害とも言える部分が見受けられます。
物理ボタンの操作性
ハウジング側面に配置された物理ボタンは、デザインを崩さないよう非常にフラットに作られています。
そのため、指先だけで「どれが音量アップか」「どれが電源ボタンか」を判別するのが難しく、慣れるまでは誤操作が発生しやすいと感じました。
特に暗い場所では手探りになるため、もう少し突起や形状の工夫が欲しかったところです。
マイク性能
通話品質は「静かな室内なら問題なし」というレベルです。
デュアルマイクENC(環境ノイズキャンセリング)が搭載されていますが、風切り音や周囲のガヤガヤした騒音には弱いです。
静かな部屋でのオンライン会議なら使えますが、風の強い屋外での通話や、騒がしいカフェから会議に参加するのは避けたほうが無難です。
マイク性能については「価格なり」と割り切る必要があります。
MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edgeを使用した私の体験談・レビュー

ここからは、実際に私がMOONDROP Edgeを数週間使用して感じた、個人的な体験談をお話しします。
スペック表には現れない、生活の中に溶け込んだ時の「リアルな気づき」です。
所有欲を満たすマットな質感とデザイン
正直なところ、これまで1万円以下のヘッドホンを「ファッションアイテム」として見なすことはありませんでした。
しかし、Edgeは違いました。
デスクの上に無造作に置いてある姿が、とにかく「映える」のです。
マットな質感は照明の反射を柔らかく受け止め、部屋のインテリアにも馴染みます。
外出時、使用していない時に首にかけて歩く(いわゆる首掛けスタイル)際も、ヘッドホン特有の「メカメカしさ」や「重苦しさ」がなく、おしゃれなアクセサリーを身に着けているような感覚になれました。
カフェでテーブルに置いた際も、そのデザイン性の高さから少し誇らしい気分になれます。
装着感のリアル:イヤーパッドと側圧のバランス
装着感については、購入前に知っておくべきポイントがあります。
側圧は比較的優しめで、2〜3時間の映画鑑賞でもこめかみが痛くなることはありませんでした。
メガネをかけた状態でも、ツルが押し込まれて痛くなる現象は起きにくかったです。
しかし、イヤーパッドが「厚くて反発が強い」タイプなので、私の耳の形状や顎のラインだと、イヤーパッドの下側にわずかな隙間ができる感覚がありました。
この隙間から低音が逃げたり、外音が侵入したりする原因になるため、ベストポジションを探して装着位置を微調整する必要がありました。
もちもちとした低反発素材ならもっと密閉性が高まったかもしれませんが、ここは耐久性とのトレードオフかもしれません。
癒やしのガイダンスボイス体験
これはMOONDROPファンにはたまらない、そして初めての方にもぜひ体験してほしいポイントですが、操作時の音声ガイダンス(「Power On」「Connected」など)が、オリジナルのアニメ声優ボイス(AI美少女ボイス)になっています。
特にノイズキャンセリングモードに切り替えた時の「Shh…(シーッ)」という囁き声は、単に機能を知らせるだけでなく、ちょっとした癒やしを与えてくれます。
無機質なシステム音(ピポッ)や、機械的な英語アナウンスではなく、こうした遊び心が製品への「愛着」を育むのだと感じました。
アプリを使えばガイダンスのON/OFFも可能ですが、私は断然ON派です。
有線非対応でも許せる運用フロー
購入前に一番懸念していたのが「3.5mmイヤホンジャック非搭載(有線接続不可)」という点です。
多くのヘッドホンはバッテリー切れ時の保険として有線接続に対応していますが、Edgeはその機構を排除しています。
「バッテリーが切れたらただの置物になるのでは?」と不安でしたが、実際に使ってみると困ることはほぼありませんでした。
理由は2つあります。
1つはバッテリー持ちの良さ。1日2〜3時間の使用でも、充電は週に1回程度で済みます。
もう1つは急速充電。
万が一バッテリーが切れても、出かける前の5分間充電するだけで約4時間使えるため、実運用で音楽が聴けなくなる事態には陥りませんでした。
「有線でハイレゾを聴きたい」というオーディオ的なニーズには応えられませんが、「ワイヤレスの手軽さを享受する」という目的においては、この割り切りは合理的だと感じました。
屋内・屋外での実際の使用感
- カフェでの作業:
ノイキャンONで「Lofi Hip Hop」などの作業用BGMを流せば、周囲の話し声は気にならなくなり、素晴らしい集中モードに入れます。
見た目がおしゃれなので、スタバなどのカフェで使っていても気恥ずかしさがありません。 - 自宅でのリラックスタイム:
夜、部屋の明かりを落として、LDAC接続で女性ボーカルのバラードを聴くと、本当にリラックスできます。
軽めの装着感が、ソファでくつろぐ姿勢にもマッチします。
ヘッドホン特有の「閉塞感」が少ない音作りなので、長時間聴いていても聴き疲れしにくいのが印象的でした。
体験談の総括
細かな不満点(ボタンの押しにくさや、マイク性能の限界)は確かにあります。
しかし、それを補って余りある「音の美しさ」と「所有する喜び」がありました。
「1万円を支払って、それ以上のお釣りが来るレベルの満足感」を得られたというのが、偽らざる感想です。
MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edgeに関するよくある質問(Q&A)

MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edgeに関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
有線接続(3.5mmケーブル)でのリスニングは可能ですか?
いいえ、できません。
MOONDROP Edgeは完全ワイヤレス専用の設計となっており、3.5mmイヤホンジャックは搭載されていません。また、USB-Cポートを用いた有線デジタル接続(USBオーディオ)にも対応していないため、バッテリーが切れた場合は充電が必要です。
防水・防塵性能はありますか?
公式なIP規格(防水・防塵)には対応していません。
そのため、雨天時の使用や、スポーツジムでの激しい運動(多量の汗をかく場面)での使用は故障の原因となるため推奨されません。あくまで日常使いや屋内でのリスニング向けです。
iPhoneでも高音質で聴けますか?
はい、十分高音質で楽しめます。
iPhoneはLDACコーデックには非対応ですが、AACコーデックに対応しています。Edge自体のドライバー性能(ベリウムメッキドーム)が高いため、AAC接続でもクリアで繊細なサウンドを楽しむことができます。ただし、ハイレゾ相当のデータ転送を行いたい場合は、LDAC対応のAndroid端末や送信機が必要です。
マルチポイント接続とLDACは同時に使えますか?
いいえ、併用はできません(排他仕様です)。
専用アプリ「MOONDROP Link」の設定で、「高音質優先(LDAC)」か「接続の利便性優先(マルチポイント)」のどちらか一方を選択する必要があります。デフォルトではどちらの設定になっているか確認し、用途に合わせて切り替えてください。
ノイズキャンセリングの効き目はどれくらいですか?
実用レベルですが、最強クラスではありません。
電車の走行音やエアコンの空調音などの「低音ノイズ」は効果的にカットしますが、人の話し声や高音の金属音などはある程度聞こえます。SONYやBoseのような「無音」を求める方には物足りない可能性がありますが、音楽を流せば周囲の音は気にならないレベルです。
音漏れはしますか?
音量は控えめですが、少し注意が必要です。
密閉型(クローズドバック)ですが、イヤーパッドの密着度(個人差による隙間)によっては多少の音漏れが発生します。図書館などの極めて静かな場所で大音量で聴く場合は注意が必要ですが、電車内などでは常識的な音量であれば問題ありません。
PS5やNintendo Switchでゲーム用に使えますか?
カジュアルな用途なら可能ですが、競技性の高いゲームには向きません。
Nintendo SwitchなどはBluetoothで接続可能ですが、わずかな遅延が発生します。「ゲームモード」を使用すれば遅延はかなり抑えられますが、FPSや音ゲーなどのシビアなタイミングを要求されるゲームでは有線ヘッドホンに劣ります。また、PS5は通常Bluetoothオーディオに非対応なため、別途トランスミッターが必要です。
Web会議(Zoom/Teams)で使えますか?
静かな部屋であれば問題なく使用できます。
マイクは搭載されていますが、周囲の雑音を除去する性能はそれほど高くありません。静かな自宅からの参加ならクリアに声を届けられますが、騒がしいカフェやオフィスからの参加には、別途マイクを用意するか、静かな場所に移動することをおすすめします。
アプリのイコライザー設定のおすすめはありますか?
「Old Studio Style」がおすすめです。
デフォルトの「Balance」よりも全体的に音がスッキリとし、高音の伸びと音場の広がりを感じやすくなります。MOONDROPらしい「美音」を楽しみたい方はぜひ試してみてください。
メガネをかけたままでも痛くなりませんか?
側圧が優しいため、比較的痛みは出にくいです。
イヤーパッドに厚みがあり、側圧(締め付け)自体もそれほど強くないため、メガネのツルがこめかみに食い込む感覚は少なめです。ただし、イヤーパッドの素材が低反発タイプほど柔らかくはないため、フレームの太いメガネを使用している場合は、長時間使用時に多少の違和感を感じる可能性があります。
充電しながら音楽を聴くことはできますか?
基本的にはできません。
充電ケーブルを接続すると、ヘッドホンの電源機能が充電モードに切り替わる仕様のため、音楽再生は停止します。バッテリー持ちが最大48時間と長いため、使用していない時間帯にこまめに充電する運用が基本となります。
Anker(Soundcore)やEdifierなどの同価格帯製品と比べてどうですか?
「機能」なら他社、「音質・デザイン」ならMOONDROPです。
Anker(Soundcore Qシリーズなど)は、ノイズキャンセリング性能の強さやアプリの多機能さで勝ります。 一方、MOONDROP Edgeは「音の純度(解像度)」や「デザインの質感」で圧倒的に勝っています。 ・静寂や便利さを求めるならAnker ・音楽への没入感や見た目を求めるならMOONDROP という選び方がおすすめです。
MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edgeレビューのまとめ

最後に、MOONDROP Edgeの良い点・気になった点を整理し、どのような人に適しているか、あるいは適していないかをまとめます。
良かった点(メリット)
- クラスを超越した高音質: ベリウムメッキドーム採用ドライバーにより、特に中高域の解像度、透明感、ボーカルの表現力が1万円以下の水準を大きく上回っています。
- 洗練されたデザイン: マットな質感、異素材の組み合わせ、手書きロゴ、高級感あるポーチなど、所有欲を満たすビルドクオリティの高さ。
- LDAC対応: Androidユーザーなら、ワイヤレスでもハイレゾ相当の情報量で音楽を楽しめる。
- 独自の音声ガイダンス: ファン心をくすぐる、可愛らしく癒やされる「美少女ボイス」演出。
- 充実した機能: 実用的なマルチポイント、低遅延ゲームモード、驚異的な急速充電。
- コストパフォーマンス: この音質とデザインで実売1万円以下は、市場破壊的な価格設定。
気になった点(デメリット)
- 有線接続不可: 3.5mmジャックがないため、バッテリー切れ時や遅延ゼロを求める用途(楽器演奏など)には使えない。
- 物理ボタンの操作性: フラットすぎるボタン配置により、手探りでの操作がしにくい。
- 低音の迫力不足: 重低音重視のジャンル(EDM、ハードロック)には、量感・圧力が少し物足りない可能性がある。
- マイク性能: 風切り音や騒音に弱く、重要なビジネス通話には不向き。
- 排他仕様: LDACとマルチポイントが同時使用できないため、設定変更の手間がある。
音質・性能の総評
MOONDROP Edgeは、「音質(特に中高域の美しさ)とデザイン」にリソースを全振りしたヘッドホンです。
SONYやAnkerのような「機能全部入りの万能機」ではありません。
しかし、「美しい音で音楽を聴く」「おしゃれに持ち歩く」という点においては、2〜3万円クラスのヘッドホンにも引けを取りません。
競合他社が機能を足し算していく中で、MOONDROPは「音と美学」を研ぎ澄ます引き算の美学で作られた製品だと感じます。
コストパフォーマンス評価
評価:★★★★★(5.0/5.0)
1万円以下でこの音質と質感を実現しているのは驚異的です。
初めてのワイヤレスヘッドホンとしても、既に高級機を持っているマニアのサブ機としても、間違いなく価格以上の価値を提供してくれます。
おすすめユーザー
以下の項目に2つ以上当てはまるなら、MOONDROP Edgeは間違いなく「買い」です。
- アニソン、女性ボーカル(J-POP)、ピアノ曲やアコースティックをよく聴く人
- 「低音ドンドン」よりも「繊細で綺麗な音」が好きな人
- ヘッドホンを見た目やファッションの一部として楽しみたい人
- Androidスマホを使っていて、LDACの高音質を試したい人
- MOONDROPというブランドの世界観やキャラクターが好きな人
- カフェや自宅で、軽めの装着感で長時間作業をしたい人
購入の判断基準
逆に、「重低音で脳を揺らしたい」人や、「バッテリー切れが心配だから有線接続が必須な人」、「屋外での通話品質を最優先するビジネスマン」にはおすすめできません。
その場合は、AnkerやEdifierなどの機能重視モデルを検討すべきでしょう。
しかし、もしあなたが「1万円以下で、最も音が良くて、最もおしゃれなヘッドホンが欲しい」と探しているなら、このMOONDROP Edgeが最適解になるでしょう。
MOONDROP(水月雨) 羽翼 – Edgeレビューの総括
MOONDROP Edgeは、激戦区である1万円以下のワイヤレスヘッドホン市場において、機能の多さではなく「音の美しさ」と「所有する喜び」という新たな価値基準を提示した意欲作です。
多くのメーカーが機能の足し算で勝負する中、あえて有線接続などの一部機能を削ぎ落とし、そのリソースをベリウムメッキドームによる高解像度なサウンドや、洗練されたマットな質感のデザインへと注ぎ込んだ点は、オーディオブランドとしての強い矜持を感じさせます。
ノイズキャンセリングやマイク性能といった機能面だけを見れば、他社製品に譲る部分があることも事実です。
しかし、LDAC接続で奏でられる女性ボーカルの艶やかさやピアノの繊細な余韻、そしてデスクに置いたときの絵になる佇まいは、この価格帯の常識を覆すレベルに達しています。
「何でもできる万能な優等生」ではありませんが、音楽を心から愛し、日常をおしゃれに彩るパートナーを探している方にとっては、唯一無二の選択肢となるでしょう。
あなたの毎日の音楽体験を、水月雨ならではの透明感あるサウンドで満たしてみてはいかがでしょうか。

