「1万円以下で、本当に音の良いイヤホンはどれですか?」
もし今、あなたがこの質問への答えを真剣に探しているなら、2025年12月に登場したfinal A2000は、間違いなくその最有力候補としてリストアップされるべき存在です。
近年、ポータブルオーディオ市場、特にイヤホン市場における「アンダー1万円(U10000)」の競争は、かつてないほど激化の一途をたどっています。
完全ワイヤレスイヤホン(TWS)の機能進化が著しい現代において、あえてケーブルのある「有線イヤホン」を選ぶユーザーが求めているもの。
それは、バッテリー寿命や利便性といった機能的価値ではなく、純粋かつ妥協のない「本物の音質」に他なりません。
日本のオーディオブランド「final(ファイナル)」が満を持して投入したこの「A2000」は、そうした市場の渇望に対する、一つの明確な回答と言えます。
finalといえば、ハイエンド機で培った技術を惜しみなくエントリー機に投入することで知られていますが、今回のA2000はその傾向が特に顕著です。
キャッチコピーとして掲げられた「極めて明瞭なサウンドと弾むような低音」。
一聴すると、オーディオ製品によくある美しい謳い文句のようにも聞こえます。
しかし、実際にこのイヤホンを耳にし、その内部構造や開発背景にある執念とも言える技術を知れば、これが単なるセールストークではないことが痛いほど理解できるはずです。
上位機種であるA3000やA4000、さらにはハイエンドクラスの開発過程で得られた知見をベースに、素材選定から製造機械の設計に至るまで徹底的に見直されたA2000。
それは、エントリークラスの常識を覆す「価格破壊」とも呼べるクオリティを実現しています。
この記事では、長年オーディオ機器のレビューを手がけ、数多のイヤホンを聴き込んできた筆者が、final A2000の実機を徹底的に検証します。
独自開発ドライバー「f-Core DU」の深層から、ライバル機との微細な音質差、そしてFPSなどのゲーミング用途での実用性まで、一切の忖度なしに、その全貌を解き明かしていきます。
- final A2000とは?1万円以下の新たなスタンダード
- 音質レビュー:A2000の価格破壊級の明瞭さとレスポンス
- final他機種とA2000の徹底比較:どれを選ぶべきか
- final A2000を使用した私の体験談・レビュー
- final A2000に関するQ&A
- マイクはついていますか?通話に使えますか?
- スマートフォンに直接挿しても十分な音量が出ますか?
- FPSゲーム(ApexやValorant)に使えますか?
- 定番のE3000と迷っています。どちらがおすすめですか?
- リケーブルの規格を教えてください。他社製ケーブルは使えますか?
- 音漏れはしますか?
- 5,000円〜1万円くらいの完全ワイヤレスイヤホンと迷っています。
- ランニングやジムでのトレーニングに使えますか?
- ASMR動画の視聴には向いていますか?
- 「寝ホン」(寝ながら聴く用)として使えますか?
- バランス接続(4.4mm)にリケーブルする価値はありますか?
- パソコン(PC)のイヤホンジャックに直接挿しても良いですか?
- final A2000レビューのまとめ
final A2000とは?1万円以下の新たなスタンダード

final A2000は、同社の製品ラインナップにおいて「トランスペアレントな音」を追求する「Aシリーズ」の末弟として位置づけられています。
しかし、誤解してはいけないのは、これが兄貴分であるA3000やA4000の単なる「廉価版」や「コストダウンモデル」ではないということです。
1万円を切る価格設定(税込9,800円前後)の中に、上位機種をも脅かすポテンシャルと、独自の音響哲学が凝縮されています。
完全新規設計ドライバー「f-Core DU」の技術的特徴
この価格帯のイヤホンにおいて、製造コストの大部分を占め、かつ音質を決定づける心臓部となるのが「ドライバーユニット」です。
通常、1万円以下のエントリーモデルを開発する場合、多くのメーカーはコストを抑えるために、海外のサプライヤーから既存の汎用ドライバーを購入し、それをチューニングして搭載するという手法を採ります。
しかし、finalはそのような安易な道を選びませんでした。
彼らはA2000のために、6mm径のダイナミック型ドライバー「f-Core DU(エフコア・ディーユー)」を、金型から製造機器に至るまで完全新規で設計・開発したのです。
このドライバーが持つ技術的特異性は、以下の2点に集約されます。
真鍮(ブラス)製フロントハウジングの採用
一般的なドライバーユニットでは、フロントハウジング(振動板を支える前枠部分)にアルミニウムや樹脂が使われることが一般的です。
しかし、f-Core DUでは、比重が高く加工が難しい「真鍮(ブラス)」を採用しています。
真鍮は管楽器にも使われる素材であり、高い内部損失と剛性を持ち合わせています。
これを採用することで、強力な磁気回路が生み出す駆動力に対しても筐体が微動だにせず、ドライバー自体の不要な共振を徹底的に排除することに成功しました。
結果として、音が濁る原因となる「付帯音」を物理的にシャットアウトし、驚くほどクリアな音場生成を可能にしています。
30μ超極細CCAWボイスコイル
音の繊細さを左右するボイスコイルには、髪の毛よりも細い30ミクロンのCCAW(銅被覆アルミニウム線)を採用しています。
さらに驚くべきは、その組み立て工程です。通常の製造ラインでは塗布される接着剤の量が不均一になりがちで、それが振動板の重量増加やバラつきの原因となります。
finalは、この接着剤の量を極小かつ均一にするために、製造治具そのものを自社で開発しました。
これにより、可動部(ムービングマス)を極限まで軽量化することに成功。
入力信号に対する反応速度(トランジェント)が劇的に向上し、立ち上がりの鋭い音を実現しています。
つまり、A2000は「安く作るために工夫した」のではなく、「理想の音を出すために、この価格帯では異例の素材と製造プロセスを投入した」、まさにオーバーテクノロジーの塊なのです。
「点」で支える3点保持機構と装着感
イヤホンにおいて、音質と同等に重要なのが「装着感」です。
どれほど素晴らしい音を奏でても、装着感が悪く耳が痛くなれば、それは長時間のリスニングに耐えうる道具とは言えません。
A2000は、この点においても革新的なアプローチを採っています。
それがfinal独自の「3点保持機構」です。
従来のイヤホン、特に耳の形に合わせて作られたユニバーサルIEMの多くは、耳の「面」全体で筐体を支え、圧力を分散させる設計思想で作られています。
しかし、人の耳の形は千差万別であり、面で合わせようとすると、どうしても特定の部分に強い圧力がかかり、長時間の使用で痛みが生じる原因となっていました。
これに対し、A2000は以下の3点「のみ」で筐体を支える設計になっています。
- 耳のポケット(耳甲介腔): 筐体の一部が軽く触れる程度。
- イヤーピース(外耳道): 耳穴の入り口付近で保持。
- 耳珠(トラガス): 耳の前の小さな突起部分に一点で接する。
このように接触面積を極限まで限定することで、耳への圧迫感を排除しています。
実際に装着してみると、筐体自体の軽さ(片側わずか数グラム)も相まって、「着けていることを忘れる」ほどの異次元の快適さを体感できます。
首を激しく振ってもズレにくく、まるで自分の耳型を採取して作ったオーダーメイドのカスタムIEMのような、吸い付くようなフィット感を実現しています。
付属品とスペック:2Pinリケーブル対応の拡張性
A2000のもう一つの大きな魅力は、この価格帯でありながらリケーブル(ケーブルの着脱)に完全対応している点です。
| 項目 | スペック詳細 |
| 筐体素材 | ABS樹脂(シボ塗装仕上げ・ダークグレー) |
| ドライバー | 独自開発ダイナミック型(f-Core DU) |
| コネクター | 2-Pin(0.78mm規格)高精度埋め込みタイプ |
| ケーブル | オリジナルOFCケーブル(3.5mmプラグ) |
| 感度 | 99dB/mW |
| インピーダンス | 19Ω |
| 重量 | 18g |
安価なイヤホンの多くはケーブル直付けであり、断線=製品寿命の終わりを意味します。
しかしA2000は、オーディオ業界で標準的な2-Pin(0.78mm規格)を採用しています。
万が一断線してもケーブルを交換して使い続けられるだけでなく、市販のサードパーティ製ケーブルに交換して音質の変化を楽しむ「リケーブル」という趣味の世界へ、ユーザーを誘ってくれます。
例えば、4.4mmバランス接続ケーブルに交換して、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)の性能をフルに引き出すといった使い方も可能です。
さらに付属品も豪華です。
イヤーピースには、単体販売でも高い評価を得ている定番モデル「TYPE E」が5サイズ(SS/S/M/L/LL)同梱されています。
これだけでも数千円の価値があります。
また、タッチノイズを軽減するロック機構付きイヤーフックも付属しており、購入した瞬間から、オーディオマニアと同様の快適なリスニング環境が整うのです。
音質レビュー:A2000の価格破壊級の明瞭さとレスポンス

では、肝心の音質について、より深く詳細にレビューしていきます。
一言でその傾向を表すなら、「曇りのない晴れやかなサウンド」であり、価格を超えた解像度を持っています。
中高域:輪郭がくっきりとしたトランスペアレントな響き
A2000を聴いて最初に衝撃を受けるのは、その圧倒的な「透明感(トランスペアレンシー)」です。
音が鳴った瞬間、その輪郭が非常にくっきりと、まるで4K映像を見ているかのような鮮明さで描かれます。
- 立ち上がりの速さ(トランジェント):
軽量化されたボイスコイルの恩恵は絶大です。
ギターのカッティングの鋭さ、スネアドラムの「パンッ!」というアタック音、ハイハットの刻みなど、スピード感のある音が一切もたつくことなく、スパッと耳に届きます。
音が尾を引いて滲むような感覚が皆無です。 - ボーカルの表現力:
中高域の明瞭さは、ボーカル表現にも大きく寄与しています。
歌手のブレス(息継ぎ)のニュアンス、口元の動き、声帯の微細な震えまでが手に取るように分かります。
特に女性ボーカルの突き抜けるようなハイトーンは美しく、曇った幕が何枚も取り払われたような開放感があります。 - 刺さりのなさの追求:
通常、これだけ解像度を上げると高音が耳に刺さる(サ行が痛いなど)弊害が出がちですが、A2000は見事に制御されています。
A4000のような鋭利な金属的な煌めきに比べると、A2000はわずかに角が取れており、明瞭でありながら長時間聴いても聴き疲れしにくい、絶妙なバランスポイントに着地しています。
低域:量より質を重視した「弾むような」低音
低音域については、「ドンドン」と部屋全体を揺らすような量感重視のタイプではありません。
メーカーが謳う通り、「弾むような低音」という表現がまさにぴったりです。
- タイトでスピード感のある鳴り方:
低音が無駄に膨らんで中高域をマスク(邪魔)してしまう現象、いわゆる「音の被り」が全くありません。
ベースラインは非常にタイトで、一音一音のピッチ(音程)が正確に聞き取れます。 - 芯のあるサブベース:
量感で誤魔化さない代わりに、楽曲の土台となる深い帯域(サブベース)はしっかりとした「芯」を持っています。
バスドラムのキック音は「ドスン」という重さよりも、「ダンッ」という皮の張りを感じさせる弾力感を伴って響きます。
この特性により、テンポの速いロックや、複雑なベースラインが絡み合うファンク、現代的なポップスにおいて、楽曲が持つグルーヴ感(ノリの良さ)を最大限に引き出してくれます。
聴いていて自然と足でリズムを取りたくなるような、躍動感に満ちた低音です。
ゲーミング性能:FPSにおける定位感と足音の聞き取りやすさ
A2000は純粋な音楽鑑賞用として開発されていますが、その音響特性は驚くほどFPS(ファーストパーソン・シューティング)ゲームに適しています。
- 定位感(ローカリゼーション)の正確さ:
音の輪郭が滲まないため、脳が音の発生源を特定する際のストレスが非常に少ないです。
「右斜め前30度、2階」といった具体的な位置関係が、音だけで映像のように浮かび上がります。 - 分離能力と情報量:
Apex LegendsやValorantなどのゲームでは、銃声や爆発音が飛び交う激しい混戦状態が発生します。
低音が強すぎるイヤホンだと、爆発音に他の音が埋もれてしまいますが、A2000は低域がタイトであるため、重要な「敵の足音」「リロード音」「回復キットを使う音」などが埋もれずに浮き上がって聴こえます。 - 距離感の把握:
遠くの銃声と近くの足音の描き分けも優秀で、敵との距離感を音量差だけでなく、音の質感の差として直感的に把握できます。
「ゲーミングイヤホン」として売られている製品の中には、低音を過剰にブーストしたものも多いですが、競技性の高いタイトルで本当に必要なのはA2000のような「正確なモニター性能」です。
勝率を上げたいゲーマーにとって、A2000は隠れた最強デバイスとなり得ます。
final他機種とA2000の徹底比較:どれを選ぶべきか

finalブランドには名機が多く、ラインナップも豊富です。
ここでは購入時によく比較対象として挙がる3機種との違いを、より詳細に掘り下げていきます。
A3000・A4000との違い(音色とジャンルの適性)
同じAシリーズの筐体を持つ兄弟機との比較です。
| 機種 | A2000 (New) | A3000 | A4000 |
| 実勢価格 | 約9,800円 | 約13,800円 | 約16,800円 |
| 音の傾向 | 明瞭・快活・フラット | ウォーム・広大・ゆったり | 高解像・分析的・ドンシャリ |
| 得意ジャンル | POPS、ロック、アニソン | クラシック、ジャズ、バラード | EDM、現代音楽、打ち込み系 |
| 特徴 | 最も元気で万能な音 | 空間の広さを楽しむ音 | 音の粒子を細かく分析する音 |
- A3000との比較:
A3000は音場が広く、音が少し遠くから響いてくるような「ゆったりとした」鳴り方をします。
クラシックやスローテンポのジャズには最適ですが、疾走感のあるロックでは少し迫力不足に感じることも。
対してA2000は音が近く、ダイレクトに届くため、現代的なポップスやロックとの相性は抜群です。 - A4000との比較:
A4000は圧倒的な解像度を持ちますが、その分、録音の悪い音源のアラも目立たせてしまう厳しさがあります。
また、高音が鋭いために人によっては聴き疲れします。A2000はA4000の良さ(明瞭さ)を受け継ぎつつ、より音楽的に楽しく聴けるようチューニングされており、万人受けするバランスに仕上がっています。
結論: 初めての1本として選ぶなら、最も癖が少なく、どんなジャンルも元気よく楽しめるA2000が最も安全で満足度の高い選択肢です。
名機E3000との違い(形状とサウンドキャラクター)
長年、アンダー5,000円の王者として君臨する「E3000」との比較です。
- E3000(ステンレス筐体):
ホールで聴いているような、温かく響きのある音が特徴です。
音の角が取れていて柔らかく、癒やし系サウンドの極致と言えます。 - A2000(樹脂筐体):
スタジオやライブハウスの最前列で聴いているような、キレのあるクリアな音です。
音がハッキリとしていて、覚醒系サウンドと言えます。
また、使い勝手の面でも大きな違いがあります。
E3000は円筒形で装着は簡単ですが、ケーブルを耳の後ろに通さないためタッチノイズが出やすく、歩行時の使用には工夫が必要です。
対してA2000は「シュア掛け」前提の設計であり、歩きながらの使用でもノイズが入りません。
リケーブルも可能なため、断線リスクを考慮すると、日常的にラフに持ち歩く用途ならA2000の方が運用コストは安く済む可能性があります。
VR3000 for Gamingとの違い(空間表現 vs ダイレクト感)
ゲーミング特化モデル「VR3000」との比較です。
- VR3000:
バイノーラル録音や3Dオーディオの再生に特化しており、「空間」を再現するのが得意です。
オープンワールドRPGの環境音や、広大なマップのバトロワで「世界に没入する」ことを重視する場合に最適です。 - A2000:
「音の芯」を捉えるのが得意です。閉所での戦闘(Valorantなど)や、反射神経が問われるタクティカルシューターにおいて、音がダイレクトに鼓膜へ届くA2000の方が、反応速度において有利になる場面があります。
「普段は音楽を高音質で聴きたいし、家に帰ったらゲームもガチでやりたい」という欲張りなニーズには、音楽的な楽しさと高い定位感を兼ね備えたA2000が「二刀流」として最適解になります。
final A2000を使用した私の体験談・レビュー

ここからは、実際に私がA2000を自腹で購入し、日常生活の中でじっくりと使い込んでみた生の体験レポートをお届けします。
スペック表だけでは分からない、肌感覚のレビューです。
開封とファーストインプレッション:質感とデザイン
パッケージを開けてまず目を引いたのは、イヤホン本体のデザインと質感です。
外側はA3000やA4000と同様のエッジの効いた幾何学的なデザインで、色は落ち着いたマットブラック(ダークグレー寄り)。
しかし、イヤホンを裏返してみると、内側(耳に触れる側)が鮮やかなブルーになっていることに気づきます。
装着時には全く見えない部分ですが、この隠れたツートンカラーは「自分だけが知っているお洒落」という感じで、所有欲をくすぐる粋な演出だと感じました。
また、表面に施された「シボ塗装」は非常に実用的です。指で触れても指紋が全く目立たず、プラスチック特有の安っぽさが一切ありません。
高級一眼レフカメラのボディのようなザラッとした質感があり、1万円以下の製品とは思えない風格があります。
日常使いでの快適性:遮音性とタッチノイズについて
実際の通勤電車(地下鉄含む)で使用してみましたが、その遮音性(パッシブノイズアイソレーション)の高さには驚かされました。
ノイズキャンセリング機能(ANC)のような電気的な静寂ではありませんが、筐体の形状が耳のくぼみ(耳甲介)を隙間なく埋めるため、物理的に外音をかなり強力にカットしてくれます。
音楽を再生してしまえば、電車の走行音も遠くの背景音程度になり、十分に音楽に没頭できました。
また、付属のイヤーフックを使って「シュア掛け(耳の後ろにケーブルを通すスタイル)」をすることで、歩行時のタッチノイズ(服とケーブルが擦れるガサガサ音)はほぼ皆無になりました。
ケーブル自体もしなやかで取り回しが良く、満員電車内でカバンから取り出す際も絡まりにくく、ストレスフリーです。
楽曲ジャンル別試聴:ボーカル曲とスピード感ある曲の相性
さらに深く音質を探るため、特定のジャンルに絞って試聴を行いました。
- ケース1:
アイドルソング(多人数ボーカル)個人的に「これは!」と膝を打ったのが、アイドルソングとの相性です。
BPMの速いキラキラした楽曲でも、A2000のスピード感が見事に追従します。
特筆すべきはユニゾンパート(複数人で歌う部分)の分離感です。
音が団子にならず、一人ひとりの声の質感が綺麗に分離して聴こえ、ボーカルがビシッとセンターに定位します。
推しの声が埋もれず、かつバックトラックのベースラインもしっかりとリズムを刻んでくれる。
まさに「ドルオタ推奨イヤホン」と言いたくなる完成度でした。 - ケース2:
アコースティックギターの弾き語りギターの弦を弾く瞬間の鋭さと、ボディが共鳴する余韻のバランスが絶妙です。
過度な響きがない分、奏者の指使いや息遣いといった生々しい情報がダイレクトに伝わってきます。
リラックスして聴くというよりは、演奏に対峙して聴き入るような体験でした。
一方で、重厚なフルオーケストラなどを聴くと、ホールの残響感が少し整理されすぎていて、あっさりとした印象を受けることもありました。
このあたりは、響きを重視するA3000やE3000との明確な棲み分けができていると感じます。
リケーブルの検証:標準ケーブルとバランス接続の差
拡張性を試すため、手持ちの4.4mmバランスケーブル(純銅線)に交換してDAPで試聴してみました。
結果として、音の左右の分離感(クロストークのなさ)がさらに向上し、音場に立体的な奥行きが生まれました。確かに音質は向上します。
しかし、標準の3.5mmケーブルに戻して聴き直してみても、「音が悪い」「物足りない」とは感じませんでした。
むしろ、標準ケーブルの方が中低域のまとまりが良く、A2000が本来持っている「元気で快活なキャラクター」に合っている気さえしました。
結論として、無理にリケーブルを急ぐ必要はなく、まずは標準状態で十分に完成された音を楽しめると感じました。
リケーブルは「味変」の手段として、後々の楽しみにとっておくのが良いでしょう。
上位機種(A5000等)を知る視点から見たコストパフォーマンス
私は普段、3万円〜5万円クラスのイヤホン(例えばfinal A5000など)も愛用していますが、A2000をじっくり聴いた後では「価格差とは一体何なのか」と哲学的な問いすら浮かびました。
もちろん、静寂から音が立ち上がる際の微細な空気感や、圧倒的なダイナミックレンジといった点では、上位機種に軍配が上がります。
しかし、「9,800円でこれだけの楽しさと明瞭さ」を出されてしまうと、これからオーディオを趣味にしたいという友人に「とりあえずこれ買っとけ」と勧めるのは、間違いなくA2000です。
上位機種の存在意義を危うくするほどの、強烈なコストパフォーマンスを感じました。
体験談の総括:1万円以下の選択肢としての評価
総じて、A2000は「欠点を見つけるのが極めて難しい優等生」でした。
音質、装着感、デザイン、拡張性。これらが高い次元でバランスしており、安価なイヤホンにありがちな「音はいいけど装着感が悪い」「安いけど壊れやすい」といった妥協点が一切見当たりません。
毎日の通勤から自宅でのゲーム、そして週末のじっくりリスニングまで、常に持ち歩きたくなる最高の相棒となりました。
final A2000に関するQ&A

final A2000に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
マイクはついていますか?通話に使えますか?
いいえ、標準ケーブルにマイクは搭載されていません。
A2000は純粋に音楽を高音質で楽しむためのリスニング用イヤホンとして設計されています。スマートフォンやPCで通話やWEB会議に使用したい場合は、別途据え置きマイクを用意するか、マイク付きの2-Pinケーブルにリケーブル(交換)する必要があります。
スマートフォンに直接挿しても十分な音量が出ますか?
問題なく聴けますが、少しボリュームを上げる必要があるかもしれません。
A2000の感度は99dB/mWと、一般的なイヤホンに比べるとわずかに低めに設計されています。そのため、スマホ直挿しの場合は普段よりボリュームの目盛りをいくつか上げる必要があるかもしれません。もし音量不足を感じたり、より迫力のある音を楽しみたい場合は、数千円程度で購入できる「USB-DAC(ドングル型DAC)」の併用を強くおすすめします。
FPSゲーム(ApexやValorant)に使えますか?
はい、非常に適しています。
「ゲーミングイヤホン」という名称ではありませんが、A2000は音の立ち上がりが速く、輪郭がくっきりしているため、定位感(音の方向感覚)に優れています。低音が過剰に響かないため、足音や銃声が埋もれにくく、競技性の高いFPSタイトルでも十分に「勝てるデバイス」として活躍します。
定番のE3000と迷っています。どちらがおすすめですか?
聴きたいジャンルと用途によります。
- A2000がおすすめな人: ロック、ポップス、アニソンを元気に聴きたい。リケーブルで長く使いたい。歩きながら使いたい(タッチノイズが少ない)。
- E3000がおすすめな人: クラシックやジャズをまったり聴きたい。寝ホンとして使いたい。耳掛け式が苦手。 音の傾向が「A2000=明瞭・快活」「E3000=温厚・癒やし」とはっきり分かれているので、好みで選んで大丈夫です。
リケーブルの規格を教えてください。他社製ケーブルは使えますか?
2-Pin(0.78mm)規格に対応しています。
ただし、Aシリーズのコネクタ部分は筐体に少し埋め込まれている形状のため、コネクタカバーが大きいケーブルだと物理的に干渉して刺さらない場合があります。他社製ケーブルを購入する際は、コネクタ部分が細身のものや、CIEM用2-Pinに対応しているか確認することをおすすめします。
音漏れはしますか?
常識的な音量であれば、ほとんど気になりません。
筐体内側に音圧調整用の小さな通気孔(ベント)がありますが、耳にぴったりフィットする形状と密閉性の高いイヤーピースのおかげで、遮音性は非常に高いです。電車や図書館などでも、爆音にしない限り周囲への音漏れを気にする必要はほぼないでしょう。
5,000円〜1万円くらいの完全ワイヤレスイヤホンと迷っています。
「音質」と「寿命」を最優先するならA2000がおすすめです。
同価格帯のワイヤレスイヤホンも進化していますが、バッテリーやBluetoothチップにお金がかかる分、純粋な音質パーツへのコストは削られがちです。A2000は有線のため、バッテリー劣化による寿命の心配がなく、音の遅延もゼロです。また、同じ予算であれば有線の方が圧倒的に音の解像度や密度が高い傾向にあります。
ランニングやジムでのトレーニングに使えますか?
装着感は抜群ですが、汗には注意が必要です。
付属のイヤーフックを使えば激しく動いても外れにくいですが、A2000には防水・防滴機能(IPX規格)がありません。大量の汗が内部に入ると故障の原因になる可能性があります。軽いジョギング程度なら快適に使えますが、汗だくになるようなハードなトレーニングでの使用は避けたほうが無難です。
ASMR動画の視聴には向いていますか?
はい、かなり楽しめます。
finalにはASMR専用の「VR3000」や「E500」がありますが、A2000も微細な音を拾う能力が高いため、ASMR適性は高いです。特に耳かき音や炭酸の音など、高域のクリスプさ(カリッとした音)を楽しむコンテンツでは、VR3000よりもゾクゾク感を味わえるという声もあります。
「寝ホン」(寝ながら聴く用)として使えますか?
横向き寝にはあまり向きません。
筐体が薄型で耳への収まりは良いですが、角のあるデザイン(エッジの効いた形状)のため、横を向いて耳を枕に押し付けると痛みを感じる可能性があります。寝ホン用途を重視するなら、筐体が円筒形でより小さな「final E3000」や「E500」の方が適しています。
バランス接続(4.4mm)にリケーブルする価値はありますか?
あります。音場の広がりと分離感が向上します。
A2000は標準ケーブルでもバランスが良いですが、ドライバーのポテンシャルが高いため、バランス接続にすることで左右のセパレーション(分離感)が良くなり、空間表現がより立体的になります。ただし、まずは標準ケーブルで聴き込んで、変化を楽しみたくなった時の「次のステップ」として検討するくらいで十分です。
パソコン(PC)のイヤホンジャックに直接挿しても良いですか?
可能ですが、「ホワイトノイズ」が気になる場合があります。
PCのマザーボード直付けのイヤホンジャックは、ノイズ対策が不十分な場合が多く、「サーッ」というホワイトノイズが乗ることがあります。A2000は音を拾う性能が高いため、PC側のノイズも拾ってしまいがちです。Web会議やゲームで快適に使うなら、千円〜二千円程度のもので構いませんので、USB接続のDAC(変換アダプター)を介して接続することをおすすめします。これだけでノイズが劇的に減り、クリアな音になります。
final A2000レビューのまとめ

final A2000のメリット
- 圧倒的な明瞭感: 曇りのないクリアな中高域と、スピード感のあるレスポンスにより、音楽のディテールを鮮明に描きます。
- 質の高い低音: 量で誤魔化さない、芯のあるタイトで弾むような低音は、リズムの楽しさを再発見させてくれます。
- 極上の装着感: 3点保持機構と軽量設計により、長時間使用でも痛みや疲れを感じさせません。
- 高い拡張性: 2-Pinリケーブル対応で、断線時の修理や音質カスタマイズが可能。長く使える設計です。
- ゲーミング適性: 正確な定位感と分離能力により、FPSなどの競技シーンでも有利に立ち回れるポテンシャルを持っています。
final A2000のデメリット・注意点
- 駆動力が必要: 感度が99dBとやや低めなため、スマホ直挿しだといつもよりボリュームを数目盛り上げる必要があります。
- マイクなし: 通話用マイクはついていないため、WEB会議やボイスチャットで使う場合は別途マイクを用意するか、マイク付きケーブルへ交換が必要です。
- 付属品: キャリングポーチやケースは付属しません。持ち運びの際は別途ケースを用意することをお勧めします。
おすすめできるユーザー層
- スマホ付属のイヤホンや、安価なワイヤレスイヤホンからのステップアップを考えている人
- ロック、ポップス、アニソン、アイドルソングをメインに聴く人
- FPSゲーマーで、足音を正確に聞き分けたいが、ゲーミングデバイスの過剰な低音は苦手な人
- 耳の穴が小さく、イヤホンの装着感に悩みがある人
おすすめの再生環境(DAP・DACの必要性)
スマホのイヤホンジャックに直挿しでも十分に良い音を楽しめますが、A2000のポテンシャルを100%引き出すなら、数千円程度のエントリークラスでも良いのでUSB-DAC(ドングル型DAC)の使用をおすすめします。
スティック型のDACを挟むだけで、音の厚み、低音の駆動力、そしてダイナミックレンジが如実に向上し、さらに一段上のサウンド体験が可能になります。
A2000はプレイヤー側の変化にも敏感に反応してくれる、懐の深いイヤホンです。
購入時のチェックポイント
購入時は、偽物を避けるためにも正規取扱店(e☆イヤホンや大手家電量販店、公式オンラインストアなど)を利用しましょう。
また、非常に注目度の高い機種であるため、一時的に在庫切れになる可能性もあります。
在庫があるのを見かけたら、早めの決断が良いかもしれません。
final A2000レビューの総評:エントリークラスの枠を超えた実力機
final A2000は、1万円以下という激戦区に投じられた、まさに「価格破壊」の一石です。
それは単に「価格が安い」という意味ではなく、「この価格で、これだけの技術・素材・音質・装着感を実現してしまった」という、メーカーの技術力と良心に対する驚きを意味します。
「有線イヤホンなんて、どれも同じでしょ? ワイヤレスの方が便利じゃん」
そう思っている方にこそ、ぜひ一度聴いていただきたい一本です。
いつものプレイリストを再生した瞬間、「えっ、こんな音が鳴っていたの?」という新しい発見と感動が、あなたを待っています。
有線イヤホンならではの奥深い世界への入り口として、これほど相応しい製品は他にありません。
在庫があるうちに、この新しいスタンダードを手に入れ、あなたの音楽体験をアップデートしてください。

