音楽を聴くためのツールとして、完全ワイヤレスイヤホンが市場を席巻している昨今ですが、その一方で「ヘッドホン」というカテゴリもまた、確実な復権を遂げています。
ファッションアイテムとしてのアイコン性、ドライバーサイズの物理的優位性がもたらすリッチなサウンド、そしてデジタルデトックス的な没入感。
これらを求めて、Z世代からオーディオ愛好家まで多くの人々が再びヘッドホンを手に取り始めています。
しかし、ヘッドホン選びには長年解決されない一つのジレンマがありました。
それは「携帯性を取るか、機能を重視するか」という、二者択一の問題です。
- アラウンドイヤー型(耳を覆うタイプ):
一般的にノイズキャンセリングや高音質技術が詰め込まれているが、筐体が大きく重い。夏場は蒸れやすく、使わない時に首にかけると顎に当たって邪魔になることも多い。 - オンイヤー型(耳に乗せるタイプ):
小さくて軽く、ファッションとの親和性も高い。しかし、遮音性が物理的に低いため、ノイズキャンセリング機能が省略されがちで、あくまで「カジュアルな安価モデル」という扱いを受けることが多い。
この「オンイヤー型=低機能」という市場の常識に、真っ向から挑んだのがアメリカの老舗オーディオブランドJBL(ジェービーエル)から発売された「JBL Tune 680NC」です。
JBLといえば、コンサートホールや映画館のスピーカーシステムで世界的なシェアを誇る、75年以上の歴史を持つ音響メーカーです。
そのJBLが「Tune」シリーズで提案したのは、わずか160g台という圧倒的な軽さを誇るオンイヤー型でありながら、妥協のない本格的な機能性を詰め込むことでした。
本機は、ハイブリッド・ノイズキャンセリングの搭載にとどまらず、Bluetoothの次世代規格である「LE Audio」への対応、独自の「空間サウンド」技術、そして最大76時間という規格外のバッテリーライフを実現しています。
価格は税込16,500円(※価格は変動の可能性あり)。
エントリーからミドルクラスの価格帯で、現代のワイヤレスヘッドホンに求められる「全部入り」を実現したこのモデルは、果たしてカタログスペック通りの実力を持っているのでしょうか?
そして、オンイヤー型の宿命である「装着感」や「音漏れ」といった課題をどう克服しているのでしょうか?
今回は、JBL Tune 680NCを実際に長期間使用し、その音質、装着感、ノイズキャンセリング性能、そして日常生活での使い勝手を徹底的にレビューしていきます。
通勤・通学用のヘッドホンを探している方や、おしゃれに音楽を楽しみたい方、そして「イヤホンでは味わえない迫力が欲しいが、重いヘッドホンは嫌だ」というワガママな要望をお持ちの方は、ぜひ最後までお付き合いください。
- JBL Tune 680NCの主な特徴とスペック
- JBL Tune 680NCのデザイン・装着感・操作性の詳細レビュー
- JBL Tune 680NCの音質とノイズキャンセリングの実力検証
- JBL Tune 680NCを使用した私の体験談・レビュー
- JBL Tune 680NCに関するよくある質問(Q&A)
- オンイヤー型ですが、音漏れは気になりますか?
- 防水・防滴機能はありますか?運動中に使えますか?
- メガネをかけたままでも痛くなりませんか?
- ゲームや動画で音ズレ(遅延)はありますか?
- 充電しながら音楽を聴くことはできますか?
- 有線接続(ケーブル)でもノイズキャンセリングは使えますか?
- 専用アプリ「JBL Headphones」は必ずインストールする必要がありますか?
- イヤーパッドがボロボロになったら交換できますか?
- 頭が大きい男性でも装着できますか?また、子供用としてはどうですか?
- PS5やNintendo Switchなどのゲーム機でも使えますか?
- 通話時のマイクミュート機能はありますか?
- ハイレゾワイヤレス(LDACやaptX Adaptive)には対応していますか?
- 「LE Audio(LC3)」はどんなスマホでも使えますか?
- 前モデル(Tune 660NC)から何が進化したのですか?
- JBL Tune 680NCレビューのまとめ
JBL Tune 680NCの主な特徴とスペック

まずは、JBL Tune 680NCがどのような製品なのか、その特徴と基本スペックを、技術的な背景も含めて深掘りしていきましょう。
オンイヤー型でノイキャン搭載という希少性
ヘッドホンの市場を見渡すと、アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載しているモデルの9割以上は、耳全体をすっぽりと覆う「アラウンドイヤー型(オーバーイヤー型)」です。
なぜなら、ノイズキャンセリングの効果を最大化するためには、まず物理的に外音を遮断する「パッシブノイズキャンセリング(PNC)」の効果が高くなければならないからです。
アラウンドイヤー型はイヤーパッドで耳を密閉しやすいため、この条件を容易にクリアできます。
一方で、JBL Tune 680NCが採用した「オンイヤー型」は、耳介(耳たぶ)の上にパッドを乗せる構造です。
この構造は、どうしても耳とパッドの間に隙間ができやすく、外音が侵入しやすいという特性があります。
- 一般的なオンイヤー型の弱点:
隙間からの音漏れやノイズ侵入が多く、ANCの効果が出にくい。
そのため、多くのメーカーは開発コストのかかるANCの搭載を見送る傾向にある。 - Tune 680NCの挑戦:
JBLは、コンパクトさを維持したまま、ハウジングの外側と内側にマイクを配置する「ハイブリッド・ノイズキャンセリング」技術を採用。
さらに、イヤーパッドの素材と側圧の調整により物理的な遮音性を極限まで高め、オンイヤー型でありながら実用的な静寂空間を作り出すことに成功しました。
この「小さくて高性能」という立ち位置こそが、本機の最大のユニークポイントであり、市場における希少価値を高めています。
最新規格LE Audioとマルチポイントへの対応
本機は、単に音が良いだけでなく、通信技術の面でも「未来」を見据えた設計になっています。
次世代規格「LE Audio」と「Auracast」への対応
JBL Tune 680NCは、Bluetoothの次世代音声規格である「LE Audio」に対応しています(※ファームウェアアップデートや対応送信機が必要な場合があります)。
LE Audioのメリット:
- LC3コーデック: 従来のSBCコーデックに比べ、半分以下のビットレートでも高音質を実現し、遅延も大幅に低減します。
- 省電力: バッテリー消費を抑え、長時間再生に寄与します。
さらに、「Auracast(オーラキャスト)」への対応も見逃せません。
これは、1台の送信機から無数の受信機(ヘッドホンやイヤホン)へ同時に音声を放送できる機能です。
将来的には、空港のロビーテレビの音声を自分のヘッドホンで聴いたり、映画館や美術館のガイド音声を自分のデバイスで受信したりといった使い方が想定されています。
この「将来のインフラ」に対応している点は、長く愛用する上で大きな安心材料となります。
必須機能「マルチポイント接続」
現代のデジタルライフに欠かせない「マルチポイント接続」にも標準対応しています。
これは、異なる2つのデバイスに同時にBluetooth接続を維持できる機能です。
【マルチポイントの活用例】
- PCとスマートフォンの2台に同時接続しておく。
- PCでYouTubeを見たり、Web会議を行う。
- スマートフォンに着信があれば、ペアリング操作なしで自動的にスマホの通話音声に切り替わる。
- 通話が終われば、またPCの音声に戻る。
エントリークラスの製品では省略されることも多いこの機能ですが、Tune 680NCはしっかりと搭載。
仕事とプライベートをシームレスに行き来できるため、テレワークの相棒としても優秀です。
バッテリー持ちと基本仕様の比較
ワイヤレスヘッドホンにおける最大のストレスの一つが「充電切れ」ですが、JBL Tune 680NCはその不安を過去のものにします。
| 項目 | ANC オフ時 | ANC オン時 | 充電時間 | 急速充電 |
| 再生時間 | 最大 76時間 | 最大 44時間 | 約3時間 | 5分充電で3時間再生 |
ANCオフで76時間という数字は驚異的です。
仮に往復2時間の通勤で毎日使ったとしても、約1ヶ月以上充電不要という計算になります。
旅行や出張の際も、充電ケーブルを持ち歩く必要すらないかもしれません。
また、万が一バッテリーが切れた場合でも、わずか5分の充電で3時間使える急速充電機能がピンチを救ってくれます。
スペック比較:Tune 680NC vs Tune 770NC
同時期に展開されている兄弟機(アラウンドイヤー型)との比較を表にまとめました。
| 特徴 | Tune 680NC (本機) | Tune 770NC |
| 装着タイプ | オンイヤー型 (耳に乗せる) | アラウンドイヤー型 (耳を覆う) |
| ドライバー | 32mm | 40mm |
| 重量 | 約164g | 約232g |
| Bluetooth | Ver 5.3 (LE Audio対応) | Ver 5.3 (LE Audio対応予定※) |
| 再生時間(ANC OFF) | 最大76時間 | 最大70時間 |
| 価格帯 | 約16,500円前後 | 約16,000円前後 |
特筆すべきは、ドライバーサイズが小さいにも関わらず、バッテリー持ちでは兄貴分のTune 770NCを上回っている点です。
重量差は約70g。卵1個強分の重さの違いですが、首に長時間かけた時の負担感は数値以上に異なります。
JBL Tune 680NCのデザイン・装着感・操作性の詳細レビュー

ここでは、実際のプロダクトデザインの質感や、長時間使用した際の装着感、そして毎日の使い勝手を左右する操作性について詳しく解説します。
軽量164gのコンパクト設計と質感
パッケージから取り出して最初に感じるのは、「軽っ!」という衝撃です。
約164gという重量は、最新のiPhone 15 Pro(約187g)よりも軽く、文庫本1冊程度の重さしかありません。
【外観のポイント】
- サステナブルな素材感:
近年のJBL製品は環境への配慮を強化しており、パッケージには大豆由来インクを使用し、プラスチック使用量を削減しています。
本体自体は樹脂製ですが、マットな塗装仕上げにより、チープさは感じられません。
指紋も目立ちにくく、長く綺麗に使えそうです。 - カラー展開:
ブラック、ホワイト、ベージュの3色展開。
特にレビューで使用した「ベージュ」は、単なる肌色ではなく、少しグレイッシュで落ち着いたトーンです。
ゴールドのロゴアクセントが効いており、上品でジェンダーレスな雰囲気を醸し出しています。
カフェでテーブルに置いてもガジェット感が薄く、ファッション雑貨のように馴染みます。 - 携帯性:
独自の3Dヒンジデザインにより、ハウジング部分を内側に折りたたむことができ、非常にコンパクトになります。
冬場のアウターのポケットや、小さめのサコッシュにもスッと入るサイズ感は、アラウンドイヤー型にはない大きなアドバンテージです。
オンイヤー型の宿命と側圧について
装着感については、オンイヤー型特有の特性を正しく理解しておく必要があります。
- イヤーパッドの品質:
ソフトPUレザー素材を採用しており、触り心地は「もちもち」としています。
動画内でも触れられていたように、安価なヘッドホンにあるようなペラペラ感はなく、シワ加工が施されているため耳への当たりは非常に柔らかいです。 - 側圧(締め付け):
ここが評価の分かれ目です。
Tune 680NCは、ノイズキャンセリング性能を高め、低音を逃さないために、側圧はやや強めに設定されています。
【装着感の評価】
- ホールド感:◎
頭を振ってもズレにくく、小走りで移動しても安定しています。
フィットネスジムでの軽い運動程度なら問題なく使用できるでしょう。 - 長時間使用:△
メガネをかけている方や、耳が敏感な方は、2〜3時間の連続使用で耳珠(耳の前の軟骨)付近に物理的な圧迫感や痛みを感じる可能性があります。
1時間に1回程度、少し位置をずらしたり外したりする休憩が推奨されます。
物理ボタンの操作性とアプリのカスタマイズ性
操作インターフェースは、右側のイヤーカップに集約された「物理ボタン」方式を採用しています。
最近はタッチセンサー式も増えていますが、確実な操作性を求めるなら物理ボタンに軍配が上がります。
【物理ボタンのメリット】
- 手袋対応: 冬場に手袋をしていても問題なく操作が可能。
- 誤操作防止: タッチセンサーのように、髪の毛が触れたりフードが当たったりして勝手に曲が止まるといったストレスがありません。
- フィードバック: 「カチッ」というクリック感があり、操作したことが指先で確実にわかります。
【ボタン配置の課題】
- 音量アップ / 曲送り(長押し)
- 再生 / 一停止 / 通話(マルチファンクション)
- 音量ダウン / 曲戻し(長押し)
- 電源ボタン
- ANC / 外音取り込み切り替えボタン
これらが右側に密集しているため、慣れるまでは指先の感覚だけで目的のボタンを探すのが少し難しいかもしれません。
特に音量ボタンと再生ボタンの位置関係は、使いながら指に覚えさせる必要があります。
【専用アプリ:JBL Headphones】
ハードウェアだけでなく、ソフトウェアの完成度も非常に高いです。
- イコライザー(EQ): 「JAZZ」「VOCAL」「BASS」などのプリセットに加え、波形を自由に動かして独自のサウンドカーブを作成・保存できます。
- 操作のカスタマイズ: マルチファンクションボタンの挙動などをユーザーの好みに合わせて変更可能。
- VoiceAware: 通話時に自分の声をどれくらいヘッドホンから聞くか(サイドトーン)を調整できる機能。これを調整することで、密閉型特有の「自分の声がこもって話しにくい」現象を緩和できます。
JBL Tune 680NCの音質とノイズキャンセリングの実力検証

オーディオ機器としての核心部分である「音」と「静寂性」について、様々なジャンルの楽曲と環境で検証しました。
JBLらしいパワフルなドンシャリサウンド
32mmという小口径ドライバーですが、そこから出てくる音は想像以上にパワフルです。
JBLが長年培ってきた「Pure Bass Sound」のフィロソフィーが色濃く反映されています。
【音質の傾向:元気な弱ドンシャリ】
- 低音域:
JBLの真骨頂です。
バスドラムのキック音やベースラインの量感がたっぷりとあり、音圧を感じられます。
オンイヤー型は構造上、低音が抜けやすい傾向にありますが、しっかりとした側圧とパッドの密閉性により、重厚な低音を鼓膜にダイレクトに届けてくれます。 - 中音域:
低音が豊かでありながら、ボーカル域を邪魔しない絶妙なチューニングです。
男性ボーカルの厚みも、女性ボーカルの艶もクリアに表現します。
いわゆる「籠もり」はほとんど感じられません。 - 高音域:
キラキラとした派手さがあります。
シンバルや電子音の表現が得意で、楽曲にスピード感を与えます。
音量を上げすぎると若干刺さり気味になる瞬間もありますが、基本的には聴き疲れしにくいラインを攻めています。
【相性の良いジャンル】
- ベストマッチ:
ロック、ポップス、EDM、ヒップホップ、K-POP。
ビートの効いた音楽を、身体を揺らしながら楽しむのに最適です。 - 不向き:
繊細なクラシックの小編成や、ホールの空気感を重視するアコースティックジャズなどでは、音が太すぎて繊細さに欠ける印象を受けるかもしれません。
空間サウンドと有線接続のポテンシャル
アプリで設定できる「空間サウンド(Spatial Sound)」機能は、単なるエフェクト以上の価値があります。
これは、独自のアルゴリズムによってステレオ音源を擬似的に3Dオーディオ化する技術です。
| モード | 効果と特徴 |
| ムービー | 映画館のような響きを付与。セリフの明瞭度を保ちつつ、爆発音などの迫力を増強し、音場を横に広げます。 |
| ミュージック | ライブ会場のような広がりを再現。オンイヤー型の弱点である「頭内定位(音が頭の中で鳴る閉塞感)」を緩和し、開放的なリスニング体験を提供します。 |
| ゲーミング | 音の方向感を強調。FPSゲームなどで敵の足音や銃声の位置を把握しやすくなります。 |
また、付属の3.5mmオーディオケーブルを使用すれば、有線ヘッドホンとしても機能します。
有線接続時はハイレゾオーディオの再生帯域に対応し、ワイヤレス時よりも音の輪郭が緻密になり、解像度が一段階向上します。
バッテリーが切れた際のバックアップとして使えるだけでなく、じっくり音楽と向き合いたい時の「高音質モード」としても使えるのは大きな強みです。
※ただし、有線接続時はマイク機能が使えない場合や、EQ設定が反映されない場合がある点には注意が必要です。
ノイズキャンセリングと外音取り込みの精度
肝心のノイズキャンセリング性能についてです。
【ノイズキャンセリング(ANC)】
「世界から音が消える」といった最高峰アラウンドイヤー型(例えばSony WH-1000XM5など)レベルの静寂には届きません。
しかし、エアコンの空調音、PCのファンの音、カフェのざわめきなど、生活環境における中音域のノイズはかなり効果的にカットしてくれます。音楽を再生してしまえば、周囲の音はほぼ気にならなくなります。
一方で、電車の走行音などの重低音ノイズや、突発的な高音(赤ちゃんの泣き声など)は多少残る印象です。
ANC特有の「ツーン」とする鼓膜への圧迫感が少なく、ホワイトノイズ(サーっという音)も非常に小さく抑えられています。
長時間使っていても「ノイキャン酔い」しにくい自然な効き味です。
【外音取り込み(アンビエントアウェア & トークスルー)】
- アンビエントアウェア:
音楽を聴きながら周囲の音を取り込むモード。
マイク性能が良く、非常に自然な聞こえ方で、風切り音対策もしっかりされています。 - トークスルー:
これが非常に優秀です。ボタン一つで音楽の音量をほぼミュートし、人の声を強調して取り込みます。
ヘッドホンを外さずに会話ができるため、コンビニのレジや、電車のアナウンスを聞きたい時に重宝します。
JBL Tune 680NCを使用した私の体験談・レビュー

ここでは、スペックシートからは読み取れない、実際に日常生活で使用して感じた「生の声」をお届けします。
ファッションアイテムとしての街使い
JBL Tune 680NCを手にして一番良かったと感じたのは、その「収まりの良さ」です。
アラウンドイヤー型の大きなヘッドホン(例えばJBL Tour One M2など)は音質こそ最高ですが、首にかけて歩くと顎に当たったり、首の動きが制限されたりして、移動中に邪魔に感じることがあります。
しかし、Tune 680NCはハウジングが小さいため、首にかけていてもアクセサリーのような感覚で身体に馴染みます。
特に冬場は、軽量なイヤーマフ代わりとしても機能し、音楽を聴かない時でも首元にあるだけでコーディネートのアクセントになりました。
ストリートファッションはもちろん、オフィスカジュアルにも違和感なく溶け込む「音の良いファッション雑貨」としての完成度は非常に高いです。
カフェ作業での「トークスルー」機能の利便性
私はよくカフェで執筆作業をしますが、この環境でTune 680NCは最高のパートナーでした。
ノイズキャンセリングをONにして集中モードに入りつつ、店員さんがお水を注ぎに来てくれた時や、追加注文をする時には、右耳のボタンを2回押して「トークスルー」モードへ。
ヘッドホンを外す動作は、相手に対して「会話を遮断していた」という印象を与えがちですが、装着したままボタン操作だけでスッと会話に入れるスマートさは、コミュニケーションツールとしても非常に有用だと感じました。
ゲーム・動画鑑賞時の遅延と臨場感
iPhoneでのNetflix視聴や、カジュアルなスマホゲーム(リズムゲーム以外)も試しました。
アプリで「ビデオモード」に設定していれば、口の動きと声のズレ(リップシンクの遅延)はほとんど気になりません。
特に驚いたのが「空間サウンド(ゲーミング)」の効果です。
スマホでPUBGモバイルなどのバトロワ系ゲームをプレイした際、通常のステレオ再生よりも足音の方向や銃声の位置関係が把握しやすくなりました。
ガチガチの競技用ゲーミングヘッドセットには及びませんが、エンターテインメントとして楽しむ分には十分すぎる性能と迫力です。
また、LE Audioに対応したトランスミッター(別売)を使用すれば、さらに低遅延な環境でPCゲームやコンソールゲームも楽しめるポテンシャルを秘めています。
通話品質とマルチポイントの挙動
ZoomやTeamsを使用したWEB会議でも実戦投入しました。
JBLのマイク性能は定評がありますが、本機も例外ではありません。
こちらの声はクリアに相手に届き、周囲の雑音も適度にカットしてくれます。
「VoiceAware」機能で自分の声をモニタリングできるため、大声になりすぎずに自然に話せるのも良かったです。
また、PCで会議中にスマホへLINE通話の着信があった際、マルチポイントのおかげでPC側の接続を切る操作をすることなく、ヘッドホンのボタンを押すだけでスマホの通話に出ることができました。
通話終了後は自動でPC音声に戻る、このスムーズさは、ビジネスパーソンにとって強力な武器になります。
使用して気になった「惜しい」ポイント
もちろん、完璧な製品ではありません。購入前に知っておくべき「惜しい点」も正直にお伝えします。
- 長時間の痛み:
やはり3時間を超える映画を連続で観た後は、耳が痛くなりました。
映画一本(2時間)くらいなら大丈夫ですが、半日つけっぱなしにするなら、耳を包み込むアラウンドイヤー型の方が有利です。 - 自動装着検知がない:
上位モデルにあるような、ヘッドホンを外した時に音楽が自動で止まる機能(近接センサー)はありません。
外して首にかけている間も音楽が流れ続けるため、手動で止める必要があります。
これはバッテリー節約の観点からも少し残念な点です。 - ポーチが付属しない:
折りたためる仕様ですが、キャリングポーチは付属していません。
カバンの中にそのまま放り込むと傷がつく心配があるので、別途100円ショップなどで適当なポーチを用意することをおすすめします。
体験談の総括
総じて感じたのは、「生活に溶け込むヘッドホン」であるということです。
最高音質を求めて静かな部屋で座って聴くための機材ではなく、移動中、カフェでの作業中、家事の最中など、常に身につけて音楽と共に生活するためのツールとして、サイズ感と機能のバランスが極めて優秀だと感じました。
JBL Tune 680NCに関するよくある質問(Q&A)

ここでは、JBL Tune 680NCに関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
オンイヤー型ですが、音漏れは気になりますか?
アラウンドイヤー型(耳を覆うタイプ)に比べると、構造上どうしても音漏れはしやすい傾向にあります。
ただし、Tune 680NCはイヤーパッドの密着性が高く、側圧もしっかりしているため、一般的なオンイヤー型の中では音漏れは少ない部類に入ります。 電車内や静かなオフィスなどで使用する場合は、普段よりも音量を1〜2段階下げて使用するのがマナーとして安心です。大音量でロックを聞く際は、周囲の環境に少し気を配る必要があります。
防水・防滴機能はありますか?運動中に使えますか?
公式スペックとして防水・防滴規格(IPXなど)の明記はありません。
軽い運動(ウォーキングや軽いジョギング)程度であれば、側圧がしっかりしているためズレ落ちることはありませんが、大量に汗をかく激しいスポーツや、雨天時の屋外での使用は故障の原因になる可能性があるため避けたほうが無難です。ジムで使用した後は、イヤーパッドについた汗を乾いた布で拭き取るなどのケアをおすすめします。
メガネをかけたままでも痛くなりませんか?
短時間なら問題ありませんが、長時間(2時間以上)の使用は痛みが出る可能性があります。
本機はノイズキャンセリング性能を高めるため、耳を挟む力(側圧)がやや強めに設計されています。そのため、メガネのツルが耳周りの皮膚に押し付けられ、長時間装着していると痛みを感じることがあります。メガネユーザーの方は、こまめに休憩を挟むか、ツルの細いメガネと併用することをおすすめします。
ゲームや動画で音ズレ(遅延)はありますか?
アプリで「ビデオモード」に設定すれば、遅延はほとんど気になりません。
YouTubeやNetflixなどの動画視聴、RPGやアクションゲーム程度であれば、違和感なく楽しめます。また、本機は「LE Audio」に対応しているため、対応デバイスと接続すればさらに低遅延・高音質な通信が可能です。 ただし、タイミングがシビアな「音ゲー(リズムゲーム)」や、競技性の高いFPSをガチでプレイする場合は、付属のケーブルを使った有線接続をおすすめします。
充電しながら音楽を聴くことはできますか?
基本的に充電中はBluetooth接続がオフになり、使用できません。
ですが、本機は「5分の充電で約3時間再生可能」という急速充電に対応しています。バッテリーが切れた場合でも、少しの休憩時間に充電するだけで、すぐにまた長時間使用できるようになります。
有線接続(ケーブル)でもノイズキャンセリングは使えますか?
はい、電源がONの状態であれば、有線接続時でもノイズキャンセリング機能を使用できます。
飛行機の機内エンターテインメントシステムなど、Bluetoothが使えない環境でも、付属のケーブルで接続しつつ、ノイズキャンセリングで騒音をカットして映画や音楽を楽しむことができます。ただし、バッテリーが完全に切れている状態では音が出ない(パッシブ動作非対応)仕様の場合があるため、ある程度の充電は必要です。
専用アプリ「JBL Headphones」は必ずインストールする必要がありますか?
必須ではありませんが、インストールを強くおすすめします。
アプリがなくてもBluetooth接続だけで音楽を聴くことは可能です。しかし、本機の魅力である「イコライザー調整(自分好みの音にする)」「空間サウンドの設定」「ボタン操作のカスタマイズ」「ファームウェアのアップデート」などはアプリ経由で行います。 特に初期設定の音質から低音を強めたり、ボーカルを聞きやすくしたりといった調整はアプリがないとできないため、100%の性能を引き出すにはインストール推奨です。
イヤーパッドがボロボロになったら交換できますか?
はい、交換可能な構造になっています。
イヤーパッドは消耗品ですので、長年使っていると加水分解などで表皮が剥がれてくることがあります。JBL製品はサードパーティ製を含め交換用パッドが市場に多く流通しているため、汚れたり破れたりしてもパッドだけ交換して長く愛用することができます。
頭が大きい男性でも装着できますか?また、子供用としてはどうですか?
サイズ調整は可能ですが、頭の大きい方は窮屈に感じるかもしれません。
ヘッドバンドの長さはスライダーで調整可能ですが、本体自体がコンパクトな設計であり、かつ側圧(挟む力)が強めです。頭のサイズが大きめの方が長時間装着すると、締め付けがきつく感じる可能性があります。 逆に、小ぶりなサイズ感と軽量設計のおかげで、女性や小学校高学年くらいのお子様には非常にフィットしやすいサイズ感と言えます。
PS5やNintendo Switchなどのゲーム機でも使えますか?
Bluetoothオーディオ対応のゲーム機であれば接続可能です。
Nintendo Switchなどは本体のBluetooth機能を使って直接接続できます。ただし、Bluetooth接続はわずかな遅延が発生するため、音ゲーやFPSなどのタイミングがシビアなゲームには向きません。 遅延を極限まで無くしたい場合は、付属のケーブルを使ってコントローラーや本体のイヤホンジャックに有線接続することをおすすめします。
通話時のマイクミュート機能はありますか?
本体ボタン操作でのマイクミュート機能は搭載されていません。
通話中にこちらの声を消したい(ミュートしたい)場合は、接続しているスマートフォンやPCの画面上で操作する必要があります。WEB会議などで頻繁にミュート切り替えを行う方はご注意ください。
ハイレゾワイヤレス(LDACやaptX Adaptive)には対応していますか?
いいえ、LDACやaptX Adaptiveなどの既存のハイレゾコーデックには対応していません。
本機が対応しているコーデックは、標準的な「SBC」「AAC」と、次世代規格の「LC3(LE Audio)」です。 「AAC」に対応しているためiPhoneでも十分高音質で楽しめますが、より高ビットレートなハイレゾ音源をロスレスに近い状態で聴きたい場合は、付属のケーブルを使用した有線接続を行ってください。
「LE Audio(LC3)」はどんなスマホでも使えますか?
いいえ、対応したスマートフォン(Android)が必要です。
LE Audioを使用するには、スマートフォン側がAndroid 13以降であり、かつハードウェアレベルでLE Audioに対応している必要があります(例:Xperia 1 IV/V/5 IV/5 V、Google Pixel 7/8シリーズの一部など)。 お持ちのスマートフォンが対応していない場合やiPhoneの場合は、自動的に従来の接続方式(SBC/AAC)で接続されますので、使えないということはありません。ご安心ください。
前モデル(Tune 660NC)から何が進化したのですか?
主に「機能性」と「バッテリー持ち」が劇的に進化しました。
音質の傾向は似ていますが、以下の点が大きくアップグレードされています。
- マルチポイント対応: 2台同時待受が可能になった(660NCは非対応)。
- アプリ対応: イコライザー調整や設定変更が可能になった。
- バッテリー: 最大44時間(ANCオン)→ 最大44時間(ANCオン)※ANCオフ時は55時間→76時間へと大幅に伸びています。
- 通信規格: 最新のLE Audioに対応し、将来性が高まった。
JBL Tune 680NCレビューのまとめ

JBL Tune 680NCの実機レビューをお届けしました。
最後に、この製品のメリット・デメリット、そしてどんな人におすすめかを整理します。
JBL Tune 680NCのメリット
- 希少なスペック: オンイヤー型でありながら実用的なノイズキャンセリングを搭載し、遮音性と携帯性を両立。
- 圧倒的スタミナ: 最大76時間のバッテリー持ちで、日々の充電ストレスから解放される。
- JBLサウンド: 小さくても妥協のない、迫力ある低音と楽しいリスニング体験。
- 多機能: LE Audio、マルチポイント、アプリ対応(EQ・空間サウンド)、有線対応と全部入り。
- デザイン: 軽量コンパクトで、首にかけても邪魔にならない高いファッション性。
JBL Tune 680NCのデメリット
- 装着感: 側圧が少し強めで、長時間の連続使用(3時間以上)は耳が痛くなる場合がある。
- ANCの限界: アラウンドイヤー型に比べると、重低音や突発音の遮音性は劣る。
- 付属品: キャリングポーチやケースがついていない。
- 機能省略: 自動装着検知(着脱での自動再生/停止)がない。
Tune 770NC(アラウンドイヤー型)との比較
同価格帯で最大のライバルとなるのは、間違いなく兄弟機の「Tune 770NC」でしょう。
- 没入感と快適性を重視するなら:
Tune 770NC(耳を覆うので物理的な遮音性が高く、長時間の装着でも痛くなりにくい。映画鑑賞や長距離フライト向き) - 軽さと携帯性、ファッション性を重視するなら:
Tune 680NC(荷物にならず、見た目もスマート。機能面は同等以上。通勤・通学、街歩き向き)
コストパフォーマンスの評価
税込16,500円という価格設定に対し、提供される機能(ハイブリッドANC、高機能アプリ、マルチポイント、超ロングバッテリー)は非常に充実しています。
ビルドクオリティも高く、決して「安かろう悪かろう」ではありません。
特に、LE Audioという将来の規格に対応しているため、陳腐化しにくく長く使える点も加味すれば、総合的なコストパフォーマンス評価は、非常に高いといえます。
購入をおすすめするユーザー層
JBL Tune 680NCは、以下のような方に強くおすすめできます。
- 通勤・通学用のメイン機を探している人:
カバンの中で邪魔にならず、毎日の充電も不要。満員電車でも他人の邪魔になりにくいコンパクトさは正義です。 - ファッションの一部としてヘッドホンを使いたい人:
「ヘッドホン女子/男子」のようなスタイルを目指すなら、ゴツすぎないこのサイズ感がベストバランスです。 - 洋楽ポップスやロック、EDMが好きな人:
JBLの元気なチューニングとの相性が抜群で、毎日の移動時間がライブ会場に変わります。 - テレワークとプライベートを1台で済ませたい人:
マルチポイントと高品質マイクで仕事も快適、休憩中は高音質で音楽鑑賞、というスイッチが可能です。
JBL Tune 680NCレビューの総評
JBL Tune 680NCは、カジュアルな見た目に反して、中身は最新技術が詰め込まれた「羊の皮を被った狼」のようなヘッドホンです。
「ヘッドホンは大きくて重いから苦手」「夏場は暑苦しい」と敬遠していた方にこそ、ぜひ手に取っていただきたい一台。
その軽さと、予想を裏切る迫力のサウンド、そして実用的なノイズキャンセリング性能に、きっと驚かされるはずです。
2026年のヘッドホン市場においても、この絶妙なバランス感覚を持った製品は、長く愛されるスタンダードになる予感がします。
毎日の音楽ライフを少し身軽に、そして高音質にアップデートしたい方は、ぜひチェックしてみてください。

