ハイレゾ音源の普及やストリーミングサービスの進化により、手軽に高音質な音楽を楽しめる時代になりました。
しかし、それと同時に「スマホ直挿し(変換アダプター)」での音質に限界を感じている方も多いのではないでしょうか。
「もっといい音で聴きたいけれど、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)は高価で荷物になる」
「ドングル型DACはスマホのバッテリー消費が激しくて使いづらい」
そんなオーディオファンの悩みを一挙に解決する、現在の「最適解」とも言える製品が登場しました。
それがFiiO BTR13です。
近年のポータブルオーディオ市場、特に「ポータブルUSB-DAC/アンプ」のカテゴリーは激戦区です。
その中でFiiO BTR13は、同社のベストセラー「BTRシリーズ」の最新エントリーモデルとして投入されました。
しかし、そのスペックは「エントリー」という枠には収まりきらない驚異的なものです。
- 4.4mmバランス接続対応
- CS43131デュアルDAC構成
- LDAC / aptX Adaptiveなどハイレゾワイヤレス完全対応
- PC/BT/PHONEを瞬時に切り替える物理スイッチ
これらを約1万円台前半という価格で実現しており、かつては3万円以上のミドルクラス機でしか得られなかった体験を、誰にでも手の届くものにしました。
この記事では、数多くのポータブルオーディオ機器をレビューしてきた筆者が、この「価格破壊」とも呼べるFiiO BTR13を徹底的にレビューします。
カタログスペックの解説だけでなく、競合製品との比較や、実際に使い込んで見えてきたリアルな使用感まで、なぜ今この機種が「買い」なのかを余すところなくお伝えします。
- FiiO 「BTR13」の概要と「1万円台の革命」と言われる理由
- FiiO 「BTR13」の音質レビュー:無線と有線の「二刀流」を徹底検証
- FiiO 「BTR13」の競合製品との比較:BTR13は本当に「買い」なのか?
- FiiO 「BTR13」を使用した私の体験談・レビュー
- FiiO 「BTR13」に関するQ&A
- iPhoneでも使用できますか?
- 通話用のマイクはついていますか?
- 動画視聴やゲームでの音ズレ(遅延)は気になりますか?
- 車のオーディオ(カーナビ)に接続して使えますか?
- 充電しながら使用することはできますか?
- 2台のデバイスに同時に接続できますか?(マルチポイント)
- Nintendo SwitchやPS5で使えますか?
- イヤホンのケーブルに付いているリモコンやマイクは使えますか?
- イコライザー(PEQ)はLDAC接続時でも有効ですか?
- 音量調整はスマホと連動しますか?それとも独立していますか?
- 防水・防塵機能には対応していますか?
- 背面のクリップは取り外しできますか? また、ケースは必要ですか?
- ゲイン(Gain)設定は「High」と「Low」どちらにすべきですか?
- FiiO 「BTR13」レビューのまとめ
FiiO 「BTR13」の概要と「1万円台の革命」と言われる理由

まずは、FiiO BTR13が市場でなぜこれほど注目されているのか、そのスペックと物理的な特徴から紐解いていきましょう。
単なる後継機ではなく、「エントリークラスの定義を書き換える」存在と言われる所以を深掘りします。
エントリー価格で実現した4.4mmバランス接続とデュアルDAC
BTR13の最大のトピックは、なんといっても「この価格帯で4.4mmバランス接続を搭載し、かつデュアルDAC構成であること」に尽きます。
従来の1万円前後のBluetoothレシーバーといえば、3.5mmシングルエンド出力のみ、あるいは現在は主流から外れつつある2.5mmバランス端子という構成が一般的でした。
しかし、BTR13は現在のポータブルオーディオの標準規格(デファクトスタンダード)となりつつある4.4mm端子を搭載しています。
搭載DACチップ:Cirrus Logic製 CS43131 × 2基
ここにFiiOの本気度が伺えます。採用されたDACチップ「CS43131」は、省電力でありながら非常に優れたS/N比(信号対雑音比)とダイナミックレンジを持つことで知られる、Cirrus Logic社の傑作チップです。
通常、エントリーモデルではコストカットのためにDACチップを1基のみ搭載(シングル構成)に留めることが多いですが、BTR13は贅沢にも左右独立で2基搭載(デュアル構成)しました。
デュアルDAC化による恩恵
- クロストークの改善: 左右の信号干渉が減り、セパレーション(分離感)が劇的に向上します。
- 出力の向上: バランス接続時の出力を稼ぎやすくなり、鳴らしにくいヘッドホンへの対応力が上がります。
- ノイズフロアの低減: 背景の「サーッ」というホワイトノイズが極限まで抑えられ、楽曲の静寂部分が際立ちます。
| 特徴 | FiiO BTR13の仕様 | ユーザーメリット |
| DACチップ | CS43131 × 2 (Dual) | 低ノイズ、高解像度、広い音場を実現。ESS系チップに比べて自然で聴き疲れしない音色。 |
| 出力端子 | 3.5mm / 4.4mm | スマホ付属イヤホンから、リケーブル可能なハイエンドIEM、ヘッドホンまで幅広く対応。 |
| Bluetooth | Ver 5.1 (QCC5125) | 接続安定性が高く、Qualcomm系の高品質コーデックを網羅。 |
| 最大出力 | 220mW (32Ω, バランス) | 据え置きアンプ並みとは言わないまでも、ポータブル環境では十分すぎるパワーを確保。 |
携帯性を極めたクリップ一体型デザインと超軽量ボディ
BTR13のもう一つの大きな進化点は、筐体デザインの実用性です。
上位機種のBTR7やBTR15、あるいは旧機種のBTR3K/BTR5などでは、背面がガラス張りで美しさを優先している反面、クリップを使用するためには「専用のプラスチックケース」を装着する必要がありました。
しかし、BTR13は「本体背面にクリップが統合」されています。
これは地味な変更に見えて、毎日持ち歩くユーザーにとっては革命的です。
- ケース不要のメリット: ケース装着による厚みや重さの増加がありません。裸の状態で完成されたポータビリティを発揮します。
- ホールド感: クリップのバネ強度は適切で、胸ポケットやトートバッグの持ち手、ショルダーベルトなどにしっかりと固定できます。
- 驚異的な軽さ: 本体重量はわずか28.6g。これは単三電池1本(約23g)より少し重い程度です。薄手のシャツのポケットに付けても生地が垂れ下がらず、ランニングやジムでのトレーニング時に使用しても邪魔になりません。
質感については、正直に言えばプラスチッキーさは否めません。
しかし、ミントブルーやブラックの配色はポップで親しみやすく、「ガジェットとしての高級感」よりも「道具としての軽快さ」に全振りした設計思想は、このクラスとして正解だと感じます。
3つのモード切替スイッチ(PC/BT/PHONE)がもたらす快適性
多くのユーザーがBTR13を選ぶ決め手となっているのが、側面に追加された3段階の物理スライドスイッチです。
従来のDACアンプでは、BluetoothモードとUSB-DACモードの切り替え操作が「ボタンの長押し」だったり、「接続ケーブルを挿すタイミング」に依存していたりと、直感的でない操作系がストレスになることがありました。
BTR13では、このスイッチ一つで挙動を完全に制御できます。
- PCモード(黄色):
PCからのバスパワー給電を受けながらUSB-DACとして動作します。
内蔵バッテリーを使用・充電しながら駆動するため、長時間のWeb会議や映画鑑賞、PCオーディオ環境に最適です。 - BTモード(青色):
内蔵バッテリーで動作するBluetoothレシーバーモードです。
移動中など最も使用頻度が高いモードです。充電ケーブルを繋いでも給電モードに入らないため、ノイズ混入のリスクも減らせます。 - PHONEモード(ピンク):
ここが最大のポイントです。
スマホと有線接続(ドングル運用)する際、スマホからの給電をカットし、BTR13の内蔵バッテリーだけで駆動します。
一般的なドングルDACはスマホのバッテリーを激しく消費しますが、このモードを使えば「スマホの電池を減らさずに、有線接続の高音質を楽しむ」ことが可能です。
この「PHONEモード」の存在により、BTR13は単なるBluetoothレシーバーではなく、「バッテリー内蔵型の超優秀なドングルDAC」としても機能するのです。
FiiO 「BTR13」の音質レビュー:無線と有線の「二刀流」を徹底検証

ここからは肝心の音質についてレビューします。
試聴環境は、Xperia 1 V(LDAC接続)およびiPhone 15 Pro(AAC接続)、PC(有線接続)。
イヤホンはハイブリッド型のFiiO FH9、ダイナミック型のSennheiser IE 100 PRO、ヘッドホンはSONY MDR-MV1を使用しました。
Bluetooth接続(LDAC/aptX Adaptive)の解像度と安定性
まず結論から言うと、「ブラインドテスト(目隠し検証)なら、有線接続と区別がつかないレベル」に到達しています。
特にLDAC(990kbps)接続時の音の情報量は凄まじく、ワイヤレスであることを完全に忘れさせます。
音質傾向(サウンドシグネチャー)
FiiO製品全般に通じる「ニュートラル」で「着色感の少ない」音作りは健在ですが、CS43131チップの特性か、ESSチップ搭載機(BTR5など)に比べて「角が取れた滑らかさ」を感じます。
- 高域:
煌びやかでありながら、耳に刺さる嫌なピークが抑えられています。
ハイハットの余韻や、バイオリンの倍音成分が非常に綺麗に伸びます。 - 中域:
ボーカルは近すぎず遠すぎず、適切な距離感に定位します。
特に女性ボーカルの息遣いや、アコースティックギターの弦を擦る音がリアルに再現されます。 - 低域:
量感で押すタイプではなく、タイトでスピード感のある低音です。
EDMやロックの速いバスドラムもモタつかずに追従します。
重低音好きには少しあっさりに感じるかもしれませんが、後述するEQでいくらでも調整可能です。
通信安定性に関しても、Qualcomm QCC5125チップの恩恵で非常に安定しています。
満員電車の通勤ラッシュ時(新宿駅周辺など)でも、LDACの「接続優先」モードやaptX Adaptiveであれば、音途切れはほぼ皆無でした。
USB-DACモード(有線接続)時の音の密度と情報量
物理スイッチを切り替えて有線(USB-DAC)モードにすると、音の輪郭がさらに一段階クッキリとします。
無線時と比較して最も変化を感じるのは「音の密度」と「S/N感(静寂性)」です。
Bluetooth接続ではどうしても圧縮伝送による微細な情報の欠落(高域のカットなど)が発生しがちですが、ロスレス/ハイレゾ音源を有線で再生すると、背景の静けさがグッと増します。
クラシックのオーケストラ音源で聴き比べると、演奏が始まる前のホールの緊張感や、ピアニッシモ(極弱音)の消え入るような表現において、有線接続のアドバンテージを明確に感じ取ることができます。
「通勤中は利便性優先でBluetooth、カフェや自宅でじっくり聴くときは有線」という二刀流の使い分けができる点が、本機の最大の強みと言えます。
3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス接続の駆動力の違い
BTR13の真価を発揮するのは、やはり4.4mmバランス接続です。
3.5mmと4.4mmでは、単に音量が大きくなるだけでなく、音の質感が変化します。
- 3.5mm接続(100mW):
一般的で聴きやすいサウンド。
音場は左右の耳を結んだライン上に展開するイメージです。
インピーダンスの低いIEM(インイヤーモニター)であれば十分な音質ですが、高機能なヘッドホンだと少し音が平面的に感じるかもしれません。 - 4.4mm接続(220mW):
出力が倍増し、音場が左右だけでなく、前後・奥行き方向にグッと広がります。
いわゆる「ヘッドルーム(余裕)」が生まれるため、音が団子にならず、複雑な楽曲でも各楽器の音が綺麗に分離します。
【具体的な楽曲での検証】
- YOASOBI「アイドル」:
イントロの激しいシンセベースとボーカルが重なる部分で、3.5mmだと少し音が混濁するところが、4.4mmだとベースラインとボーカルが完全に分離して聴こえ、立体感が生まれます。 - Bill Evans「Waltz for Debby」:
ライブ録音特有の観客のざわめきやグラスの音が、4.4mmだとよりリアルな空間表現として再現されます。
1万円台のデバイスで、ここまで明確にバランス接続の恩恵(クロストークの少なさ、駆動力)を感じられる機種は稀有です。
FiiO 「BTR13」の競合製品との比較:BTR13は本当に「買い」なのか?

「BTR13が良いのは分かったが、他の製品と比べてどうなのか?」
ここでは、上位機種や他社のライバル機と比較検証し、BTR13の立ち位置を明確にします。
vs FiiO BTR7 / BTR15:上位機種との差と「これで十分」な領域
FiiOには上位モデルとして「BTR7(約3万円〜)」や「BTR15(約2万円)」が存在します。
これらはTHXアンプ回路を搭載していたり、より高出力だったりと明確な差別化がされていますが、BTR13を選ぶメリットは何でしょうか。
| 比較項目 | BTR13 | BTR15 | BTR7 |
| 実売価格 | 約12,000円 | 約19,800円 | 約35,000円 |
| DACチップ | CS43131 x2 | ES9219MQ x2 | ES9219C x2 |
| バランス出力 | 220mW | 340mW | 320mW |
| 重量 | 28.6g | 37.3g | 68g |
大型の平面駆動型ヘッドホンなどをメインで使うなら、パワーのあるBTR15やBTR7に分があります。
しかし、「イヤホン(IEM)がメイン」であれば、BTR13の220mWで駆動不足を感じることはほぼありません。
むしろ、BTR7は重すぎて胸ポケットに入れるには不向きです。
日常使いにおける「軽さ」と「クリップの手軽さ」を考慮すれば、毎日持ち歩くパートナーとしてBTR13の方が優秀なシーンも多いでしょう。
vs ドングル型DAC(KA13等):スマホのバッテリー消費と取り回し
競合としてよく挙がるのが、バッテリー非搭載の「ドングル型DAC(例:FiiO KA13、iBasso DC04PRO)」です。これらも1万円〜1.5万円程度で購入できます。
- ドングル型の弱点:
スマホのバッテリーを電源とするため、ハイレゾ再生時はスマホの電池が激しく減ります。
また、ケーブルが常にスマホから生えているため、操作時に邪魔になりがちです。 - BTR13の強み:
バッテリー内蔵なのでスマホの電池を一切減らしません。
また、Bluetoothで無線化できるため、スマホをカバンに入れたまま操作できます。
音質面だけで言えば、有線専用設計であるKA13(出力550mW!)の方が回路設計に余裕があり、駆動力も上です。
しかし、「スマホの電池持ち」と「無線の快適さ」という実用面(QOL)ではBTR13が圧勝します。
移動中はBTR13、自宅のPC前ではKA13、といった使い分けも理想ですが、どちらか1つだけ選ぶなら、汎用性の高いBTR13をおすすめします。
vs 他社同価格帯(GO blu / UP4):機能性とコスパの決定的な違い
- iFi Audio GO blu:
アナログライクで濃厚な音質は非常に魅力的で、デザインも素晴らしい製品ですが、価格が約2.8万円とBTR13の倍以上です。
また、アプリでの詳細設定やPEQ機能はBTR13の方が圧倒的に多機能です。 - Shanling UP4 (2022):
価格帯は近いですが、ディスプレイが非搭載です。
BTR13は小型ながらIPSディスプレイを搭載しており、現在のコーデック、音量、電池残量、EQ設定などを視覚的に確認できます。
「ディスプレイで情報を確認したい」「アプリで細かく音を調整したい」「4.4mm端子が欲しい」という現代のポータブルオーディオのニーズを全て満たし、かつ最安クラスである点がBTR13の凄みです。
FiiO 「BTR13」を使用した私の体験談・レビュー

ここでは、スペック表だけでは分からない、実際に私が日常生活でBTR13を数週間使い倒して感じたリアルな体験談をお話しします。
通勤ラッシュ時のストレスが消える「完全なポータビリティ」
毎朝の満員電車。有線イヤホンをスマホに直挿ししていた頃は、ケーブルが他人のカバンに引っかかったり、曲を変えようとスマホを取り出すたびにケーブルの取り回しに気を遣ったりと、小さなストレスの連続でした。
BTR13を導入してからは、世界が変わりました。
スマホはカバンの中に入れたまま、BTR13を胸ポケットやカバンのショルダーストラップにクリップで固定。
これだけでケーブルの呪縛から解放されます。
手元で再生/停止、曲送り、音量調整が物理ボタンで完結するため、スマホ画面を見る回数が激減しました。
タッチパネルではなく物理ボタンなので、ポケットの中で手探りで操作できるのも地味ながら大きなメリットです。
5スマホのバッテリーを気にせず高音質を楽しめる安心感
以前、バッテリー非搭載のドングル型DACを使っていた時は、音楽を聴いているとスマホの電池がみるみる減っていくのが恐怖でした。
特に外出先で地図アプリやSNSも使いたい時、音楽再生でバッテリーを食うのは死活問題です。
BTR13は独立したバッテリーを持っています。
Bluetooth接続時はもちろん、有線接続時も「PHONEモード」にスイッチを入れておけば、BTR13自身のバッテリーで駆動します。
これにより、長時間の移動でもスマホのバッテリー残量を温存しながら、ハイレゾ級の高音質を楽しめるようになりました。
これは精神衛生上、非常に大きなメリットです。
「音楽を聴くこと」に対するハードルが下がり、いつでもどこでも良い音を持ち運べるようになりました。
「FiiO Control」アプリのPEQ設定で好みの音質へ調律
FiiO製品の隠れた魅力、それがコンパニオンアプリ「FiiO Control」の優秀さです。
特にBTR13で利用可能なパラメトリックイコライザー(PEQ)機能は強力です。
通常のイコライザー(グラフィックEQ)は、決まった周波数帯域(例:1kHz, 4kHz)しか調整できませんが、PEQは「調整したい中心周波数」「帯域幅(Q値)」「ゲイン」を自由に設定できます。
例えば、私が所有している特定のイヤホンは「7kHz付近の高音が少し刺さる」という癖があるのですが、BTR13のアプリで「7.2kHzを中心に、Q値を狭く設定して、-3dB下げる」という設定を作成しました。
結果、そのイヤホンの刺さりが消え、解像感を残したまま聴きやすいサウンドに生まれ変わりました。
この設定はBTR13本体に保存されるため、PCや別のスマホに接続しても設定が維持されます。
イヤホンの相性問題を自分の手で解決できるのは、オーディオ好きにはたまらない機能です。
Web会議や通話でのマイク性能と実用性チェック
意外と便利なのが、内蔵マイクの存在です。
BTR13には無指向性の高感度マイクが搭載されており、電話やWeb会議でも使用できます。
実際に仕事のWeb会議(Zoom/Teams)で使用してみましたが、BTR13を胸元にクリップしておけば、マイクが口元に近くなるため、非常にクリアな声を相手に届けることができました。
マイクが付いていないハイエンドな有線イヤホン(例えば数万円クラスのIEM)を使っていても、BTR13経由であればそのまま通話が可能になります。
「いい音で相手の声を聞き、クリアな音声を届ける」ことができるため、テレワークの質も向上しました。
また、マルチポイント接続にも対応しているため、「PCでWeb会議の音を聞きつつ、個人のスマホの着信も待機する」といった使い方が可能です。
仕事とプライベートのデバイスをシームレスに行き来できるのは、現代のビジネスパーソンにとって強力な武器になります。
実際に感じたバッテリー持ちと充電サイクルの現実
カタログスペックでは最大8時間とされていますが、実際にLDACコーデック、4.4mmバランス接続、ハイゲインという「高音質・高負荷設定」で使用した場合、体感では約6時間〜6.5時間程度でした。
通勤往復(2時間)+昼休み+カフェ作業(2時間)で使用しても1日は十分に持ちますが、2日連続使用は厳しい印象です。基本的には「毎日充電」が必要です。
ただ、充電速度は比較的早く、またデスクワーク中に「PCモード」でUSB接続して音楽を聴いていれば、聴きながら充電もされるため、バッテリー切れで困ることはほとんどありませんでした。
この運用のしやすさも、3つのモード切替スイッチのおかげです。
また、アプリ設定で「充電上限を80%に制限する」機能も搭載されており、バッテリーの劣化を気にするユーザーへの配慮もなされています。
体験談の総括
BTR13を使って最も強く感じたのは、「オーディオライフのフットワークが劇的に軽くなった」ということです。
「良い音を聴くためには、重い機材を持ち運び、ケーブルを繋いで…」という儀式めいた準備が不要になり、「クリップでパッとつけて、電源ONですぐに良い音」という体験を提供してくれます。
オーディオマニアのサブ機としてはもちろんですが、むしろ「初めてのDAC」としてこれを選んだ人は幸せだと思います。
なぜなら、これ一台で「バランス接続の音」「アプリでのEQ調整」「USB-DAC運用」「Bluetooth運用」という、ポータブルオーディオの楽しみ方のほぼ全てを網羅的に体験できるからです。
FiiO 「BTR13」に関するQ&A

FiiO 「BTR13」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
iPhoneでも使用できますか?
はい、問題なく使用できます。
Bluetooth接続時はAACコーデックで接続されます。 有線接続(USB-DAC機能)の場合、iPhone 15以降(USB-C端子)のモデルであれば、付属のケーブルでそのまま使用可能です。 iPhone 14以前(Lightning端子)のモデルで使用する場合は、別途「LT-LT1」などのLightning to USB-C(OTG対応)ケーブルを用意する必要があります。
通話用のマイクはついていますか?
はい、本体に無指向性の高感度マイクが内蔵されています。
イヤホン自体にマイクがついていない場合でも、BTR13本体のマイクを使ってハンズフリー通話やWeb会議が可能です。マイク性能は良好で、クリップで胸元に固定すればクリアな音声を相手に届けられます。
動画視聴やゲームでの音ズレ(遅延)は気になりますか?
接続コーデックによりますが、気にならないレベルまで抑えられます。
「aptX Adaptive」や「aptX Low Latency」に対応したAndroid端末であれば、遅延は非常に少なく、動画視聴やカジュアルなゲームなら違和感はありません。 ただし、音ゲーやFPS(対戦シューティング)など、シビアなタイミングが求められるゲームをする場合は、物理スイッチを切り替えて「USB-DACモード(有線)」で使用することを推奨します。
車のオーディオ(カーナビ)に接続して使えますか?
はい、非常に相性が良いです。「カーモード」を搭載しています。
FiiO Controlアプリで「カーモード」をONにすると、USB電源の供給(エンジンのON/OFF)に連動して、BTR13の電源も自動でON/OFFされるようになります。 車のAUX端子とBTR13をケーブルで繋いでおけば、車に乗ってエンジンをかけるだけでスマホと自動接続され、すぐに高音質で音楽を楽しめます。
充電しながら使用することはできますか?
はい、可能です。
PCモードやPHONEモードで使用中は、給電(または充電)しながら音楽再生が可能です。ただし、バッテリー寿命を延ばしたい場合は、アプリ設定で「充電保護機能(80%で充電停止など)」を活用することをおすすめします。
2台のデバイスに同時に接続できますか?(マルチポイント)
はい、対応しています。
例えば「会社支給のPC」と「個人のスマホ」の両方にBluetooth接続しておき、PCでWeb会議の音声を聞きつつ、スマホに着信があったらそちらに応答する、といった使い方が可能です。 ただし、LDACなどの高音質コーデック使用時は、帯域幅の関係でマルチポイント機能が制限される(または動作が不安定になる)場合があるため、その際はアプリで設定を確認してください。
Nintendo SwitchやPS5で使えますか?
UAC 1.0対応モードに切り替えれば使用可能です。
通常、SwitchやPS5は一般的なUSBオーディオ規格(UAC 2.0)に対応していない場合がありますが、BTR13はアプリ設定で古い規格である「UAC 1.0」に切り替える機能を持っています。 これにより、SwitchのドックやPS5のUSBポートに有線接続して、高音質でゲームサウンドを楽しむことができます。
イヤホンのケーブルに付いているリモコンやマイクは使えますか?
基本的には使えません(BTR13本体の操作が優先されます)。
BTR13にイヤホンを接続した場合、イヤホン側のインラインリモコン(再生停止ボタンや音量ボタン)やマイクは無効化される仕様です。 再生・停止や通話などの操作は、すべてBTR13本体の物理ボタンと内蔵マイクで行ってください。これにより、どんなイヤホンでも操作性が統一されるメリットがあります。
イコライザー(PEQ)はLDAC接続時でも有効ですか?
はい、有効です。
安価なBluetoothレシーバーでは「LDACなどの高音質コーデック時は処理能力不足でイコライザーが使えない」という製品もありますが、BTR13は「グローバルPEQ」に対応しています。 LDAC接続時であっても、USB-DACモードであっても、設定したイコライザーが適用されるため、常に自分好みの音質で楽しむことができます。
音量調整はスマホと連動しますか?それとも独立していますか?
独立した音量調整が可能です。
スマホ側の音量(Bluetoothボリューム)とは別に、BTR13内部でも独自の音量ステップを持っています。 これにより、「スマホで大まかに音量を決め、BTR13側で微調整する」といった使い方ができ、音量が「大きすぎる」か「小さすぎる」という間の微細な調整が可能になります。
防水・防塵機能には対応していますか?
いいえ、対応していません。
BTR13は防水・防塵仕様ではないため、雨天時の使用や、スポーツで大量の汗をかくシーンでの使用には注意が必要です。 USB端子やイヤホンジャックから水分が侵入すると故障の原因になります。濡れてしまった場合は、すぐに乾いた布で拭き取るようにしてください。
背面のクリップは取り外しできますか? また、ケースは必要ですか?
クリップは本体一体型のため、取り外しはできません。
無理に外そうとすると破損の原因になるのでご注意ください。 また、クリップが本体に備わっているため、基本的に保護ケースは不要(というか装着できない設計)です。傷が気になる場合、前面のディスプレイガラスには出荷時から保護フィルムが貼られていますが、背面や側面は丁寧な扱いを推奨します。
ゲイン(Gain)設定は「High」と「Low」どちらにすべきですか?
お使いのイヤホンによって使い分けます。
- Low(ローゲイン):
一般的なカナル型イヤホンや、感度の高いIEM向けです。
ノイズを抑え、細かな音量調整がしやすくなります。 - High(ハイゲイン):
ヘッドホンや、音量が取りにくいイヤホン向けです。
パワーが増しますが、感度の高いイヤホンだと「サーッ」というホワイトノイズが聞こえる場合があります。
まずは「Low」で試して、音量が足りなければ「High」にするのがおすすめです。
FiiO 「BTR13」レビューのまとめ

FiiO 「BTR13」は、エントリーモデルのBluetooth対応ポータブルDAC/アンプとして、非常に高い完成度を誇る製品です。
価格を抑えながらも、上位モデルに匹敵する音質と多機能性を実現しており、初めてポータブルDACを購入する方から既存のオーディオファンまで幅広い層に対応できる万能型のデバイスといえます。
ここでは、これまでの内容をもとに、「BTR13」の総合評価を行い、どのようなユーザーにおすすめかをまとめます。
FiiO BTR13のメリット(良かった点)
- 圧倒的なコストパフォーマンス: 1万円台前半で4.4mmバランス接続とデュアルDACを搭載。競合を突き放すスペック。
- 軽量&クリップ一体型: わずか28g。ケース不要でどこにでも装着可能なデザインが秀逸。
- モード切替スイッチ: PC/BT/PHONEの切り替えが直感的で、接続トラブルやバッテリー消費の悩みを解決。
- 音質: FiiOらしいニュートラルで解像度の高いサウンド。特に4.4mm接続時の分離感は価格以上。
- アプリ連携: 高度なPEQ設定により、イヤホンの特性に合わせた音質補正が可能。
- マイク搭載: お気に入りの有線イヤホンで高品質な通話が可能。
FiiO BTR13のデメリット(気になった点)
- バッテリー持ち: 高音質設定(LDAC/バランス)でガンガン使うと、実働6時間程度。こまめな充電が必要。
- 質感: プラスチック筐体のため、高級感はそこそこ。傷つきやすさが気になる人は保護フィルム推奨(表面には初期貼付済み)。
- 付属ケーブル: 短いC to Cケーブルのみ。iPhoneユーザー(Lightning端子)は別途OTG対応ケーブル(LT-LT1など)の購入が必要。※iPhone 15以降は付属ケーブルでOK。
スマホ直挿しからのステップアップに最適な理由
スマホ直挿しや、簡易的な変換ケーブルと比較して、BTR13は「駆動力」と「S/N比(静寂性)」が段違いです。
どれだけ高級なイヤホンを買っても、再生側のパワーが足りなければ、そのイヤホンの真価(低音の締まりや音場の広さ)は発揮されません。
BTR13は、最も手軽に、かつ低コストでその「駆動環境」を手に入れることができるチケットと言えます。
おすすめの設定と相性の良いイヤホン・ヘッドホン
購入後、まずはこの設定から試してみてください。
- おすすめ設定(FiiO Controlアプリ):
- コーデック: Androidなら「LDAC」のみチェックを入れる(最高音質固定)。音途切れが気になるなら「aptX Adaptive」。
- ゲイン: イヤホンなら「Low」または「High」。ヘッドホンなら迷わず「High」。
- カーモード: 車のAUX端子に繋いで使うならON。エンジン連動でON/OFFが可能になります。
- イコライザー: 初めはOFFで。聴き慣れてきたら「JAZZ」や「POP」プリセット、あるいはPEQに挑戦。
- 相性の良いイヤホン:
- ダイナミック型イヤホン(Sennheiser IEシリーズ、FiiO FDシリーズなど): 低域の制動(ダンピング)が効き、ボワつきが解消され、キレのある音になります。
- マルチBA型イヤホン: ノイズフロアが低いため、高感度なイヤホンでもホワイトノイズを感じずに楽しめます。
【FiiO 「BTR13」レビューの総評】ハイコスパで選ぶなら現状の最適解
FiiO BTR13は、「1万円台で買えるポータブルDACアンプ」として、現状、頭一つ抜けた完成度を誇っています。
音質だけを追求すれば、10万円、20万円というDAPの世界がありますが、「日常の中で、手軽に、最高に心地よい音を楽しむ」という目的において、これほどバランスの取れた製品は他にありません。
- 有線イヤホンの資産を活かしたい方
- 初めてポータブルDACを買って、世界を変えてみたい方
- サブ機として、軽快で雑に扱えるバランス接続機が欲しい方
これらの方にとって、BTR13は間違いなく「買って後悔しない」一台になるでしょう。
あなたの音楽体験を、BTR13で次のステージへアップグレードしてみてはいかがでしょうか。


