イヤホン愛好家が「伝説」と語るモデル、BQEYZ「Winter」。
PZT骨伝導とDDの特異な構成が生む、ボーカルが鮮烈に「浮き彫り」になるサウンドは、私たちに「聴こえてはいけない音まで聴こえる」と言わしめ、熱狂的なファンを生みました。
しかし、初代「Winter」は「諸刃の剣」。
比類なき音と引き換えに、大きく重く、厚い筐体形状は多くのユーザーの耳に合わず、「装着感」という名の壁となりました。
音が良くとも耳が痛くては集中できない。
「音が好きすぎて我慢している」「泣く泣く手放した」…そんな悲痛な声を私も多く見てきました。
暖色系の派生モデル「Ultra」も登場しましたが、多くの初代ファンが渇望していたのは「別の答え」ではありません。
私たちが待ち望んでいたもの:
初代Winterの持つ、冷たく澄み切った透明感とボーカルの生々しさを一切損なうことなく、最大の弱点であった「装着感」だけを劇的に改善したモデル。
それこそが「真の後継機」の姿でした。
そして2024年。
BQEYZは、その完璧な回答を「Winter 2」として世に送り出しました。
この記事は、初代の音に魅了され、装着感に苦しんだ一人のユーザーとして、この「Winter 2」が「単なる後継機」ではなく、いかにして「シリーズの完成形」へと到達したのか。
音質、装着感、付属品、カスタマイズ性まで、徹底的に解剖します。
- BQEYZ 「Winter 2」とは? – シリーズの系譜と核心技術
- BQEYZ 「Winter 2」最大の革新点:劇的に改善された「使用感」と「利便性」
- BQEYZ 「Winter 2」の音質徹底レビュー:寒色系クリアサウンドの到達点
- 私の体験談:「Winter 2」がメイン機昇格に至った理由
- BQEYZ 「Winter 2」に関するQ&A
- 「Winter 2」の最大の特徴は?
- 初代「Winter」や「Winter Ultra」との一番の違いは?
- 骨伝導ドライバーは痛かったり、不快な振動があったりしませんか?
- 「Winter 2」の音は「寒色系」とのことですが、低音は出ますか?
- 付属ケーブルのままで十分ですか? リケーブル(ケーブル交換)は必要ですか?
- 付属のUSB-Cプラグで、iPhone 15やAndroidに直接挿して使えますか?
- 「Winter 2」がおすすめなのは、結局どんな人ですか?
- 「Winter 2」の装着感は良いですか? 耳が小さいのですが…
- イヤーピースは付属のもので足りますか?
- 音漏れはしますか? 通勤・通学に使えますか?
- 4.4mmバランス接続にすると、何が変わりますか?
- どのジャンルに一番おすすめですか? また、苦手なジャンルは?
- BQEYZ 「Winter 2」レビューのまとめ
BQEYZ 「Winter 2」とは? – シリーズの系譜と核心技術

「Winter 2」を正しく評価するには、まずシリーズにおける本作の立ち位置を明確にする必要があります。
Winterシリーズの系譜:本作の「正当後継機」としての立ち位置
Winterシリーズは明確なコンセプトで開発されています。その関係性を表で整理します。
| モデル名 | ドライバー構成 | サウンドシグネチャ(音の傾向) | 筐体の特徴 | 主なターゲット層 |
| Winter (初代) | 1DD + 1PZT骨伝導 | 寒色系・高解像度 ボーカルが際立つクリアサウンド | 厚く、重い (装着感に難あり) | 音の個性を最優先する イヤホン上級者 |
| Winter Ultra | 1DD + 1PZT骨伝導 | 暖色系・リスニング 低音を強化し、ボーカルが滑らか | 初代とほぼ同等 (装着感の課題は継続) | 初代の音が鋭すぎると感じた人 暖かみのある音を好む人 |
| Winter 2 (本作) | 1DD + 1PZT骨伝導 (改良型) | 寒色系・高解像度 (正当進化) 初代の透明感を維持しつつ洗練 | 薄型・軽量 (装着感を劇的に改善) | 初代の音は好きだが装着感で諦めた人 全てのボーカル重視ユーザー |
この表が示す通り、「Winter 2」は「Ultra」の延長線上にはありません。
その立ち位置は、紛れもなく「初代Winterの正統後継機」です。
初代の音のアイデンティティ(寒色系・ボーカルフォーカス)を曲げることなく、設計の進化によって物理的な「欠点」のみをピンポイントで潰してきたモデル。
それが「Winter 2」なのです。
核心技術:改良型PZT骨伝導と12mm DDのシナジー
「Winter 2」の音の秘密は、ユニークなハイブリッドドライバー構成にあります。
- 12mm 大口径ダイナミックドライバー (DD)
- 改良型 PZT 圧電セラミックス骨伝導ドライバー
なぜ「骨伝導」なのか? PZTドライバーの役割
一般的なイヤホンが「鼓膜」を振動させる(=空気伝導)のに対し、骨伝導は「骨」を振動させ、直接「内耳」に伝えます。
骨伝導(PZT)のメリット
- 圧倒的な明瞭度: 伝達経路をショートカットするため、特に中高音域の輪郭が極めてシャープになります。
- 独特の音場感: 空気伝導の音(楽器)と骨伝導の音(ボーカル)が、脳内で別レイヤーとして合成されるような立体感を生みます。
「Winter 2」のPZTは、高音域の再生に優れた方式です。
BQEYZはこれをブラッシュアップし、振動効率を高め、初代を超える「分離感」と「伸び」を実現しました。
なぜ「12mm大口径DD」なのか? 土台の重要性
PZTが「中高音域の輪郭」を担当するなら、12mm DDは「音楽の土台となる全て」、すなわち低音域の深さと中音域の豊かさを担当します。
12mmという大口径は、余裕のある駆動による「スケール感」と「歪みの少なさ」を生み出します。
「Winter 2」が、ただシャープなだけの「分析的な音」に陥らず、音楽としての「楽しさ」を両立できているのは、この12mm DDが土台を支えているからです。
開封レビュー:価格以上の満足感を与える豪華な付属品
「Winter 2」は、付属品も充実しています。
重厚なパッケージには、美しく仕上げられたイヤホン本体と、実用的なアクセサリーが整然と収められています。
| カテゴリ | アイテム名 | 数量 | 特徴・コメント |
| イヤホン本体 | Winter 2 本体 | 1ペア | CNC加工アルミ合金筐体 |
| ケーブル | 3-in-1 交換式プラグケーブル | 1本 | 高品質な銀メッキ銅線(推定) |
| 交換式プラグ | 3種 | 3.5mm (アンバランス) 4.4mm (バランス) USB-C (DAC内蔵) | |
| イヤーピース | 3種類 (A, B, C) ※仮称 | 各S/M/L (計9ペア) | 音質の異なる3タイプが付属 |
| ケース | 専用キャリングケース | 1個 | 高級感のあるハードケース |
付属品のクオリティは極めて高く、特に標準で「4.4mmバランスプラグ」と「USB-C(DAC内蔵)プラグ」が付属する点は革命的です。これにより、高音質なDAPからスマートフォン直挿しまで、あらゆる再生環境に「買い足しゼロ」で対応できます。
また、音質の異なる3種類のイヤーピース(計9ペア)が付属し、購入直後から音を追い込む楽しみも提供されています。
BQEYZ 「Winter 2」最大の革新点:劇的に改善された「使用感」と「利便性」

いよいよ「Winter 2」の「本題」とも言える使用感、特に「装着感」のレビューです。
結論から言えば、これは満点に近い「劇的改善」です。
初代ユーザーが驚愕する「薄型・軽量」筐体と快適な装着感
初代Winterの最大の弱点は、その物理的な「厚み」と「重さ」でした。
初代Winterの弱点(ビフォー)
- 厚み: 筐体が分厚く、耳から大きく飛び出す。
- 重さ: ずっしりとした重さ。
- 重心: 重心が外側にあり、フィット感が安定しない。
- 結果: 多くの「装着難民」を生み出した。
これに対し、「Winter 2」の改善は以下の通りです。
Winter 2の改善点(アフター)
- 薄型化: 公式で「体積を22%圧縮」。体感的な「厚み」は半分近くになった印象で、耳のくぼみにスッポリ収まります。
- 軽量化: 薄型化に伴い、重量も大幅に削減。
- 重心の最適化: 筐体が耳に密着し、重心が内側に来るため、フィット感が驚くほど安定します。
- 結果: ほぼ全ての人の耳に快適にフィットする「ユニバーサルデザイン」へと昇華しました。
初代が「無理やり耳に乗せていた」のに対し、「Winter 2」は「耳に吸い付くように収まる」のです。
この快適さは、長時間の音楽鑑賞において絶対的なアドバンテージとなります。
骨伝導の真価を引き出す、フィット感とイヤーピースの最適解
「Winter 2」のPZT骨伝導ドライバーは、その振動を「耳の軟骨」を通じて内耳に伝えます。
これは何を意味するか?
骨伝導ドライバーの性能 = 筐体と耳の「密着度」
密着が甘ければ、骨伝導の効果は半減し、高音のシャープさやボーカルの輪郭がぼやけます。
初代Winterは、この「密着」を安定させることが構造的に困難でした。
しかし、「Winter 2」は薄型・軽量化された筐体のおかげで、誰でも簡単に「最適な密着状態」を作り出せるようになりました。
この「最適な密着」を最終的に決めるのが「イヤーピース」です。
- 付属イヤーピースの使い分け:
- まずは付属の3種類を全て試し、最も密閉度が高く、かつ好みの音になるものを選んでください。
- ポイント: 低音がスカスカせず、ボーカルがクッキリと聴こえる状態が「正しいフィット」です。
- 推奨される社外イヤーピース(専門知識):さらなる高みを目指すなら、以下を推奨します。
- SpinFit W1 / CP145: 軸が可動し耳道に深くフィット。快適性と密閉度を両立。
- AZLA SednaEarfit MAX / XELASTEC: 医療用シリコンが耳に吸い付き、完璧な密閉を実現。骨伝導の振動を逃しません。
- final Eタイプ: 定番。密閉度を高め、低音域を補強します。
3-in-1交換式プラグケーブルという「最強の武器」
利便性の塊である3-in-1ケーブルですが、その「音質」と「実用性」も徹底的に検証します。
これは単なる「オマケ」ではありません。
- 4.4mmバランス接続 (vs 3.5mmアンバランス):Winter 2の真価は4.4mmバランス接続で発揮されます。
- 3.5mm: スマートフォン直挿しでも十分な音量と音質。やや音が中央にまとまる印象。
- 4.4mm: DAPでバランス接続すると、音場が一気に左右に広がり、S/N比(背景の静けさ)が向上。各楽器の分離がさらに明確になります。ポテンシャルを100%引き出すなら、4.4mmバランス接続は必須です。
- USB-Cプラグ(DAC内蔵)の実力:「どうせオマケだろう」と侮ってはいけません。
- 音質: PCのイヤホンジャックや、非力なスマートフォンの3.5mm端子よりも、明らかにノイズが少なく、クリアで力強い音を鳴らします。
- 実用性: ノートPC、DAP、スマートフォンでの動画視聴まで、このケーブル1本でシームレスに、かつ高音質でカバーできる利便性は、他の製品にはない強力な武器です。プラグ交換もスムーズなネジ式に改善され、実用性が格段に向上しています。
BQEYZ 「Winter 2」の音質徹底レビュー:寒色系クリアサウンドの到達点

いよいよ本レビューの中核、音質評価です。
試聴環境はDAPでの4.4mmバランス接続をメインとし、イヤーピースは付属のReference(Mサイズ)を基準とします。
全体傾向:透明感と広大な音場、これぞ「Winter」の音
「Winter 2」のサウンドシグネチャをキーワードで表現するならば、以下のようになります。
Winter 2 サウンドシグネチャ
- 音の傾向: 寒色系 (クール)
- 音のバランス: 中高音域が主役 (高音域が最も強い)
- 解像度: 極めて高い (S+)
- 透明感: 圧巻 (S+)
- 音場: 非常に広い (特に横と上方向への広がり)
- ボーカルの定位: 最前列・中央やや上 (近い)
音のイメージは、その名の通り「澄み切った冬の早朝」。
一切の霞(かすみ)がない、氷の結晶のように研ぎ澄まされた音。
それが「Winter 2」の全体像です。
初代Winterが「鋭利な氷の刃」のような鋭さだったとすれば、「Winter 2」は「精巧にカットされたダイヤモンド」のような、洗練された煌めきと滑らかさを手に入れています。
「Winter Ultra」のような暖かみや、低音の量感を求めるイヤホンではありません。
これは、音の「透明感」と「ボーカル」に全パラメータを振り切った、極めて個性的かつ高次元なイヤホンです。
帯域別分析:PZTが描く「浮き彫りになるボーカル」と高音域
高音域(PZT骨伝導の真価)
- 質感: 煌びやか(キラキラ)、シルキー(絹のよう)、そしてシャープ。シンバルやハイハットの残響が、頭の周りの空間に「スーッ」と溶けていくのが分かります。
- 情報量: 圧巻。ピアノの倍音、弦楽器の擦れる音、電子音楽の微細なノイズまで描き出されます。
- 刺さり: これだけ高解像度な高音でありながら、耳に突き刺さる「サ行」の不快感が極めて少ないです。これは、PZT骨伝導が刺激の強い高音域の一部を担当し、聴覚上の刺激を分散させているためと推測されます。
中音域(ボーカル:本作の主役)
「Winter 2」を「ボーカルイヤホン」と断言する理由がここにあります。
- 「浮き彫り」の正体:PZT骨伝導の効果が最も顕著に現れるのがこの帯域です。激しい演奏(主にDDが担当)の「上」または「前」に、ボーカルの音像がクッキリと、別録りしたかのように定位します。
- 生々しさ:ボーカルの「息遣い(ブレス)」や「リップノイズ」、声の「艶」といった微細な情報が、骨伝導の振動によって物理的に伝わり、異常なほどの「生々しさ」を感じさせます。
- 得意なジャンル:特に女性ボーカル(J-Pop、アニソン)の伸びやかなハイトーンとの相性は抜群です。ピアノやアコースティックギターの弦の響きも非常にリアルです。
12mm DDが支える「質」と「キレ」を両立した低音域
「寒色系」と聞くと低音が弱いと誤解されがちですが、「Winter 2」は違います。
- 「量」より「質」:ズンズンと響くような「量」は控えめです。Winter Ultraと比較すると、その量感は明確に抑えられています。しかし、その「質」は特筆すべきものがあります。
- キレとタイトさ:12mm DDが叩き出す低音は、非常に高速でタイト。ボワつく響きが一切なく、アタックが速い。EDMのキックは「ドン」ではなく「ドッ」と短く、それでいて深く沈み込みます。
- 分離: ジャズのウッドベースの弦の震えと、バスドラムのアタックが、混濁せずに完璧に描き分けられます。
- 役割: Winter 2の低音は、自ら主役になるのではなく、中高音域という主役を完璧に下支えし、音楽全体の「土台」と「スピード感」を司る、最高の「縁の下の力持ち」です。
私の体験談:「Winter 2」がメイン機昇格に至った理由

ここからは、私が実際に「Winter 2」を聴き込み、なぜこれが私の「メイン機」の一つに昇格したのか、その具体的な体験を共有します。
初代Winterユーザーとしての「安堵」と「感動」
前述の通り、私は初代Winterの「音」に惚れ込み、その「装着感」に絶望した一人です。
「Winter 2」を耳にした瞬間、まず感じたのは「安堵」でした。
「痛くない。ズレない。快適だ…!」
この「当たり前」のことが、どれほど尊いことか。
装着感のストレスから解放され、初めて純粋にWinterの「音」だけに集中できました。
耳が痛むことも、歩くだけでズレることもない。この快適さだけで、買い替える価値は十分です。
そして音を聴き、その「安堵」は「感動」に変わりました。
私が初代Winterに求めていた「透明感」と「ボーカルの近さ」は一切失われていません。
それどころか、初代の持つ「荒々しさ」や「ピーキーさ」(高音の刺さり)が巧みに抑制され、全体がシルクのように滑らかに、より「上質」になっている。
これは「買い替え」ではなく、「完成形へのアップグレード」だと直感しました。
試聴環境とポテンシャルを引き出す接続方法
「Winter 2」の真価を測るため、以下のリファレンス環境で聴き込みました。
- メインDAP: Astell&Kern SR35
- 接続: 付属ケーブルによる 4.4mmバランス接続
- イヤーピース: 付属Reference(M)および AZLA SednaEarfit XELASTEC(MS)
- 音源: ハイレゾ音源 (24bit/96kHz以上) および FLAC
「Winter 2」は3.5mm接続でも鳴りますが、ポテンシャルを100%引き出すには、駆動力の高いDAPでの4.4mmバランス接続がベストです。
バランス接続に切り替えた瞬間、音場が左右と上下にフワリと広がり、S/N比が向上。
この静寂の中から、PZT骨伝導によるボーカルが「浮き上がってくる」感覚は、アンバランス接続では味わえません。
ジャンル別インプレッション(1):J-Pop・アニソン・ロック
「Winter 2」が最も輝く、得意分野です。
- J-Pop (女性ボーカル / YOASOBI – 「アイドル」):情報量が飽和状態の高速トラックでも、ボーカルが一切埋もれません。激しい演奏の「上」に、ボーカルがクリアに定位します。PZT骨伝導の本領発揮です。
- アニソン (劇伴 / 澤野弘之 – 「ətˈæk 0N tάɪtn」):複雑な音の洪水を完璧に解きほぐします。広大な音場の中で、コーラスパートだけが脳内に直接響くような独特の定位感。骨伝導でなければ味わえません。
- ロック (King Gnu – 「SPECIALZ」):冒頭のベースラインの「キレ」と「沈み込み」に驚かされます。12mm DDが高速かつタイトに駆動し、音の輪郭がボケません。ツインボーカルも混濁せず、声色を明確に描き分けます。
ジャンル別インプレッション(2):ジャズ・クラシック・アコースティック
これらのジャンルでも驚くべきパフォーマンスを発揮します。
- ジャズ (Bill Evans Trio – 「Waltz for Debby」):音の「空気感」の再現性が凄まじい。ピアノのタッチ、繊細なシンバル、そして「ライブ録音」の醍醐味である客席の食器の音やささやき声。これらの環境音が非常にリアルに配置され、没入感を味わえます。
- クラシック (ホルスト – 「惑星」より「木星」):オーケストラの各楽器の定位が手に取るように分かります。ティンパニの迫力(低音の質)から、フルートの輝かしい響き(高音)まで、全帯域を破綻なく鳴らしきります。
- アコースティック (手嶌葵 – 「テルーの唄」):Winter 2の「最大瞬間風速」とも言える体験。ボーカルの息遣い、ブレスの生々しさ、唇が開く微細な音(リップノイズ)が、PZT骨伝導によってダイレクトに、物理的な振動として伝わり、ゾクゾクするほどのリアリティを届けます。
カスタマイズの結論:イヤーピース交換とリケーブルの是非
数週間の試聴を経て、私なりの「最適解」を見出しました。
- イヤーピース交換:「強く推奨」します。付属イヤーピースも優秀ですが、PZT骨伝導の恩恵を最大化するには完璧な密閉が不可欠です。私は最終的に「AZLA SednaEarfit XELASTEC」に落ち着きました。体温で軟化して耳道に完璧にフィットし、PZT骨伝導の振動を余すことなく伝達。ボーカルの輪郭がさらに1枚鮮明になり、低音の密閉度も向上しました。
- リケーブルの是非:「不要」というのが私の結論です。標準ケーブルの質が非常に高く、音質(銀メッキ銅線推定)と利便性(3-in-1プラグ)の両方で完成されています。BQEYZは、この標準ケーブルとプラグを含めて「Winter 2」の音を完成させていると感じます。まずは標準構成でとことん聴き込むことを推奨します。
体験談の総括:完成形に至った「音」と「快適さ」
今回の「Winter 2」における一連の体験は、初代Winterユーザーであった私にとって、まさに「理想の実現」でした。
まず、装着感という最大の物理的ストレスから解放されたことで、初めて純粋に音と向き合う土台が整いました。
その上で、4.4mmバランス接続によって引き出されたポテンシャルは、初代が持っていた「透明感」と「ボーカルの近さ」という美点を一切損なうことなく、むしろ高音域の滑らかさや全体の繋がりという「上質さ」を加えて昇華させたものだと確認できました。
J-Popやアニソン、アコースティックといったボーカルが主役の楽曲で「ゾクゾクするほどのリアリティ」を体感できたのはもちろんのこと、ロックやクラシックといった複雑な音源においても、その圧倒的な分離性能と、決して量に頼らない「質」の高い低音が、音楽の土台をしっかりと支え、破綻なく描き切る実力を見せてくれました。
カスタマイズについては、標準ケーブルの完成度が高い一方で、イヤーピースで完璧な密閉を追求すること(私の場合はXELASTECでした)が、PZT骨伝導の性能を100%引き出す最後の鍵であることも分かりました。「Winter 2」は、単なる後継機ではなく、音質と快適性という二つの要素を高次元で両立させ、私がかつて初代に夢見た「あるべき姿」を実現してくれた、真のメイン機たり得るイヤホンです。
BQEYZ 「Winter 2」に関するQ&A

BQEYZ 「Winter 2」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
「Winter 2」の最大の特徴は?
「PZT骨伝導ドライバー」による、ボーカルが楽器に埋もれずクッキリ浮き出て聴こえるサウンドです。
初代「Winter」や「Winter Ultra」との一番の違いは?
- 初代Winterとの違い: 装着感が劇的に改善されました。筐体が薄く軽くなり、誰でも快適に着けられます。
- Winter Ultraとの違い: 音の方向性です。「Ultra」は低音寄りの「暖色系」ですが、「Winter 2」は初代と同じ「寒色系」でボーカル重視です。
骨伝導ドライバーは痛かったり、不快な振動があったりしませんか?
全くありません。 痛みや不快な振動はなく、「音がよりクリアに聴こえる」という効果として現れます。
「Winter 2」の音は「寒色系」とのことですが、低音は出ますか?
はい、出ます。 ただし、ズンズン響く「量」ではなく、引き締まった「質」の良い低音です。ボーカルを邪魔しない、キレのある低音が特徴です。
付属ケーブルのままで十分ですか? リケーブル(ケーブル交換)は必要ですか?
付属ケーブルのままで十分です。 音質も良く、何よりプラグ交換で「3.5mm」「4.4mm」「USB-C」の3種類に対応できるため、非常に便利で優秀です。
付属のUSB-Cプラグで、iPhone 15やAndroidに直接挿して使えますか?
はい、使えます。 DAC(変換器)が内蔵されているので、iPhone 15やAndroid、PCなどに直接挿して高音質で楽しめます。
「Winter 2」がおすすめなのは、結局どんな人ですか?
- とにかくボーカル(特に女性ボーカルやアニソン)を綺麗に聴きたい人
- 初代Winterの音は好きだったが、装着感が合わず諦めた人
「Winter 2」の装着感は良いですか? 耳が小さいのですが…
非常に良いです。 初代と比べて劇的に薄く・軽くなったため、耳が小さい方でも快適にフィットしやすい設計になっています。耳のくぼみにスッキリ収まります。
イヤーピースは付属のもので足りますか?
はい、基本的には足ります。 音が異なる3種類(各S/M/Lサイズ、計9ペア)が付属するので、好みに合わせて選べます。 ただし、骨伝導の効果を最大にするには「耳にピッタリ密着」させることが重要なので、もし付属で合わなければ社外品(SpinFitやAZLAなど)を試す価値はあります。
音漏れはしますか? 通勤・通学に使えますか?
一般的なカナル型(耳栓型)イヤホンと同程度で、音漏れは少ないです。 よほどの大音量でなければ、電車や図書館など公共の場でも問題なく使用できます。
4.4mmバランス接続にすると、何が変わりますか?
音の「広がり」と「分離感」が向上します。 より左右に音が広がり、背景が静かになることで、ボーカルや楽器の音がさらにクッキリと聴こえるようになります。「Winter 2」のポテンシャルを最大限に引き出す接続方法です。
どのジャンルに一番おすすめですか? また、苦手なジャンルは?
- 一番のおすすめ: J-Pop、アニソン、女性ボーカル、アコースティックなど、ボーカルや高音の美しさが際立つジャンルです。
- やや苦手: ヒップホップやEDMなど、ズンズン響く重低音の「量」を最優先で楽しみたいジャンルです。(低音の「質」や「キレ」は良いため、聴けないわけではありません)
BQEYZ 「Winter 2」レビューのまとめ

BQEYZ 「Winter 2」は、「Winter」の名を受け継ぐにふさわしい、見事な「正当進化」を遂げた傑作です。
「装着感」という最大の呪縛から解き放たれ、その類稀な音響特性を、今や誰もがストレスなく享受できるようになった。
この事実こそが、「Winter 2」の最大の功績です。
最後に、「Winter 2」の「強み」と「弱み」を明確にし、どのような人に推奨できるかを総括します。
BQEYZ 「Winter 2」 総合評価チャート
- 高音域 (質): ★★★★★+ (煌びやかで透明。刺さらない)
- 中音域 (ボーカル): ★★★★★+ (唯一無二。浮き彫りになる生々しさ)
- 低音域 (量): ★★☆☆☆ (量は控えめ)
- 低音域 (質): ★★★★★ (高速・タイト・深い)
- 解像度: ★★★★★ (極めて高い)
- 音場: ★★★★★ (広く、抜けが良い)
- 装着感: ★★★★★ (初代比+100点。薄型・軽量で完璧)
- 付属品 (利便性): ★★★★★+ (3-in-1ケーブルが最強)
- コストパフォーマンス: ★★★★★ (この音と利便性ならバーゲン)
優れた点:ボーカル、装着感、付属品
- 唯一無二のボーカル表現: PZT骨伝導による「浮き彫りになる」ボーカルは、他のイヤホンでは味わえない最大の魅力です。
- 完璧に改善された装着感: 初代の弱点を100%克服。薄型・軽量で、誰の耳にも快適にフィットします。
- 圧倒的な利便性: 3-in-1(3.5mm/4.4mm/USB-C)交換式プラグケーブルが標準付属。これ一本であらゆる機器に対応可能です。
- 上品な高音域: 煌びやかさと解像度を保ちつつ、初代にあった刺々しさを抑え、滑らかで上品な音質に進化しています。
注意すべき点:低音の量、寒色系の音
- 低音の「量」は控えめ: 「質」は最高峰ですが、ズンズンと響くような重低音(量感)を求めるイヤホンではありません。
- 明確な「寒色系」サウンド: 音の傾向はクールでシャープです。暖かみのある(ウォームな)音質、聴き疲れしない丸みのある音が好きな人には向きません。
- イヤーピースの重要性: 骨伝導の特性上、フィットが甘いと性能が半減します。最適なイヤーピースを見つける(場合によっては社外品を試す)ことが重要です。
「Winter 2」を「強く推奨」する人
✅ 以下に当てはまる人には「最高の選択肢」となります
- 最優先事項が「ボーカル」の人。(特に女性ボーカル、アニソン、J-Popをよく聴く人)
- 高解像度で透明感のある「寒色系」サウンドが好きな人。
- 初代Winterの音は好きだったが、装着感で挫折した人。(今すぐ買い直すべきです)
- 音場が広く、抜けの良い音を求めている人。
- 4~5万円台で、他のイヤホンとは明確に異なる「強烈な個性」と「実用性」(3-in-1ケーブル)を求めている人。
「Winter 2」を「推奨しない」人
❌ 以下に当てはまる人は「試聴」を推奨します
- ズンズンと響くような重低音(量感)を最優先する人。(EDMやヒップホップを量感たっぷりに聴きたい人)
- 暖かみのある(ウォームな)音質、聴き疲れしない丸みのある音が好きな人。(Winter Ultraの方が合う可能性があります)
- 音のすべてがフラットに録音された通りに鳴る、「モニターライク」なイヤホンを求めている人。(Winter 2は極めて個性的です)
BQEYZ 「Winter 2」レビューの結論:ボーカルイヤホンの「完成形」にして「最適解」
この記事を通じて、BQEYZ 「Winter 2」を音質、装着感、付属品、そして実際の使用体験に至るまで多角的にレビューしてきました。
総括すると、本作は「初代Winterの音は好きだったが、装着感で諦めた」という、かつての私のようなユーザーにとって完璧な答えであると断言できます。
PZT骨伝導による唯一無二のボーカル表現という「強み」はそのままに、最大の「弱点」であった装着感を劇的に改善し、さらに3-in-1ケーブルという圧倒的な利便性まで手に入れました。
もはやニッチな愛好家向けのピーキーなモデルではなく、快適性と個性を両立させた、万人に(特にボーカルファンに)推奨できる「完成形」へと正当進化したのです。
このレビューが、あなたのイヤホン選びの旅において、「これだ」と思える一台に出会うための、信頼できる地図となることを願っています。

