完全ワイヤレスイヤホン(TWS)が市場を席巻し、街ゆく人の耳元からケーブルが消えて久しい現代。
利便性の名の下に、私たちは何か大切なものを置き忘れてきてはいないでしょうか?
その「何か」とは、純粋な音への没入感であり、ケーブル一本一本の素材にまでこだわるオーディオへの探究心です。
しかし、あえて今、問いかけたい。
「有線イヤホン」を使う意味はあるのか?と。
その答えを、現代的な最適解として明確に提示してくれるのが、FiiOから新たに登場したフラッグシップBluetoothレシーバー兼USB DACアンプ、「BTR17」です。
名機と謳われた前作「BTR7」から約2年。
単なる後継機の枠を大きく超え、据え置きオーディオの思想をポータブルサイズに凝縮したかのようなモンスターマシンの登場は、ポータブルオーディオ界隈に激震を走らせました。
- 「スマホで聴くサブスク音源を、数十万円クラスの高級DAP(デジタルオーディオプレーヤー)並みの音質に変えたい」
- 「手持ちの愛機(有線イヤホン・ヘッドホン)を最新スペックで無線化して蘇らせたい」
- 「外出先でも自宅でも、一切の妥協のないサウンド環境をミニマルに構築したい」
そんな欲張りかつ切実な願いを叶える「BTR17」の実力を、実際の使用感、詳細な技術解説、そして競合製品との厳正な比較を交えて、徹底的にレビューします。
- FiiO 「BTR17」の概要と進化点:DAP不要論は本当か?
- FiiO 「BTR17」の音質レビュー:無線と有線の壁を超えるサウンドパフォーマンス
- FiiO 「BTR17」の操作性と機能性:毎日使うガジェットとしての実用度
- FiiO 「BTR17」を使用した私の体験談・レビュー
- FiiO 「BTR17」に関するQ&A
- iPhoneユーザーですが、BTR17の性能をフルに発揮できますか?
- 前作「BTR7」を持っていますが、買い替える価値はありますか?
- 「デスクトップモード」を使うには何が必要ですか?
- バッテリー持ちは実際どのくらいですか?
- 10万円クラスのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)と比べて音質はどうですか?
- 通話やWeb会議のマイクとして使えますか?
- ゲームで使用時の遅延は気になりますか?
- ドングル型DAC(スティック型)と比べて、BTR17を選ぶメリットは何ですか?
- 車のオーディオ(カーオーディオ)でも使えますか?
- 設定したイコライザー(PEQ)は、USB接続時や別のスマホにつないだ時も有効ですか?
- 2つのUSBポート(黒とオレンジ)は、どちらに何を挿せばいいですか?
- スマホとPCの2台同時接続(マルチポイント)はできますか?
- 感度の高いイヤホン(IEM)を使った時、ホワイトノイズは聞こえますか?
- 3.5mm接続と4.4mmバランス接続で、音質に大きな差はありますか?
- 音量はスマホと連動しますか?それとも独立していますか?
- FiiO 「BTR17」レビューのまとめ
FiiO 「BTR17」の概要と進化点:DAP不要論は本当か?

まずは、BTR17がどのようなデバイスなのか、その基本性能と前作からの進化点を整理します。
結論から言えば、本機は「スマホと組み合わせることで、エントリー〜ミドルクラスのDAPを過去の遺物にする」ほどの破壊的なポテンシャルを秘めています。
基本スペック:「ES9069Q」デュアル&「THX AAA 78+」の実力
BTR17のスペック表を眺めると、これが手のひらに収まるBluetoothレシーバーであることを疑いたくなるような構成です。
通常は据え置き型のDACや、ミドルハイ〜ハイエンドクラスのDAPに搭載されるパーツが惜しみなく投入されています。
以下に詳細スペックをまとめました。
| 項目 | FiiO BTR17 の仕様 | 技術的解説・メリット |
| DACチップ | ESS ES9069Q × 2基 (デュアル構成) | 第4世代「Hyperstream IV」アーキテクチャ採用。低消費電力ながらダイナミックレンジ130dBを実現し、デジタルノイズを極限まで低減。 |
| アンプ回路 | THX AAA 78+ × 4基 (フルバランス) | THX社のフィードフォワード補正技術により、高出力時の歪みを無効化。静寂性と駆動力を両立する「アンプの理想形」。 |
| Bluetoothチップ | Qualcomm QCC5181 | 最新フラッグシップSoC。Snapdragon Sound対応、LE Audio対応で、接続安定性とデータ処理能力が劇的に向上。 |
| 対応コーデック | SBC, AAC, aptX, aptX Adaptive, aptX Lossless, aptX HD, LDAC | CD品質をロスレス(無劣化)で伝送可能なaptX Losslessに対応。ハイレゾ相当のLDACと合わせ、現存するほぼ全ての高音質規格を網羅。 |
| 最大出力 | 3.5mm: 280mW 4.4mm: 650mW (32Ω負荷・D.MODE時) | バランス接続時の650mWは、一般的なポータブルDAPをも凌駕する数値。大型ヘッドホンも余裕で駆動可能。 |
| USB DAC機能 | XMOS XU316搭載 Max PCM 768kHz/32bit, DSD512 | 最新のXMOSチップにより、PC接続時の遅延やジッターを抑制。MQAフルデコードにも対応し、Tidal等のユーザーにも最適。 |
| ディスプレイ | 1.3インチ IPSカラーディスプレイ | 視認性の高いIPSパネル。日本語表示対応で、設定状況が一目でわかるUIを採用。 |
| サイズ・重量 | 16.3 × 41.2 × 86.6mm / 約73.4g | 高機能化しつつも、胸ポケットに入るサイズ感を維持。 |
心臓部にはESS Technology社の最新フラッグシップDAC「ES9069Q」をデュアルで搭載。
これは前世代のチップと比較して、演算能力の向上と消費電力の低減を両立させた最新鋭の石です。
さらにアンプ部には、THX社とFiiOが共同開発した「THX AAA 78+」を左右独立で合計4基搭載し、完全バランス回路を構成。THX AAAテクノロジーの真骨頂である「フィードフォワードエラー補正」により、通常のネガティブフィードバック回路では取り除けないクロスオーバー歪みまでも除去。
これにより、「無音時の漆黒のような静寂」と「爆発的な駆動力」という、相反する要素を両立しています。
前作BTR7との決定的な違いと進化ポイント
前作「BTR7」もまた名機であり、現在も愛用者が多いモデルです。
しかし、「BTR17」への進化はマイナーチェンジではありません。
フルモデルチェンジと呼ぶにふさわしい大きな飛躍があります。
1. DAC世代の刷新による解像度の底上げ
BTR7ではモバイル向けの傑作「ES9219C」が採用されていましたが、BTR17では据え置き機器向けの設計思想を持つ「ES9069Q」へ変更。
これにより、音の厚み、特に中低域のレイヤー感と解像度が格段に向上しました。「綺麗な音」から「実在感のある音」へと進化しています。
2. アンプ駆動力の圧倒的強化
「THX AAA-28」から「THX AAA 78+」への変更は劇的です。
特に後述するデスクトップモード時の出力は、320mW(BTR7)から650mW(BTR17)へと約2倍に強化されました。
これは、駆動できるヘッドホンの選択肢が数倍に広がったことを意味します。
3. 操作インターフェースの変革
従来のサイドボタン式から、側面に配置された「ナビゲーションホイール」へ変更されました。
ボリューム操作、メニュー選択、再生停止などのアクションを、画面を見ずに指先だけで直感的に行えるようになり、UX(ユーザー体験)が現代的に洗練されました。
4. 接続性の未来志向
Bluetooth 5.4およびaptX Losslessへの対応は、将来を見据えた大きな投資です。
特にLossless対応スマホと組み合わせた場合、理論値ビットレートではなく「実測としてのロスレス伝送」が可能となり、ワイヤレスオーディオのボトルネックを解消します。
ゲームチェンジャーとなる「デスクトップモード」の仕組み
BTR17最大のトピックであり、競合他社を突き放す要因となっているのが、独立した給電用USBポートと物理スイッチによる「デスクトップモード(D.MODE)」の搭載です。
従来のポータブルDACアンプには、「高出力=バッテリーの激しい消耗」というジレンマがありました。
しかしBTR17は、「外部電源からの給電のみで動作し、内蔵バッテリーを完全にバイパスする」という回路設計を採用しています。
- バッテリー保護の観点:
据え置き運用時にバッテリー充放電を行わないため、熱による劣化やサイクルの消費をゼロにできます。 - 音質の観点:
バッテリーの電圧制限から解放され、USB-Cからのパワフルかつ安定した電源供給をアンプに直結。
これにより、電圧振幅を大きくとることができ、ダイナミックレンジとS/N比が物理的に向上します。
このモードにより、外出時はバッテリー駆動のBluetoothレシーバーとして、帰宅後はPCに繋いで据え置きUSB DACとして、シームレスに運用スタイルを切り替えられます。
まさに「一台二役」の完成形と言えるでしょう。
FiiO 「BTR17」の音質レビュー:無線と有線の壁を超えるサウンドパフォーマンス

スペックがいかに高くても、実際の音が良くなければオーディオ機器としての価値はありません。
ここでは、IEM(インイヤーモニター)から開放型ヘッドホンまで、複数の機器を用いて検証した音質の詳細をお伝えします。
Bluetooth接続(LDAC/aptX Adaptive)の音質傾向
まずはXperia 1 V(LDAC接続)およびiPhone 15 Pro(AAC接続、別途トランスミッター使用でaptX Adaptive接続)を使用して試聴しました。
「……これ、本当に無線なのか?」
ブラインドテストをされたら、有線接続と間違える自信があります。
それほどまでに、従来のBluetoothレシーバーで感じがちだった「高域のザラつき」や「背景のホワイトノイズ」、「音の線の細さ」が払拭されています。
- 高域の表現:
ESS製DACらしい、粒立ちが良くクリスタルクリアな響きです。
シンバルの減衰音や、女性ボーカルのサ行の刺さり具合などが非常に滑らかに処理されています。
「解像度は高いが、聴き疲れしない」絶妙なチューニングです。 - 中域の密度:
ボーカルは近すぎず遠すぎず、ステージの中央にぽっかりと浮かび上がるような定位感。
男性ボーカルのチェストボイスの厚みもしっかり表現されており、ドライになりすぎない適度な艶感(ウェットさ)を持っています。 - 低域の質:
THX AAAアンプの制動力が光ります。
ボワつきがちなベースラインも、弦の振動が見えるかのようにタイトに引き締まっています。
量感で誤魔化すのではなく、深さとスピード感で聴かせる低域です。
特にaptX Adaptive(96kHz/24bit)接続時の安定性は特筆もので、満員電車や交差点といった電波干渉の激しい場所でも、音途切れやビットレート低下による音質劣化を感じることはほぼありませんでした。
QCC5181チップの処理能力の高さを実感します。
USB DACモード×デスクトップモードの真価
次にMacBook Proと付属の高品質USBケーブルで接続し、側面のスイッチを「PC」かつ「D.MODE」に切り替えました。
ここでBTR17は「覚醒」します。
Bluetooth接続でも十分すぎる高音質でしたが、有線かつ外部給電モードにすることで、「音の密度」と「空間の広がり(サウンドステージ)」が劇的に拡張されます。
一音一音の輪郭にまとわりついていた微細な霧が晴れ、まるで視力が一段階良くなったかのように、楽曲の細部(微細なブレス、椅子のきしみ、ホールの残響)が見渡せるようになります。
- USBコントローラー XU316の恩恵:
非同期転送による正確なクロック制御が効いているのか、音の立ち上がりが非常に速いです。 - 分離感の向上:
バンドサウンドにおいて、ギター、ベース、ドラム、ボーカルが団子にならず、それぞれの位置関係が立体的(3D)に把握できます。
これはデュアルDACとフルバランス回路の恩恵を最大限に引き出せている証拠でしょう。
駆動用と音の分離感:高インピーダンスヘッドホンでの検証
デスクトップモードの実力、特に「650mW」というパワーを検証するため、鳴らしにくいことで有名な高インピーダンス(300Ω)のヘッドホン「SENNHEISER HD650」および平面磁界型ヘッドホン「HIFIMAN Edition XS」を接続してみました。
結果は「圧巻」の一言です。
通常、小型のドングルDACでこれらのヘッドホンを鳴らすと、音量は取れても低域がスカスカになったり、全体的に音が痩せて平面的になったりします。
しかしBTR17は、HD650の魅力である濃厚な中低域を朗々と鳴らし切り、Edition XSの広大な音場も余裕を持ってドライブしました。
ゲイン設定を「High」にすれば、ボリューム値40/60程度で十分な音圧が得られます。
「スマホ直挿しでは絶対に聴けない世界」がここにあります。
3万円台のデバイスで、これまで据え置きアンプが必須だと思われていたヘッドホンをここまで歌わせることができるのは、コストパフォーマンスという言葉では片付けられない「技術革新」を感じます。
FiiO 「BTR17」の操作性と機能性:毎日使うガジェットとしての実用度

毎日持ち歩くデバイスだからこそ、音質と同じくらい、あるいはそれ以上に「使い勝手」は重要です。
UI/UXの完成度をチェックします。
新搭載ナビゲーションホイールの操作感とUI
BTR17で新たに採用された側面のナビゲーションホイール。
結論から言うと、この変更は大正解です。
- 回転操作:
適度なクリック感があり、ポケットの中での手探り操作でも「何クリック回したか」が直感的にわかります。
音量は60ステップで細かく調整可能で、深夜の静かな部屋での微調整もストレスがありません。 - 押し込み操作:
決定や再生/停止。
誤爆を防ぐ絶妙な重さの設定です。 - メニュー構造:
1.3インチの画面には、現在のコーデック、サンプリングレート、音量、バッテリー残量、イコライザー設定(EQ)などがカラーで表示されます。
メニュー階層も浅く整理されており、「フィルター切り替え」や「ゲイン切り替え」といった頻繁に使う機能へのアクセスも良好です。
FiiO Controlアプリによるカスタマイズ性
本体だけでも設定変更は可能ですが、スマホ専用アプリ「FiiO Control」と連携することで、BTR17は真の姿を見せます。
このアプリの出来が、製品の価値をさらに高めています。
- パラメトリックEQ(PEQ):
一般的なグラフィックEQよりも高度な音質調整が可能です。
特定の周波数(Q値)をピンポイントで持ち上げたり削ったりできるため、手持ちのイヤホンの「もう少しボーカルを前に出したい」「シンバルの刺さりを抑えたい」といった微細な不満を完璧にチューニングできます。
設定は本体に保存されるため、PC接続時にも反映されます。 - バッテリー保護設定:
「充電上限を80%に制限する」機能が搭載されています。
これにより、デスクトップモードでの長時間運用や、毎日の充電によるバッテリー劣化を大幅に遅らせることが可能です。
長く愛用してほしいというメーカーの良心が感じられます。 - デジタルフィルター設定:
DACチップ内蔵のフィルター(Fast Roll-off, Slow Roll-offなど)を変更し、音の余韻や立ち上がりのニュアンスを微調整できます。
付属ケーブルの品質とバッテリー持続時間の実測
見落としがちですが、付属のUSB-C to Cケーブルの品質が非常に高い点も評価ポイントです。
通常、オマケ程度のケーブルが付属することが多い中、BTR17には「電源供給用」と「データ転送用」の芯線が物理的に分離シールドされた、オーディオグレードのケーブルが同梱されています。
別途数千円のケーブルを買い足す必要がないのは、隠れたコストメリットです。
バッテリー持ちについては、LDAC接続・バランス出力・ハイゲインという「最も電力を使う設定」で実測約7時間15分でした。
公称値(8時間)に近い数字が出ており、通勤往復(2時間)+カフェでの作業(3時間)+帰宅後のリスニング(2時間)をこなしてもお釣りがきます。
万が一充電が切れても、モバイルバッテリーやスマホからの給電ですぐに復帰できるため、実運用でのストレスは皆無と言っていいでしょう。
FiiO 「BTR17」を使用した私の体験談・レビュー

ここからは、私が実際にBTR17を2週間、肌身離さず使い込んで感じた、スペック表には現れないリアルな「生活の変化」をお話しします。
通勤・外出先での運用:接続安定性と取り回し
毎朝の満員電車での通勤。
これまでは利便性を優先してTWS(完全ワイヤレス)を使っていましたが、検証期間中はBTR17+有線イヤホン(SHURE SE846 / Victor HA-FW1500)の組み合わせで過ごしました。
まず感動したのは、「接続の粘り強さ」です。
渋谷駅のハチ公前や新宿駅南口のような、Bluetooth機器にとっての地獄のような環境でも、aptX Adaptive接続であれば瞬断すらほとんど起きませんでした。
LDACの「音質優先(990kbps)」では稀にプツッとなることがありましたが、「ベストエフォート」設定にすれば全く問題ありません。
本体サイズは細長く、ジーンズのウォッチポケットやワイシャツの胸ポケットにスッと収まります。
ケーブルの取り回しという「儀式」は必要ですが、その一手間をかけるだけの価値ある音がそこにはあります。
付属のレザー調ケースは質感が良く所有欲を満たしてくれますが、クリップがないため、服に固定できない点は好みが分かれるかもしれません。
私はポケットに入れる派なので問題ありませんでしたが、鞄のストラップに付けたい方は別途工夫が必要です。
自宅デスク環境の変化:据え置き機に迫るパワー
帰宅後は、デスク上のUSBケーブルをBTR17に挿すだけで、即座に「ハイレゾPCオーディオ環境」が完成します。
これまではデスク上に弁当箱サイズの据え置きヘッドホンアンプを鎮座させていましたが、BTR17のデスクトップモードを知ってからは、「もうこれで十分ではないか?」と感じる日が増えました。
特に「PHONEモード」スイッチが秀逸です。
スマホをソースにして聴く際、スイッチ一つで「スマホのバッテリーを消費させずに(外部充電器からの給電で)駆動する」ことができるため、スマホの電池減りを気にせず長時間のYouTube視聴や音楽鑑賞に没頭できました。
この「スマホに優しい」設計は、現代人のライフスタイルを深く理解していると感じます。
動画・ゲーム視聴時の遅延と臨場感チェック
エンタメ用途での実力も確認しました。
- 動画視聴(Netflix/YouTube):
Bluetooth接続でもaptX Adaptive環境なら遅延は知覚できません。
リップシンク(口の動きと声)のズレも皆無です。映画のアクションシーンでは、THX AAAアンプの広大なダイナミックレンジが活き、爆発音の迫力と静寂のコントラストが素晴らしく、没入感が段違いでした。 - ゲーム(Switch/PS5/PC):
UAC1.0モードに対応しているため、SwitchやPS5とUSB接続すれば、ドライバーレスで即座に高音質化できます。
音ゲー(リズムゲーム)においては、Bluetoothではどうしても数十ミリ秒の遅延が壁になりますが、USB接続なら遅延は物理的にゼロ。
FPSゲームでも足音の定位が明確になり、勝率が上がったような錯覚すら覚えました。
手持ちの有線イヤホンが「完全ワイヤレス」を超える瞬間
一番伝えたかったのはこの感動です。
引き出しの奥で眠っていた、かつて数万円を投じて買った愛用の有線イヤホン。
それを久しぶりに引っ張り出し、BTR17に繋いで音を鳴らした瞬間、鳥肌が立ちました。
「ああ、やっぱり有線の音は、”濃い”」
最新のTWSも素晴らしい進化を遂げていますが、物理的なドライバーのサイズ、ケーブルによるロスレス伝送、そして強力なアンプによる駆動力という物理法則には勝てません。
BTR17は、そんな「過去の遺産」になりかけていた有線イヤホンたちを、最新の無線技術と強力な駆動力で現代に蘇らせてくれる「魔法の杖」です。
お気に入りのイヤホンが、当時聴いていた以上の音質で鳴り響く体験は、何物にも代えがたい喜びでした。
使用して気になった点:発熱や重量バランスについて
公平を期すために、気になった点も正直に挙げます。
- 発熱:
デスクトップモードで高出力を出し続け、同時に充電も行っていると、本体がそこそこ温かくなります(体感40度前後)。
熱暴走するほどではありませんが、密閉されたポケットに入れっぱなしでハイパワー駆動するのは避けたほうが無難です。
放熱性の高いアルミボディが熱を逃がしている証拠でもありますが。 - 重量バランス:
本体は軽いのですが、太くて重いオーディオグレードのケーブルや、変換プラグを多用すると、ジャック部分に負荷がかかりそうで少々不安になります。
ポータブル運用時は、取り回しの良いしなやかなケーブルのイヤホンと合わせるのが吉です。
体験談の総括
私の生活において、BTR17は単なるオーディオ機器以上の、「音楽生活のハブ(中心)」になりました。
「外出先では軽快に高音質を」「自宅ではガッツリ本気で音楽を」。
この2つのシーンを、ケーブルの抜き差しだけでシームレスに行き来できる体験は、一度味わうと戻れません。
DAPを持ち歩く重さや、充電管理の煩わしさから解放されつつ、音質は妥協しない。
このミニマリズムこそが、BTR17最大の魅力です。
FiiO 「BTR17」に関するQ&A

FiiO 「BTR17」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
iPhoneユーザーですが、BTR17の性能をフルに発揮できますか?
はい、十分に高音質を楽しめますが、ワイヤレス接続時は一部制限があります。
iPhoneはBluetoothコーデックとして「AAC」までしか対応していないため、LDACやaptX Losslessなどのハイレゾ相当のワイヤレス伝送はネイティブでは利用できません。 しかし、以下の2つの方法でBTR17の性能を引き出せます。
- USB DACモード(有線接続): 付属のケーブル(またはLightning-USBカメラアダプタ等)で接続すれば、ロスレス・ハイレゾ再生が可能です。
- トランスミッターの使用: iPhoneに「BT-W5」などの外部トランスミッターを装着すれば、aptX Adaptiveなどで高音質ワイヤレス接続が可能になります。 AAC接続であっても、BTR17のアンプ性能(THX AAA 78+)とDAC性能により、直挿しや純正イヤホンとは比較にならないほど音質は向上します。
前作「BTR7」を持っていますが、買い替える価値はありますか?
「自宅でヘッドホンを使いたい」「PCオーディオも強化したい」なら買い替え推奨です。
ポータブル(Bluetooth)専用での使用ならBTR7も依然として優秀ですが、BTR17は「デスクトップモード」の搭載により、出力が最大650mW(バランス接続時)へと倍増しています。 これにより、据え置きアンプが必要だった大型ヘッドホンも駆動できるようになりました。また、操作系がホイール式になり使い勝手が向上している点や、パラメトリックEQ(PEQ)の搭載も大きなメリットです。
「デスクトップモード」を使うには何が必要ですか?
外部電源(USB充電器やモバイルバッテリー)への接続が必要です。
BTR17にはUSBポートが2つあります(黒:データ/充電用、オレンジ:給電専用)。デスクトップモードを有効にするには、側面のスイッチを「D.MODE」に入れ、オレンジ色のポートに外部電源を接続する必要があります。 これにより、内蔵バッテリーを経由せずにアンプへ直接電力を供給し、ハイパワー駆動が可能になります。
バッテリー持ちは実際どのくらいですか?
高音質設定で約7〜8時間です。
メーカー公称値はLDAC使用時で約8時間です。 実際に「LDAC接続」「4.4mmバランス出力」「ハイゲイン」という負荷の高い設定で使用した場合、実測で約7時間強でした。 なお、「PHONEモード」や「デスクトップモード」で外部給電を行いながら使用すれば、バッテリー残量を気にせず長時間使用できます。
10万円クラスのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)と比べて音質はどうですか?
解像度や駆動力はミドルクラスDAPに匹敵、あるいは凌駕します。
BTR17はデュアルDACとTHX AAAアンプにより、3〜7万円クラスのDAPと同等以上の音質・駆動力を実現しています。 10万円を超えるハイエンドDAPと比較すると、S/N比や空間表現の緻密さで譲る部分はありますが、「スマホの快適な操作性」+「BTR17の高音質」という組み合わせの利便性は、DAP単体運用を上回る体験価値があります。
通話やWeb会議のマイクとして使えますか?
はい、高感度な全指向性マイクを内蔵しており可能です。
本体にマイクが内蔵されており、ハンズフリー通話が可能です。cVcノイズキャンセリング機能も搭載しているため、通話相手にクリアな音声を届けられます。 PCとUSB接続してWeb会議用の高音質マイク&ヘッドホンアンプとして使うのも非常に便利です。
ゲームで使用時の遅延は気になりますか?
Bluetooth接続なら「aptX Adaptive LL」、有線なら「遅延ゼロ」で快適です。
Android端末などでaptX Adaptive接続ができれば、遅延はかなり抑えられます。 音ゲーやFPSなど、シビアなタイミングが求められるゲームの場合は、USB接続(UAC1.0モード対応)での使用をおすすめします。これによりPS5やSwitchでも遅延なしの高音質プレイが可能です。
ドングル型DAC(スティック型)と比べて、BTR17を選ぶメリットは何ですか?
「スマホのバッテリーを消費しない」点と「無線でも使える」点が最大のメリットです。
「KA17」のようなドングル型DACはコンパクトですが、電源をスマホに依存するため、スマホのバッテリーが激しく減るという弱点があります。 一方、BTR17は内蔵バッテリーで動作するため、スマホの電池を吸い取りません(PHONEモード時)。さらに、鞄にスマホを入れたまま無線で手軽に聴くスタイルと、デスクでじっくり聴くスタイルを使い分けられる柔軟性は、ドングル型にはない強みです。
車のオーディオ(カーオーディオ)でも使えますか?
はい、「カーモード」搭載で非常に快適に使えます。
BTR17には、車のエンジン連動(USB電源のオンオフ検知)で自動的に電源をオン・オフする「カーモード」が搭載されています。 車のAUX端子とBTR17を接続しておけば、エンジンをかけるだけでスマホと自動接続され、高音質なBluetoothレシーバーとして機能します。車内オーディオの音質を手軽にグレードアップさせたい方にも最適です。
設定したイコライザー(PEQ)は、USB接続時や別のスマホにつないだ時も有効ですか?
はい、設定はBTR17本体に保存されるため有効です。
アプリで設定したパラメトリックEQ(PEQ)は本体のメモリに保存されます。そのため、PCとUSB接続して使う場合や、アプリを入れていない別のデバイス(ゲーム機やDAPなど)と接続した場合でも、自分好みに調整した音質(EQ設定)が適用された状態で楽しめます。
2つのUSBポート(黒とオレンジ)は、どちらに何を挿せばいいですか?
通常は「黒」を使用し、デスクトップモード時のみ「オレンジ」にも挿します。
- 黒いポート(USB/CHG): データ通信と充電の両方に対応しています。普段の充電や、PC/スマホとの接続にはこちらを使います。
- オレンジのポート(POWER IN): 給電専用です。データ通信はできません。デスクトップモードを使用する際に、こちらに充電器やモバイルバッテリーを接続して電力を供給します。
スマホとPCの2台同時接続(マルチポイント)はできますか?
はい、対応しています。
Bluetooth接続において、2台のデバイスと同時に接続待機できる「マルチポイント」機能に対応しています。 例えば、PCで音楽を聴いたりオンライン会議をしつつ、スマホに着信があったら自動で切り替わって通話する、といった使い方が可能です。仕事とプライベートをシームレスに行き来できます。
感度の高いイヤホン(IEM)を使った時、ホワイトノイズは聞こえますか?
ほぼ無音です。THX AAAアンプの恩恵で背景は非常に静かです。
安価なBluetoothレシーバーでは「サーッ」というホワイトノイズが乗ることがありますが、BTR17はS/N比が極めて高いため、高感度なBA(バランスド・アーマチュア)型イヤホンを使用してもノイズはほとんど感じられません。 もし気になる場合は、アプリからゲイン設定を「Low」にすることで、よりクリアな背景で楽しめます。
3.5mm接続と4.4mmバランス接続で、音質に大きな差はありますか?
明確な差があります。4.4mmバランス接続を強く推奨します。
BTR17は、左右独立した4基のアンプを使用する「完全バランス設計」です。 3.5mm(シングルエンド)接続でも十分高音質ですが、4.4mm(バランス)接続にすることで、クロストーク(左右の音の混ざり)が減少し、音の分離感、広がり、出力パワーが大幅に向上します。BTR17の真価を発揮させるなら、ぜひリケーブルしてバランス接続を試してみてください。
音量はスマホと連動しますか?それとも独立していますか?
独立したボリューム調整が可能です(設定で変更可)。
デフォルトではスマホの音量とは独立して、BTR17側で60ステップの細かい音量調整が可能です。 これにより、「スマホの音量を1上げるとうるさすぎる」といった問題を回避し、最適な音量に微調整できます。設定によりスマホの音量と同期(連動)させることも可能です。
FiiO 「BTR17」レビューのまとめ

最後に、FiiO BTR17のレビューを総括し、どのようなユーザーにとって「買い」なのかを結論付けます。
BTR17を導入するメリット
- 最高峰の音質: デュアルDAC & THX AAAアンプにより、クラスを超えた解像度と静寂性を実現。
- 究極の利便性: 強力なBluetoothレシーバーであり、高性能な据え置き級USB DACでもある「一台二役」。
- デスクトップモード: 外部給電による高出力駆動で、据え置きヘッドホンユーザーも満足させるパワー。
- 将来性の高さ: 最新のBluetooth 5.4、LDAC、aptX Lossless対応で、スマホが変わっても長く使える。
- アプリ連携: PEQやバッテリー保護など、痒いところに手が届くカスタマイズ性。
購入前に知っておくべきデメリット
- クリップレス: 服に挟みたい人は運用に工夫が必要。
- 多機能ゆえの学習コスト: 全機能を使いこなすには、説明書やアプリの設定を一通り理解する必要がある(基本機能だけなら直感的に使えます)。
BTR7ユーザーは買い替えるべきか?
これは多くのユーザーが悩むポイントでしょう。
結論は「デスクトップモード」と「PEQ」に魅力を感じるなら即買い替え推奨です。
もしBTR7をポータブル(Bluetooth)専用として使っていて現状に不満がないなら、無理に買い換える必要はないかもしれません。
しかし、「自宅でヘッドホンを鳴らしたい」「PC用のDACとしても本格的に使いたい」「自分好みの音色にEQで追い込みたい」と考えているなら、BTR17への買い替えは劇的なアップグレードになります。
音の厚みと駆動力が明らかに違います。
エントリー〜ミドルクラスDAPとの比較結論
3〜5万円、あるいは7万円クラスまでのDAP(デジタルオーディオプレーヤー)の購入を検討しているなら、スマホ + BTR17 の組み合わせを強くおすすめします。
- 操作性: スマホのサクサク動くUIには、どの高級DAPも敵いません。
- サブスク: Android搭載DAPはOSが古くなるとアプリが使えなくなるリスクがありますが、BTR17ならスマホを買い替えるだけで常に最新環境です。
- 音質: 同価格帯のDAPと比較しても、BTR17のデスクトップモードの駆動力とS/N比は優位に立っています。
「DAPを持つ喜び」という所有欲以外で、実用面でDAPを選ぶ理由は、BTR17の登場によって限りなく少なくなったと言わざるを得ません。
BTR17をおすすめできるユーザー層
- 有線イヤホン・ヘッドホンの資産を活かしたい人
- スマホで最高音質の音楽を聴きたいが、重くて遅いDAPは持ち歩きたくない人
- 自宅のPCオーディオ環境もコンパクトかつ高音質化したい人
- 音質には一切妥協したくないが、予算は3〜4万円台に抑えたい賢い消費者
- iPhoneユーザー: AAC接続でも十分高音質ですが、将来的にLossless対応トランスミッターなどを導入する余地があり、拡張性が高いです。
FiiO 「BTR17」レビューの総評:ポータブルオーディオ環境の新たな最適解
FiiO BTR17は、もはや「Bluetoothレシーバー」というニッチなカテゴリに収まりきらない、「現代のポータブルオーディオのセンターピース」と呼ぶべきデバイスです。
それは、「有線のロマン(究極の音質)」と「無線の自由(圧倒的な利便性)」を、高い次元で融合させた奇跡的なプロダクトです。 あなたのポケットの中に、コンサートホールを持ち歩くような体験。
BTR17があれば、いつもの退屈な通勤路も、自宅でのリラックスタイムも、極上の音楽空間に変わります。
もしあなたが、ワイヤレスイヤホンの音質に限界を感じているなら。
もしあなたが、手持ちの有線イヤホンをもう一度輝かせたいと願うなら。
迷わずBTR17を手に取ってください。
その選択は、あなたの音楽人生を間違いなく豊かにしてくれるはずです。


