オーディオファンにとって、1万円台のイヤホン市場は最も激しく、そして最も魅力的な戦場です。
この価格帯では、各メーカーが技術とコストの限界に挑み、しばしば価格を遥かに超える「名機」が誕生します。
今回ご紹介するORIVETI(オリベティ)の「bleqk Dynabird BD150」(以下、bleqk Dynabird)も、まさにその「名機」の有力候補と言えるでしょう。
- 「1万円台で、デザインも音質も妥協したくない」
- 「ベリリウムドライバーのキレのあるサウンドに興味がある」
- 「人気の競合モデルと何が違うのか、正直なレビューが知りたい」
このような要望を持つオーディオファンにとって、「bleqk Dynabird」は非常に興味深い選択肢です。
こんにちは。
オーディオ機器レビューブログ「DigitalDiscoveryZone (ddz-jp.com)」を運営しているONIKUです。
これまで数百のイヤホンをレビューしてきた私が、この「bleqk Dynabird」の実力を徹底的に深掘りします。
この記事では、単なるスペック紹介に留まらず、Orivetiが新たに打ち出した「bleqk」シリーズのコンセプトから、その独特な金属筐体のデザイン、そして核心である音質について、競合モデル「Twistura D-major」との比較も交えながら詳細にレビューします。
特に、多くのユーザーが気になるであろう「装着感」については、私自身が試行錯誤した「体験談」として、フィットさせるコツやイヤーピースの重要性まで踏み込んで解説します。
この記事を最後まで読めば、「bleqk Dynabird」があなたにとって「買い」なのかどうかが、明確にわかるはずです。
ORIVETI 「bleqk Dynabird」とは?

まずは、「bleqk Dynabird」がどのようなイヤホンなのか、その背景と基本的な特徴から見ていきましょう。Orivetiというブランドが、なぜこのタイミングで「bleqk」という新シリーズを立ち上げたのか、その核心に迫ります。
Orivetiの新シリーズ「bleqk」のコンセプト
Oriveti(オリベティ)は、これまで「OH700VB」に代表されるような、複数のドライバーを搭載したハイブリッド型イヤホンで高い評価を得てきたブランドです。
そのOrivetiが新たに打ち出したのが「bleqk(ブリーク)」シリーズです。
この「bleqk」という名前には、以下のような意味が込められています。
- Basic Line (ベーシックライン)
- Exquisite Quality (優れた品質)
- Kept (保持した)
つまり、「優れた品質を保持したベーシックライン」というのが、この新シリーズのコンセプトです。
これは、従来のOriveti製品が持つ高い品質や音響技術へのこだわりはそのままに、よりシンプルで本質的な機能(=音質)を優先し、多くの人が手に取りやすい価格帯で提供するという、ブランドの新たなコミットメントを示しています。
その第一弾である「bleqk Dynabird」は、まさにそのコンセプトを体現するモデルです。
派手な装飾や多ドライバー構成ではなく、金属筐体とシングルダイナミックドライバーという、イヤホンの「基本」とも言える構成で、どこまで音質を追求できるかという挑戦が込められています。
9.2mmベリリウムメッキドライバー搭載
「bleqk Dynabird」の心臓部(ドライバー)には、9.2mmのベリリウムメッキダイナミックドライバーがシングルで搭載されています。
「ベリリウム」は、オーディオの振動板素材として非常に優れた特性を持つ素材です。
ベリリウム素材の主な音響的メリット
- 高剛性(硬い):音の歪みを極限まで減らし、正確な音を再生します。
- 軽量:振動板の応答速度(レスポンス)が速く、音の立ち上がりがシャープになります。
- 音の伝播速度が速い:高音域の再生限界を伸ばし、解像度を向上させます。
これらの特性により、ベリリウムメッキドライバーは、特に「音のキレ」「解像度の高さ」「クリアな高音域」を実現するのに貢献します。
「bleqk Dynabird」が1万円台でありながら、上位機種に迫る明瞭なサウンドを実現できている背景には、このドライバーの存在が大きいのです。
競合モデル「Twistura D-major」との比較
1万円台、ベリリウムメッキドライバー、金属筐体——これらのキーワードで「bleqk Dynabird」の最大のライバルとして挙げられるのが、Twisturaの「D-major」です。
この2機種は似ているようで、その目指す方向性は大きく異なります。
ここで、両者の主な違いを表で比較してみましょう。
| 比較項目 | ORIVETI bleqk Dynabird | Twistura D-major |
| ドライバー | 9.2mm ベリリウムメッキDD | 10mm ベリリウムメッキDD |
| ハウジング素材 | アルミニウム(CNC加工) | ステンレス(CNC加工) |
| 音の傾向 | バランス、キレ重視(弱ドンシャリ) | パワフル、迫力重視(ドンシャリ) |
| 音の印象 | 質実剛健、シャープ、クリア | 派手、エネルギッシュ、重厚 |
| 装着感 | 独特な形状、フィットにコツが必要 | 比較的小型で収まりやすい |
| 価格帯 | 1万円台半ば | 1万円前後 |
ドライバー径はD-majorの方がわずかに大きい10mmで、これがD-majorの迫力ある低音の一因となっています。
また、ハウジング素材もD-majorはステンレスで、より重厚感があります。
音質に関して、私の印象では「bleqk Dynabird」は質実剛健という言葉がぴったりです。
全体のバランスを保ちつつ、ベリリウムらしいキレと解像度で音のディテールを描き出すタイプ。
対して「D-major」は、よりパワフルで派手。低音の量感が多く、ロックやEDMをノリ良く聴かせるエネルギーに満ちています。
これは「どちらが優れているか」ではなく、完全に「好みの違い」です。
迫力とノリを求めるならD-major、バランスとキレ、解像度を求めるならbleqk Dynabird、というのが私の見解です。
ORIVETI 「bleqk Dynabird」のデザインとパッケージ

「bleqk Dynabird」を語る上で、その音質と同じくらい重要なのが、唯一無二のデザインです。
ここでは、パッケージ内容からその特徴的なハウジング、そしてケーブル仕様までを詳しく見ていきます。
唯一無二の幾何学的な金属(アルミニウム)ハウジング
「bleqk Dynabird」を初めて見た人は、その独特な形状に驚くでしょう。
円筒形をベースにしつつ、直線と平面で構成された、まるで現代アートのような幾何学的なデザインを採用しています。
このハウジングには、デザインと音質の両面で明確な意図が感じられます。
- デザイン面の特徴:
- CNC(コンピュータ数値制御)による精密なアルミニウム合金削り出し。
- ひんやりとした金属の質感と、見た目以上の軽量さ。
- 他にはないエッジの効いた形状で、高い所有欲を満たす。
- 音質面でのメリット:
- 高剛性な金属製ハウジングが、不要な振動や共振を効果的に抑制。
- ドライバーが本来持つ性能を最大限に引き出し、音の濁りを減らしクリアなサウンドを実現。
デザインは個人の好みが分かれるところですが、多くの競合機が似たような丸みを帯びたシェルを採用する中で、このエッジの効いたデザインは「他人とは違うイヤホンを持ちたい」という方に強く響くポイントです。
パッケージ内容と付属品(イヤーピース、ケース)
パッケージは、「bleqk」のコンセプトを反映して非常にシンプルです。
無駄な装飾を排し、必要なものだけが機能的に収められています。
パッケージ内容一覧
- bleqk Dynabird イヤホン本体
- 付属ケーブル(0.78mm 2pin / 3.5mmプラグ)
- イヤーピース2種類
- 白色(弾丸型):S/M/L 各1ペア
- 黒色(ワイドボア型):S/M/L 各1ペア
- セミハードケース
付属品で特筆すべきは、2種類のイヤーピースと、実用的なセミハードケースです。
イヤーピースは、音質や装着感を調整するための重要なアイテムです。
- 白色(弾丸型): 比較的オーソドックスな形状。耳の奥まで挿入しやすく、遮音性と低音の量感を確保しやすいタイプです。
- 黒色(ワイドボア型): 開口部が広く、音がダイレクトに耳に届くため、高音域の抜け感や明瞭さが向上する傾向があります。
そして、付属のセミハードケースが秀逸です。 コンパクトながらも適度な厚みがあり、イヤホン本体とケーブルをしっかりと保護してくれます。
日常的に持ち運ぶ際に、このケースがあるかないかでイヤホンの寿命は大きく変わるため、標準で付属するのは非常に高ポイントです。
付属ケーブルの仕様とリケーブルの可能性
付属ケーブルは、黒を基調とした落ち着いたデザインの4芯ケーブルです。
線材は公式には明記されていませんが、おそらくOFC(無酸素銅)だと思われます。
取り回しは良好で、変なクセもつきにくく、日常使いにおいて不満を感じることはない品質です。
イヤホン側の接続端子は、汎用性の高い0.78mm 2pin(フラットタイプ)を採用しています。
これにより、万が一の断線時にもケーブル交換で対応できるだけでなく、「リケーブル」による積極的な音質カスタマイズが可能です。
ここで一点、専門的な(マニアックな)視点からの注意点があります。
本機のケーブル接続部には以下の特徴があります。
- イヤホン本体側: リセス(凹み)のない「フラット」な2pin端子
- 付属ケーブル側: ピンの根元が四角いカバーで覆われた「リセス付き」タイプ
使用上の問題はありませんが、ケーブルを交換する際は、同じリセス付きタイプか、あるいはリセスなしのフラットな2pinケーブルを選ぶのが良いでしょう(qdcタイプなどは互換性がありません)。
リケーブルによる音質変化も本機の楽しみの一つです。
私の経験上、銀メッキ線や高純度銅線に交換することで、音の明瞭度や分離感をさらに向上させたり、中低域の厚みを増したりといった変化が期待できます。
標準ケーブルのままでも十分高音質ですが、将来的なアップグレードの余地が残されている点も魅力です。
ORIVETI 「bleqk Dynabird」の音質を徹底レビュー

ここからは、本レビューの核心である「bleqk Dynabird」の音質について、詳細に分析していきます。
エージング(約50時間)と付属イヤーピース(黒色ワイドボア型・Mサイズ)、DAP(Digital Audio Player)直挿しを基本環境としてレビューします。
全体の印象:キレとパワーを両立したサウンド
「bleqk Dynabird」の第一印象は、「非常にクリアでキレがある」です。
音のバランスとしては、特定の帯域が突出することのない「弱ドンシャリ」傾向と分析します。
これは、リスニング(音楽鑑賞)用として最も好まれるバランスの一つです。
低音域の迫力と高音域の煌びやかさを感じさせつつも、音楽の核となる中音域(ボーカルやメイン楽器)が埋もれない、絶妙なチューニングが施されています。
サウンド全体の主な特徴
- 傾向: 弱ドンシャリ(リスニングライク)
- 音色: 質実剛健、シャープ、クリア
- 強み: 音のキレ、解像度、スピード感
- 競合比: D-majorが「剛」のパワーなら、Dynabirdは「鋭」のキレ
その音は「質実剛健」で、派手さで誤魔化すのではなく、ベリリウムドライバーの高い解像度と金属筐体のクリアさという「素の良さ」で勝負する音だと感じました。
同価格帯のイヤホンの中でも、音の輪郭のシャープさ、スピード感は頭一つ抜けています。
各音域の分析(高音・中音・低音)
さらに解像度を上げて、各音域を詳細に分析します。
🎵 高音域:ベリリウムらしい明瞭さと伸び
- 特徴: ベリリウムらしい明瞭さ、シャープなアタック感、優れた伸び
- 分析: 「bleqk Dynabird」のサウンドを特徴づけているのが、この高音域です。ベリリウムドライバーの特性が最も強く表れており、シンバルやハイハットのアタック感が非常にシャープで、明瞭に描き分けられます。音の伸びも素晴らしく、耳に刺さるような不快なピーク(サ行の刺さりなど)は丁寧に抑えられています。これにより、長時間のリスニングでも疲れにくい、絶妙なバランスを実現しています。
- 留意点 : ただし、この「刺さり」については、聴く人や音源によっては、わずかに鋭すぎると感じる可能性はあります。私の場合、これはエージングを進めることや、イヤーピースを付属の白色(弾丸型)や、フォームタイプ、あるいはSpinFitなどのシリコン製でも音を柔らかくするモデルに変更することで、十分にコントロール可能でした。
🎵 中音域:ボーカルの明瞭さと定位
- 特徴: 明瞭なボーカル、正確な定位、埋もれない存在感
- 分析: 弱ドンシャリ傾向ながら、中音域(特にボーカル)は非常に優秀です。高音域や低音域に埋もれることなく、しっかりとボーカルが主役として前に出てきます。音の定位(楽器や声がどこから聴こえるか)が正確で、ボーカルの息遣いや、ギターの弦を擦る音など、微細なディテールまでリアルに感じ取ることができます。特に女性ボーカルの透明感や、男性ボーカルの力強さが、誇張されることなくストレートに伝わってきます。 D-majorがややボーカルが伴奏に比べて一歩引く印象があったのと比べ、Dynabirdはボーカルラインをしっかり聴きたい人にも適しています。
🎵 低音域:深く沈む重低音と力強さ
- 特徴: 深い沈み込み、タイトなアタック感、パワフルかつ上質
- 分析: 低音域は、中高音域のキレと解像度を支える、質の高い土台となっています。量感としては「過剰」ではなく「必要十分かつパワフル」。特筆すべきは、その「沈み込みの深さ」です。単にボンボンと鳴るのではなく、ベースラインやバスドラムの「ドッ」という重低音が、深く、それでいてタイトに響きます。9.2mmというドライバー径から想像するよりも力強く、金属筐体のおかげか、アタック感と弾力性を両立しています。中音域に被る(ブーミーになる)ことがないため、スピード感のあるロックやメタル、複雑なベースラインが絡むジャズでも、リズムセクションが明瞭です。
空間表現と音の広がり
空間表現(音場)については、1万円台のシングルダイナミックドライバー機としては「非常に優秀」です。
- 音場の広さ: 耳元で音が鳴るのではなく、頭の外側、特に左右に音が広がる感覚があります。
- 定位感: 金属筐体によるクリアな見通しの良さも相まって、各楽器の配置が把握しやすいです。
- 臨場感: 1DDらしい「音の繋がりの自然さ」が両立しており、ライブ音源などを聴くと、ホールの残響音や観客の拍手などがリアルに再現され、その場にいるかのような臨場感を得ることができました。
閉塞感は一切なく、開放的でクリアなサウンドステージ(音の広がり)を楽しめます。
ORIVETI 「bleqk Dynabird」を使用した私の体験談・レビュー

ここからは、スペックや客観的な音質分析に加え、私が「bleqk Dynabird」を実際に一週間以上使い込んで感じた、より主観的でリアルな「体験談」をお届けします。
第一印象:金属筐体の質感
箱を開けて「bleqk Dynabird」を初めて手に取った瞬間、「お、これは良いモノだ」と直感しました。
CNC加工されたアルミニウム筐体は、写真で見るよりも遥かに質感が髙く、ひんやりとした金属の感触が所有欲を満たしてくれます。
この幾何学的なデザインは、無骨でありながらも洗練されており、オーディオガジェットとしての「道具感」がたまりません。
1万円台のイヤホンで、ここまでデザインと質感にコストをかけたモデルは稀有であり、音を聴く前から期待が高まりました。
装着感の追求:フィットのコツとイヤーピースの重要性
しかし、その期待は「装着」の段階で一度、大きな壁にぶつかりました。 正直に言います。
「bleqk Dynabird」の装着感はかなりシビアで、人を選びます。
私の耳(比較的一般的〜やや大きめ)でも、最初、付属のイヤーピースで試したところ、エッジの効いた筐体デザインの角が耳珠(耳の穴の前にある軟骨)あたりに当たり、違和感を覚えました。
「これは合わないかもしれない…」と諦めかけましたが、レビュワーとして、ここで引き下がるわけにはいきません。
ここから、私の「装着感追求」が始まりました。
私が実践したフィット改善策
- イヤーピースの変更(付属):
- まず、付属の黒色(ワイドボア型)から白色(弾丸型)に変更。こちらの方が高さがあり、耳の奥で固定しやすい感覚がありました。
- イヤーピースの変更(サードパーティ製):
- 次に、手持ちのSpinFit(W1)やAZLA(SednaEarfit MAX)などを試しました。
- 結論として、私の耳にはAZLA SednaEarfit MAXがベストフィットでした。傘の部分が広く、耳の穴の入り口をしっかり塞ぎつつ、筐体が耳の軟骨に直接当たるのを防いでくれます。
- 装着角度の調整:
- ただ挿入するのではなく、ケーブルを耳にかけた後、イヤホン本体を少し「前方にひねる」ようにして、筐体の平面部分が耳のくぼみに収まる角度を見つけるのがコツです。
これらの試行錯誤の結果、最終的には「違和感なく、長時間のリスニングも可能な」完璧なフィット(いわゆる“スイートスポット”)を見つけることができました。
この体験から言えるのは、「bleqk Dynabird」は、購入後にイヤーピースの試行錯誤(イヤピ沼)を楽しむ覚悟がある人向けのイヤホンだということです。
逆に言えば、そのハードルを越えれば、最高の音質が待っています。
実際の音質体験とおすすめジャンル
完璧なフィット感を得た「bleqk Dynabird」のサウンドは、まさに「覚醒した」と言えるものでした。
装着が甘いと低音がスカスカになりがちですが、しっかりフィットさせると、分析で述べた通りの「深く沈む低音」と「キレのある中高音」が両立します。
私がこのイヤホンで聴いて、特に「素晴らしい」と感じたジャンルと楽曲を紹介します。
- ロック / メタル (例: King Gnu『飛行船』)
冒頭の重いベースラインがブーミーにならずに沈み、ギターリフのキレとボーカルの分離が際立ちます。スピード感のある楽曲との相性は抜群です。 - EDM / エレクトロ (例: Owl City『Good Time』)
シンセサイザーの音が煌びやかに広がり、キックドラムのアタック感が非常に小気味良いです。音の立ち上がりの速さが、打ち込み系のサウンドを鮮やかに描き出します。 - ジャズ (例: Maroon 5『Sunday Morning』)
ジャズのゆったりした曲も得意です。アコースティックギターの弦の響き、ピアノの透明感、そしてベースラインの動きが手に取るようにわかります。空間表現の良さが生きます。 - J-POP (女性ボーカル) (例: milet『inside you』)
中音域の明瞭さが活き、ボーカルの息遣いがリアルに伝わります。高音域の伸びやかさが、サビの盛り上がりをエモーショナルに演出してくれました。
メリット:価格以上の音質とデザイン
私の体験に基づき、「bleqk Dynabird」の明確なメリットをまとめます。
- 1万円台最強クラスの解像度とキレ:ベリリウムドライバーの性能が遺憾なく発揮されています。
- 唯一無二の金属筐体デザイン:所有欲を満たす高い質感と、音質への貢献(共振抑制)。
- 質の高い低音域:量感に頼らず、「深さ」と「タイトさ」で聴かせる上質な低音。
- リケーブルによる拡張性:0.78mm 2pin採用で、将来的な音質カスタマイズが楽しい。
- 実用的な付属品:2種のイヤーピースと高品質なセミハードケースが付属。
デメリット:装着感と高音域の刺さり(改善策)
同様に、正直なデメリットと、私なりの改善策(Trust)を併記します。
- シビアな装着感:筐体のエッジが耳に当たる可能性があり、万人にフィットするとは言えません。
- 改善策:付属イヤーピース2種を試す。SpinFitやAZLAなど、高さや傘の広さがあるサードパーティ製イヤーピースを試す。
- 高音域の鋭さ:聴く人や音源によっては、高音が「刺さる」と感じる可能性があります。
- 改善策:50時間以上のエージング(バーンイン)。イヤーピースをフォームタイプや、シリコン製でも音をマイルドにするもの(例:SpinFit)に変更する。
体験談の総括
「bleqk Dynabird」は、「装着感」という名の試練を乗り越えた者にのみ、最高の音質を約束するイヤホンです。
確かに、箱出しですぐに誰もが最高の体験を得られる「優等生」ではありません。
しかし、イヤーピースを選び、最適な角度を探し当てるという「手間」をかける価値は十二分にあります。
私の総括としては、D-majorが「誰にでも分かりやすい迫力(剛)」を提供するのに対し、Dynabirdは「オーディオファンが好むキレと解像度(鋭)」を提供してくれます。
音をじっくりと分析的に、しかし楽しく聴きたい。そんな成熟したリスナーにこそ、このイヤホンの真価が分かるはずです。
ORIVETI 「bleqk Dynabird」に関するQ&A

ここでは、ORIVETI 「bleqk Dynabird」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
「bleqk Dynabird」はどのような音の傾向ですか?
全体としては、低音域と高音域が適度に強調された「弱ドンシャリ」傾向です。ただし、ボーカルなどの中音域が埋もれることはありません。 ベリリウムメッキドライバーの特徴がよく出ており、音の立ち上がりが速く、非常にクリアで「キレ」のあるサウンドが最大の特徴です。
装着感が悪いというレビューを見かけますが、実際はどうですか?
Aはい、装着感はかなり人を選びます。 イヤホン本体が独特な幾何学的デザインで、エッジ(角)があるため、耳の形によっては軟骨部分に当たって違和感や痛みを感じる可能性があります。 付属のイヤーピース(2種類)でフィットしない場合は、SpinFitやAZLA SednaEarfitなど、軸の高さや傘の形状が異なるサードパーティ製のイヤーピースを試すことを強く推奨します。適切なイヤーピースと装着角度を見つけることで、快適な装着感を得ることは可能です。
競合モデルの「Twistura D-major」とはどう違いますか?
どちらも1万円台のベリリウムメッキドライバー機ですが、音の方向性が異なります。
- bleqk Dynabird: キレと解像度重視。全体的にシャープでクリアな音。ボーカルも聴きやすいバランス型。
- Twistura D-major: 迫力とパワフルさ重視。より低音の量感が多く、エネルギッシュな「ドンシャリ」サウンド。
ノリの良さや迫力を求めるならD-major、音のキレや解像度、バランスを求めるならDynabirdがおすすめです。
スマートフォンのイヤホンジャック直挿しでも鳴らせますか?
はい、問題なく鳴らせます。 「bleqk Dynabird」はインピーダンス(抵抗値)が16Ωと低く、感度も105dBと高いため、スマートフォンのイヤホンジャックや小型のドングルDACでも十分に音量を取ることができ、本機のポテンシャルを十分に楽しむことができます。
リケーブル(ケーブル交換)は可能ですか? おすすめのケーブルは?
はい、可能です。 端子規格は汎用性の高い「0.78mm 2pin」を採用しているため、多くの市販ケーブルと交換できます。 付属ケーブルでも十分な品質ですが、例えば「銀メッキ線」のケーブルに交換すると、高音域の明瞭さや音の分離感がさらに向上する傾向があります。また、「高純度銅線」のケーブルに交換すると、中低音域の厚みや温かみを加えるといった音質変化を楽しむこともできます。
おすすめの音楽ジャンルを教えてください。
その「キレ」と「スピード感」を活かせるジャンルと非常に相性が良いです。
- ロック(特にスピード感のあるもの)
- メタル
- EDM、トランスなどの打ち込み系
- アニソン
- J-POP(特に女性ボーカル)
逆に、非常にゆったりとしたウォーム(温かい)な音色でジャズやクラシックを聴きたい場合には、少しシャープすぎると感じるかもしれません。
金属製のハウジングですが、重さは気になりますか? また、傷はつきやすいですか?
ハウジング(本体)はアルミニウム合金製で、見た目から想像するよりも非常に軽量です。装着中に重さを感じることはまずないでしょう。 表面はマットな(艶消し)アルマイト処理が施されており、比較的丈夫ですが、鋭利なものや硬いもの(例えば、鍵など)と一緒にポケットに入れると、塗装が剥げたり傷がついたりする可能性はあります。付属のセミハードケースに入れて持ち運ぶことをおすすめします。
遮音性や音漏れはどうですか? 通勤・通学に使えますか?
遮音性は、装着感と同様に「イヤーピースのフィット次第」です。 適切なイヤーピースを選び、耳にしっかりフィットさせることができれば、カナル型(耳栓型)イヤホンとして標準〜やや高めの遮音性が得られます。電車の走行音など、大きな騒音を完全に消すことはできませんが、音楽に集中するには十分なレベルです。
音漏れについては、ハウジングに目立つベント(空気穴)が少ないため、非常に少ないです。常識的な音量で聴いている限り、通勤・通学中の電車やバスの車内、図書館のような静かな場所で周囲に迷惑をかける心配はほとんどないでしょう。
付属イヤーピースが2種類ありますが、どう使い分ければ良いですか?
付属のイヤーピースは、音質や装着感の好みで使い分けることを想定されています。
- 黒色(ワイドボア型): 開口部(穴)が広いタイプです。音がダイレクトに耳に届くため、高音域の抜けが良くなり、よりクリアで明瞭なサウンドになる傾向があります。
- 白色(弾丸型): オーソドックスな形状で、開口部がやや狭いタイプです。耳の奥でしっかりフィットしやすく、低音域の量感や遮音性を確保しやすい傾向があります。
まずは両方を試し、高音のキレを重視するなら黒色、低音の迫力やフィット感を重視するなら白色、といった基準で選ぶと良いでしょう。
音場(音の広がり)は広いですか? 狭いですか?
1万円台のシングルダイナミックドライバー搭載イヤホンとしては、優秀で「やや広め」だと評価します。 音が耳のすぐそばで鳴るような閉塞感は全くありません。特に左右の広がりをしっかりと感じることができ、各楽器の配置やボーカルとの距離感(定位)も掴みやすいです。 ただし、何万円もするような高級機や、音場表現に特化したモデル(例えば開放型ヘッドホン)のような、頭全体を包み込むほどの広大な音場ではありません。あくまで「リスニング用イヤホンとしてクリアで快適な広さ」を持っている、とご理解ください。
ORIVETI 「bleqk Dynabird」レビューのまとめ

「bleqk Dynabird」を徹底的にレビューしてきましたが、最後に総まとめとして、本機の実力を評価し、どのような人におすすめできるかを明確にします。
「bleqk Dynabird」の評価まとめ
「bleqk Dynabird」の評価をレーダーチャートと表でまとめます。
| 評価項目 | 評価 (5段階) | コメント |
| 音質 (総合) | ★★★★☆ (4.5) | 1万円台としては文句なし。キレ、解像度、バランスが◎。 |
| ┣ 高音域 | ★★★★☆ (4.5) | 非常に明瞭で伸びやか。人によっては鋭すぎる可能性も。 |
| ┣ 中音域 | ★★★★★ (5.0) | ボーカルが明瞭で定位も抜群。 |
| ┣ 低音域 | ★★★★☆ (4.5) | 質感が非常に高い。深く沈み、タイト。 |
| 解像度・分離 | ★★★★★ (5.0) | この価格帯ではトップクラス。 |
| 空間表現 | ★★★★☆ (4.0) | 左右に広く、1DDとしては優秀。 |
| デザイン・質感 | ★★★★★ (5.0) | 唯一無二の金属筐体。質感は価格以上。 |
| 装着感 | ★★☆☆☆ (2.5) | 最大のウィークポイント。人を選び、工夫が必要。 |
| 付属品 | ★★★★☆ (4.0) | 実用的なケースと2種のイヤピで十分。 |
| コストパフォーマンス | ★★★★★ (5.0) | 装着感さえクリアできれば、価格破壊レベル。 |
※装着感の評価が低いですが、これは「万人向けではない」という意味です。フィットする人(あるいは工夫できる人)にとっては★5.0にもなり得ます。
優れたコストパフォーマンス
本機の最大の魅力は、やはりその圧倒的なコストパフォーマンスです。
1万円台半ばという価格で、この金属筐体の質感、そしてベリリウムドライバーによる高解像度サウンドが手に入るというのは、驚異的としか言いようがありません。
Orivetiが「bleqk」シリーズで示した「優れた品質を保持したベーシックライン」というコンセプトは、見事に達成されていると断言できます。
デザインと音質を両立した選択肢
オーディオ製品は「音が良ければデザインは二の次」という考え方もありますが、「bleqk Dynabird」は違います。
この唯一無二の幾何学的なデザインは、所有する喜びを与えてくれます。
そして、そのデザインが単なる飾りではなく、金属筐体による共振抑制という形で、音質にも明確に貢献しています。
デザインに惹かれて購入し、その音の良さに二度驚く。
そんな体験ができるイヤホンです。
「bleqk Dynabird」がおすすめな人
今回のレビューを踏まえ、「bleqk Dynabird」は以下のような人に強くおすすめします。
- 1万円台で最高クラスの解像度とキレを求める人
- キレのあるロック、EDM、アニソンなどをメインで聴く人
- ボーカルの明瞭さも重視したい人
- 金属筐体の質感や、ユニークなデザインが好きな人
- イヤーピース交換などで装着感を追求するのが苦にならない人(重要)
- 競合の「Twistura D-major」の音が派手すぎると感じた人
「bleqk Dynabird」をおすすめしない人
逆に、以下のような人には、本機はおすすめしにくいかもしれません。
- イヤホンの装着感を何よりも最優先する人
- 購入後、イヤーピース交換などの工夫をしたくない人
- 試着なしでの購入に不安がある人(可能なら試着を推奨します)
- 高音の刺激が極端に苦手な人
- モニターライクなフラットな音ではなく、もっとウォームで柔らかい音を求める人
ORIVETI 「bleqk Dynabird」レビューの総評:1万円台イヤホンの新定番
ORIVETI「bleqk Dynabird」は、「装着感」という明確な弱点と、「音質とデザイン」という圧倒的な長所を併せ持つ、非常に個性的で魅力的なイヤホンです。
この記事にたどり着いたあなたは、きっと1万円台で最高のイヤホンを探していることでしょう。
もしあなたが、イヤホンの装着感を自分なりに追求することを楽しめる「オーディオファン」であるならば、このイヤホンは間違いなく「買い」です。
その小さなハードルを越えた先には、1万円台の常識を覆す、クリアでキレのある極上のサウンド体験が待っています。
「bleqk Dynabird」は、1万円台イヤホン市場における、新たな「新定番」となる可能性を秘めた、質実剛健な名機です。


