「1万円以下のワイヤレスヘッドホンなんて、どうせ音がこもっているし、安っぽいプラスチックのおもちゃだろう」
もしあなたがそう思っているなら、その常識は今日でアップデートする必要があります。
昨今のオーディオ市場、特に「アンダー1万円」の激戦区において、価格破壊の台風の目となっているブランドQCY。
その彼らが、またしても他社が震え上がるような問題作を世に放ちました。
それが「H3S」です。
通常価格7,280円。
セールやクーポン適用時には5,000円台まで下がることも珍しくないこの価格帯。
本来であれば、機能を絞りに絞って「音が出るだけ」でも文句は言えないレンジです。
しかし、H3Sのスペックシートを見たとき、私は自分の目を疑いました。
- デュアルドライバー構成(低音用40mm+高音用13mm)
- 最大102時間という常識外れのバッテリー持ち
- -56dBの強力なアクティブノイズキャンセリング
- 最新規格 Bluetooth 6.0 採用
- ハイレゾワイヤレス(LDAC)対応
これらは本来、2万円〜3万円クラスのミドルレンジ、あるいはハイエンド機に搭載されるべき装備です。
「安かろう悪かろう」の時代は終わったと言わんばかりの詰め込み具合です。
しかし、長年多くのオーディオ製品をレビューしてきた私の経験上、こういった「スペックお化け」の低価格機には、必ずと言っていいほど「落とし穴」が潜んでいます。
初期設定の音質バランスの崩壊、アプリの使い勝手の悪さ、あるいはビルドクオリティの甘さ……。
この記事では、この話題作「QCY H3S」を徹底的に解剖します。
良いところは褒めちぎりますが、悪いところ、特に「購入前に知っておかないと後悔するポイント(独特な色味や有線接続の仕様など)」についても忖度なしで指摘します。
結論を先に言えば、このヘッドホンは「手のかかる子ほど可愛い」を地で行くガジェットです。
箱出しそのままでは実力を発揮できませんが、使い手が少し手を加えることで、価格を遥かに超える化け物へと進化します。
その全貌を、余すところなくお伝えしましょう。
QCY H3Sのスペックと特徴:なぜ注目されるのか?

まずは、H3Sがなぜこれほどまでにガジェット界隈で騒がれているのか。
その理由をスペックとハードウェアの特異性から紐解いていきます。
基本スペック一覧
| 項目 | QCY H3S 仕様 | 備考 |
| 通常価格 | 7,280円 | クーポン利用でさらに安価に |
| ドライバー | 40mm(低音) + 13mm(高音) | デュアル構成 |
| Bluetooth | Ver 6.0 | 最新規格 |
| コーデック | SBC / AAC / LDAC | ハイレゾワイヤレス認証 |
| 再生時間 | ANC OFF: 最大102時間 ANC ON: 最大58時間 | 急速充電対応(10分で7時間) |
| ノイキャン | 最大 -56dB | アダプティブANC対応 |
| マルチポイント | 対応(2台同時接続) | ※LDACと併用不可 |
| 重量 | 約240g | 軽量設計 |
| 充電端子 | USB Type-C | 有線接続も兼ねる |
常識外れの「デュアルドライバー構成」
このヘッドホン最大の特徴にして、最大の武器。
それが「デュアルドライバー」です。
通常の1万円以下のヘッドホンは、「フルレンジドライバー」と呼ばれる1つのスピーカーですべての音(低音〜高音)を鳴らします。
しかし、1つのスピーカーで重低音をドンドン鳴らしながら、同時に繊細な高音をチリチリ鳴らすのは物理的に無理があり、音が濁る(混変調歪みが生じる)原因となります。
H3Sはこの問題を、コスト度外視の物理的な物量作戦で解決しました。
- 40mm ダイナミックドライバー:低音域を担当。空気の振動量を稼ぎ、迫力を生み出す。
- 13mm 小型ドライバー:高音域を担当。繊細な振動で、解像度と伸びを表現する。
この構成は、高級スピーカーにおける「ウーファー」と「ツイーター」の関係と同じです。
特に高音用に13mmという、イヤホンならメインを張れるサイズの大型ドライバーを積んでいる点が特筆すべきポイント。
他社のライバル機が10mm程度のツイーターを採用する中、QCYは13mmを採用しており、これにより低価格機が苦手とする「高音域の微細なディテール」を担保しようという設計思想が見て取れます。
ネオジム磁石の価格低下などの背景があるとはいえ、この価格でクロスオーバー(帯域分割)回路を組み込む技術力には脱帽です。
脅威のスタミナ!ANCオフで最大102時間再生
「充電? いつしたっけ?」
H3Sを使っていると、本気でそう思う瞬間が訪れます。
- ANCオフ時:最大102時間
- ANCオン時:最大58時間
例えば、通勤・通学で往復2時間使うとしましょう。
ANCを常時オンにしていても、約1ヶ月(29日間)は充電なしで持ちます。
ANCオフなら2ヶ月近く持ちます。
一般的なワイヤレスヘッドホンの再生時間が40〜60時間程度であることを考えると、H3Sのスタミナは群を抜いています。
これは単にバッテリー容量が大きいだけでなく、最新チップセットの省電力性能が寄与しているのでしょう。
万が一充電が切れても、「10分の充電で約7時間再生」という強力な急速充電機能があります。
朝、家を出る前にバッテリー切れに気づいても、歯を磨いて着替えている間に1日分のバッテリーが確保できるのです。
この安心感は、一度味わうと戻れません。
最新規格Bluetooth 6.0とハイレゾ(LDAC)対応
通信規格には、記事執筆時点で最新となるBluetooth 6.0を採用しています。
Bluetooth 5.3や5.4が主流の中で、いち早く6.0を採用してきた点にQCYの本気度が伺えます。
これにより、混雑した駅のホームや繁華街での接続安定性が向上しているほか、デバイス間の通信効率が最適化されています。
さらに、Androidユーザーには朗報となるLDACコーデックへの対応。
従来のSBC接続に比べて約3倍の情報量を伝送できるため、Amazon Music UnlimitedやApple Musicなどのハイレゾ音源を、劣化を抑えて再生可能です。
「iPhoneだからLDACは関係ない」と思う方もいるかもしれませんが、iPhone(AAC接続)であっても、前述のデュアルドライバーによる物理的な音質の良さは十分に恩恵を受けられます。
QCY H3Sのデザイン・装着感・操作性のチェック

毎日使うものだからこそ、スペック以上に重要なのが「使い心地」です。
カタログ写真だけでは分からない、実際の質感や操作性を深掘りします。
軽量240gと「ふかふか」イヤーパッドの装着感
本体重量は約240g。300gを超えることも珍しくないオーバーイヤーヘッドホンの中では、文句なしの「軽量級」です。
首への負担が少なく、長時間の使用でも疲れにくい設計です。
装着感を左右するイヤーパッドとヘッドバンドには、非常に肉厚な低反発クッションが採用されています。
指で押すと「モチッ」と沈み込み、ゆっくり戻ってくるような高級感のある質感。
表面の合成皮革(プロテインレザーと思われる素材)もしっとりとしており、肌触りは良好です。
実際に3時間ほど連続で装着してみましたが、頭頂部が痛くなることはありませんでした。
- 側圧(締め付け)について
やや強めです。
遮音性を高めるための設計と思われますが、頭の大きい方やメガネユーザーは、使い始めに少し窮屈さを感じるかもしれません。
ただ、使用していくうちにヘッドバンドが馴染んでくるため、初期の硬さは徐々に和らぎます。 - サイズ調整(スライダー)
調整幅は十分ですが、カチカチというクリック感はあるものの「目盛り」が印字されていません。
左右の長さをきっちり揃えたい几帳面な方は、少し不便に感じるかもしれません。
「ホワイト」購入者は要注意!独特な色味について
デザイン面で最も注意喚起したいのが、カラーバリエーションの「ホワイト」です。
ネット上の製品画像を見ると、清潔感のある「真っ白」に見えることが多いですが、実機の色味は全く異なります。
- 全体印象: 「白」というよりは「ミルクティーベージュ」や「桜色を含んだオフホワイト」に近いです。
- ハウジング部: 淡いピンクベージュのような、温かみのあるニュアンスカラー。
- ヘッドバンド部: 金属パーツ部分はシルバーのヘアライン加工に近い質感。
この色は、女性や「淡色コーデ」を好む方には「可愛らしくて肌馴染みが良い」「ファンデーションがついても目立ちにくい」と非常に好評です。
しかし、「ガジェットらしいクールで無機質なホワイト」を期待して買うと、「あれ? 商品間違えた?」と焦るレベルで色が違います。
男性がビジネスライクに使いたい場合や、モノトーンコーデに合わせたい場合は、無難にブラックやグレーを選択することを強くおすすめします。
誤操作知らずの物理ボタンと折りたたみ機構
最近のヘッドホンはスマートな「タッチセンサー操作」が流行りですが、H3Sはあえて「物理ボタン」を採用しています。
右側のイヤーカップ下部にボタンが集約されています。
- ANCボタン:ノイキャン切り替え(1回押し)、モード変更(長押し)
- 音量+/−:音量調整(1回押し)、曲送り/戻し(長押し)
- マルチファンクションボタン:電源、再生/停止、ゲームモード切替
個人的には、この物理ボタン仕様を高く評価しています。
タッチセンサーは「髪を直そうとして誤爆」「パーカーのフードが触れて誤爆」というストレスがつきものですが、物理ボタンなら「カチッ」と指に伝わるクリック感があるため、手元を見なくても確実な操作が可能です。
また、ハウジングは回転(スイーベル)および折りたたみが可能。
コンパクトにまとまるため、付属のポーチやバッグの隙間に放り込みやすいのも日常使いには嬉しいポイントです。
QCY H3Sの機能面の検証:ノイキャンとアプリの重要性

ここでは、カタログスペックの数字が本当なのか、実使用環境での検証結果をお伝えします。
公称値-56dBの強力ANCと外音取り込みの実力
まず、ノイズキャンセリング(ANC)性能ですが、これは「価格破壊」と言って差し支えありません。
公称値-56dBという数字は伊達ではなく、合計7つのマイク(そのうち6つをANC制御に使用)を駆使したハイブリッドノイズキャンセリングは強力です。
- 低周波ノイズ(電車の走行音、バスのエンジン音、エアコンの室外機)
ほぼ完全に消え去ります。「スッ」と世界が静寂に包まれる感覚は、2〜3万円台のSonyやBoseのエントリー〜ミドル機に肉薄しています。 - 中高周波ノイズ(人の話し声、店内のBGM、食器の音)
完全に無音にはなりませんが、かなり遠くで鳴っているような感覚まで減衰されます。
音楽を小音量でも流せば、カフェの隣席の会話内容は全く気にならなくなります。
一方で、「外音取り込みモード」については評価が分かれます。
周囲の音を聞こえるようにする機能ですが、マイク感度が良すぎるのか、「サーッ」というホワイトノイズが乗りやすい傾向があります。
また、自分の声や周囲の音が少し強調(増幅)されて聞こえるため、AirPods Maxのような「着けていないような自然さ」とは異なります。
とはいえ、「レジでの会計時」や「電車のアナウンスを聞く時」など、一時的な利用には十分実用的です。
QCYアプリはインストール必須!その理由とは
QCY H3Sを購入したら、箱を開ける前にスマホに「QCYアプリ」をインストールしてください。
これは推奨ではなく「必須」です。
なぜなら、H3Sはアプリを使ってカスタマイズすることで真価を発揮する「未完成のデバイス」だからです。
アプリは会員登録なしで使える「ゲストログイン」機能もあるため、個人情報の登録が面倒な方でもすぐに使い始められます。
アプリでできることは以下の通り多岐にわたります。
- イコライザー(EQ)設定:プリセット選択、10バンドカスタムEQの作成・保存
- ANCモード切替:「室内」「通勤」「騒がしい」「風切り音低減」の4モード+3段階の強度調整
- ボタン操作の割り当て変更:1回押し、2回押しの機能を自由に変更可能(例:音量ボタン長押しを無効にする等)
- ゲームモード(低遅延):オン/オフ
- 空間オーディオ:オン/オフ
- ファームウェアアップデート:発売後の不具合修正や機能向上
特に重要なのがイコライザーです。後述しますが、このヘッドホンの初期音質を補正するために、アプリはなくてはならない存在です。
アプリのUIは洗練されており、カスタム設定を複数保存できるため、「音楽鑑賞用」「映画用」「深夜用」など、シーンに合わせたプリセットを作っておくのが通の楽しみ方です。
マルチポイントとLDACの「排他仕様」に注意
機能面で唯一にして最大の注意点が、「LDACとマルチポイントの同時利用不可」という仕様です。
- マルチポイント:PCとスマホなど、2台の機器に同時接続して待ち受けできる便利機能。
- LDAC:ハイレゾ相当の高音質で音楽を聴くための伝送コーデック。
この2つはトレードオフの関係にあります。
アプリ上で「LDACをオン」にすると、自動的にマルチポイント機能はオフになり、ヘッドホンの再起動がかかります。
逆にマルチポイントをオンにすると、接続はAACまたはSBCになります。
「仕事中はPC(Teams会議)とスマホ(着信待ち受け)でマルチポイント利用」「通勤中はスマホ単体でLDAC高音質リスニング」といった使い分けをする場合、その都度アプリを開いて設定を切り替える手間が発生します。ここだけは運用でカバーが必要なポイントです。
QCY H3Sを使用した私の体験談レビュー:実機を使って分かった「真実」

さて、ここからは実際に私がQCY H3Sを数週間使い倒して感じた、忖度なしの「生の声」をお届けします。
数値化できない感覚的な部分こそ、レビューの醍醐味です。
箱出し直後の音質は「じゃじゃ馬」? 低音の圧とバランス
期待に胸を膨らませて開封し、初期設定(デフォルト)のままでロックバンドの曲を再生した瞬間。
私の正直な感想はこれでした。
「……あれ? なんか音がこもってないか?」
そうなんです。
H3Sの初期チューニングは、QCY製品にありがちな「超・重低音重視のドンシャリ」です。
40mmドライバーが張り切りすぎており、ドラムのバスドラやベース音が「ズンズン」というより「ドゥンドゥン」と頭蓋骨に響き渡ります。
迫力は凄まじいのですが、その強烈な低音が中高音域をマスクしてしまい(覆い隠してしまい)、ボーカルが奥に引っ込んだような、全体に分厚いカーテンがかかったような音に聞こえました。
特に男性ボーカルの曲や、ラジオなどの人の話し声を聞くと、声の低い成分が過剰に響いてしまい、お風呂場で聞いているような「反響感」を感じることがありました。
「デュアルドライバーの高音用ツイーターはどこに行ったんだ?」と不安になるレベルです。
もし店頭での試聴でこの状態だけを聴いたら、私は「こもった音のヘッドホンだな」と判断して購入を見送っていたかもしれません。
イコライザー調整で激変! デュアルドライバーの真価
しかし、ここで評価を下すのは早計でした。
アプリを開き、イコライザーを調整したその時、「世界」が変わりました。
私は以下のような調整を行いました。
- 低音域(〜200Hzあたり):少し下げる(-2〜-3dBくらい)。過剰な膨らみを抑えます。
- 中高音域(1kHz〜4kHz):全体的に持ち上げる。特にボーカルの明瞭度に関わる部分をブースト。
- 高音域(8kHz〜):少し上げる。シンバルの煌めきを追加。
適用ボタンを押した瞬間、目の前の霧が晴れたように音がクリアになりました。
今まで低音に埋もれていた13mmツイーターが覚醒し、シンバルの余韻、ギターのカッティング、ボーカルのブレス(息継ぎ)が生々しく浮かび上がってきます。
「これだ! これがデュアルドライバーの実力か!」
調整後の音質は、7,000円台とは到底思えないレベルです。
低音の迫力はそのままに、高音の分離感が加わり、立体的でリッチなサウンドに激変しました。
単一ドライバーのヘッドホンでは出しにくい、音の「層」が見えるような感覚があります。
この「自分で調整して好みの音を見つけ出す過程」こそが、H3Sの最大の楽しみ方であり、ガジェット好きにはたまらないポイントです。
有線接続(USB-C)の意外な仕様とケーブルの選び方
H3Sには、一般的な「3.5mmイヤホンジャック(AUX端子)」がありません。
ではどうやって有線接続するのか?
「USB Type-C端子」を使います。
PCやスマホのUSBポートにケーブルで接続すると、デジタル有線ヘッドホン(USB-DAC内蔵ヘッドホン)として認識されます。
ここで2つの重要な気づきがありました。
① ケーブルは「データ通信対応」が必須
製品に付属しているUSBケーブルは「充電専用」の非常に短いものです。
これでPCに繋いでも、充電されるだけで音は出ません。
別途、「データ通信に対応した、長さ2m程度のUSB Type-Cケーブル」を購入する必要があります。
100円ショップなどで買う際は「充電専用」と書かれたものを買わないように注意してください。
また、布巻きの太くて硬い「高耐久ケーブル」を買ってしまうと、ケーブルが服に擦れる音(タッチノイズ)が「ゴゴゴ…」とヘッドホン内に響いてしまいます。
できるだけ「しなやかで細めのスタンダードなケーブル」を選ぶのが快適に使うコツです。
② 有線でも「電源ON」で動作する
一般的なヘッドホンは有線接続時に電源OFF(パッシブモード)になりますが、H3SはUSB接続中も電源が入り、バッテリーを消費しながら(同時に充電もしながら)動作します。
これは「バッテリー切れの時の救済措置」としては使えないことを意味しますが、逆に「有線接続時でもイコライザー設定やノイキャンが有効になる」という巨大なメリットでもあります。
通常のヘッドホンは有線にすると音がスカスカになったり、メーカー独自の音質補正が切れてしまったりしますが、H3Sは有線でも「自分が調整した最高の音」で聴けるのです。
これは動画編集やゲームプレイ時には嬉しい誤算でした。
動画・ゲームでの遅延と「空間オーディオ」の没入感
YouTube視聴やゲームプレイ時の遅延もチェックしました。
通常モードでは、映画の口の動きと声にわずかなズレ(リップシンクの遅れ)を感じることがありましたが、アプリで「ゲームモード」をオンにすると、FPSゲームの発砲音などもほぼ違和感のないレベルまで遅延が解消されました。
また、「空間オーディオ」モードや「ムービーモード」も搭載されています。
これをオンにしてNetflixでSF映画やアクション映画を見てみましたが、音場(音の広がり)がグッと左右に広がり、爆発音などの迫力が増しました。
音楽鑑賞には少し人工的な響き(お風呂場のようなリバーブ感)になりますが、映画やライブ映像を見る際には、映画館のような臨場感を演出してくれる素晴らしい機能です。
通話品質と長時間使用での快適性
テレワークでのWeb会議にも使用してみました。
マイク性能は非常に優秀です。通話用ノイズキャンセリング(ENC)が効いており、周囲で家族がテレビを見ていても、相手には私の声だけがクリアに届いていました。
マイクアームがない形状ですが、しっかりと口元の音を拾ってくれます。
長時間使用に関しては、2〜3時間の会議なら快適です。
ただ、前述の通り密閉性が高いため、長時間の使用では耳が蒸れてきます。
特に夏場や暖房の効いた部屋では、時々ヘッドホンを外して耳を換気する必要があるでしょう。
体験談の総括:手間をかける価値のある一台
結論として、私の体験から言えるのは、QCY H3Sは「育てるヘッドホン」だということです。
箱から出してそのまま使うだけでは、ただの「音がこもった低音番長」で終わるかもしれません。
しかし、アプリを駆使してイコライザーを調整し、適切なUSBケーブルを用意し、シーンに合わせてモードを切り替える。
そうやって使い手が「愛」を注げば注ぐほど、それに応えてくれる高いポテンシャルを持っています。
「面倒くさい」と感じるか、「楽しい」と感じるか。
それがこのヘッドホンの評価の分かれ目になるでしょう。
QCY H3Sに関するよくある質問(Q&A)

QCY H3Sに関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
3.5mmイヤホンジャックはありますか?有線接続はできますか?
3.5mmイヤホンジャック(AUX端子)は搭載されていません。 ただし、USB Type-C端子を使用したデジタル有線接続に対応しています。PCやスマートフォンのUSBポートに接続することで、有線ヘッドホンとして使用可能です。
有線接続用のケーブルは付属していますか?
いいえ、音楽再生(データ通信)用の長いケーブルは付属していません。 付属しているのは短い「充電専用ケーブル」のみです。有線で使用したい場合は、別途「データ通信に対応したUSB Type-Cケーブル(2m程度)」を購入する必要があります。
防水性能はありますか?
公式に防水規格(IPXなど)の記載はありません。 雨天時の使用や、スポーツで大量の汗をかくシーンでの使用は避けたほうが無難です。
音がこもっているように聞こえるのですが、故障ですか?
故障ではありません。初期設定(デフォルト)の音質チューニングが、かなり低音重視に設定されているためです。 専用アプリ「QCY」をインストールし、イコライザー(EQ)で低音を少し下げ、中高音を上げる調整を行うことで、劇的にクリアな音質に改善されます。
ハイレゾ(LDAC)とマルチポイントは同時に使えますか?
いいえ、併用できません。 「LDAC(高音質コーデック)」と「マルチポイント(2台同時接続)」は排他仕様となっており、どちらか一方しかオンにできません。アプリの設定画面で切り替える必要があります。 ※iPhone(AAC接続)の場合は、マルチポイントを常時オンにしても問題ありません。
ノイズキャンセリングはどれくらい効きますか?
公称値-56dBと非常に強力です。 電車の走行音やエアコンのファンの音などの低周波ノイズは、ほぼ完全にカットされます。人の話し声などもある程度軽減されますが、無音になるわけではありません。同価格帯の中ではトップクラスの性能です。
ゲームでの遅延はありますか?
通常モードでは多少の遅延を感じる場合があります。 アプリまたは本体操作で「ゲームモード」をオンにすることで、FPSゲームや動画視聴でも違和感のないレベルまで遅延を低減できます。
バッテリーが0%になっても有線なら使えますか?
PCなどにUSB接続する場合は使用可能です。 H3Sの有線接続(USB接続)は、接続先の機器から給電を受けながら動作します。そのため、もしヘッドホンのバッテリーが空になっても、PCに繋げばすぐに音楽を聴いたり会議に参加したりできます。(※スマホ接続の場合はスマホのバッテリーを消費します) ただし、3.5mmアナログケーブルでの「電源オフ再生(パッシブ再生)」には対応していません。
メガネをかけていても耳は痛くなりませんか?
最初のうちは少し痛みを感じるかもしれません。 イヤーパッドは非常に柔らかい低反発素材ですが、遮音性を高めるために側圧(締め付け)がやや強めに設計されています。メガネのツルが太い場合は、1〜2時間ごとに休憩を挟むか、使用していない時にティッシュ箱などを挟んで側圧を少し緩める「エージング」をすると快適になります。
イコライザーの設定は保存できますか?
はい、複数保存可能です。 QCYアプリでは、自分で作成したカスタムイコライザーに名前をつけて保存できます。「ロック用」「映画用」「夜間用(低音控えめ)」など、シーンに合わせた設定を作って保存しておくと、ワンタップで切り替えられて非常に便利です。
QCY H3Sのレビューのまとめ

最後に、QCY H3Sの良い点・悪い点、そしてどんな人におすすめかをまとめます。
QCY H3Sのメリット
- 圧倒的コスパ:デュアルドライバー、強力ANC、ハイレゾ対応で7,000円台は、市場のバグと言えるレベル。
- 音質の伸びしろ:EQ調整後のサウンドは、解像度・迫力ともに1万円オーバーの機種に匹敵する。
- 無限のバッテリー:最大102時間再生で、充電のストレスから解放される。
- 機能全部入り:マルチポイント、LDAC、低遅延モード、空間オーディオなどトレンド機能を網羅。
- アプリが優秀:カスタマイズ性が高く、ゲストログインや設定保存も可能。
- 物理ボタン:誤操作がなく、確実な操作が可能。
QCY H3Sのデメリット
- 初期音質のクセ:デフォルトは低音過多でこもり気味。アプリ調整が前提となる。
- 「ホワイト」の色味:純白ではなく、好みが分かれるピンクベージュ系のニュアンスカラー。
- 付属品の不足:有線利用には別途データ対応USB-Cケーブルの購入が必要。
- 排他仕様:LDACとマルチポイントが同時使用できない。
- 外音取り込み:少しホワイトノイズがあり、人工的な聞こえ方。
- AUX非対応:3.5mmジャックがないため、古い機器や飛行機のエンタメシステムには直接繋げない。
おすすめできるユーザー層
以下の項目に3つ以上当てはまるなら、H3Sは「買い」です。
- とにかくコスパ良く、全部入りの高性能ヘッドホンが欲しい。
- ガジェットを自分好みに設定・イコライザー調整するのが好きだ。
- EDM、ロック、アクション映画など、迫力のあるサウンドを楽しみたい。
- 毎日の充電作業が面倒くさい。ズボラな性格だ。
- 周囲の雑音を消して、勉強や仕事に集中したい。
- 淡い色のファッションや小物が好きだ(ホワイトモデルの場合)。
購入前に準備すべきもの
H3Sを最大限楽しむために、届くまでに以下の準備をしておきましょう。
- QCYアプリのインストール:App StoreまたはGoogle Playから。「QCY」で検索。
- USB Type-Cケーブル(データ通信対応):PCで有線接続したい場合は必須。長さ2m〜3m程度の柔らかいものがおすすめ。
- クーポンのチェック:Amazonなどの販売ページでは、頻繁に割引クーポンが発行されています。必ずチェックボックスをオンにしてからカートに入れましょう。
QCY H3Sのレビュー総合評価
QCY H3Sは、オーディオ初心者から玄人まで楽しめる、非常に懐の深いヘッドホンです。
初心者はその多機能さと圧倒的なコスパに感動し、玄人はイコライザーをいじり倒して「この価格でこの音が出るのか!」と驚愕するでしょう。
完璧な優等生ではありませんが、その「尖った個性」こそが魅力。
7,000円台(セール時は5,000円台)という価格で得られる体験としては、間違いなく今年トップクラスの満足度を提供してくれます。
迷っているなら、ぜひ一度試してみてください。
アプリで自分だけの「最強の音」を見つけた瞬間、あなたはきっとニヤリとしてしまうはずです。


