「KING KONG(キングコング)」
イヤホンの製品名として、これほどまでに力強く、そして破壊的な響きを持つ名前がかつてあったでしょうか。
名前を聞いた瞬間、多くのオーディオファンは脳裏にこう描くはずです。
「ああ、これは鼓膜を震わせるほどの爆音低音を鳴らす、荒々しいドンシャリ機なのだろう」と。
しかし、SUPERTFZが2024年に放ったこのエントリーモデルの実態は、その野獣のようなネーミングとは裏腹に、驚くほど「理知的で、洗練されたサウンド」を秘めています。
SUPERTFZといえば、ダイナミックドライバーの可能性を追求し続けるブランドとして知られ、特に「FORCE」シリーズなどでその実力を証明してきました。
その遺伝子を受け継ぐKING KONGは、実売価格4,000円前後という激戦区のエントリー帯に投入された戦略モデルです。
この記事に辿り着いたあなたは、おそらく以下のような疑問を持っているのではないでしょうか?
- 「名前負けしていないか?本当に音は良いのか?」
- 「KZやTRNなどの激安中華イヤホンと何が違うのか?」
- 「リケーブル(ケーブル交換)で音が激変するって本当?」
結論から申し上げます。
このイヤホンは、箱出し(購入直後)の状態では「優等生」ですが、ケーブルを変えることで真の「野獣(KING KONG)」へと覚醒する、極めてポテンシャルの高い一台です。
この記事では、数多の有線イヤホンをレビューしてきた筆者が、SUPERTFZ KING KONGのスペックや外観はもちろん、競合他社製品との比較、そして最も重要な「リケーブルによる変化」までを徹底的に掘り下げていきます。
単なるスペックの羅列ではなく、実際に使い込んだ人間にしか分からない「手触り」や「音の空気感」をお伝えします。
さあ、この檻(パッケージ)を開けて、KING KONGの実力を解き放ってみましょう。
- SUPERTFZ 「KING KONG」の基本スペックと外観デザイン
- 【SUPERTFZ 「KING KONG」の音質徹底レビュー】低音の猛獣はリケーブルで目覚める
- SUPERTFZ 「KING KONG」の競合・ライバル機種との比較検証
- SUPERTFZ 「KING KONG」を使用した私の体験談・レビュー
- SUPERTFZ 「KING KONG」に関するQ&A
- 「KING KONG」という名前ですが、低音は強すぎませんか?
- スマートフォン(iPhoneやAndroid)でも使えますか?
- ゲーム(FPSや音ゲー)には向いていますか?
- リケーブルをしたいのですが、どの規格のケーブルを買えばいいですか?
- 耳が小さいのですが、装着感はどうですか?
- KZやTRNなどの激安イヤホンとの一番の違いは何ですか?
- 音漏れは気になりますか?電車やバスで使えますか?
- ホワイトノイズ(サーッという砂嵐のような音)は聞こえますか?
- ASMRや動画視聴には向いていますか?
- 1〜2万円台のワイヤレスイヤホンと比べて音質はどうですか?
- 高音の「刺さり(サ行の鋭さ)」は気になりますか?
- ボーカルは近くで鳴っているように聞こえますか?
- SUPERTFZ 「KING KONG」レビューのまとめ
SUPERTFZ 「KING KONG」の基本スペックと外観デザイン

まずは、SUPERTFZ KING KONGがどのような技術で作られ、どのようなデザインを纏っているのか、その基礎体力(スペック)を確認していきましょう。
エントリーモデルとはいえ、ここにはSUPERTFZの美学が凝縮されています。
3000円台とは思えないラインストーン輝く高級感ある筐体
パッケージを開封して最初に驚かされるのは、そのビルドクオリティの高さです。
3,000円〜4,000円という価格帯は、コストカットのためにプラスチッキーで安っぽい質感になりがちなレンジですが、KING KONGは明確にその常識を超えてきました。
- フェイスプレート: 亜鉛合金製。冷んやりとした金属の質感が所有欲を満たします。
- 装飾: 3つのラインストーンが埋め込まれており、光の当たり方によってキラリと輝きます。「ゴリラ」という名前からは想像できない、ジュエリーのようなエレガントさがあります。
- シェル(筐体): 透明度の高いポリカーボネート樹脂を採用。内部のドライバーや配線が透けて見えるスケルトンデザインは、メカニカルな造形美を感じさせます。
カラーバリエーションは「ブラック」「ホワイト」「ピンク」の3色展開。特にホワイトやピンクは、ガジェットとしての武骨さを排除し、アクセサリー感覚で身につけられる軽やかさを持っています。
金属と樹脂の継ぎ目も滑らかで、バリなどは一切見当たりません。
この工作精度の高さは、長年イヤホン製造を手掛けてきたSUPERTFZならではの安心感と言えるでしょう。
デュアルドライバー(2DD)構成が生む音響テクノロジー
KING KONGのサウンドを決定づける心臓部には、「デュアルダイナミックドライバー(2DD)」構成が採用されています。
一般的なエントリークラスのイヤホンは、コストを抑えるために1つのドライバーですべての音域を鳴らす「1DD」構成が多いですが、KING KONGは贅沢にも2つの異なるドライバーを搭載しています。
| ドライバー口径 | 役割・特徴 |
| φ10mm ドライバー | 中低音域担当。 迫力のあるベースラインやドラムのキック音など、音楽の土台を支えるパワフルなサウンドを生み出します。 |
| φ6mm ドライバー | 中高音域担当。 ボーカルの艶やシンバルの煌めきなど、繊細な表現を担当。小型ならではの素早いレスポンスが特徴です。 |
この2つのドライバーには「複合ポリマーダイヤフラム」が採用されており、歪みの少ないクリアな再生を実現しています。
重要なのは「単に2つ積んだだけ」ではない点です。
SUPERTFZは、異なるサイズのドライバーが互いの帯域を邪魔しないよう、巧みなチューニング(デュアルキャビン音響設計)を施しています。
これにより、低音が他の音をマスクしてしまう「音の濁り」を防ぎ、分離感の良いサウンドステージを構築することに成功しています。
装着感と付属品のチェック:QDCタイプ2ピンの採用
日常的に使う上で欠かせない「装着感」と「付属品」についてもチェックします。
【装着感】
筐体デザインは人間工学に基づいたエルゴノミックデザイン。
耳のくぼみにスッと収まる形状をしており、金属プレートを使用していながらも重量バランスが絶妙です。
長時間つけていても耳への負担が少なく、遮音性も十分に確保されています。
「KING KONG」という名前から巨大な筐体を想像するかもしれませんが、実際は比較的コンパクトで、耳の小さな方でも装着しやすいでしょう。
【コネクタ規格】
リケーブル(ケーブル交換)において最も重要なコネクタ部分は、「2Pin 0.78mm(QDCタイプ/Cタイプ)」を採用しています。
端子周りが樹脂で覆われているため、一般的なフラット2Pinよりもピン折れのリスクが低く、耐久性に優れています。
この規格は中華イヤホンではメジャーなため、交換用ケーブルの選択肢が非常に豊富であることも大きなメリットです。
【付属品】
- ケーブル: 銀メッキ無酸素銅ケーブル(3.5mmプラグ または Type-C)。取り回しは悪くないですが、被膜の質感はいかにもエントリークラスといった印象。
- イヤーピース: シリコン製のものが1種類(サイズ違い)。
- 説明書・保証書
付属品に関しては「必要最低限」といった印象です。
コストを本体(ドライバーと筐体)に全振りした結果と言えるでしょう。
しかし、これこそがユーザーによるカスタマイズの余地を残しているとも捉えられます。
【SUPERTFZ 「KING KONG」の音質徹底レビュー】低音の猛獣はリケーブルで目覚める

ここからは、実際の音質について深掘りしていきます。
再生環境はDAP(デジタルオーディオプレーヤー)およびスマートフォン直挿し、音源はハイレゾ音源とストリーミングを使用しました。
箱出し・付属ケーブルでの音質:バランスの良い優等生
まず、開封してそのまま付属ケーブルで聴いた第一印象をお伝えします。
おそらく、誰もがこう思うはずです。
「あれ? 名前ほど暴力的じゃない……むしろ綺麗?」
箱出し状態のKING KONGは、非常にバランスの取れた「弱ドンシャリ」傾向です。
低音は確かに存在感がありますが、全体を塗りつぶすようなブーミーさは皆無。
中高音もクリアで、ボーカルが聴きやすい。
例えるなら、「森の中で静かに佇む賢者」のような、落ち着きのあるサウンドです。
エントリーモデルにありがちな「高音が刺さって痛い」とか「低音が強すぎて何が鳴っているか分からない」といった破綻がありません。
スマホでYoutubeを見たり、ポップスを軽く聴いたりするには十分すぎるクオリティです。
しかし、オーディオファンからすると「少し大人しすぎる」「音の厚みが物足りない」と感じる部分があるのも事実。
実は、この「物足りなさ」の原因の多くは、付属ケーブルの伝送能力がドライバーのポテンシャルに追いついていないことにあります。
各帯域の評価:深沈む低音とクリアなボーカル域
付属ケーブル状態での基本的な帯域バランスを分析します。
- 低音域(Bass):
10mmドライバーが仕事をしており、沈み込み(サブベース)の表現が優秀です。
ドスンと重い音が鳴りますが、キレが良く、タイトに収束します。
EDMのキック音もボワつかずに「ドンッ」と芯のある音を返してくれます。
量感は「爆音」というより「適量よりやや多め」といった上品なチューニングです。 - 中音域(Mids):
6mmドライバーとのクロスオーバーが上手くいっており、ボーカルが埋もれずに前に出てきます。
特に女性ボーカルの透明感は特筆すべきものがあります。
男性ボーカルの厚みはややスッキリめ。ギターのバッキングなども分離良く聴こえます。 - 高音域(Highs):
煌びやかさはありますが、刺さる一歩手前でコントロールされています。
シンバルやハイハットの音はシャリつきすぎず、適度な解像度を保っています。
ただ、超高域の「空気感」や「余韻」の表現に関しては、付属ケーブルでは少し限界を感じる場面があります。
【重要】リケーブルによる劇的変化:真の「KING KONG」解放
ここからが本レビューのハイライトです。
KING KONGを語る上で絶対に外せないのが「リケーブル(ケーブル交換)」による変化です。
多くのレビュアーやユーザーが指摘している通り、このイヤホンは「リケーブル推奨」、いや「リケーブル必須」と言っても過言ではありません。
手持ちの「8芯銀メッキケーブル」や「純銅ケーブル」に交換した瞬間、世界が一変します。
変化のポイント:
- 低音の覚醒(野獣化):
制御されていた低音が解き放たれます。
量感が増すだけでなく、音の圧(音圧)がグッと強まり、まさに「KING KONG」の名にふさわしい、地を這うような轟きとパンチ力が生まれます。
しかし、ドライバー自体の性能が高いため、破綻して音が割れることはありません。 - 情報量の激増:
付属ケーブルでは削ぎ落とされていた微細な音が聴こえるようになります。
音の輪郭がクッキリとし、まるで視力が上がったかのような解像度の向上を感じられます。 - 音場の拡大:
こじんまりとしていたサウンドステージが、左右・奥行きともに広がります。
特にライブ音源などを聴いた時の臨場感は、ケーブル交換前とは比較になりません。
結論として、KING KONGは「付属ケーブルという拘束具」をつけられた状態であり、リケーブルによって初めてその封印が解かれ、真の実力を発揮するのです。
賢者が突如として筋肉隆々の戦士に変貌するような、劇的なキャラクターチェンジを楽しめるのがこのイヤホンの最大の魅力です。
SUPERTFZ 「KING KONG」の競合・ライバル機種との比較検証

4,000円前後の価格帯は、中華イヤホンの最激戦区です。
ここでは、よく比較対象となる他社製品や上位機種との違いを明確にします。
同価格帯のエントリー機(KZ・TRN等)との違い
KZやTRNといったブランドは、この価格帯の王道です。
例えば「KZ Castor」や「TRN MT4」などが競合になります。
| 比較項目 | SUPERTFZ KING KONG | KZ / TRN (同価格帯多ドラ機) |
| 音の傾向 | 洗練されたドンシャリ 低音の質が高く、ボーカルが綺麗。 | 派手なドンシャリ 刺激的で楽しいが、聴き疲れしやすい場合も。 |
| 低音の質 | タイトで深い 制動が効いている。 | 量感重視 機種によっては少しブーミーで緩い。 |
| ビルドクオリティ | 高い 金属フェイスプレートと透明樹脂の精度が良い。 | 並〜良 価格相応のプラスチック感が残ることが多い。 |
| リケーブル耐性 | 極めて高い 変化幅が大きい。 | 高い 変化はするが、元々の粗さが目立つことも。 |
KING KONGのアドバンテージは、「雑味の少なさ」と「筐体の高級感」にあります
。KZなどが「元気いっぱい!派手!」という方向性なのに対し、KING KONGはもう少し「オーディオ的」で整った鳴り方をします。
上位機種(SUPERTFZ FORCEシリーズ等)との棲み分け
SUPERTFZには「FORCE 1」や「FORCE 5」といった上位シリーズが存在します。
FORCEシリーズは、よりモニターライクで解像度が高く、音の立ち上がりが鋭いのが特徴です。
対してKING KONGは、FORCEシリーズの技術(テスラテクノロジー由来の磁気回路など)の恩恵を受けつつも、よりリスニング(音楽鑑賞)向けにチューニングされています。
カリカリの解像度を追求するならFORCEシリーズですが、楽しくノリ良く音楽を聴きたい、あるいは初めてSUPERTFZの音に触れるという場合は、KING KONGの方がコストパフォーマンス良くそのエッセンスを味わえます。
スマホ直挿し vs DAP使用時のスケーラビリティ
KING KONGはインピーダンス22Ω、感度108dBと、比較的鳴らしやすいスペックです。
そのため、スマートフォンの直挿しや、安価な変換ドングルでも十分な音量が取れます。
しかし、上流(再生機器)を良くすればするほど、如実に音が良くなる「スケーラビリティ(拡張性)」を持っています。
出力の高いDAPやポータブルアンプに繋ぐと、2基のドライバーが本領を発揮し、低音のキレと空間表現がさらに一段階レベルアップします。
「スマホでも良い音、DAPなら凄い音」という懐の深さも魅力の一つです。
SUPERTFZ 「KING KONG」を使用した私の体験談・レビュー

スペックや一般論だけでなく、私が実際にKING KONGを数週間使い込んで感じた、生々しい体験談をお話しします。
開封時の感動と実際のビルドクオリティ
正直なところ、届いた箱を見た時は「また普通の中華イヤホンかな」と思いました。
しかし、本体を手に取った瞬間の「冷やりとした金属の重み」にハッとさせられました。
ラインストーンの装飾は、Web画像で見るよりも実物の方が遥かに上品です。
男性が着けても決して嫌味にならず、むしろブラックモデルであれば、さりげないアクセントとして機能します。
この「所有する喜び」を感じさせてくれる作り込みは、3,000円台の製品としては出色の出来栄えです。
ジャンル別相性チェック:EDMからアニソンまで
様々なジャンルを聴き比べてみましたが、相性は明確でした。
- EDM・ダンスミュージック: ◎(最高)
やはり名前通り、ここはホームグラウンドです。
シンセサイザーの電子音と重厚なビートが気持ちよくマッチします。 - ロック・メタル: ○(良好)
バスドラムのキック音が速いツーバスでも潰れません。
ギターのリフもエッジが効いていますが、刺さらないので長時間聴けます。 - アニソン・J-POP: ◎(非常に良い)
意外だったのがここ。
ボーカルが埋もれないため、最近の「音数が多いアニソン」でもガチャガチャせず、歌声をしっかり追えます。 - クラシック・ジャズ: △(普通)
聴けなくはないですが、ホールの響きやアコースティック楽器の生々しさを求めるなら、他の選択肢があるかもしれません。
長時間リスニングでの疲れにくさと遮音性
私は仕事中にBGMとしてイヤホンを使うことが多いのですが、KING KONGは3〜4時間つけっぱなしでも耳が痛くなりませんでした。
筐体の内側(耳に当たる部分)のカーブが絶妙で、圧迫感が少ないのです。
また、遮音性も高く、音楽を流せば周囲の雑音(キーボードの打鍵音やエアコンの音)はほぼシャットアウトされます。
集中したい時のパートナーとして非常に優秀です。
気になった点:付属ケーブルの品質とイヤーピースの選び方
褒めてばかりでは嘘になります。気になった点も正直に言います。
やはり「付属ケーブル」がもったいない。
細くて頼りなく、音質的にも「膜が張った」ような状態にさせています。
メーカーとしては「まずは安く提供するから、あとは好きにやってくれ」というスタンスなのでしょう。
また、付属のイヤーピースも「おまけ」レベルです。私の耳では少し密閉度が足りず、低音が逃げている感覚がありました。
すぐに手持ちの他社製イヤーピースに変えたところ、フィット感と低音の量感が劇的に改善しました。
おすすめのカスタマイズ構成(ケーブル・イヤピ)
私が実際に試して「これが正解だ!」と感じたカスタマイズ構成をご紹介します。
- 推奨リケーブル:「純銅線」または「銀メッキ銅線」の8芯以上の太めのケーブル
- 低音の迫力を増したいなら「純銅線」。
- 高域の伸びと全体の解像度を上げたいなら「銀メッキ線」。
- 個人的には、NiceHCKやJSHiFiといったブランドの2,000円〜3,000円クラスのケーブルで十分激変しました。本体と同じくらいの価格のケーブルを奢る価値は十分にあります。
- 推奨イヤーピース:KBEAR 07 または SpinFit CP100+
- これらは軸がしっかりしており、KING KONGのノズルから出る音をダイレクトに鼓膜に届けてくれます。特に「KBEAR 07」は安価で、高域の減衰が少なく相性が抜群でした。
体験談の総括
KING KONGを使って感じたのは、「育てる楽しさ」です。
最初から完璧な100点の音が出る高級機も良いですが、自分の手でケーブルを選び、イヤーピースを合わせ、徐々に好みの「強烈な音」に仕上げていく過程。
これこそが有線イヤホンの、そしてオーディオ趣味の醍醐味ではないでしょうか。
KING KONGは、その「母体」として最高の素質を持っています。
手をかければかけるほど応えてくれる、愛着の湧く一台となりました。
SUPERTFZ 「KING KONG」に関するQ&A

「KING KONG」という名前ですが、低音は強すぎませんか?
箱出し状態では意外にもバランス型です。 名前からは「爆音」や「低音過多」を想像させますが、付属ケーブルで使用する分には、中高音もクリアに聞こえるバランスの良いサウンド(弱ドンシャリ)です。決して低音が他の音を邪魔するようなことはありません。 ただし、リケーブル(ケーブル交換)を行うことで、ドライバー本来のパワーが解放され、名前通りの迫力ある重低音を楽しむことも可能です。
スマートフォン(iPhoneやAndroid)でも使えますか?
はい、問題なく使用できます。 KING KONGはインピーダンスが22Ωと低く、スマホ直挿しでも十分な音量が取れる設計です。
- イヤホンジャックがないスマホの場合:変換アダプタ(ドングルDAC)を使用するか、購入時に「Type-Cプラグモデル」を選択してください。
- より高音質で聴きたい場合:出力の高いドングルDACやDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を使用すると、音の立体感がさらに向上します。
ゲーム(FPSや音ゲー)には向いていますか?
向いています。特にFPSでは足音が聞き取りやすいです。 有線イヤホンなので、ワイヤレスのような「音の遅延」が一切ありません。これは音ゲーやFPSにおいて圧倒的な強みです。 また、デュアルドライバー構成により音の分離感が良いため、敵の足音や銃声の方向(定位感)を把握しやすく、ゲーミングイヤホンとしても優秀なパフォーマンスを発揮します。
リケーブルをしたいのですが、どの規格のケーブルを買えばいいですか?
「2Pin 0.78mm」の「QDCタイプ(Cタイプ)」を選んでください。 一般的な「フラット2Pin(中華2Pin)」も物理的には刺さりますが、ピンが露出して強度が落ちるため推奨されません。端子部分がカバーで覆われている「QDCタイプ」と記載されたケーブルを選ぶのがベストです。 Amazonなどで「2pin qdc ケーブル」と検索すると、2,000円〜3,000円程度で良質なケーブルが見つかります。
耳が小さいのですが、装着感はどうですか?
エントリーモデルの中でも装着感は良好です。 名前に反して筐体サイズは標準的で、耳のくぼみにフィットするエルゴノミックデザインが採用されています。また、樹脂素材で角が丸く加工されているため、長時間つけていても耳が痛くなりにくい形状です。付属のイヤーピースが合わない場合は、市販のSSサイズやSサイズのイヤーピースに交換することで、より快適に装着できます。
KZやTRNなどの激安イヤホンとの一番の違いは何ですか?
「ビルドクオリティ(質感)」と「音の整理整頓」です。 同価格帯のKZ製品などは「元気で派手な音」が魅力ですが、時に音がごちゃつくことがあります。KING KONGはSUPERTFZの技術により音が整理されており、分離感に優れています。 また、フェイスプレートに亜鉛合金とラインストーンを使用しており、プラスチック感の強い激安イヤホンとは一線を画す高級感(所有欲を満たすデザイン)がある点も大きな違いです。
音漏れは気になりますか?電車やバスで使えますか?
一般的な音量であれば問題ありませんが、爆音には注意が必要です。 KING KONGは密閉型のカナル型イヤホンですが、ドライバーの動きをスムーズにするための小さな通気孔(ベント)がフェイスプレートに設けられています。 常識的な音量で聴いている分には、電車や図書館などで周囲に迷惑をかけるレベルの音漏れはありません。ただし、静寂な空間で大音量で流すと、多少のシャカシャカ音が漏れる可能性があります。
ホワイトノイズ(サーッという砂嵐のような音)は聞こえますか?
再生機器によってはわずかに聞こえる場合があります。 KING KONGの感度は108dBと、イヤホンの中では比較的高感度(音が鳴りやすい)な部類に入ります。 そのため、パソコンのイヤホンジャックや安価なBluetoothレシーバーなど、ノイズ対策が不十分な機器に接続すると、無音時に「サーッ」という底ノイズを拾ってしまうことがあります。気になる場合は、インピーダンスアダプタを噛ませるか、ノイズの少ないDACを使用することをおすすめします。
ASMRや動画視聴には向いていますか?
距離感が掴みやすいため、非常に向いています。 中高域の分離感が良いため、声の距離感や方向(耳元での囁きなど)がリアルに感じられます。 ただし、KING KONGは低音が強めに出る傾向があるため、マイクに息を吹きかける音や物を叩く音(タッピング)などの重低音成分が含まれるASMR作品では、音が強すぎて少し疲れを感じるかもしれません。
1〜2万円台のワイヤレスイヤホンと比べて音質はどうですか?
純粋な「音の密度」と「解像度」では、KING KONGの方が上回る場合が多いです。 Bluetooth接続のワイヤレスイヤホンはデータを圧縮して伝送しますが、有線であるKING KONGはロスレスで音を鳴らせます。 特に、1〜2万円クラスのワイヤレスイヤホンと比較しても、KING KONG(+リケーブル)の方が、音の厚みや楽器の生々しさにおいて勝るケースが多々あります。「バッテリー切れ」や「音の遅延」がない点も有線の大きなメリットです。
高音の「刺さり(サ行の鋭さ)」は気になりますか?
基本的には抑制されていますが、大音量では少し鋭さを感じるかもしれません。 チューニングは非常に丁寧で、不快な刺さりは抑えられています。しかし、録音状態の悪い音源や、高域を極端に強調する再生機器で大音量で聴くと、シンバルや「サ行」が少し鋭く感じる場合があります。 もし気になった場合は、「純銅線(OFC)」のケーブルにリケーブルすることで、高域の角が取れてマイルドで聴きやすい音に変化させることができます。
ボーカルは近くで鳴っているように聞こえますか?
はい、比較的「近め」に定位します。 KING KONGはドンシャリ傾向ですが、中域(ボーカル)が凹んで遠くなる「中抜け」現象が起きにくいチューニングです。 アーティストが目の前で歌っているような、適度な距離感と臨場感があります。特に女性ボーカルのアニソンやポップスでは、声の存在感をしっかりと感じ取ることができます。
SUPERTFZ 「KING KONG」レビューのまとめ

最後に、SUPERTFZ KING KONGの良い点・悪い点、そしてどんな人におすすめかをまとめます。
このイヤホンのメリット総括
- 価格破壊級のビルドクオリティ: 金属フェイスプレートと透明樹脂の美しい仕上がり。
- 2DD構成による確かな音質: 低音の深みと中高音のクリアさを両立した分離感。
- 凄まじいリケーブル耐性: ケーブル交換で化ける「伸びしろ」の大きさ。
- 装着感の良さ: 長時間使用でも疲れにくいエルゴノミックデザイン。
- ジャンルを選ばない万能さ: 特にEDM、ロック、ポップスとの相性が抜群。
このイヤホンのデメリット総括
- 付属ケーブルが貧弱: 本体のポテンシャルを出し切れていない。
- 付属品が最低限: ケースなどは付属しないため、別途用意が必要。
- 名前のイメージとのギャップ: 箱出し直後は「思ったより普通?」と拍子抜けする可能性がある。
リケーブル前提で選ぶべきユーザー層
- 中華イヤホン沼に片足を突っ込んでいる方
- 手持ちに余っている2Pinケーブルがある方
- 「自分好みの音を作りたい」というカスタマイズ意欲のある方
この層にとって、KING KONGは最高のおもちゃ(褒め言葉)であり、メイン機にもなり得る実力機です。
リケーブルによる変化の大きさに、きっとニヤリとするはずです。
そのまま使いたい初心者へのアドバイス
- 「初めてのちょっと良いイヤホン」を探している方
- 1,000円、2,000円のイヤホンからのステップアップ
もちろん、そのままでも十分に良い音です。
まずは箱出しで楽しんでください。
そして、もし「もう少し低音が欲しいな」「もっとクリアに聴きたいな」と思ったら、その時こそAmazonや専門店で安いケーブルを買ってみてください。
その時、あなたはKING KONGの「第二形態」を目撃し、オーディオの深淵なる世界へ引きずり込まれることでしょう。
SUPERTFZ 「KING KONG」レビューの総括
SUPERTFZ KING KONGは、その荒々しい名前に反して、非常に洗練された音響技術と美しい筐体デザインを併せ持つ、驚くべきエントリーモデルでした。
一聴して感じるのは価格を超えた基礎体力の高さであり、3,000円台という手頃な価格帯ながら、所有する喜びを十分に満たしてくれるプロダクトとしての完成度を誇ります。
しかし、このイヤホンの真価は箱から出したそのままの状態だけではありません。
記事内で繰り返し強調した通り、付属ケーブルからリケーブルを行った瞬間に訪れる劇的な音質の変化こそが最大の魅力です。
まるで眠っていた野性が目覚めるように、重厚でキレのある低音と鮮明な解像度が姿を現すプロセスは、オーディオ趣味の奥深さを最も手軽かつ強烈に体験させてくれるでしょう。
初めてのステップアップとして選ぶ方には安心感のある優等生として、そしてポータブルオーディオに慣れ親しんだ方にはカスタマイズのしがいがある最高の素材として、幅広い層に異なる楽しみ方を提供してくれます。
単に音楽を聴く道具以上の体験価値が、この小さな筐体には詰まっています。
ぜひあなたの手でこの「KING KONG」の封印を解き、その咆哮とも言える真のサウンドを体感してみてください。


