オーディオ市場、特に1万円〜2万円の価格帯は、今まさに群雄割拠の時代を迎えています。
かつては「低価格=妥協の産物」であったこのクラスも、技術革新によりハイエンド機に迫る性能を持つ機種が次々と登場しています。
数多のメーカーがコストパフォーマンスを競い合うこの激戦区に、中国の実力派ブランドTANCHJIM(タンジジム)が満を持して投入したのが、今回ご紹介する「4U」です。
TANCHJIMといえば、「Oxygen」や「Origin」といった上位モデルで世界中のオーディオファンを唸らせてきたブランドとして知られています。
その洗練されたデザイン美学と、FEA(有限要素解析)などの科学的アプローチに基づく音作りは、多くのファン(私を含め)を魅了してやみません。
これまでのTANCHJIM製品は、どちらかと言えば「一つの完成された音」を提示する姿勢を貫いてきましたが、今回の「4U」は全く異なるアプローチをとっています。
この「4U」の最大にして最強の特徴、それは4段階の可変抵抗スイッチによる音質調整機能です。
「1本のイヤホンで4つの音を楽しめる」という触れ込みは、果たして単なるマーケティングギミックに過ぎないのか、それとも実用的な革命なのか。
一部のユーザーからは「スイッチなんてどうせ一度決めたら変えない」という声も聞かれますが、その先入観を覆すだけのポテンシャルがこの機種には秘められています。
この記事では、実際に製品を長期間使い込んだ体験談に加え、技術的な背景、競合他社との詳細な比較、そして購入前に知っておくべきメンテナンスの注意点まで、徹底的に解説します。
エントリーモデルからのステップアップを考えている初心者の方や、サブ機を探している上級者の方まで、すべての音楽好きに捧げる完全レビューです。
- TANCHJIM 「4U」の基本スペックとデザイン哲学
- TANCHJIM 「4U」の最大の特徴「4段階可変抵抗スイッチ」完全ガイド
- TANCHJIM 「4U」の音質レビュー:ジャンルを選ばない万能型ニュートラルサウンド
- TANCHJIM 「4U」を使用した私の体験談・レビュー
- TANCHJIM 「4U」に関するQ&A
- スマートフォンに直挿ししても良い音で聴けますか?
- FPSゲーム(ApexやValorantなど)やASMRにも使えますか?
- 4つのモード切り替えは、外出先でも簡単にできますか?
- フェイスプレートの傷つきやすさは本当ですか?対策はありますか?
- リケーブル(ケーブル交換)をする際の端子の規格は?
- 上位機種の「Oxygen」や「Origin」との違いは何ですか?
- エージング(慣らし運転)は必要ですか?
- 4.4mmバランス接続にするメリットはありますか?
- 通勤・通学電車での使用で、音漏れは気になりますか?
- 左右(L/R)の判別はしやすいですか?
- 感度が高いようですが、ホワイトノイズ(サーッという砂嵐音)は気になりますか?
- 寝ホン(寝ながら聴くイヤホン)として使えますか?
- 付属ケーブルの「耳掛け部分(イヤーフック)」の装着感はどうですか?
- TANCHJIM 「4U」レビューのまとめ
TANCHJIM 「4U」の基本スペックとデザイン哲学

まずは、このイヤホンがどのような背景で生まれ、どのような技術が詰め込まれているのか、その基礎知識を深掘りしていきましょう。
カタログスペックの裏側にある「設計者の意図」を読み解きます。
TANCHJIM(タンジジム)とは?科学と美学の融合ブランド
2015年に設立されたTANCHJIMは、中国・南寧を拠点とするオーディオメーカーです。
彼らの製品開発における最大の特徴は、単に「音が良い」だけでなく、「美しい」製品を作ることに執着している点です。
音響工学に基づいた空力設計や振動制御には、FEA(有限要素解析)シミュレーションが多用されており、感覚だけでなく「物理学に基づいた音作り」が行われています。
「なぜこの音がするのか」を論理的に説明できる製品づくりが、オーディオマニアからの信頼を集める理由です。
また、TANCHJIMといえば、ブランドのマスコットキャラクター「浅野てんき」ちゃんを中心としたプロモーションも人気の一つ。
しかし、今回の「4U」に関しては、パッケージや付属品にキャラクター要素が含まれていません。
競合他社製品が「美少女パッケージ」で売り出す中、あえてキャラクターを封印し、硬質なメタルデザインで勝負に出た点に、メーカーの「音質そのもので評価してほしい」という自信と覚悟が垣間見えます。
「4U」のデザインコンセプト:ウサギをモチーフにした流麗な金属筐体
箱を開けてまず目を奪われるのは、その美しい筐体デザインです。
TANCHJIM製品は常にビルドクオリティが高いことで知られていますが、4Uも例外ではありません。
- モチーフ:
デザインコンセプトは「ウサギを横から見た姿」。
流線型のフェイスプレート部分はウサギの耳を、丸みを帯びたシェル部分は体を表現していると言われています。
動物モチーフでありながら、決して子供っぽくならず、モダンアートのような洗練された造形に落とし込んでいる点は流石です。 - 素材と加工:
筐体は亜鉛合金製のオールメタル仕様。
ダイキャスト(鋳造)成形により、継ぎ目のない滑らかな曲面を実現しています。- フェイスプレート: 鏡面仕上げ。周囲の景色を映し込むほどの輝きを放ち、高級感の演出に一役買っています。ここには「4U」のロゴがレーザー刻印されています。
- シェル(内側): マットなブラスト処理。肌触りがサラサラとしており、耳に入れた時の冷たさや不快感を軽減する効果もあります。
- 重量感:
実測で片側約9g前後。樹脂製イヤホン(通常3〜5g程度)と比較すると倍近い重さがあり、手に取るとずっしりとした「モノとしての凝縮感」を感じます。
この重みこそが、不要な共振を抑える制振性の証でもあります。
進化した「DMT4 Ultra」ドライバーとLCP振動板の技術的特徴
見た目以上に進化しているのが、心臓部であるドライバーユニットです。
「4U」には、同社の上位機種で培われたノウハウを継承・発展させた第4世代アーキテクチャ「DMT4 Ultra」ダイナミックドライバーが搭載されています。
| 特徴 | 詳細解説とメリット |
| デュアルチャンバー設計 | ドライバーの前後に独立した空気室(チャンバー)を設ける構造。これにより、振動板の動きに対する空気圧の抵抗を最適に制御します。結果として、音の歪みが低減され、特に低音域のコントロール性が向上し、濁りのないクリアな発音を実現します。 |
| LCP(液晶ポリマー)振動板 | 振動板素材には、高剛性かつ軽量なLCP(Liquid Crystal Polymer)複合材を採用。一般的なPET素材に比べて、音の立ち上がり(トランジェント)が非常に速く、細かい音の余韻まで正確に描写します。金属振動板ほど硬質すぎず、紙振動板より解像度が高い、バランスの取れた素材です。 |
| 高出力磁気回路 | FEAシミュレーションによって最適化された磁気回路は、強力な磁束密度を生み出します。これによりドライバーを強力にグリップし、静止状態から最大振幅まで瞬時に駆動させることが可能。ダイナミックレンジの広い、余裕のあるサウンドを生み出します。 |
特筆すべきは、この価格帯でLCP振動板を惜しみなく採用している点です。
LCPは加工が難しくコストもかかりますが、これを採用することで、従来のエントリーモデルでありがちだった「ぼやけた低音」や「刺さる高音」といった物理的な課題を克服しています。
TANCHJIM 「4U」の最大の特徴「4段階可変抵抗スイッチ」完全ガイド

「TANCHJIM 4U」を語る上で避けて通れないのが、本体背面に搭載されたロータリースイッチです。
これは他社製品によくある「音導管のフィルター交換」や「アプリ上のイコライザー」とは根本的に異なる仕組みを持っています。
デジタル処理とは違う「アナログ回路フィルター」の仕組み
一般的なスマートフォンのアプリによるイコライザー調整が「デジタル信号の数値を加工する」ものであるのに対し、4Uのスイッチは「アナログ回路による抵抗値の物理的な切り替え」を行っています。
筐体内部に設計されたフィルター回路の抵抗値を物理的に変化させることで、ドライバーへの電気信号の伝わり方や、空気の流れ(ダンピング特性)を調整しています。
デジタル処理のような位相のズレや不自然な歪みが発生しにくく、非常に有機的で自然な変化を楽しめるのが特徴です。
具体的には、主に低音域(〜200Hz付近)のレスポンスをコントロールすることで、相対的に中高音の聴こえ方(バランス)を変化させる仕組みとなっています。
4つのモード詳細比較(Atmosphere/Pop/Natural/Monitoring)
スイッチを切り替えることで変化する4つのサウンドシグネチャについて、それぞれの特徴と、具体的な周波数特性の変化イメージをまとめました。
| モード名 | 低音量感 | 特徴的な周波数特性 | おすすめの使用シーン |
| Atmosphere (アトモスフィア) | ★★★★ (最大) | 低域ブースト型 20Hz〜100Hz付近が最も持ち上がり、重厚な土台を作ります。高域は相対的にマイルドに聴こえます。 | 映画鑑賞・EDM・ライブ音源 爆発音やベースの唸りを肌で感じたい時に。没入感が最高レベル。 |
| Pop (ポップ) | ★★★☆ | 弱ドンシャリ型 低音をわずかに抑えつつ、ボーカル帯域(中音)との分離を良くした設定。 | J-POP・ロック・アニソン リズム隊のノリとボーカルの抜けを両立したい、最も汎用的なモード。 |
| Natural (ナチュラル) | ★★☆☆ | フラット志向 低音の主張をさらに控えめにし、全帯域のバランスを均一化。ハーマンターゲットに近い特性。 | アコースティック・ジャズ・弾き語り 楽器本来の音色や、声の質感を重視したい時に。 |
| Monitoring (モニタリング) | ★☆☆☆ (最小) | 高域寄りフラット 低音をバッサリとカット。中高域のディテールが露わになり、分析的な聴き方が可能。 | クラシック・FPSゲーム・音声編集 足音の定位確認や、録音ノイズのチェックなどプロ用途にも。 |
- Atmosphere(デフォルト):
開封時はこの設定になっています。
TANCHJIM独自の空気感を含んだチューニングで、一聴して「楽しい」と感じさせる音です。 - Monitoring:
これに切り替えると、まるで別のイヤホンになったかのように低域がスッキリします。
「音が痩せた」と感じるかもしれませんが、慣れるとボーカルの息遣いや、リバーブ(残響)の消え際まで手に取るように分かるようになります。
専用工具の使い方と実際の操作性
スイッチの切り替えには、付属の専用工具を使用します。
- 工具のデザイン:
一見すると小さな「銀色のガスボンベ」のようなユニークな形状をしています。
キーリングを通す穴が開いており、持ち運びも考慮されています。底面が精密マイナスドライバーになっています。 - 操作方法:
イヤホン背面のスイッチの溝にドライバーを合わせ、回転させます。
矢印が刻印されているので、それを筐体の目印に合わせます。 - 操作感:
カチッ、カチッという明確なクリック感があるわけではなく、ヌルッとした抵抗感と共に回転します。
無段階に近い感触ですが、4箇所にポイントがあります。
注意点:
指先で気軽にカチカチ変えられるタイプではありません。
爪で回そうとすると傷をつける恐れがあるため、必ず付属工具か精密ドライバーを使用してください。
これは「曲ごとに頻繁に変える」というよりは、「自分の好みのポジションを見つけて固定する」あるいは「週末にじっくり調整を楽しむ」といった使い方が想定されています。
TANCHJIM 「4U」の音質レビュー:ジャンルを選ばない万能型ニュートラルサウンド

ここからは、実際にさまざまな楽曲を聴き込んで感じた音質の詳細レビューをお届けします。
※試聴環境:DAP(Shanling M3 Ultra)、付属純正ケーブル、付属イヤーピース(高域重視タイプ・Mサイズ)を使用。
全体的な傾向:TANCHJIMらしい透明感と高い解像度
まず全体の印象を一言で表すと、「寒色寄りのニュートラルかつ、極めてクリアなサウンド」です。
TANCHJIM製品に共通する「音の純度の高さ」はこの4Uでも健在です。
1万円台のエントリークラスとは思えないS/N比(信号対雑音比)の良さを感じさせ、静寂の中から音がスッと立ち上がってくるような感覚を味わえます。
暖かみのあるウォームな音というよりは、クールで分析的な音色に近いですが、決して無機質ではありません。
LCP振動板特有の応答速度の速さが、音の輪郭をクッキリと描き出し、もっさりとした感覚は皆無です。
低音域の変幻:モード変更による量感とキレの違い
このイヤホンの真骨頂である低音域は、スイッチ設定に大きく依存しますが、基本的な「質」は共通しています。
- 質感:
どのモードでも、ボワついた締まりのない低音ではありません。
タイトで芯のある低音です。
バスドラムのキック音は「ドスン」という重さよりも、「タンッ」というアタック感(打撃音)の速さが際立ちます。 - 量感の変化(詳細):
Atmosphereモードでは、サブベース(可聴域ギリギリの重低音)までしっかり沈み込みます。EDMのドロップ部分では、頭蓋骨に響くような振動を感じられ、映画鑑賞時の爆発音などの迫力も十分です。Popモードにすると、中低域(ベースラインの主旋律あたり)が少し整理され、ボーカルとの被りがなくなります。Monitoringモードでは、低音の量感は激減しますが、その分、ベースの弦が震える細かいニュアンスや、キックペダルのバネの音まで見えるような解像度が顔を出します。
中高音域:ボーカルの際立ちと刺さりのないクリアな響き
中高音域は、非常に見通しが良いのが特徴です。
- ボーカル表現:
特に女性ボーカルとの相性は抜群です。
J-POPのハイトーンボイスや、アニソンのキラキラした歌声が、曇りなく伸びやかに再生されます。
息継ぎ(ブレス)の音や、口元の湿り気まで感じるような生々しさがあります。
男性ボーカルも痩せすぎることなく、適切な厚みを持って再生されます。 - 高音域と刺さり:
高音はエッジが効いており、煌びやかさがあります。
シンバルやハイハットの金属音は「シャリッ」と鋭く鳴りますが、耳に刺さって痛くなる一歩手前で巧みにチューニングされています。
この「痛くないギリギリの刺激」が、音楽にスリルと鮮やかさを与えています。
音場と定位感:モニター用途にも耐えうる正確な描写
- 音場(サウンドステージ):
横への広がりは標準的〜やや広めといったところですが、特筆すべきは「奥行き」の表現です。
ボーカルが前に、ドラムが奥に、という前後のレイヤー感が明確です。
上位機種のOriginに比べると流石に狭さは感じますが、同価格帯の中ではトップクラスの空間表現力です。 - 定位感:
楽器がどこで鳴っているかが、手に取るように分かります。
FPSゲーム(Apex LegendsやValorantなど)で使用してみましたが、足音の方向や距離感を掴みやすく、特にMonitoringモードやNaturalモードでは、環境音が整理されるため索敵に有利だと感じました。
ゲーミングイヤホンとしての適性も高いです。
TANCHJIM 「4U」を使用した私の体験談・レビュー

スペックや音質だけでは分からない、実際の使い勝手や「所有して初めて気づいた点」をシェアします。
カタログには載っていない、ユーザーとしての生の声です。
開封と付属品チェック:実用的なポーチとユニークな工具
パッケージはTANCHJIMらしく、白を基調としたシンプルで上品なデザイン。
「4U」の文字がエンボス加工されており、開封の儀のワクワク感を高めてくれます。
付属品の中で特に印象的だったのは、やはりスイッチ調整用のドライバーです。
この小さなパーツ一つにも、TANCHJIMのロゴが刻印されており、所有欲をくすぐります。
ただし、非常に小さいので紛失には注意が必要です。私はポーチの紐に結び付けておくことにしました。
キャリングポーチはグレーのベルベット調の巾着タイプ。
ハードケースではないため、満員電車での圧迫などに対する防御力は低いですが、カバンの中で筐体に傷がつかないよう保護するには十分です。
装着感と遮音性:金属筐体の重みを感じさせない優れたフィット感
購入前に懸念していたのは「金属筐体の重さ(約9g)で耳から落ちてこないか」「長時間つけると耳が痛くならないか」という点でした。
しかし、実際に装着してみると、その不安は杞憂に終わりました。
- 人間工学デザインの勝利:
筐体の内側(耳に触れる部分)のカーブが絶妙で、耳甲介(コンチャ)にピタリと収まります。
このフィット感のおかげで、重さが一点に集中せず分散され、装着していると重さを忘れるほどです。
2〜3時間の連続使用でも痛みは感じませんでした。 - 遮音性:
筐体内側にはベント(通気孔)が2箇所設けられており、完全密閉ではありません。
しかし、耳穴への密着度が高いため、パッシブな遮音性はかなり高めです。
カフェでの作業中や電車内でも、音楽を流してしまえば周囲の雑音はほぼ気になりませんでした。
音漏れについても、常識的な音量であれば隣の人に聞こえる心配はありません。
外観の維持管理:美しい鏡面仕上げの「傷つきやすさ」について
これは購入前に絶対に知っておくべきポイントですが、フェイスプレートの美しい鏡面仕上げは、非常にデリケートです。
私は使用開始から数日で、光にかざすと分かる程度の微細な擦り傷がついていることに気づきました。
ポーチに収納する際、左右の金属筐体がカチカチとぶつかり合うだけで小傷がつきます。
神経質な方は、収納時に左右を別々の布で包むか、内部に仕切りのある社外製イヤホンケースを別途購入することを強くおすすめします。
また、指紋も目立ちやすいので、眼鏡拭きのようなマイクロファイバークロスを常備しておくと、いつでも美しい輝きを楽しめます。
リケーブル検証:CIEM 2pin端子の相性と音質向上のポテンシャル
TANCHJIM 4Uはリケーブル(ケーブル交換)に対応していますが、端子形状に少しクセがあります。
- 端子規格: 0.78mm 2pin(埋め込み型/CIEM 2pin互換)
- 注意点:
本体側のピン受け口の窪みが浅めかつ円形ではなく楕円形に近い形状をしています。
一般的な中華2pin(フラット2pin)ケーブルも物理的には刺さりますが、コネクタ部分がむき出しになり、見た目が不格好になるだけでなく、強度的にも不安が残ります。
リケーブルを選ぶ際は、コネクタカバー部分が埋め込みに対応しているタイプか、純正オプションのような形状のものを選ぶのが無難です。
【リケーブルによる音質変化】
手持ちの4.4mmバランス接続対応ケーブル(純銀線)に交換して試聴してみました。
結果は劇的でした。
もともと高い分離感がさらに向上し、左右のセパレーションが明確になることで音場が一回り広くなりました。
特にAtmosphereモードでの低音の制動力が上がり、迫力があるのにボワつかない、ワンランク上のサウンドに進化しました。
4Uはケーブルの変化に敏感なイヤホンなので、カスタマイズの楽しみ(沼)も深いです。
再生環境の影響:スマホ直挿しとDAP/アンプ使用時の違い
スペック上(インピーダンス32Ω、感度122dB/Vrms)は、数字だけ見れば鳴らしやすそうに見えます。
しかし、実際には「駆動力(パワー)を欲しがるイヤホン」だと感じました。
- スマホ直挿し(変換アダプタ経由):
音量は取れますが、全体的に音が平坦になり、低音の締まりが甘くなります。
4Uの持ち味である「キレ」が半減してしまう印象です。 - DAC/DAP使用:
出力の高めなドングルDACやDAPを通すと、水を得た魚のように音が躍動し始めます。
特に低音の深みと高音の伸びが顕著に変わります。
もしスマホで聴く場合でも、数千円クラスのエントリー向けドングルDACを挟むだけで、その真価を大きく引き出せるはずです。
体験談の総括:自分だけの設定を見つける楽しさ
最初の1週間は、低音の迫力が楽しいAtmosphereモードばかり使っていましたが、最近はPopモードに落ち着きました。
私のよく聴くプレイリスト(最近は80年代シティポップや現代の女性ボーカルJ-POPが中心)には、Popモードの「ボーカルを邪魔しない適度な低音」が最適だと気づいたからです。
逆に、深夜に静かにクラシックやジャズピアノを聴きたい時はNaturalモードに切り替えています。
このように、「自分の好みが変わっても、イヤホン側で合わせにいける」というのは、長く付き合っていく上で非常に大きなメリットだと実感しています。
TANCHJIM 「4U」に関するQ&A

TANCHJIM 「4U」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
スマートフォンに直挿ししても良い音で聴けますか?
音は出ますが、本領発揮には「ドングルDAC」の併用を強くおすすめします。
TANCHJIM 4Uは音量が取りにくい機種ではありませんが、ポテンシャルを引き出すには一定の駆動力(パワー)が必要です。スマホ直挿し(変換アダプタ経由)だと、低音の締まりが悪くなったり、音が平面的に聴こえたりする場合があります。数千円クラスのエントリーモデルで構いませんので、ポータブルDACアンプを挟むことで、解像度や音の広がりが劇的に向上します。
FPSゲーム(ApexやValorantなど)やASMRにも使えますか?
はい、FPSゲームには非常に適しています。
特に「Monitoring」や「Natural」モードに設定すると、低音の過度な響きが抑えられ、足音や銃声の方向(定位)が掴みやすくなります。音の分離感が良いため、音が混ざり合わず、敵の位置把握に有利です。 ASMRに関しては、解像度が高いため微細な音も拾いますが、高音がやや鋭い傾向があるため、耳かき音などの刺激が強いコンテンツでは好みが分かれるかもしれません。
4つのモード切り替えは、外出先でも簡単にできますか?
外出先での頻繁な切り替えは難しいです。
スイッチの操作には付属の専用工具(または精密マイナスドライバー)が必要です。指先だけでカチッと切り替えることはできません。基本的には自宅で好みの設定を決めておくか、落ち着いた環境で調整することをおすすめします。
フェイスプレートの傷つきやすさは本当ですか?対策はありますか?
はい、鏡面仕上げのため非常に傷つきやすいです。
美しい光沢がある反面、ポーチの中で左右のイヤホンが接触するだけで微細な擦り傷がつくことがあります。
対策:
- 使用後はメガネ拭き等の柔らかい布で指紋や脂を拭き取る。
- 収納時は左右のハウジングがぶつからないよう、仕切りのあるケースを使用するか、個別に布で包んでからポーチに入れる。
リケーブル(ケーブル交換)をする際の端子の規格は?
0.78mm 2pin」規格ですが、埋め込み型(CIEM 2pin)形状が推奨されます。
本体側のコネクタ差し込み口が少し窪んでいるため、フラットな2pinタイプだと強度が不足したり、見た目が浮いてしまったりする可能性があります。コネクタカバー部分が本体の窪みにフィットするタイプを選ぶと安心です。
上位機種の「Oxygen」や「Origin」との違いは何ですか?
「解像度の格」と「音のカスタマイズ性」が違います。
上位機種は、空気感の表現や音の密度において4Uよりも一段上の性能を持っています。しかし、4Uはそれらに迫る音質傾向を持ちながら、「低音の量を調整できる」という独自の強みがあります。「予算を抑えつつTANCHJIMサウンドを体験したい」「色々なジャンルを1本で聴きたい」という方には4Uの方がコストパフォーマンスが高くおすすめです。
エージング(慣らし運転)は必要ですか?
LCP振動板を採用しているため、エージングの効果は感じやすいです。
開封直後は高音が少し硬く感じたり、低音の動きが渋いと感じる場合があります。通常使用で20〜50時間ほど鳴らし込むことで、振動板が馴染み、角が取れた滑らかな音質へ変化していく傾向があります。
4.4mmバランス接続にするメリットはありますか?
非常に大きいです。ぜひ試していただきたいアップグレードです。
4Uは駆動力に反応しやすいドライバーを積んでいるため、バランス接続によって左右のセパレーション(分離感)と出力が向上すると、音場が明確に広がり、低音の「キレ」がさらに良くなります。特に「Monitoring」モードなどの低音が控えめな設定でも、音が痩せずに芯のあるサウンドを楽しめるようになります。
通勤・通学電車での使用で、音漏れは気になりますか?
常識的な音量であれば問題ありません。
筐体の内側に空気圧調整用のベント(小さな穴)が2箇所開いていますが、耳側に位置しているため、音が外に盛大に漏れる構造ではありません。ただし、図書館のような極めて静かな場所で大音量で聴くと、シャカシャカとした音が漏れる可能性はあります。電車やカフェの騒音下ではほぼ気にする必要はないレベルです。
左右(L/R)の判別はしやすいですか?
少し分かりにくいですが、目印があります。
筐体デザインが左右対称に近い流線型で、かつ全体がシルバー一色のため、パッと見では判別しにくいです。
- 見分け方: ケーブルのコネクタ部分に「L」「R」の刻印があるほか、筐体側面のマーキングを確認する必要があります。暗い場所での装着には少し慣れが必要です。
感度が高いようですが、ホワイトノイズ(サーッという砂嵐音)は気になりますか?
再生環境によっては、無音時にわずかに聞こえる場合があります。
TANCHJIM 4Uは感度が「122dB/Vrms」と非常に高いため、プレイヤー側の残留ノイズを拾いやすい性質があります。 安価なPCのイヤホンジャックや、ノイズ対策が甘いワイヤレス変換レシーバーなどに接続すると、曲間の無音時に「サーッ」というヒスノイズが気になることがあります。S/N比の良いドングルDAC(例えばFIIOやiBasso、Shanling製品など)を使用すれば、全く問題ありません。
寝ホン(寝ながら聴くイヤホン)として使えますか?
あまりおすすめできません。
筐体は耳への収まりが良い形状ですが、金属製で厚みがあり、耳から少し飛び出すフォルムです。横向きに寝ると枕と耳の間でイヤホンが圧迫され、耳が痛くなったり、筐体が耳の軟骨に当たったりする可能性があります。また、重量があるため、就寝中に外れて顔に当たると痛いです。
付属ケーブルの「耳掛け部分(イヤーフック)」の装着感はどうですか?
柔らかめのチューブで、フィット感は良好です。
針金が入っているタイプではなく、熱収縮チューブであらかじめカーブが付けられている形状記憶タイプです。硬すぎず適度な弾力があるため、耳の裏が痛くなりにくいです。もしカーブが耳に合わない場合は、ドライヤーの温風を少し当てて(温めすぎに注意)、自分の耳の形に合わせて癖をつけ直すことも可能です。
TANCHJIM 「4U」レビューのまとめ

長文にお付き合いいただきありがとうございました。
最後に、TANCHJIM 4Uの良い点・悪い点、そしてどのような人におすすめなのかを総括します。
メリット:価格破壊級のビルドクオリティと音質の汎用性
- ビルドクオリティの高さ:亜鉛合金の重厚感と美しい鏡面仕上げは、所有する喜びを満たしてくれます。プラスチック製の安っぽさは微塵もありません。
- 音質の可変性:アナログスイッチによる4つの音質は、どれも実用的です。EQアプリを使わずに、ハードウェアレベルで音を変えられる体験は新鮮かつ有用です。
- 基礎性能の高さ:LCP振動板による解像度の高さ、歪みのなさ、トランジェントの良さは、同価格帯の中でも頭一つ抜けています。
- 抜群のコストパフォーマンス:この音、この質感、そしてギミックを搭載して約12,000円(記事執筆時点)という価格設定は、バーゲンセールと言っても過言ではありません。
デメリット:購入前に知っておくべき注意点
- 傷つきやすさ:鏡面仕上げは美しさの代償として傷つきやすいです。ラフに扱いたい人には向きません。
- 再生環境を選ぶ:スマホ直挿しではポテンシャルを発揮しきれません。DACやアンプの使用が強く推奨されます。
- キャラクター不在:TANCHJIMファンにとっては、「浅野てんき」ちゃん要素がないことは寂しいポイントかもしれません(逆に硬派なデザインを好む人にはメリットです)。
- スイッチ操作の手間:専用工具が必要なため、移動中や暗い場所で気軽に切り替えるのは困難です。
競合製品・上位モデルとの比較優位性
購入を迷うであろう競合機種との比較を表にまとめました。
| 比較対象 | 比較内容と4Uの優位性 |
| vs TANCHJIM Oxygen / Origin (上位機種) | 格上の解像度 vs コスパの4U 解像度や空気感の表現力では、やはり上位機種に軍配が上がります。しかし、4Uは音の傾向がこれらに近く、「ミニOrigin」として十分通用する実力があります。さらに低音調整ができる分、汎用性では4Uが勝ります。予算が潤沢でないなら4Uで十分幸せになれます。 |
| vs Moondrop Aria 2 (同価格帯) | 王道サウンド vs 変幻自在 Aria 2も素晴らしいイヤホンですが、音質調整機能はありません。4Uは1本で複数の音色を楽しめる点と、よりコンパクトで装着感が良い点でリードしています。 |
| vs TRUTHEAR HEXA (同価格帯ハイブリッド) | ドライバ数 vs 1DDの自然さ 多ドラ(複数のドライバー)構成のHEXAは分離感で勝りますが、4Uは1DD(シングルダイナミック)ならではの「音のつながりの良さ」や「自然な定位感」で勝負できます。不自然な音色が苦手な人は4Uがおすすめです。 |
TANCHJIM 4Uをおすすめしたい人
- 自分好みの音が定まっていない初心者:「低音が強いのが好きか、フラットが好きか分からない」という方は、この1本で自分の好みを探求できます。
- 幅広いジャンルの音楽を聴く人:クラシックからEDM、アニソンまで、ジャンルに合わせて最適なモードを選びたい方。
- モニターライクな音が好きな人:味付けの濃い音よりも、スッキリとした高解像度サウンドを好む方。
- 美しいガジェットが好きな人:ジュエリーのような見た目のアイテムを持ち歩きたい方。
TANCHJIM 4Uをおすすめしない人
- スマホ直挿しで手軽に済ませたい人:DAC等の追加投資をしたくない場合は、もっと鳴らしやすい機種(例:TANCHJIM OLAなど)の方が良い結果が得られるかもしれません。
- 脳を揺らすような超重低音を求める人:Atmosphereモードでも、低音特化型イヤホン(例えばKBEARやKZの一部モデル)ほどの暴力的な量感はありません。あくまで「品のある低音」です。
- 傷を極端に気にする人:使用に伴う小傷が許せない性格の方は、マット仕上げのイヤホンを選んだ方が精神衛生上良いでしょう。
TANCHJIM 「4U」レビューの総評:オーディオ沼への入り口にして最適解の一つ
TANCHJIM 4Uは、ただ単に「音が良いイヤホン」という枠を超え、ユーザーに「音を操る楽しさ」と「音質の違いを聴き分ける耳」を育ててくれる教育的な側面も持った製品です。
1万円台という価格は、一般的には決して安くはありませんが、オーディオ趣味の世界ではエントリークラスです。
しかし、この4Uが提供する体験密度は、ミドルクラス(3〜5万円台)の製品に匹敵するものがあります。
これ一本あれば、当分の間、他のイヤホンを欲しいと思わなくなるかもしれません(あるいは、もっと上の世界を知りたくてたまらなくなるか、ですが)。
もしあなたが、「スマホ付属のイヤホンから卒業したい」「もっとクリアな音で音楽に没頭したい」と考えているなら、TANCHJIM 4Uは間違いなく、その期待以上の答えを返してくれるでしょう。
この小さなウサギを手にして、あなただけの「最高の音(For You)」を見つける旅に出かけてみませんか?


