ここ数年、コストパフォーマンスに優れた中華イヤホンの勢いが止まりません。
なかでも「TinHiFi(ティンハイファイ)」は、精密なアルミ削り出しデザインと独自の音作りで、多くのオーディオファンから支持を集めてきたブランドです。
その中でも今回取り上げる「T5s」は、従来モデル「T5」から大きく進化した注目の一台として話題を呼んでいます。
前作「T5」は高解像度でありながらやや硬質な音傾向が指摘されていましたが、「T5s」では新設計のドライバーとチューニングにより、より自然で聴き疲れしにくいサウンドを実現しています。
外観デザインも刷新され、質感・装着性の両面で完成度を高めている点が特徴です。
特に、アルミ合金のハウジングは手に取るとひんやりとした高級感があり、細部の加工精度の高さからもTinHiFiの設計思想が感じられます。
この記事では、TinHiFi 「T5s」のデザインや装着感、音質傾向、そして同価格帯の人気機種との比較を通じて、実際の使用感を詳しくレビューしていきます。
筆者自身が日常で聴き込んだ印象をもとに、低音から高音までのバランスや音の立体感、ボーカルの聴かせ方などを掘り下げ、どのようなユーザーに最も向いているイヤホンなのかを丁寧に考察します。
「TinHiFi T5sは本当に買う価値があるのか?」「前作からどれほど進化したのか?」──そんな疑問を持つ方に向けて、実際の体験を通してその魅力と実力を明らかにしていきます。
読み終えたときには、「T5s」があなたにとって理想のイヤホンとなり得るかが、きっと明確になるはずです。

TinHiFi 「T5S」のデザインと装着感

外観デザインと仕上げの質感
TinHiFi 「T5s」の第一印象は、洗練されたメタルボディの高級感に尽きます。
ハウジングにはアルミニウム合金を採用し、CNC削り出し加工によって精密に成形。
金属特有の冷たさと滑らかな手触りがあり、価格以上の上質さを感じさせます。
前作「T5」よりもフェイスプレートのエッジが滑らかになり、デザイン全体の統一感が向上しました。
形状は“セミカスタムIEM風”で、耳のくぼみにフィットしやすいよう設計されています。
見た目の美しさと同時に、人間工学に基づいた快適な装着性を実現している点も魅力です。
過度な装飾を避けたミニマルなデザインは、シンプルながら所有欲を満たしてくれます。
項目 | 内容 |
---|---|
素材 | アルミニウム合金(CNC削り出し) |
形状 | IEMタイプ(セミカスタム風) |
カラー | シルバーグレー系のマット仕上げ |
コネクタ | 0.78mm 2pin |
片側重量 | 約7.7g(軽量クラス) |
こうした外観は、単なる“低価格中華イヤホン”という枠を超え、むしろ中価格帯モデルにも匹敵する質感を実現しています。
フィット感と装着の安定性
「T5s」の装着感は、見た目以上に自然で安定しています。
耳の形に沿うように設計された筐体が、耳にすっと収まるような感覚を与え、長時間リスニングでも痛みや圧迫感を感じにくい仕上がりです。
ノズル部分もやや太めですが、適切な長さが確保されており、遮音性と密着感のバランスが取れています。
実際に使用してみると、ケーブルを耳の後ろにかけるオーバーイヤー型の装着方式が安定性を高め、通勤や軽い運動中でもズレにくく快適に使えます。
耳道への圧迫が少ないため、音のこもりや疲労も少なく、自然な定位感を保てるのも好印象です。
快適に装着するためのポイント
- 付属イヤーピースはS/M/Lが同梱されており、耳道に合ったサイズを選ぶと遮音性が向上。
- 深めに挿入することで低音の厚みが増し、全体のバランスが安定。
- フォームタイプやスピンフィットなど、社外イヤーピースに交換するとさらに密着度が向上。
装着の安定性に加えて、「T5s」は軽量ボディによる負担の少なさも特徴的です。
金属筐体でありながら、長時間装着しても疲れにくく、日常使いにおいても扱いやすいモデルといえます。
ケーブル・コネクタ・取り回し
「T5s」には0.78mmの2pin端子が採用されており、ケーブル交換が容易です。
前作「T5」のような埋め込み型ではないため、汎用性が高く、リケーブル派にも嬉しい仕様です。
標準付属のケーブルは柔らかく、銀メッキ線を使用した軽量タイプで、絡みにくく取り回しやすい設計になっています。
ケーブルを耳の後ろに回すことでマイクロフォニクス(タッチノイズ)が軽減され、歩行中や移動時でも快適に音楽を楽しめます。
また、ケーブル交換により4.4mmバランス接続などへの拡張も可能で、音質チューニングの幅が広がる点も魅力です。
ケーブルまわりの特徴まとめ
- 標準ケーブルは軽量・柔軟で取り回しやすい
- リケーブル対応でアップグレードが可能
- 耳掛け式の装着によりタッチノイズが少ない
- バランス接続対応のケーブルへの換装も容易
全体として、TinHiFi 「T5s」は外観の美しさと機能性を両立した、完成度の高いデザインを実現しています。
高精度な金属筐体により剛性感がありながらも、軽量で長時間使っても疲れにくい構造。
見た目・装着感・使い勝手のどれを取っても、同価格帯の中では頭ひとつ抜けた仕上がりです。
TinHiFi 「T5S」の音質レビュー(全帯域の傾向を分析)

TinHiFi 「T5s」のサウンドは、ブランドらしい正確なモニター感と音楽的な聴き心地を両立した“弱V字チューニング”。
低域・中域・高域それぞれが明確に役割を持ちながらも、全体としては自然な一体感を感じられるのが特徴です。
細部まで整ったチューニングにより、日常リスニングから音源分析まで幅広く対応できる万能型といえます。
低音域:量よりも質を重視した引き締まった低域
「T5s」の低域は、迫力よりもコントロールの効いたタイトさが光ります。
量感はやや控えめながら、輪郭の明瞭さとスピード感に優れており、ベースラインやキックドラムの立ち上がりが鮮明。
低音が地鳴りのように響くタイプではなく、むしろ“リズムのキレ”で音楽を支える印象です。
評価項目 | 内容 |
---|---|
量感 | 標準〜やや控えめ。過度な膨らみなし |
質感 | タイトで弾力のある音像。にごりが少ない |
スピード | 速く、ダンピング良好。打ち込み系に強い |
深み | 超低域は控えめだが、必要な沈み込みは確保 |
低域が過剰にならないことで、他帯域との分離が保たれ、全体の見通しが非常に良いです。
特にJ-POPやEDMではリズムのノリが明確に感じられ、ロック系でもキックとベースの区別がはっきりしています。
一方で、重低音主体のジャンルでは、もう少し厚みを求めたくなるかもしれません。
中音域:ボーカルが生きる自然な存在感
中音域はTinHiFiらしく、ボーカル表現の明瞭さと立体感が特徴です。
声の輪郭がくっきりと浮かび上がり、特に女性ボーカルの艶やかさが印象的。
楽器の分離感も良好で、ギターやピアノがボーカルを邪魔せず、空間の中でそれぞれがしっかりと定位します。
トーンとしては「透明感がありながら芯がある中音」。
音の密度も適度にあり、情報量が多いのに聴き疲れしないという絶妙なチューニングです。
ボーカル主体のポップスやアコースティックとの相性が抜群で、声のニュアンスまで細やかに描写します。
中音域のポイント
- ボーカルが前方に定位し、明快で聴き取りやすい
- 楽器の響きが分離しており、音場が整理されている
- サ行などの歯擦音はほとんど気にならない自然な処理
男性ボーカルでは厚みがあり、女性ボーカルでは伸びやかで明るい印象。
ジャンルを問わず安定して楽しめるチューニングです。
高音域:抜けの良さと繊細な描写
高音域は、過剰に刺激的ではなく、伸びやかで上品な輝きを持っています。
シンバルの残響やストリングスのハーモニクスが自然に伸び、音場の上方向に広がりを感じます。
刺さりやすいピークが少なく、長時間のリスニングでも聴き疲れしにくいのが大きな魅力です。
特徴 | 内容 |
---|---|
伸び | 滑らかで余韻が自然。減衰も美しい |
解像度 | 細かい音も埋もれず再現。高精細な描写 |
刺さり | 強いピークなし。疲労感の少ないトーン |
空気感 | エアー感があり、音場上部が開けている |
高音の抜けの良さは、特にクラシックやジャズなどのアコースティック音源で効果的です。
金管や弦の倍音が綺麗に伸び、立体的な音場を構築します。
また、音量を上げてもバランスが崩れにくく、どの音量でもクリアさを保つ点も好印象です。
音場・定位・分離感の全体バランス
TinHiFi 「T5s」の音場は横方向に広く、前後の奥行きも十分。
楽器やボーカルの位置関係が明確で、ステージ感のある空間表現を楽しめます。
特に、音の層が手前から奥にかけて立体的に展開するため、自然な没入感が得られます。
音場評価まとめ
- 横幅:広めでステレオ感が明確
- 奥行き:前後のレイヤーが段階的に配置される
- 高さ:高音の伸びにより空間の“天井”を感じやすい
- 分離感:ボーカル・楽器の位置関係が整理され、混濁感が少ない
定位の安定性も優れており、ライブ音源では演奏者の位置が手に取るようにわかります。
解像度も高いため、音数の多い楽曲でも情報が潰れず、繊細な残響まで感じ取れます。
ジャンル別の相性
ジャンル | 相性 | 備考 |
---|---|---|
J-POP・アニソン | ◎ | ボーカル中心の楽曲で声が前に出る。明るいトーンがマッチ |
ロック・メタル | ○ | ギターの分離が良く、音の輪郭がくっきり。ただし重低音は控えめ |
EDM・ハウス | ○ | キレのある低域がリズム感を強調。派手さより明瞭感重視 |
ジャズ | ◎ | シンバルの響きや空気感が自然で、ホール感が再現されやすい |
クラシック | ○ | 弦の伸びが綺麗。ややモニター的で精密な鳴り方 |
TinHiFi 「T5s」は、派手さや誇張を排し、音楽本来のバランス感を丁寧に描くタイプのイヤホンです。
低音は量よりも締まり重視、中音はボーカルが自然に立ち、高音は伸びと透明感を兼備。
結果として、解像度・定位・音場が高水準でまとまり、聴き疲れの少ない万能型サウンドに仕上がっています。
TinHiFi 「T5S」の性能と機能性の検証

インピーダンス・駆動力と音源相性
「T5s」は“鳴らしやすさ”と“伸びしろ”を両立するタイプ。スマホ直挿しでも輪郭の立った音を出しますが、電源や出力に余裕のあるUSB DAC/DAPへ移行すると低域のテクスチャ・音場の立体感・微小音の再現が一段深まります。
ソース別の傾向
- スマホ直挿し:音像の輪郭がシャープでスッキリ。ボリューム1~2刻みで表情が変わりやすいので、音量は中庸をキープ。
- USBドングルDAC:電流供給が安定し、低域の弾力と中域の密度が増加。音場が横に広がり、奥行きも一段深く。
- 据え置きDAC/AMP:残響の描写やホール感がより自然に。静寂感(S/N)が上がり、金物の余韻やリバーブの尾が見通し良くなります。
相性の良いセッティング
- 出力インピーダンスが低い機器(目安:低Ω):帯域バランスが崩れにくく、低域の制動が良好。
- ゲインは“LOW~MID”で:過度にゲインを上げるとアタックが硬くなりがち。
- EQは軽微に:薄く“低域+1~2dB / 60–100Hz”、もしくは“超高域+1dB / 10kHz”程度で表情付け(やりすぎるとT5sの自然さを損ねます)。
取り回しの良いリケーブルや、遮音と密着を確保できるイヤピの選定は駆動力以上に音の土台を安定させます。
同価格帯イヤホンとの比較
項目 | TinHiFi T5s | TinHiFi T3 Plus | TinHiFi T4 Plus |
---|---|---|---|
音の傾向 | 弱V字。分離と見通し重視 | 低~中域に厚み。ウォーム寄り | 中高域が明るいモニター寄り |
低域 | タイトでスピード感。沈み込みは必要十分 | 量感豊富でリスニングライク | 量は標準、キレ優先 |
中域 | ボーカル前景・輪郭明瞭 | 中域厚めで聴き心地重視 | 中域スリム、分析的 |
高域 | 伸びが滑らか、刺さりにくい | 穏当で聴き疲れしにくい | 明るくエッジが立ちやすい |
音場/定位 | 横に広く前後も段付く | 横は中庸、密度感で聴かせる | 形は正確、上下感は控えめ |
装着感/ビルド | 金属筐体ながら軽快。質感高い | 樹脂主体で軽快・カジュアル | 金属×スリム。装着はややタイト |
向く層 | 解像・分離・音場を重視 | 温かめで楽しく聴きたい | シャープな明瞭感が好き |
- T5sの優位点:分離感・定位の明快さ、弱V字ながらナチュラルなまとまり、長時間でも疲れにくい高域。
- T3 Plusの魅力:ウォーム寄りの厚みと聴きやすさ。低域の満足度を求める人に。
- T4 Plusの魅力:中高域の解像とエッジ。モニターライクな“線の細い明瞭さ”が好きなら有力。
同価格帯で万能性とバランスを求めるなら「T5s」が最有力。キャラクターを強く楽しみたいならT3 Plus(ウォーム)/T4 Plus(クール)で棲み分け。
リスニング環境別インプレ(スマホ/DAP/DAC)
環境別・聴こえ方の要点
環境 | 期待できる効果 | セッティングのコツ |
---|---|---|
スマホ直挿し | 輪郭がシャキッとしたクリア傾向。日常使いに十分 | 音量は中庸。イヤピは密着重視(遮音↑=低域安定) |
USBドングルDAC | 低域の質感向上、音場拡大、微小音の描写UP | 出力インピーダンス低めを選択。ゲインはLOW/MID |
DAP(4.4mmバランス) | ダイナミクスと空間分離がさらに向上 | バランス接続でS/N↑。金属ノイズは耳掛け調整で軽減 |
据え置きAMP | 静寂感・余韻の滑らかさ・奥行き再現が最良 | 電源品質の良い環境で。過剰ゲインは避け“自然な音量”に |
アクセサリー活用術
EQは薄味で。「T5s」は素のバランスが良い
イヤーピース:低域の厚み→フォーム系/ディープシール型、抜けの良さ→広口シリコン、バランス型→やや厚肉のシリコン(装着深め)
ケーブル:軽量・柔軟な被覆はマイクロフォニクス低減に有効。4.4mmバランス化で音場とダイナミクスを底上げ
再生アプリ/設定:デジタル音量を上げすぎず、アナログ側で微調整
TinHiFi 「T5S」を使用した私の体験談・レビュー

TinHiFi 「T5s」を日常のあらゆるシーンで使用してみました。
結論から言えば、「T5s」は「聴きやすさ」と「解像度の高さ」を高次元で両立しており、どんな環境でも安定したサウンドを届けてくれる“信頼できるイヤホン”という印象でした。
ここでは、使用環境や楽曲別の印象、リスニングスタイル別の感想を詳しく紹介します。
初めて装着したときの印象
手に取った瞬間、アルミ筐体の冷たさと精密な作り込みに驚きました。
装着すると耳の形に自然に沿い、圧迫感がなく軽いフィット感。
金属ハウジングにもかかわらず、耳の中にしっかりと安定して収まりました。
初めて音を出したときの印象は「スッキリしていて聴き疲れしにくい」。
特にボーカルが前に出てきて、音場が広がる感覚があり、自然と音楽に集中できました。
通勤・作業・リラックスタイムでの印象
通勤中に使用した際は、金属筐体にもかかわらず軽量で、ケーブルを耳に掛けると安定性が抜群。
遮音性も高く、地下鉄の走行音や周囲の雑音がほとんど気になりませんでした。
デスクワーク中にBGMとして使うと、小音量でも音の輪郭が崩れないため集中力を保ちやすく、長時間の使用でも疲労を感じにくいのが印象的でした。
夜、静かな部屋でじっくり聴くと、ボーカルの息遣いやリバーブの尾が浮かび上がり、「T5s」の“静寂の中に浮かぶ音”が際立ちました。
ジャンル別のリスニング印象
ジャンル | 印象 | 相性評価 |
---|---|---|
J-POP/アニソン | ボーカルが明瞭で、伴奏との分離も良好。サビの伸びが爽快 | ◎ |
ロック/メタル | ギターのリフやドラムのアタックが鮮やか。低域はタイトでスピード感あり | ○ |
EDM/ヒップホップ | ビートの立ち上がりが早く、リズムのノリが良い。重低音は控えめ | ○ |
ジャズ/アコースティック | シンバルの余韻が自然で音場が広い。定位も安定 | ◎ |
クラシック | 各楽器の位置が明確で、ホールの響きが再現される | ○ |
ジャンルを問わず平均点が高く、特にボーカル主体の曲では中域の表現力が際立ちました。
音が分離しているのに全体が一体感を保つ絶妙なチューニングは、長時間聴いても飽きません。
アクセサリーによる変化と“育てる楽しさ”
「T5s」はリケーブルやイヤーピース交換による変化がわかりやすく、“育てるイヤホン”としての面白さもあります。
イヤーピースの違いによる変化
- フォームタイプ:低域が増えて柔らかい音に変化
- 広口シリコン:高域がより開放的に、ボーカルが前へ
- ディープフィット型:定位が安定し、低域の沈み込みが改善
ケーブル交換の効果
- 4.4mmバランス接続にすると音場が拡張し、空間の立体感が増加
- 銀メッキ線ケーブルに替えると高域が明るく抜けの良い音に
- 銅線ケーブルでは音に温かみが増し、ボーカルが厚くなる
特に、出力の強いDAP+バランスケーブルの組み合わせでは、まるで別のイヤホンのようにスケール感が増しました。
気に入った点と改善してほしい点
気に入った点
- バランスの良いチューニングで、どのジャンルでも聴きやすい
- ボーカルの透明感と定位の安定感が秀逸
- 軽量で装着感が自然、長時間使用でも疲れにくい
- 音源やケーブルで音の変化を楽しめる“伸びしろ”
改善してほしい点
- 低域の迫力をもう少し強めたいときがある
- シルバーの筐体は指紋が目立ちやすい
- 付属イヤーピースのバリエーションがもう少し欲しい
総評:聴くほどに信頼できる“日常の定番”
「T5s」は、最初は地味に感じても使い続けるほど深みが増すイヤホンです。
派手な演出や極端なチューニングではなく、音の輪郭・定位・空間表現の3つを丁寧に整えており、どんな曲でも破綻しません。
特に、音楽を自然なバランスで楽しみたい人、仕事や移動中にも快適に使いたい人には理想的な一本だと感じました。
“毎日使える信頼感”と“チューニングの美しさ”を兼ね備えた「T5s」は、まさにTinHiFiの成熟を象徴するモデルといえるでしょう。
TinHiFi 「T5S」に関するQ&A

TinHiFi 「T5S」に関してよく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
「T5S」はどんな音の傾向ですか?
「T5S」は弱V字型チューニングで、全体的にバランスの取れた音を特徴としています。
低域はタイトで引き締まり、中域はボーカルが前に出て明瞭、高域は伸びやかで自然な抜け感があります。派手さはありませんが、解像度と聴きやすさを両立した万能型サウンドです。
「T5S」は前作「T5」とどう違うのですか?
最大の違いは音の自然さと装着感の改善です。
前作「T5」はやや硬質で高域が強めでしたが、「T5s」ではチューニングを見直し、より自然で温かみのあるサウンドに仕上がっています。筐体形状も耳の形にフィットしやすくなり、長時間リスニングでも疲れにくくなったのが大きな進化点です。
駆動力はどのくらい必要ですか? スマホ直挿しでも使えますか?
「T5s」はスマホ直挿しでも十分鳴らせるイヤホンです。
ただし、USBドングルDACやDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を使用すると、低域の深みや音場の立体感が明確に向上します。駆動しやすい一方で、上流機器によって音質が伸びる“育てがい”のあるモデルです。
どんなジャンルの音楽に向いていますか?
ボーカルを中心に据えたジャンルと相性が良いです。
具体的にはJ-POP・アニソン・ジャズ・アコースティック・クラシックなどが得意。EDMやメタルのような重低音重視の楽曲も聴けますが、迫力よりも音の整理感や定位の明瞭さで楽しむタイプです。
装着感はどうですか?
「T5s」は軽量な金属筐体と人間工学的デザインによって、非常に快適な装着感を実現しています。
耳のくぼみに自然にフィットする形状で、長時間装着しても痛みや圧迫感を感じにくいです。耳掛け式のケーブルにより安定感も高く、通勤・作業中などの使用にも向いています。
付属ケーブルやイヤーピースの品質はどうですか?
付属ケーブルは柔軟性が高く絡みにくい銀メッキケーブルで、取り回しも良好です。
イヤーピースはS/M/Lの3サイズが付属していますが、音の変化を楽しみたい場合はフォームタイプやスピンフィット系の社外品を試すとより自分好みのサウンドに調整できます。また、「T5s」は2pin端子対応なので、リケーブルによる音質アップやバランス接続も容易です。
イヤホン初心者でも扱いやすいですか?
はい、扱いやすいです。
「T5s」はケーブル着脱が簡単で、構造がシンプル。鳴らしやすく、どんな音源プレーヤーにも対応します。また、チューニングがフラット寄りなので、初めて高音質イヤホンを試す人にも“正しい基準音”を体験できるモデルとしておすすめです。
長時間使っても疲れませんか?
聴き疲れしにくいのが「T5s」の大きな魅力です。
高音の刺激が少なく、中音域が滑らかで耳当たりが優しいため、2~3時間のリスニングでも快適に使えます。
通勤や作業中のBGMとしても、集中を邪魔しない自然なサウンドが心地よいです。
「T5s」の音質は「モニター型」と「リスニング型」どちらですか?
両者の中間に位置します。
音の正確さや定位の明確さはモニター型の特徴を持ちながら、全体のトーンは聴き心地の良いリスニング寄り。
“リスニングライクなモニターイヤホン”と表現するのが最も近いでしょう。音楽制作やDTM用途にも使えますが、同時に日常リスニングでも心地よく聴ける万能設計です。
TinHiFi 「T5S」レビューのまとめ

TinHiFi 「T5s」は、ブランドの定評ある高精度なメタルボディと、より洗練された音づくりを融合させた完成度の高いイヤホンです。
派手な個性よりも「バランスの美学」で聴かせるタイプで、毎日安心して使える“実用性と音質の中間点”をしっかり押さえています。
ここでは、これまでのレビュー内容を踏まえ、「T5s」の魅力と注意点を整理していきます。
音質・デザイン・使い勝手の総合評価
項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
低音 | ★★★★☆ | タイトでスピード感のある低域。膨らまずに引き締まるタイプ |
中音 | ★★★★★ | ボーカルが自然に前へ。透明感が高く、音の分離も良好 |
高音 | ★★★★☆ | 伸びやかで刺さりが少ない。余韻も自然で聴き疲れしにくい |
音場・定位 | ★★★★☆ | 横方向の広がりと奥行きのバランスが取れている |
デザイン | ★★★★★ | 高精度なアルミ筐体と軽快な装着感。質感は価格以上 |
装着感 | ★★★★☆ | 長時間でも安定しやすく、耳への圧迫感が少ない |
コスパ | ★★★★★ | 音質・質感・拡張性のバランスが非常に優秀 |
音質はどの帯域も突出しすぎず、丁寧に整えられています。
特に中音域のクリアさと自然な定位は同価格帯の中でもトップクラス。
また、金属筐体の美しさやリケーブル対応など、所有する喜びと実用性を両立している点も評価できます。
こんな人におすすめ
TinHiFi 「T5s」は、リスニングスタイルに合わせて表情を変える柔軟さを持っています。
以下のようなユーザーには特におすすめです。
おすすめできる人
- 解像度や分離感を重視し、ナチュラルで疲れにくい音を求める人
- ボーカル主体の楽曲(J-POP、アコースティック、ジャズ)をよく聴く人
- イヤーピースやケーブル交換で音の変化を楽しみたい人
- 通勤・作業中・夜のリスニングなど、長時間の使用でも快適に使いたい人
合わないかもしれない人
- 重低音の圧力を常に感じたい人
- 音のウォーム感や厚みを最優先する人
- ドンシャリ傾向やライブ的な派手さを求める人
「T5s」は「静かな中に情報量を詰め込んだイヤホン」であり、音の派手さよりも自然で整理されたサウンドバランスを楽しむ層に最適です。
他モデルとの比較による立ち位置
「T5s」はTinHiFiのTシリーズの中でも、“完成度重視の中心モデル”という位置づけです。
同社の「T3 Plus」や「T4 Plus」と比べてみると、「T5s」の特徴がより明確に見えてきます。
モデル | 特徴 | 向いているユーザー |
---|---|---|
T3 Plus | 低域に厚みのあるウォーム系。柔らかく聴きやすい | 重低音や温かみを重視する人 |
T4 Plus | 明瞭で分析的。中高域の抜けが良い | モニターライクな音を好む人 |
T5s | 弱V字で全体のバランスが整っている。疲れにくく万能 | ナチュラルで上品な音を求める人 |
このように、「T5s」はシリーズ中で最もニュートラルで、「長く付き合える音」に仕上がっています。
メリット・デメリットまとめ
メリット
- 自然な音の広がりと定位感で、どんなジャンルも聴きやすい
- ボーカルの表現が美しく、声の厚みと透明感を両立
- メタルボディながら軽量で、装着感が非常に良い
- リケーブル対応で拡張性が高く、音のカスタマイズが可能
- 同価格帯ではトップクラスの質感とバランス性能
デメリット
- 超重低音を求めるリスナーには控えめに感じる場合がある
- 音のキャラクターが穏やかで、“派手さ”を期待すると物足りない
- 付属イヤーピースの種類がやや少ない(交換前提に感じる)
TinHiFi 「T5S」レビューの総括
TinHiFi 「T5s」は、ブランドが積み重ねてきた技術と哲学を感じさせる“成熟した完成系”といえるイヤホンです。
派手な演出や強い個性で勝負するモデルではありませんが、音楽を丁寧に、そして自然に描き出す力を持っています。
アルミ筐体の精密な造形や軽快な装着感、そして解像度と聴きやすさを両立した音作りは、まさに「使うたびに信頼が深まるイヤホン」という印象です。
低域のタイトさ、中域の透明感、高域の滑らかさが絶妙に調和し、ボーカルから楽器までが心地よく浮かび上がるサウンドは、聴くたびに新しい発見があります。
さらに、リケーブルやイヤーピース交換で表情を変える柔軟性もあり、長く使いながら自分好みに育てていけるのも魅力です。
シリーズの中でも最もバランスに優れた位置づけにあり、「T3 Plus」や「T4 Plus」のような強いキャラクターを持たずとも、安定した完成度で“日常に寄り添う音”を提供してくれます。
価格以上の質感と音の洗練度を兼ね備え、初めての中華イヤホンとしても、2本目のステップアップ機としても満足できるモデルでしょう。
音楽をより自然に、そして長く楽しみたい人にとって、TinHiFi 「T5s」はまさに“信頼と安定の基準”となる存在です。
静かに心を満たすイヤホン──TinHiFi 「T5s」は、日常に寄り添いながら音楽の美しさを確かに伝えてくれる一台です。
