Marshall(マーシャル)のアンプがステージに並ぶ光景。
それはロックファンの原風景であり、反骨精神の象徴です。
その魂を継承し、現代のライフスタイルに溶け込ませるMarshallのヘッドホンシリーズから、約4年ぶりとなるフラッグシップモデル「Monitor III A.N.C.」が登場しました。
前作「Monitor II A.N.C.」から長い沈黙を破ってリリースされた本作。
多くのファンが抱く期待と不安は明確です。
「デザインは最高だけど、機能は他社ハイエンドに劣るのでは?」
「54,980円という強気の価格に見合う価値はあるのか?」
「人気モデルMajor Vと比べて、わざわざ高い方を買う意味はあるのか?」
結論から申し上げましょう。
このヘッドホンは「スペック競争から解脱した、感性で選ぶべき最高傑作」です。
もちろん、カタログスペックが低いわけではありません。
ANC(アクティブノイズキャンセリング)やバッテリー性能は、業界の常識を覆すほどの進化を遂げています。
しかし、それ以上に「音楽を聴く体験」そのものを、ファッションやライフスタイルを含めた「文化」として昇華させている点が、他社製品とは決定的に異なります。
SONYやBoseが「静寂と機能の頂点」を目指す優等生なら、Marshallは「衝動と快楽の極致」を目指すカリスマです。
この記事では、WEBライターとして多くのオーディオ機器に触れてきた私が、Marshall Monitor III A.N.C.を自腹で購入し、1週間徹底的に使い込んだ記録を余すことなくお伝えします。
音質や機能の数値的な検証はもちろん、実際の通勤やカフェ作業での使用感、そして所有することで生活がどう変わるのか。
メリットもデメリットも包み隠さずレビューします。
- Marshall 「Monitor III A.N.C.」の概要と進化点
- Marshall 「Monitor III A.N.C.」の音質・ノイズキャンセリング性能の徹底分析
- Marshall 「Monitor III A.N.C.」の操作性・機能面の検証
- Marshall 「Monitor III A.N.C.」を使用した私の体験談・レビュー
- Marshall 「Monitor III A.N.C.」に関するQ&A
- 動画視聴やゲームでの遅延(音ズレ)は気になりますか?
- バッテリーが切れた状態でも、有線ヘッドホンとして使えますか?
- 下位モデルの「Major V」にあるワイヤレス充電には対応していますか?
- 夏場の使用は暑いですか?蒸れますか?
- 音漏れはどのくらいしますか?
- マルチポイント接続で、スマホとPCの音を同時に流せますか?
- 海外旅行の飛行機内で使えますか?
- Androidユーザーですが、aptXやLDACなどの高音質コーデックには対応していますか?
- 専用アプリ「Marshall Bluetooth」を入れないと使えませんか?
- USB-CケーブルでスマホやPCと繋いで音楽を聴けますか?
- 旧モデル「Monitor II A.N.C.」を持っていますが、買い替える価値はありますか?
- 防水機能はありますか?雨の日でも使えますか?
- ヘッドホンを外すと音楽が勝手に止まる機能はありますか?
- Marshall 「Monitor III A.N.C.」レビューのまとめ
Marshall 「Monitor III A.N.C.」の概要と進化点

Monitor III A.N.C.は、Marshallのヘッドホンラインナップにおける最上位モデル(オーバーイヤー型)です。
カジュアルなオンイヤー型の「Major」シリーズとは異なり、耳を完全に覆うことで高い遮音性と没入感を提供します。
まずは、この製品が前作や下位モデルとどう違うのか、その立ち位置とハードウェアとしての進化を明確にします。
前作「Monitor II」および「Major V」とのスペック比較
進化の度合いを一目で理解するために、主要なスペックを比較表にまとめました。
数字を見るだけで、今回のモデルチェンジがいかに「本気」であるかが分かります。
| 特徴 | Monitor III A.N.C. (最新) | Monitor II A.N.C. (前作) | Major V (オンイヤー型) |
| 形状 | オーバーイヤー(耳を覆う) | オーバーイヤー(耳を覆う) | オンイヤー(耳に乗せる) |
| 価格(税込) | 約 ¥54,980 | 約 ¥42,980 | 約 ¥22,980 |
| 再生時間(ANC ON) | 最大70時間 | 最大30時間 | – |
| 再生時間(ANC OFF) | 最大100時間 | 最大45時間 | 最大100時間 |
| ドライバー | 32mm ダイナミック | 40mm ダイナミック | 40mm ダイナミック |
| 重量 | 約250g | 約320g | 約186g |
| Bluetooth | Ver 5.3 (LE Audio対応予定) | Ver 5.0 | Ver 5.3 |
| 対応コーデック | SBC, AAC, LC3 | SBC | SBC, AAC, LC3 |
| 空間オーディオ | 対応 (サウンドステージ) | 非対応 | 非対応 |
注目の進化ポイントは以下の3点です:
- バッテリー性能の倍増:
ANCオン時でも70時間という、業界トップクラスのスタミナを実現しました。
前作の倍以上であり、他社のフラッグシップ機(多くは24〜30時間程度)を大きく引き離しています。 - 大幅な軽量化:
前作から約70gもの軽量化に成功し、250gを切りました。
オーバーイヤー型でこの軽さは驚異的です。長時間のリスニングにおいて、首や肩への負担が激減しています。 - コーデックの進化(AAC対応):
前作はSBCのみでしたが、待望のAACに対応。iPhoneユーザーもより高音質かつ低遅延で楽しめるようになりました。
さらに次世代規格LE Audio(LC3)にも対応予定で、将来性も確保されています。
所有欲を刺激するハードケースと付属品の質感
開封した瞬間、思わず息を呑むのがそのパッケージングと付属品のクオリティです。
5万円クラスの製品として、ユーザーに「買ってよかった」と思わせる演出が徹底されています。
まず目を引くのがプレミアムハードケースです。
ギターケースを彷彿とさせるシボ加工が施された黒い外装は、タフでありながらエレガント。
そしてジッパーを開けると、内側には真紅のベロア素材が敷き詰められています。
これは単なる収納袋ではありません。まるで高級なヴィンテージギターをケースに収める時のような高揚感を与えてくれます。
内側にはケーブル類を収納するポケットもあり、蓋を開けた瞬間の「Marshallレッド」の鮮やかさは、所有欲を強烈に満たしてくれます。
本体の折りたたみ機構も優秀です。
オーバーイヤー型でありながら、ハウジングを内側に巻き込むことで驚くほどコンパクトになります。
ケース自体も非常にスリムで、カバンの中でスペースを圧迫しません。
多くのハイエンドヘッドホンが「折りたたみ不可(SONY WH-1000XM5など)」や「ケースがかさばる」傾向にある中、この携帯性の高さは強力な武器です。
驚異の100時間再生バッテリーと充電仕様
「充電? いつしたっけ?」
そう言いたくなるほどのバッテリー持ちです。
このスタミナは、日々のストレスを劇的に軽減します。
- ANCオンで70時間:
例えば、片道1時間の通勤で毎日使ったとしても、往復2時間×30日=60時間。
つまり、1ヶ月間一度も充電せずに使い続けられる計算です。これは革命的です。 - ANCオフで100時間:
下位モデルMajor Vと同等のスタミナを、消費電力の大きいノイズキャンセリング搭載機で実現したのは技術的な快挙と言えます。
また、万が一バッテリーが切れても安心の急速充電に対応しており、15分の充電で約12時間の再生が可能です。
朝、出かける直前にバッテリー切れに気づいても、歯を磨いて着替えている間に1日分の電力は余裕で確保できます。
さらに、アプリには「バッテリー保護機能(Battery Preservation)」が搭載されています。
- 80%充電制限:
過充電を防ぎ、バッテリー寿命を延ばす。 - 充電速度制限:
熱による劣化を防ぐ。といった設定が可能です。
70時間も持つため、普段は80%制限(実質56時間使用可能)にしておき、海外旅行の時だけ100%開放する、といった賢い運用が可能です。
製品を長く愛用してほしいというメーカーの配慮が感じられます。
Marshall 「Monitor III A.N.C.」の音質・ノイズキャンセリング性能の徹底分析

「Marshallは低音だけのドンシャリでしょ?」というイメージは、過去のものです。
Monitor III A.N.C.は、より現代的で洗練されたサウンドに仕上がっています。
ここでは、音質の詳細とANCの実力を深掘りします。
Marshallシグネチャーサウンド:ジャンル別相性診断
ドライバーユニットは前作の40mmから32mmへと小型化されましたが、音の迫力は全く衰えていません。
むしろ、ダイナミックレンジと解像度が向上しています。私が様々なジャンルの曲を聴き比べた結果を、5段階評価でレビューします。
① ロック・パンク(相性:★★★★★ 5.0) 試聴曲:Green Day, AC/DC, Måneskin
言わずもがな、最高の相性です。
バスドラムの「ドスン」という重みが、頭の中心ではなく少し低い位置から響き渡り、スネアドラムの抜けの良さがテンションを底上げします。
特筆すべきはエレキギターの歪み(ディストーション)の粒立ちです。
他社の優等生なヘッドホンが「綺麗に整頓されたロック」を鳴らすのに対し、Monitor IIIは「アンプの目の前で聴いているような熱気」をそのまま鼓膜に届けてくれます。
② ジャズ・ブルース(相性:★★★★☆ 4.5) 試聴曲:Miles Davis, Norah Jones
意外なほどにハマります。
ウッドベースの弦が指板に当たる音や、サックスのかすれたブレス音など、アナログな質感の表現力が非常に高いです。
ハイレゾ的な「分析する音」ではなく、雰囲気を楽しむ「浸る音」です。
③ EDM・ヒップホップ(相性:★★★★☆ 4.0) 試聴曲:Billie Eilish, Zedd
低音の量感は十分ですが、BeatsやBoseのような「脳を揺らすような超重低音(サブベース)」を期待すると、少しドライに感じるかもしれません。
しかし、低音がブーミーに膨らみすぎないため、高速なBPMの曲でもビートがもたつかず、キレよく聴くことができます。
ボーカルが埋もれないため、リリック(歌詞)を重視するリスナーには好適です。
④ クラシック・オーケストラ(相性:★★★☆☆ 3.0) 試聴曲:ベートーヴェン交響曲
決して悪くはありませんが、このジャンルに関しては、Sennheiserのような「音場の広さと繊細な高域」を得意とするメーカーに軍配が上がります。
Monitor IIIは音が比較的近くで鳴る傾向があるため、フルオーケストラの壮大なスケール感を表現するには少し「元気」すぎます。
新機能「空間オーディオ(サウンドステージ)」の実力
アプリで設定可能な新機能「サウンドステージ」は、単なるギミックではありません。
- 自然な広がり:
他社の空間オーディオ機能の中には、お風呂場で聴いているような不自然なリバーブ(反響音)が混じるものもありますが、Monitor IIIのそれは非常に自然です。 - ライブハウス感の演出:
設定を強めると、まるで小規模なライブハウスの最前列にいるかのような臨場感が生まれます。
音源が頭の中から少し外へ広がり、各楽器の定位が明確になります。
特に古いジャズやライブ音源を聴く際にONにすると、その場にタイムスリップしたような没入感が味わえます。
ノイズキャンセリング強度と外音取り込みの自然さ
価格帯が近いSONY WH-1000XM5やBose QC Ultraと比較すると、ANCの「静寂の深さ」自体は一歩譲るのが正直なところです。
しかし、実用性は十分に高いレベルです。
- ANCの効き具合:
「低周波ノイズ」のカットが得意です。
電車の走行音、飛行機のエンジン音、エアコンの稼働音などは驚くほどきれいに消え去ります。
一方で、人の話し声や高音の金属音は完全には消えず、うっすらと聞こえます。
これは「圧迫感の少ない自然な静寂」とも言え、長時間着けていてもANC特有の耳詰まり感(ツンとする感じ)が少ないのがメリットです。 - トランスペアレンシー(外音取り込み):
これが非常に優秀です。
マイクで拾ったようなデジタル臭さが少なく、ヘッドホンをしていないかのような自然な感覚で周囲の音を聞くことができます。
レジでの会計時や、駅のアナウンスを聞きたい時に、ボタン一つで瞬時に切り替えられるレスポンスの良さも特筆ものです。
Marshall 「Monitor III A.N.C.」の操作性・機能面の検証

毎日使う道具だからこそ、使い勝手は音質以上に重要です。
Marshall独自の操作系は、一度慣れると他には戻れない魅力があります。
コントロールノブと「Mボタン」のカスタマイズ性
Marshallヘッドホンのアイデンティティとも言えるのが、右側のハウジングにある金色の「マルチディレクショナルコントロールノブ」です。
ジョイスティックのように上下左右に倒す・押し込むという動作だけで、再生/停止、曲送り/戻し、音量調整、電源操作、通話応対の全てが行えます。
最近のハイエンド機はタッチセンサー式が主流ですが、誤操作が起きやすく、冬場に手袋をしていると反応しないこともしばしば。
物理ボタンであるこのノブは、確実なクリック感があり、ポケットに手を入れたままでも直感的に操作できます。
また、左側のヒンジ部分に追加された「Mボタン」も便利です。
アプリ経由で以下の機能を割り当てられます。
- Spotify Tap: ワンプッシュでSpotifyのお気に入りを再生。
- EQ切り替え: プリセットしたイコライザー(例えば「Marshall標準」と「Bass Boost」)を瞬時に変更。
- 音声アシスタント: SiriやGoogleアシスタントの呼び出し。
私は「EQ切り替え」に設定し、曲によって低音重視とボーカル重視を切り替えて楽しんでいます。
Bluetooth接続の安定性と遅延(動画・ゲーム)
接続安定性はBluetooth 5.3のおかげで非常に高く、満員電車や渋谷のスクランブル交差点でも途切れにくいです。
気になる遅延(レイテンシー)についても検証しました。
- 動画視聴(YouTube/Netflixなど):
全く問題ありません。
アプリ側の補正機能が働くため、口の動きと声のズレ(リップシンク)は感じません。
映画やドラマも快適に楽しめます。 - ゲーム(音ゲー・FPS):
ここには注意が必要です。
SBC/AAC接続時は約200ms〜程度の遅延があるため、射撃ボタンを押してから発砲音が聞こえるまでにわずかなラグを感じます。
タイミングがシビアな音ゲーや、一瞬の反応が勝敗を分けるFPS(Apex Legendsなど)には向きません。
RPGやパズルゲームなら問題ないレベルです。
※今後、LE Audio対応機器との接続で改善される可能性がありますが、現状ガチゲーマーは有線接続を推奨します。
マルチポイント接続の挙動とテレワーク性能
2台のデバイスに同時接続できる「マルチポイント」に対応しています。
これがビジネスシーンで非常に役立ちます。
- 切り替えの挙動:
PCでWEB会議中にスマホに着信があると、自動で切り替わる……というわけではありません。
Marshallの仕様は「割り込み再生不可」です。
一方のデバイスで再生を停止してからでないと、もう一方のデバイスの音は流れません。
一見不便に思えますが、会議中に誤ってスマホの動画が大音量で流れる事故を防げるため、仕事用としてはむしろ安心な仕様です。 - マイク性能と風切り音対策:
強風の屋外で通話テストを行いましたが、ANCが「自分の耳への風切り音」をカットしてくれるため、相手の声がクリアに聞こえます。
マイク自体も指向性が高く、周囲の雑音を抑えて声を届けてくれます。
見た目はロックですが、テレワーク用のヘッドセットとしても一級品です。
Marshall 「Monitor III A.N.C.」を使用した私の体験談・レビュー

ここからは、私が実際にMarshall Monitor III A.N.C.を1週間徹底的に使い倒した体験談をお届けします。
スペック表には載っていない「感情の動き」をお伝えできればと思います。
開封の瞬間:高級感あふれるレザー調デザインの衝撃
箱を開けた瞬間、まず鼻をくすぐったのは新しい革製品のような香り(実際は高品質なヴィーガンレザーですが、質感は本物そのものです)。
手にした時の「しっとり」とした触り心地、ハウジングのシボ加工の凹凸、そして鈍く光るゴールドのロゴ。
これまでのガジェット的なプラスチック製のヘッドホンとは一線を画す、「ファッションアイテム」としての強烈なオーラが漂っていました。
部屋のデスクに無造作に置いても、それだけでインテリアとして成立するデザインです。
装着感テスト:メガネ着用で3時間連続リスニング
私は普段メガネをかけているため、ヘッドホンの側圧(締め付け)には敏感です。
Monitor III A.N.C.のイヤーパッドは、高級食パンのように驚くほど柔らかく、モチモチとしています。
- 側圧の強さ: 強すぎず弱すぎず、絶妙なホールド感です。
- 3時間耐久テスト: カフェで3時間ぶっ通しで執筆作業をしましたが、メガネのツルが押し付けられて痛くなることはありませんでした。前作よりも大幅に軽量化されたおかげで、首への負担も激減しています。
- 熱こもりについて: 密閉型の宿命として、長時間着けていると耳周りは温かくなります。冬場はイヤーマフ代わりになり最高ですが、真夏の屋外使用は汗をかくことを覚悟した方が良いでしょう。
通勤電車とカフェ作業でANCの実用性をチェック
地下鉄での移動中、ANCをオンにしました。
「ゴーッ」という轟音が「サーッ」という微かな音に変わり、音楽のボリュームを上げなくても歌詞がはっきりと聞き取れます。
耳を守るという意味でもANCの効果は絶大です。
特に感動したのは、カフェでの作業中です。
隣の席の話し声は完全には消えませんが、「意味のある言葉」から「背景音」へと変わる感覚。
集中力を削がれることなく、自分の世界に入り込むことができました。
店員さんに声をかけられた時は、物理ボタン一発で外音取り込みモードに切り替え、スムーズに注文完了。
このシームレスな使い心地が最高です。
ライブ音源を聴いた時の「音場」の広がりと没入感
ある夜、部屋を暗くして、お気に入りのロックバンドのライブアルバムを聴きました。
「サウンドステージ」機能をオンにして。
これがもう、鳥肌モノでした。
観客の歓声が左右に広がり、ギターのアンプがそこにあるかのような空気感。
ボーカルの汗まで感じるようなリアリティ。目を閉じれば、そこはライブハウスの最前列です。
ただ音楽を聴くだけでなく「演奏を体験する」喜びに浸れました。
このヘッドホンは、綺麗に聴かせることよりも、「熱量」を伝えることに特化していると感じました。
ファッションアイテムとしての「見られ方」と満足度
ヘッドホンを首にかけて街を歩いてみました。
ショーウィンドウに映る自分を見た時、Monitor III A.N.C.が単なる機械ではなく、コーディネートの一部として機能していることに気づきます。
古着、レザージャケット、あるいはシンプルな白Tシャツとデニム。どんなスタイルにも馴染みつつ、少しだけ「こだわり」を主張してくれる。
「いい音を聴いている」という満足感に加え、「いいモノを身につけている」という自己肯定感を高めてくれる稀有なヘッドホンです。
体験談の総括:単なるヘッドホンを超えた「相棒」
1週間使ってみて感じたのは、「毎日持ち出したくなる」という事実です。
どれだけ音が良くても、大きすぎて荷物になったり、充電がすぐ切れたりすれば、次第に持ち出すのが億劫になり家専用になります。
しかし、Monitor III A.N.C.はコンパクトに折りたためて、デザインも最高。バッテリー切れの心配もなく、いつでもどこでも上質な音楽と静寂を提供してくれる。
これは単なるオーディオ機器ではなく、生活の質を上げる「相棒」だと確信しました。
Marshall 「Monitor III A.N.C.」に関するQ&A

Marshall 「Monitor III A.N.C.」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
動画視聴やゲームでの遅延(音ズレ)は気になりますか?
YouTubeなどの動画視聴は快適ですが、FPSゲームには向きません。
YouTube、Netflix、Prime Videoなどの動画アプリでは、自動的に遅延補正がかかるため、口の動きと声がズレる(リップシンクずれ)ことはほとんどありません。違和感なく視聴できます。 一方で、音ゲーやFPS(Apex LegendsやVALORANTなど)では、ボタンを押してから音が鳴るまでにコンマ数秒のラグを感じます。シビアなタイミングが求められるゲームをする際は、付属のケーブルを使った「有線接続」を強くおすすめします。
バッテリーが切れた状態でも、有線ヘッドホンとして使えますか?
はい、使用可能です。ただし、電源ONでの使用を推奨します。
バッテリー残量がゼロになっても、付属の「USB-C to 3.5mmオーディオケーブル」を繋げば、普通の有線ヘッドホンとして音は出ます。 ただし、Monitor III A.N.C.は内蔵のアンプとDSP(デジタル信号処理)を通すことでMarshallらしい最適なサウンドになるようチューニングされています。電源OFF(パッシブモード)だと、音が少し篭ったり、迫力が減退したりする印象があります。有線接続時であっても、バッテリーが残っているなら電源をONにして使うのがベストです。
下位モデルの「Major V」にあるワイヤレス充電には対応していますか?
いいえ、Monitor III A.N.C.はワイヤレス充電(Qi)非対応です。
これは意外な落とし穴かもしれません。オンイヤー型のMajor Vはハウジングを置いてワイヤレス充電ができますが、フラッグシップのMonitor III A.N.C.はUSB-Cケーブルによる充電のみです。 とはいえ、1度充電すれば70〜100時間持つため、充電頻度自体が月に数回程度です。ケーブルを挿す手間はそこまで気にならないでしょう。
夏場の使用は暑いですか?蒸れますか?
正直に申し上げますと、真夏の屋外使用は暑いです。
イヤーパッドには肌触りの良いヴィーガンレザーが採用されていますが、通気性の高いメッシュ素材などではないため、日本の高温多湿な夏場に長時間着けると蒸れます。 逆に、春・秋・冬の3シーズンにおいては、耳を優しく包み込むため、保温性のあるイヤーマフとしても非常に快適です。
音漏れはどのくらいしますか?
遮音性は非常に高く、常識的な音量なら音漏れの心配はありません。
オンイヤー型のMajorシリーズは耳に乗せるだけなので音漏れしやすい傾向がありましたが、Monitor III A.N.C.は耳をすっぽり覆うオーバーイヤー型かつ密閉型です。 静かな図書館やオフィスで大音量ロックを流せば多少は漏れますが、通勤電車やカフェレベルの騒音下であれば、周囲に迷惑をかけることはまずありません。
マルチポイント接続で、スマホとPCの音を同時に流せますか?
いいえ、同時再生(ミックス)はできません。
2台のデバイスに同時接続待機はできますが、音が出るのは「どちらか一方」です。 例えば、PCで音楽を聴いている最中にスマホで動画を再生しても、PC側の音楽を停止しない限り、スマホの音は流れません(割り込み再生不可)。これは、意図しない音が会議中に流れるのを防ぐという意味で、ビジネス用途としては安全な仕様と言えます。
海外旅行の飛行機内で使えますか?
最高のトラベルパートナーになります。
強力なノイズキャンセリング機能がジェットエンジンの轟音を低減してくれるため、機内での睡眠や映画鑑賞が劇的に快適になります。また、有線ケーブルが付属しているため、機内エンターテインメントシステム(座席のモニター)にも接続可能です(※航空機用変換アダプタが必要な機体の場合は、別途100円ショップ等でご用意ください)。
Androidユーザーですが、aptXやLDACなどの高音質コーデックには対応していますか?
いいえ、aptX系やLDACには非対応です。
対応コーデックは「SBC」「AAC」そして次世代規格の「LC3 (LE Audio)」です。 SONYのLDACのようなハイレゾ相当の伝送はできませんが、iPhoneユーザー(AAC)にとっては最適解です。Androidユーザーの場合、aptXがないことを懸念されるかもしれませんが、最新のBluetooth 5.3とドライバーのチューニングが優れているため、聴感上の音質不足を感じることはまずありません。
専用アプリ「Marshall Bluetooth」を入れないと使えませんか?
アプリなしでも音楽は聴けますが、インストールの強く推奨します。
箱から出してBluetooth接続するだけでも音楽再生やANCのON/OFFは可能です。 しかし、アプリがないと以下の重要な機能が使えません。
- ファームウェアアップデート(不具合修正や機能向上)
- Mボタンの機能割り当て(Spotify TapやEQ切り替え)
- 5バンド・イコライザーのカスタム設定
- バッテリー保護設定のON/OFF 特に「Marshallの音」を100%楽しむためのイコライザー調整や、製品寿命を延ばすバッテリー保護機能は必須レベルですので、購入後は即座にインストールしてください。
USB-CケーブルでスマホやPCと繋いで音楽を聴けますか?
はい、「USB-Cオーディオ」に対応しています。
付属の充電用USB-Cケーブル(またはデータ通信可能な市販のC to Cケーブル)を使用して、スマートフォン(iPhone 15以降やAndroid)やPCに接続すると、有線ヘッドホンとしてデジタル接続で音楽を再生できます。 Bluetoothのような圧縮がないため、より高音質で楽しむことができ、さらに音楽を聴きながらヘッドホンの充電も同時に行えるため、バッテリー残量が少ない時の裏技として重宝します。
旧モデル「Monitor II A.N.C.」を持っていますが、買い替える価値はありますか?
「重さ」と「バッテリー」に不満があるなら、間違いなく買い替える価値があります。
音質に関しては、旧モデルも十分に素晴らしいですが、Monitor IIIは「解像度」と「空間表現」が一歩進化した印象です。 しかし、決定的な違いは「軽さ(約320g→約250g)」と「バッテリー(30時間→70時間)」です。旧モデルは長時間着けていると首が疲れましたが、新作は劇的に軽くなっています。この快適さの向上だけでも、買い換えるメリットは十分にあります。
防水機能はありますか?雨の日でも使えますか?
公式に防水仕様(IP規格)は公表されていないため、水濡れ厳禁と考えた方が無難です。
下位モデルのMajor Vなど一部製品はIP対応していますが、Monitor III A.N.C.はプレミアムな素材を使用していることもあり、防水性は謳われていません。 小雨程度なら傘をさして使用すれば問題ないことが多いですが、イヤーパッドやヘッドバンド内部への浸水を防ぐため、激しい雨の日や運動(大量の汗)での使用は避けた方が製品を長く愛用できます。
ヘッドホンを外すと音楽が勝手に止まる機能はありますか?
はい、「着脱検知センサー」を搭載しています。
ヘッドホンを耳から外すと音楽が自動で一時停止し、再び装着すると再生が再開されます。 これは非常に便利な機能ですが、首にかけている時にセンサーが誤反応してしまう場合もあります。その際は、専用アプリの設定からこの機能をOFFにすることも可能です。ユーザーの好みに合わせて挙動を選べるのが嬉しいポイントです。
Marshall 「Monitor III A.N.C.」レビューのまとめ

最後に、この製品の総評と、他社製品との比較、そしてどんな人におすすめできるかをまとめます。
このモデルを選ぶ最大のメリット
- 唯一無二のデザイン: 持っているだけで気分が上がる質感とルックス。他と被らない個性。
- 驚異のバッテリー: ANCオン70時間、オフ100時間は生活スタイルを変えるレベルの快適さ。
- エモーショナルな音質: ロックの初期衝動を呼び覚ます、熱気のあるMarshallサウンド。
- 高い携帯性: オーバーイヤー型とは思えないコンパクトさと、豪華な付属ケース。
購入前に知っておくべきデメリットと注意点
- 価格: 約55,000円は決して安くありません。コスパ重視なら他の選択肢もあります。
- ゲーム用途: 遅延があるため、本格的なFPS/TPSゲームには向きません。
- イヤーパッド交換: 公式には容易に交換可能な構造(ひねるだけ)ですが、交換パーツの供給状況は要確認です。
Marshall Major V と迷っている方へのアドバイス
- Major V (オンイヤー) がおすすめな人:
- 予算を2万円台に抑えたい。
- もっと手軽に、カジュアルに使いたい。
- 耳に乗せるタイプの軽い装着感が好き。
- Monitor III A.N.C. (オーバーイヤー) がおすすめな人:
- ノイズキャンセリング機能が必須。(電車やカフェで使いたい)
- 長時間の使用でも耳が痛くならない装着感が欲しい。
- より広い音場と、リッチな低音を楽しみたい。
- 妥協のない高級感が欲しい。
他社ハイエンド機との徹底比較
| 比較項目 | Marshall Monitor III A.N.C. | SONY WH-1000XM5 | Bose QC Ultra | Sennheiser MOMENTUM 4 |
| 実勢価格 | 約 ¥54,980 | 約 ¥59,400 | 約 ¥59,400 | 約 ¥54,800 |
| 音質の傾向 | ロック・生々しさ | バランス・高解像度 | 重低音・映画的 | 繊細・広大な音場 |
| ANC性能 | 実用レベル (B+) | 業界最高峰 (S) | 業界最高峰 (S) | 優秀 (A) |
| バッテリー | 最大100時間 (S) | 最大30時間 (C) | 最大24時間 (C) | 最大60時間 (A) |
| デザイン | レトロモダン (個性) | シンプル・ミニマル | モダン・スポーティ | シック・ファブリック |
| 携帯性 | 折りたたみ可 (最小) | 折りたたみ不可 | 折りたたみ可 | 折りたたみ不可 |
【結論】
- SONY/Bose: 「無音」を何よりも重視する人、機能オタク向け。
- Sennheiser: クラシックを聴く人、音場重視の人向け。
- Marshall: 「音楽を楽しむ心」と「スタイル」を重視する人、充電が面倒な人向け。
おすすめできるユーザー・できないユーザー
【おすすめできる人】
- ロック、ポップス、ジャズを好んで聴く人。
- ファッションやインテリアにこだわりがある人。
- 充電の手間を極限まで減らしたいズボラな人(私を含め)。
- 「人と同じヘッドホンは嫌だ」という個性派。
【おすすめできない人】
- クラシック音楽の微細なニュアンスをモニターライクに分析したい人。
- 世界最強のノイズキャンセリング性能を求めている人。
- 競技性の高いゲーム用ヘッドセットを探している人。
Marshall 「Monitor III A.N.C.」レビューの結論:音楽とスタイルを愛する大人への最適解
Marshall Monitor III A.N.C.は、単なる音楽再生機器という枠を超え、所有者のライフスタイルそのものを豊かに彩る特別なプロダクトです。
業界最高峰のバッテリー性能や実用的なノイズキャンセリング機能を備えつつも、このヘッドホンの真価は、スペック表の数値競争から一線を画した「感性への訴求力」にあります。
静寂や機能性だけを追求するのではなく、音楽を聴く歓びや、身につけることの高揚感を何よりも大切にする人々にとって、これほど満たされた気持ちにさせてくれる選択肢は他にありません。
5万円を超える価格設定は決して安価ではありませんが、手にした瞬間に伝わる質感、折りたたんでどこへでも連れ出せる携帯性、そして日常の風景をライブ会場のような熱気で塗り替えるサウンドは、その価格以上の体験をもたらしてくれます。
機能だけで選べば他にも正解はあるかもしれませんが、心まで震わせる「相棒」としての魅力を求めるならば、このヘッドホンこそが唯一無二の正解となるはずです。
さあ、退屈な日常にロックな魂を宿し、Marshallと共に新しい景色の中へ一歩踏み出しましょう。


