LETSHUOERは、中国発のオーディオブランドの中でも独自の技術力と価格設計の巧みさで注目を集める存在です。
その中でも「S12」シリーズは、平面駆動型イヤホンを一気に身近な価格帯に引き下げたことで、イヤホン業界に新しい潮流を生み出しました。
従来、平面駆動型は高価で専門的なモデルが中心でしたが、「S12」は約2万円という手に届く価格でその精密な音を体験できるという点で、多くのオーディオファンを驚かせました。
初代「S12」の登場から数年、シリーズは「S12 Pro」、「S12 2024」と着実に進化を重ね、ユーザーからの評価を高めてきました。
そして今回登場した「S12 Ultra」は、これまでの経験とノウハウを凝縮した集大成的モデルとして位置付けられています。
ドライバー自体のサイズは従来と同じ14.8mmながら、内部構造の改良によって音の密度や立体感、そして全体のバランスが大幅に向上。
S12シリーズらしいキレと明瞭さを保ちながらも、長時間聴いても疲れにくい柔らかさを備えたサウンドへと仕上げられています。
また、「S12 Ultra」の魅力は音質面だけに留まりません。
Type-C接続のDACケーブル「DT01 Pro」が付属し、スマートフォンに直接接続しても高品位なサウンドを再生できるようになりました。
これにより、従来の平面駆動イヤホンにありがちだった「鳴らしにくさ」という壁を乗り越え、より多くのユーザーが手軽に高音質を楽しめる環境が整えられています。
この記事では、「S12 Ultra」の設計思想や進化の背景、デザインの特徴、そして音のチューニングに込められた意図を丁寧に紐解きながら、その実力を探っていきます。
S12シリーズのファンだけでなく、初めて平面駆動型イヤホンに触れる人にとっても、「S12 Ultra」がどんな存在なのかを理解できるような内容にしていきます。

- LETSHUOER 「S12 Ultra」とは?
- LETSHUOER 「S12 Ultra」のデザインと装着感
- LETSHUOER 「S12 Ultra」の音質レビュー
- LETSHUOER 「S12 Ultra」を使用した私の体験談・レビュー
- LETSHUOER 「S12 Ultra」に関するQ&A
- 「S12 Ultra」は、従来の「S12」や「S12 Pro」とどこが違うのですか?
- スマートフォンだけで十分に鳴らせますか?
- どんなジャンルの音楽と相性が良いですか?
- イヤーピースやケーブルを交換すると音は変わりますか?
- 音質面で「S15」との違いは?
- 長時間聴いても疲れない理由は?
- 「S12 Ultra」はゲームや映画鑑賞にも向いていますか?
- 音量を上げると歪みや刺さりを感じますか?
- 女性ボーカルと男性ボーカル、どちらに向いていますか?
- 音の分離感や定位はどうですか?
- 音場の広さはどの程度ですか?
- 初めて平面駆動イヤホンを購入する人に向いていますか?
- 総合的に見て、「S12 Ultra」はどんな位置づけのイヤホン?
- LETSHUOER 「S12 Ultra」レビューのまとめ
LETSHUOER 「S12 Ultra」とは?

LETSHUOER 「S12 Ultra」は、同ブランドを代表するS12シリーズの最新作であり、これまでのシリーズで培われた設計思想とサウンドチューニングを集約した“完成形”ともいえるモデルです。
初代「S12」で確立した「平面駆動型を手の届く価格で楽しめる」というコンセプトを受け継ぎながら、音質・構造・操作性のすべてが一段と洗練されています。
S12シリーズの進化と背景
「S12」シリーズは2022年に登場して以来、平面駆動型の普及を大きく後押ししてきました。
その流れを簡単に整理すると以下のようになります。
モデル | 特徴 | 音傾向 |
---|---|---|
S12(初代) | 約2万円で平面駆動を実現。硬質で明瞭な音。 | シャープでドライ |
S12 Pro | 初代よりもバランスの取れたサウンド。 | ややフラットで聴きやすい |
S12 2024 | チタン外装・低域を強化した限定モデル。 | マイルドかつ深みのある音 |
S12 Ultra | 内部構造を刷新し、解像度と厚みを両立。 | 柔らかくも芯のあるバランス型 |
「S12 Ultra」は、これまでの「明瞭でソリッドなS12サウンド」に“自然な温かみと余韻”を加えた、現代的な調整が特徴です。
S12シリーズの持ち味である高い解像度や音の分離感はそのままに、より立体的で安定した聴き心地を実現しています。
「S12 Ultra」の新設計と改良点
「S12 Ultra」は、単なるマイナーチェンジではなく、構造・音響の両面で徹底的なチューニングが施されています。
- アルミ合金シェル採用
軽量ながら高剛性を持つアルミ合金を使用。耐久性が高く、質感も上質に仕上がっています。
カラーは「モカ」と「グレー」の2色展開で、どちらも落ち着いた印象です。 - 内部構造の安定化
同じ14.8mm平面駆動ドライバーを採用しつつ、製造誤差を抑えた精密なチューニングを実現。
音の密度・定位の正確さが向上しています。 - 音響チューニングの再設計
低域は従来よりも量感が増し、中域は厚みと温かみを持たせ、高域は刺さりを抑えて自然な伸びを確保。
その結果、全体的にバランスの取れた“立体的な音場”を形成します。 - ケーブルとプラグの刷新
392芯の銀メッキ銅ケーブルを採用し、伝導性と耐干渉性能が向上。
プラグは3.5mm・4.4mmの交換式で、4ピン+ねじ固定構造により安定感が抜群です。 - DT01 Pro DACケーブルを同梱
Type-C端子対応のDACケーブルを標準で付属。スマートフォンでも高音質再生が可能になり、平面駆動型の“鳴らしにくさ”を解消しています。
価格と付属品のバランス
「S12 Ultra」は、性能とコストのバランスにも優れています。
定価は約27,500円前後で、同梱品の内容を考えると非常にコストパフォーマンスが高いモデルです。
主な付属品一覧:
付属品 | 内容・特徴 |
---|---|
ケーブル | 392芯銀メッキ銅ケーブル(交換式プラグ対応) |
プラグ | 3.5mm/4.4mmの2種類を付属 |
DACケーブル | Type-C対応「DT01 Pro」同梱(約3,000円相当) |
イヤーピース | ソフトタイプ・ハードタイプの2種、各サイズ |
収納ケース | 開閉式で保管向きのデザイン |
平面駆動型イヤホンでは「駆動力を確保するためにアンプが必要」という問題がつきものでしたが、「S12 Ultra」では付属のDACケーブルにより、スマートフォンでも十分に性能を発揮します。
これにより、購入してすぐに高音質を楽しめる“オールインワン仕様”となっています。
LETSHUOER 「S12 Ultra」は、初代「S12」の持つ明瞭さと解像度をそのままに、現代的な音作りと高い実用性を加えた完成度の高いモデルです。
アルミ合金の上質な質感、快適な装着感、そしてスマホ直結でも鳴らし切れる利便性。
どの要素を取っても「S12」シリーズの中で最もバランスの取れたイヤホンといえるでしょう。
「シャープで硬質な初代」「フラットで繊細なPro」「低域豊かな2024」それぞれの良さを融合し、“S12らしさの最終形”として仕上がったのが「S12 Ultra」です。
LETSHUOER 「S12 Ultra」のデザインと装着感

LETSHUOER 「S12 Ultra」は、シリーズのアイデンティティを受け継ぎながら、細部の造形と素材の質感を大きく進化させたモデルです。
金属製の筐体ながら軽量で、耳に自然に収まる形状を追求しており、実用性と美しさを高いレベルで両立しています。
アルミ合金シェルの質感とカラー展開
まず目を引くのが、アルミ合金による高精度なシェルデザインです。
表面はサンドブラスト加工が施されており、指紋がつきにくく、長期使用でもくすみが出にくい仕上げになっています。
硬質な素材でありながらも軽量で、片側約5.9gという数値は金属筐体としては驚くほどの軽さです。
カラーはモカとグレーの2色展開。
モカは温かみのあるブロンズ調で、やや個性的な高級感を演出します。
一方のグレーは落ち着いた印象で、ビジネスシーンや外出時にも馴染む汎用的な色合いです。
また、ハウジングは従来モデルよりもわずかに厚みを増し、内部空間の最適化と音響的な余裕を確保。
ベント(空気孔)の配置を調整することで、低域の量感と音の抜けの両立を実現しています。
項目 | 内容 |
---|---|
シェル素材 | アルミ合金 |
重量 | 約5.9g(片側) |
カラー | モカ/グレー |
表面仕上げ | サンドブラスト加工(マット質感) |
構造 | 新設計ベント+金属メッシュノズル |
金属筐体のもつ硬質感はそのままに、手に取ると滑らかな感触と温もりが感じられる、まさに“高級機の仕立て”といえる外観です。
装着感・遮音性・使い勝手
「S12 Ultra」の装着感はシリーズの中でも特に安定しています。
筐体の形状は耳の窪みに沿うように設計されており、圧迫感を抑えつつもしっかりと固定されるバランスが取られています。
耳に引っ掛けて支えるというよりも、「自然に乗るようにフィットする」印象です。
また、密閉性の高いイヤーピースを組み合わせることで、遮音性は十分なレベルを確保。
電車やカフェなどの騒音下でも、音楽に没入できる程度の遮音性能があります。
装着・使い勝手のポイント
- 耳の形に沿う設計で、長時間装着しても痛みや疲れが出にくい。
- イヤーピースで密閉感を調整しやすく、音の変化を楽しめる。
- 通気構造を最適化しており、気圧による違和感が少ない。
- メガネを併用しても干渉が起こりにくい浅めの掛け角。
イヤーピースは2種類(ソフトタイプ/ハードタイプ)が付属し、サイズ違いも揃っています。
音の傾向を微調整したい人は、フォームタイプや厚壁シリコンなど別売品を試すとより最適化が可能です。
遮音性は“密閉感のあるナチュラル”という表現が近く、外音を完全に遮断せず、軽い会話やアナウンス程度はうっすらと聞こえる自然なバランスになっています。
ケーブル・プラグ構造と耐久性
ケーブルは392芯の銀メッキ銅線を採用し、導電性と柔軟性の両立が図られています。
取り回しやすく、衣服に擦れたときのタッチノイズ(マイクロフォニクス)も非常に小さく抑えられています。
プラグ部分には、シリーズ初となる4ピン+ねじ固定式のマルチプラグ構造を採用。
これにより、3.5mm/4.4mmプラグを確実に固定でき、接続の不安定さや抜け落ちのリスクがなくなりました。
項目 | 内容 |
---|---|
ケーブル構造 | 392芯銀メッキ銅(SPC) |
端子 | 2ピン(フラットタイプ) |
プラグ | 3.5mm/4.4mm交換対応(ねじ固定式) |
付属DAC | Type-C「DT01 Pro」付属(スマホ直結可) |
特筆すべきは、付属のDT01 Pro DACケーブルです。
Type-C接続でスマートフォンやPCに直接つなげる仕様で、一般的な内蔵DACでは鳴らし切れない平面駆動型イヤホンの駆動力不足を補います。
これにより、「S12 Ultra」は「ポータブルオーディオとしての完成度」も一段上のレベルに達しています。
さらに、ケーブル分岐部には金属製スライダーが搭載されており、耳掛け部分の長さを微調整可能。
普段使いにも配慮された細やかな設計が印象的です。
「S12 Ultra」のデザインは、一見するとシンプルながら、細部に宿る完成度の高さが際立ちます。
アルミ合金の精密な造形、軽さと強度のバランス、耳に馴染むフォルム、そして扱いやすいケーブル構造。
そのすべてが「日常で使う高音質イヤホン」としての完成度を高めています。
金属シェル特有の質感と装着快適性を両立させた「S12 Ultra」は、単なる派生モデルではなく、デザイン面でもシリーズの到達点と呼べる仕上がりです。
LETSHUOER 「S12 Ultra」の音質レビュー

「S12 Ultra」は、従来のS12シリーズが持つ高い解像度や分離感を受け継ぎながら、より自然で厚みのあるサウンドへと進化したモデルです。
音の立ち上がりや質感、空間表現のすべてにおいて“シリーズの完成形”と呼べる完成度に達しています。
サウンド傾向の全体像
「S12 Ultra」の全体的な印象は、「厚みと明瞭さの共存」です。
初代「S12」のようなシャープで硬質な鳴りをベースにしつつ、低域と中域をやや前に出すことで、より立体感と安定感のある音像を作り出しています。
音場の広がりは過度ではなく、前後方向に適度な奥行きをもつ“ライブハウス的な距離感”が特徴です。
- チューニングバランス:ややウォーム寄りのW字型。低域・中域・高域がそれぞれ存在感を持ちつつ、どの帯域も突出しすぎない。
- 解像感・分離感:平面駆動型らしい精細な描写力は健在。音の輪郭がくっきりしており、特にボーカルの定位が安定。
- 音場の印象:広さよりも定位の精度を重視。前後の奥行きが自然で、楽器や声の配置がわかりやすい。
- リスニングフィール:長時間聴いても疲れにくく、耳への刺激を抑えたナチュラルなチューニング。
項目 | 傾向 | 評価(5点満点) |
---|---|---|
解像感 | 細やかで自然な描写 | 4.5 |
音場の広さ | 奥行き重視の中規模空間 | 4.0 |
分離感 | 各帯域の独立性が高い | 4.6 |
聴きやすさ | 刺さらず滑らか | 4.7 |
音の立ち上がり | やや穏やかで粘りのあるタイプ | 4.2 |
全体としては、初代「S12」の“速さ”と「S15」の“厚み”を中間で融合させたような印象。
どんな楽曲でも自然に馴染むオールラウンダーな仕上がりです。
高域・中域・低域の特徴と変化
「S12 Ultra」の音作りを理解する上で注目すべきは、帯域ごとの緻密な調整です。
それぞれの音域が単独で主張するのではなく、互いに滑らかに繋がるようチューニングされています。
高域:刺さらず、艶やかに伸びる
- 高域は初代「S12」のような鋭さが抑えられ、シンバルやハイハットが自然に伸びる。
- 歯擦音(サ行など)が耳に刺さらず、ボーカルの輪郭をやわらかく包み込む印象。
- 金属シェル特有の硬さを感じさせず、滑らかで明るいトーン。
中域:厚みと近さが増し、ボーカルが映える
- 中域はS12シリーズの中で最も密度が高く、存在感がある。
- 特にボーカル帯域(1~3kHz付近)の押し出しが強く、歌声が一歩前に出てくる。
- ギター、ピアノ、サックスなどの中域楽器の艶が向上し、録音の立体感を引き出す。
低域:沈み込みが深く、厚みのあるベースライン
- 「S12 Ultra」
- 最大の特徴がこの低域。サブベースの沈み込みが深く、重心が低いサウンド。
- 初代「S12」や「S12 Pro」よりも低域の量感が明確に増し、音の“床”が厚くなった印象。
- 一方で、タイトさを完全に失わず、柔らかく包み込むような低音に仕上がっている。
帯域 | キャラクター | 比較(S12 Pro比) |
---|---|---|
高域 | 透明感があり、刺さらない | –1(穏やか) |
中域 | 厚みとボーカルの前進感 | +1(温かみ増) |
低域 | 深く沈み、余韻が豊か | +2(量感強化) |
このように、「S12 Ultra」は全体のトーンバランスを“中低域重心”に移行させながらも、「S12」らしい解像度と明瞭感を失っていません。
その結果、平面駆動型の持ち味を活かしつつも、より万人に聴きやすいサウンドへと進化しています。
得意な音楽ジャンルとリスニングスタイル
「S12 Ultra」は、派手なエフェクト感や極端なチューニングを避けた万能機であり、ジャンルを問わずバランスよく鳴らすことができます。
その中でも特に相性の良いジャンルは以下の通りです。
◎相性の良いジャンル
- ポップス/J-POP:ボーカルを中心に音がまとまり、楽曲のエネルギーを素直に表現。
- シティポップ/R&B:厚みのあるベースと滑らかな高域が融合し、ウォームで心地よい質感。
- ジャズ/アコースティック:中域の艶やかさが際立ち、ピアノやウッドベースの響きが自然。
- ミドルテンポのエレクトロ/ダンス:低域の沈み込みとリズムの立体感がマッチ。
△やや不向きなジャンル
- ハイスピードなEDM/メタル:低域が豊かな分、超高速のトラックではわずかにもたつく印象。
- 超シャープな解像度を求めるリスナー:S12初代の“硬質でストレートなサウンド”を好む人には穏やかすぎる可能性。
リスニングスタイルの特徴
- 小音量でもしっかりと低音が聴こえるため、深夜のリスニングにも適している。
- 中音量以上では音場が自然に広がり、ボーカルと伴奏の位置関係が安定。
- 付属のDT01 Pro DACケーブルを使用すると、低域の締まりと音全体の押し出し感が向上。
リスニング環境 | 推奨傾向 |
---|---|
スマホ直結(付属DAC使用) | バランスの良い低音と滑らかさが出る |
据え置きDAC・DAP | 解像度と定位がさらに向上 |
小音量リスニング | ウォームでリラックスしたトーン |
「S12 Ultra」のサウンドは、シリーズ初期のソリッドな方向性から一歩進み、“厚み・余韻・自然さ”を重視した成熟型チューニングに到達しています。
高域の刺激を抑えながらも空気感はしっかりと残し、ボーカルを中心に音楽全体を心地よく包み込むような鳴り方が印象的です。
ジャンルを選ばず、長時間聴いても疲れにくいイヤホンを探している人にとって、「S12 Ultra」はまさに最適な一台といえるでしょう。
LETSHUOER 「S12 Ultra」を使用した私の体験談・レビュー

「S12 Ultra」を数週間にわたり、通勤や作業中、夜間のリスニングなどさまざまなシーンで使用しました。
平面駆動型特有の繊細な描写力に加え、日常使いでの扱いやすさが印象的で、「実際に生活の中でどう聴こえるか」という観点で完成度の高いイヤホンだと感じました。
使用環境と試聴条件
シーン | 使用機器 | 接続方法 | 音量傾向 | 備考 |
---|---|---|---|---|
通勤・外出 | スマートフォン + 付属「DT01 Pro」DACケーブル | Type-C直結 | 小~中音量 | ノイズの多い環境でも低域の厚みを維持 |
自宅リスニング | ポータブルDAP(4.4mmバランス) | バランス接続 | 中音量 | 解像度と音場の広がりを重視 |
据え置き環境 | USB DAC + ヘッドホンアンプ | 4.4mm変換 | 中~高音量 | 空間表現と細部の再現性を確認 |
試聴の際は、標準のイヤーピース(ソフトタイプ・ハードタイプ)を使い分け、装着の深さによる音の変化も検証しました。
特にハードタイプのイヤピを使うと、低域の輪郭がより引き締まり、音の立体感が増す印象がありました。
装着感と携帯性
装着して最初に感じたのは、金属シェルとは思えない軽さと安定感の高さでした。
耳のくぼみに自然に収まり、長時間の使用でも耳が痛くなりにくい点は好印象です。
また、ケーブルの取り回しが良く、歩行時のタッチノイズもほとんど感じませんでした。
付属のケースはコンパクトで、持ち運びにも適しています。
- 通勤時でも低音がしっかりと残り、音の厚みを損なわない。
- 遮音性は高すぎず、屋外での安全性も確保されている。
- 長時間リスニングしても疲労感が少なく、日常使いに向いている。
ジャンル別の印象
「S12 Ultra」は、音楽ジャンルごとの個性を素直に再現するタイプです。
以下は、実際に聴いたときの印象をまとめたものです。
ジャンル | 音の印象 | 特徴的なポイント |
---|---|---|
ポップス/J-POP | ボーカルが明確で近い。低音の支えが安定し、サビでの盛り上がりが自然。 | 中域の温かさと声の滑らかさが印象的。 |
R&B/シティポップ | リズムの重心が低く、ベースが心地よく響く。 | 柔らかいトーンで夜のリスニングに最適。 |
ジャズ/アコースティック | ピアノやベースの残響が豊か。楽器同士の距離感が自然。 | 空間の奥行きがあり、ライブ感が強い。 |
エレクトロ/ダンスミュージック | キックが深く沈み込み、立体的な広がり。 | タイトではなく包み込むような低音。 |
ロック/メタル | 音の厚みは十分だが、スピード感はやや穏やか。 | 重低音よりも“密度”重視の傾向。 |
ジャンルによって微妙に印象が変わるものの、全体としてはどの音楽も自然にまとめ上げる“バランス型”の音作りです。
特に中低域の密度が高く、ボーカルが中心に据えられる構成は、ポップスやR&Bを中心に聴く人に非常にマッチします。
機器ごとの鳴らし方の違い
「S12 Ultra」は再生環境によってキャラクターが変化するイヤホンです。
スマホでも十分鳴りますが、より高出力な機器と組み合わせると一層深みが出ます。
- スマホ + 付属DACケーブル(DT01 Pro)
→ 全帯域がバランスよく鳴り、低音も十分な量感。外出時のリスニングに最も実用的。 - ポータブルDAP(4.4mm接続)
→ 音の密度と分離が明確になり、ステージ感が広がる。楽器の位置関係が掴みやすい。 - 据え置きDAC/アンプ環境
→ 解像感が一段上がり、ボーカルの息遣いやシンバルの減衰まで自然に再現。
再生環境 | 音の印象 | 推奨度 |
---|---|---|
スマホ + 付属DAC | 十分な駆動力でバランス良好 | ★★★★☆ |
高出力DAP | 音場・分離が向上し、定位が明確 | ★★★★★ |
据え置きアンプ | 音の階調が豊かで臨場感抜群 | ★★★★★ |
使用を通じて感じたこと
- 小音量でも情報量がしっかり伝わる
→ 夜間や作業時など、音量を絞っても音の密度が保たれるため、リラックスしたリスニングに最適。 - 長時間リスニングでも疲れにくい
→ 高域がマイルドで、耳に刺さる成分が少ないため、映画鑑賞や勉強中のBGMにも向いている。 - ジャンルを問わず安定して聴ける万能性
→ ロックでもポップスでも過不足のないチューニングで、音楽をジャンルで選ばず楽しめる。
体験からの総評
「S12 Ultra」は、派手さよりも“心地よさと完成度”を重視したサウンドでした。
初代「S12」が持つキレのある明瞭感に対し、「Ultra」は音全体を包み込むような温かみを加えています。
そのため、長時間聴いても疲れにくく、音楽の雰囲気をじっくり味わえるイヤホンに仕上がっています。
特に印象的だったのは、ボーカルの表現力と低音の質感です。
声が自然に前へ出て、ベースラインが柔らかく支えることで、聴き手の耳を心地よく包み込む。
これは、日常のどんな場面でも“音楽を聴く喜び”を感じさせてくれるバランスです。
結果として、「S12 Ultra」は「平面駆動型を気軽に使いたい人」「解像感と温かみの両立を求める人」にとって最も扱いやすい選択肢だと感じました。
シーンを問わず自然に使える、まさに“日常に寄り添うハイファイイヤホン”という印象です。
LETSHUOER 「S12 Ultra」に関するQ&A

LETSHUOER 「S12 Ultra」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
「S12 Ultra」は、従来の「S12」や「S12 Pro」とどこが違うのですか?
一番の違いはチューニングと内部構造の改良です。ドライバー径(14.8mm)は同じですが、内部の振動板構造や音響チャンバーを再設計し、低域の厚みと中域の密度を向上させています。その結果、初代「S12」のシャープでソリッドな音に対して、「S12 Ultra」はより豊かでバランスの取れたサウンドに仕上がっています。
比較項目 | S12 | S12 Pro | S12 Ultra |
---|---|---|---|
サウンド傾向 | シャープで硬質 | よりフラットで解像度重視 | 温かみと厚みを持つ自然なバランス |
高域 | 明るく鋭い | 滑らか | 柔らかく伸びやか |
低域 | タイト | 適度 | 深く沈み込み豊か |
音場 | 横方向中心 | やや広め | 奥行きと立体感が強化 |
聴きやすさ | やや刺激的 | 自然 | 最もリラックスして聴ける |
スマートフォンだけで十分に鳴らせますか?
付属のDT01 Pro DACケーブルを使用すれば、スマートフォンでも十分に駆動できます。このDACケーブルはType-C接続で、アンプ出力が強化されているため、一般的なスマホ直結よりも低域の締まりと解像感が安定します。ただし、より細やかな音場表現や空間の広がりを求めるなら、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)や据え置きアンプでの使用がおすすめです。
どんなジャンルの音楽と相性が良いですか?
「S12 Ultra」はオールラウンドなバランス型ですが、特に以下のジャンルで真価を発揮します。
- ポップス/J-POP:ボーカルが近く、明瞭な音像で臨場感が高い。
- R&B/シティポップ:中低域の厚みがあり、リズムのうねりやベースの沈み込みを豊かに再現。
- ジャズ/アコースティック:自然な余韻と空間の奥行きが心地よい。
反対に、高速テンポのEDMやメタルなど、極端にスピード感を重視するジャンルではややゆったりした印象を受ける場合があります。
イヤーピースやケーブルを交換すると音は変わりますか?
はい、特に低域と高域のバランスに影響します。
- 硬め・薄壁のイヤーピース:音の輪郭が明確になり、解像度がアップ。
- 厚め・柔らかいイヤーピース:高域の刺激が抑えられ、ボーカルが滑らかに。
- 純正ケーブル → 他社ケーブルに交換:銅線や銀メッキ線など素材によって、低域の量感や高域の伸びが変わります。
純正ケーブルは392芯の高品質SPCケーブルで十分性能が高いため、まずは純正のまま楽しむのが良いでしょう。
音質面で「S15」との違いは?
LETSHUOERの上位モデル「S15」は、より広い音場と滑らかな高域を特徴としています。一方で「S12 Ultra」は「S15」の方向性をコンパクトにまとめたモデルといえます。「S15」のような開放感と超ワイドレンジさには及ばないものの、価格帯を考えると「S12 Ultra」は非常に優秀な“中堅ハイファイ”です。
比較項目 | S12 Ultra | S15 |
---|---|---|
価格帯 | 約27,000円 | 約55,000円 |
音場 | 中規模・定位重視 | 広大で奥行き深い |
音色 | 温かく包み込む | 滑らかで透明感の高い |
駆動力 | 普通(スマホ可) | 要アンプ・DAP推奨 |
用途 | 日常リスニング~中級鑑賞 | 本格リスニング向け |
長時間聴いても疲れない理由は?
「S12 Ultra」は、高域のピークを適度に抑えたチューニングと、アルミ合金シェルの共振制御が組み合わさっています。これにより、金属的な硬さがなく、耳に刺さらない柔らかいトーンが実現しています。特に中高域の滑らかさと低域の支えのバランスが良いため、3~4時間の連続再生でも聴き疲れが少ないのが特徴です。
「S12 Ultra」はゲームや映画鑑賞にも向いていますか?
非常に向いています。平面駆動ドライバーならではの正確な定位感と広めの音場表現により、ゲーム中の音の方向や距離感をつかみやすいのが特徴です。映画では低音の沈み込みとセリフの明瞭さの両立が感じられ、アクション映画の爆発音なども迫力があります。長時間の使用でも耳への負担が少ないため、エンタメ用途にも高い実用性を発揮します。
音量を上げると歪みや刺さりを感じますか?
ほとんど感じません。「S12 Ultra」は高域のピークを滑らかに整えており、音量を上げても「刺さる」「耳が痛い」といった不快感が出にくい設計です。ただし、過大入力時には低域がやや膨らむ傾向があるため、適正音量(中音量前後)で聴くのが最も自然なバランスになります。
女性ボーカルと男性ボーカル、どちらに向いていますか?
両方に対応できますが、どちらかといえば男性ボーカルにより強みがあります。中域の厚みと下支えのある低域が、男性ボーカルの深みや力強さをしっかりと表現します。一方で、女性ボーカルでは高域の伸びがやや控えめになるものの、滑らかで聴きやすいトーンが特徴です。
音の分離感や定位はどうですか?
平面駆動型らしい高い分離性能と正確な定位が特徴です。楽器やボーカルが密集した楽曲でも、各音の輪郭を保ったまま再生されるため、混雑感を感じにくい構成になっています。特にステレオイメージの安定性が高く、左右のパン(定位の移動)も滑らかに再現されます。
音場の広さはどの程度ですか?
音場は“広大”というより自然な広がりと奥行きを重視したタイプです。横方向よりも前後方向の立体感がしっかりしており、ライブハウスの中で聴くような近距離感を伴います。「S15」のような広大なサウンドステージとは異なりますが、定位の精密さでは同価格帯トップクラスです。
初めて平面駆動イヤホンを購入する人に向いていますか?
非常に向いています。「S12 Ultra」は「平面駆動=鳴らしにくい」というイメージを覆すモデルであり、スマホ+付属DACでも高水準の音を楽しめます。繊細な音の分離や柔らかな高域、豊かな中低域など、平面駆動の魅力を十分に体感できるため、入門~中級者に最適な1本です。
総合的に見て、「S12 Ultra」はどんな位置づけのイヤホン?
「S12 Ultra」は、LETSHUOERの中で「ミドルレンジの中核を担う完成モデル」です。S12シリーズの音質的成熟と、「S15」譲りのチューニングバランスを融合し、平面駆動型の魅力をより多くの人に届けることを目的としています。言い換えれば、「S12 Ultra」は「日常で使えるハイファイ・イヤホンの理想形」であり、オーディオ趣味を一段深める入口として最適な存在です。
LETSHUOER 「S12 Ultra」レビューのまとめ

LETSHUOER 「S12 Ultra」は、S12シリーズの“解像感と分離の良さ”という核を残しつつ、低域の厚み/中域の実在感/高域の聴きやすさを丁寧に積み上げた完成度の高いモデルです。
アルミ合金シェルの質感、堅牢なマルチプラグ、そして付属のType-C DAC「DT01 Pro」まで含めた“全部入り”の構成により、購入直後から最適に近い体験に届きやすいのが強み。
結果として、日常使いから腰を据えた鑑賞まで自然にカバーする、現行「S12」の到達点といえる仕上がりです。
総評のポイント
- 音:プレーナーらしい解像感を土台に、低域の沈み込み+中域の厚み+刺さらない高域で長時間の快適さを実現。
- デザイン/装着:5.9g級の軽さと耳に沿う形状で、金属シェルでも疲れにくい。質感は上質かつ控えめ。
- 使い勝手:392芯SPCケーブル、ねじ固定の交換プラグ(3.5/4.4)、DT01 Pro DAC同梱で環境を問わず使いやすい。
- 立ち位置:初代「S12」の“鋭さ特化”から、“厚みと聴きやすさ”へ成熟。シリーズのベストバランス。
良かった点 / 気になった点
良かった点
- 低域の量感と深さが増し、ボーカルの実在感が向上
- 高域は伸びを保ちつつ刺激を抑制→長時間でも疲れにくい
- 交換プラグのロック構造で可搬性・信頼性が高い
- DT01 Pro付属でスマホ直結でも十分な駆動力
- 価格対効果:パッケージ全体で見た導入コストの低さ
気になった点
- 速いEDM/メタルなど超タイト志向では初代S12/Proの速さに軍配
- 遮音は“自然派”寄りで、完全密閉級の遮断を求める人には物足りない場面あり
- 低域の量感が活きる反面、小さすぎるイヤピでは沈み込みが先に痩せやすい
向いている人・向いていない人
向いている人
- 平面駆動を手軽に最適解で楽しみたい
- ポップス/R&B/シティポップ/ジャズを中心に聴く
- ボーカルの近さと自然な余韻、リラックスして聴ける音を重視
- スマホ運用とDAP/据え置きの両立を考えている
向いていないかもしれない人
- 初代「S12」のような鋭角な高域とタイト特化を最優先
- 密閉・遮音を最重視して通勤大音量で没入したい
迷ったらここを見る:シリーズ内クイック比較
観点 | S12(初代) | S12 Pro | S12 Ultra |
---|---|---|---|
キャラ | シャープ&ドライ | バランス型 | 厚み+聴きやすさ |
低域 | タイト | 標準 | 量感/沈み込み強化 |
高域 | やや鋭い | 穏当 | 滑らかで刺さりにくい |
ボーカル | やや遠め | 中庸 | 近めで実在感 |
長時間適性 | 普通 | 良 | 非常に良 |
ベストな使い始めのコツ(実用メモ)
- イヤピは“やや大きめ”で密閉確保:低域の沈み込みと定位が安定
- まずは付属DT01 Proでスマホ直結→次に4.4mmバランスへ拡張
- 小音量=ウォーム、適正音量で輪郭と奥行きが開く(過大音量は×)
- もう少しタイトにしたいなら、薄壁シリコンや軽いEQ(60–80Hzを-1~-2dB)
LETSHUOER 「S12 Ultra」レビューの総括
LETSHUOER 「S12 Ultra」は、単なる後継機ではなく、シリーズ全体の集大成として完成された一本だと感じました。
初代「S12」が持っていた鋭い解像感とスピード感を踏襲しつつ、「S12 Ultra」では音に「厚み」と「聴きやすさ」が丁寧に加えられています。
結果として、平面駆動型の高解像度サウンドをより自然で心地よいトーンに仕上げ、日常のリスニングから集中した音楽鑑賞まで幅広く対応できるバランスを実現しました。
アルミ合金シェルによる堅牢で美しい外観、耳に優しい装着感、そしてDT01 Pro DACケーブルを含む充実の付属品構成により、「買ってすぐ理想の音」に近づける完成度も魅力のひとつです。
特定のジャンルに尖ることなく、どんな楽曲も自然体で鳴らしきる姿勢は、LETSHUOERというブランドが培ってきた成熟の証といえるでしょう。
「S12 Ultra」は、音楽を“分析するため”ではなく“楽しむため”に設計されたイヤホンです。
繊細さと包容力を兼ね備えたサウンドは、日常の中で音楽をより豊かに感じたいすべてのリスナーに寄り添ってくれます。
シリーズの頂点にふさわしい完成度と、確かな満足感を備えた名機――それがLETSHUOER 「S12 Ultra」です。
