創業110年以上の歴史を誇る日本の老舗オーディオブランド「DENON(デノン)」が、近年のトレンドに応える形で満を持して投入したワイヤレスイヤホン、それが「AH-C840NCW」です。
ノイズキャンセリング機能を搭載し、同社がこれまで培ってきたピュアオーディオの哲学を注ぎ込んだモデルとして、発売前からオーディオファンを中心に注目を集めていました。
本機は、16万円クラスのフラッグシップ有線ヘッドホン「AH-D9200」と同じバイオセルロース振動板を用いた12mmドライバーを搭載。
さらに、音質を損なわずにドライバーの動きを滑らかにする「フリーエッジ構造」も採用しており、価格帯としては2万円以下でありながら、上位機種にも通じる高品位な音質を目指しています。
また、前モデルにあたる「AH-C830NCW」では高音質なチューニングが評価されつつも、機能性や利便性の面でやや物足りなさが指摘されていました。
今回の「AH-C840NCW」では、マルチポイント接続・アプリ対応・ワイヤレス充電・再生時間の延長など、現代のワイヤレスイヤホンに求められる機能をしっかりと網羅し、大きな進化を遂げています。
「音質の良い完全ワイヤレスイヤホンが欲しい」「でも操作性や日常での使い勝手も犠牲にしたくない」と感じている方にこそ、本機の魅力を届けたい――
そんな想いを込めて、この記事ではDenon 「AH-C840NCW」の実力を徹底的にレビューしていきます。
特に音質面においては、ジャズやクラシックなどアコースティック楽曲との相性の良さが際立つモデルでもありますので、そのあたりも詳しく掘り下げていきます。

- Denon 「AH-C840NCW」の基本情報とスペック
- Denon 「AH-C840NCW」のデザインと装着感の評価
- Denon 「AH-C840NCW」の音質とノイズキャンセリングの実力
- Denon 「AH-C840NCW」を使用した私の体験談・レビュー
- Denon 「AH-C840NCW」に関するQ&A
- 「AH-C840NCW」はどんな音質傾向のイヤホンですか?
- ノイズキャンセリング性能は実用的ですか?
- iPhoneとAndroid、どちらのユーザーに向いていますか?
- 外音取り込み機能は自然に聞こえますか?
- 長時間使っても耳が痛くなりませんか?
- 音量調整などの操作はイヤホン単体で可能ですか?
- アプリでできることには何がありますか?
- 「AH-C840NCW」に関はどんな人におすすめですか?
- Denonの他のイヤホン(例:PerL ProやAH-C830NCW)との違いは?
- ゲーム用途に使えますか?遅延は気になりますか?
- マルチポイント機能は安定していますか?
- イコライザーはどの程度調整できますか?
- 防水仕様はスポーツ使用に耐えられますか?
- ノイズキャンセリングのON/OFFは手動切り替え可能ですか?
- イヤーピースの交換は可能ですか?市販品も使えますか?
- Denon 「AH-C840NCW」レビューのまとめ
Denon 「AH-C840NCW」の基本情報とスペック

製品概要と価格帯
Denon 「AH-C840NCW」は、デノンが展開する完全ワイヤレスイヤホンの中でも、音質と機能の両立を図ったノイズキャンセリング搭載モデルです。
前作「AH-C830NCW」での音質の高さはそのままに、使い勝手やスペックが全体的にアップグレードされています。
- 発売日:2024年4月2日
- 市場価格:約16,000円
- カラー展開:ホワイト / ブラック
- タイプ:カナル型(密閉型)
- 対応アプリ:DENON Headphones(iOS / Android)
比較的リーズナブルな価格帯でありながら、ハイエンド有線機の技術を落とし込んだオーディオ志向の強いモデルとなっています。
搭載ドライバーと構造
本モデル最大の注目ポイントは、ハイエンドモデルと同じ素材を使用した12mmのバイオセルロース・ドライバーを搭載していることです。
- ドライバー構造:12mm フリーエッジ・バイオセルロース振動板
- 同素材採用機種:DENON AH-D9200(約16万円の有線ヘッドホン)
- フリーエッジ構造:振動板の動きを制限せず、自然な駆動を実現
- チューニング:デノン サウンドマスター・山内新一氏が担当
この構成により、ワイヤレスながら「ピュアオーディオ的な繊細でナチュラルな音」を実現。
クラシックやアコースティック楽器との親和性が高い設計になっています。
充実した接続性能とバッテリー持続力
「AH-C840NCW」は音質だけでなく、日常使いの快適さを大きく底上げする機能性も魅力です。
前作から大幅に向上したポイントを中心にまとめました。
▼通信規格・機能一覧:
項目 | 内容 |
---|---|
Bluetoothバージョン | 5.3 |
対応コーデック | SBC / AAC / LC3(※LDAC・aptXは非対応) |
マルチポイント接続 | 対応(2台同時接続) |
ワイヤレス充電 | 対応 |
急速充電 | 5分充電で約1時間再生 |
防水性能 | IPX4相当(生活防水) |
アプリ対応 | イコライザー調整 / 操作カスタマイズ等 |
自動装着検出機能 | 対応(片耳・両耳で停止動作を設定可能) |
外音取り込み機能 | 対応(ON/OFF切り替え可能) |
▼バッテリー持続時間:
状態 | 本体のみ | ケース併用 |
---|---|---|
ANCオン時 | 約7時間 | 約24時間 |
ANCオフ時 | 約10時間 | 約35時間 |
前作(AH-C830NCW)では「ANCオン:約4.8時間 / ケース込み:約19時間」だったため、再生時間も大幅に改善。
1日中使える安心感があります。
Denon 「AH-C840NCW」は、音質重視のユーザーにとっての“現実的な価格帯で手が届くピュアオーディオチューンTWS”として、非常に完成度の高い製品に仕上がっています。
Denon 「AH-C840NCW」のデザインと装着感の評価

ケース・本体デザインの特徴
「AH-C840NCW」は、シンプルかつ高級感を備えたデザインに仕上がっており、日常使いでも浮かない落ち着いたルックスが特徴です。
■ ケースデザイン
- コンパクトでポケットにすっぽり入るサイズ感
- つや消しのマット仕上げで指紋がつきにくい
- 正面に「DENON」ロゴが控えめに刻印
- カラー:ホワイト / ブラック(どちらも落ち着いたトーン)
■ ケース機能性
- ワイヤレス充電対応
- USB-C(C to Cケーブル付属)
- ペアリング/リセット用物理ボタン搭載
- フタの開閉やマグネットのバランスが絶妙で、取り出しやすい
■ 本体デザイン
- 「ショートスティック型」で、耳からの出っ張りが少なくスタイリッシュ
- スティック部分にはさりげなくDENONロゴを配置
- マイクや通話用センサーもスティック先端に内蔵されている設計
- ノズルは平均的な太さで、サードパーティ製イヤーピースもある程度互換性あり
装着感とフィット感の印象
「AH-C840NCW」は軽量設計とバランスの取れた重量配分により、非常に快適な装着感を実現しています。
▼ 装着感のポイント
特徴 | 内容 |
---|---|
本体の重さ | 約5g(片耳) |
装着の安定性 | 耳の形に沿った形状でフィット感が良好 |
圧迫感 | 密閉感はあるが過度ではなく、長時間装着しても痛くなりにくい |
長時間使用時の快適性 | 複数時間連続使用しても疲れにくい。 |
密閉性と遮音性 | ANC未使用時はやや周囲の音が入りやすいが、使用時は遮音性良好 |
特に、軽量で耳への負担が少ない点と、耳奥に押し込まなくても自然にフィットする形状が高評価を得ています。
操作性と実用面の使い勝手
タッチ操作は両耳に対応しており、標準設定に加えてアプリからのカスタマイズも可能になりました。
ただし一部の仕様には注意点もあります。
▼ 標準タッチ操作(初期設定)
- 1回タップ(L/R):再生 / 一時停止
- 2回タップ(L/R):曲送り
- 3回タップ(L/R):曲戻し(※この操作だけ固定で変更不可)
- 長押し(L):外音取り込みモードの切替
- 長押し(R):音声アシスタント起動
▼ 操作面の評価と注意点
- 感度はやや高め:意図しない誤タップが発生しやすい
- アプリでカスタマイズ可能な操作は6項目まで(LR×3種:タップ / ダブル / ホールド)
- トリプルタップが固定なのはやや不便
- ボリューム調整を割り当て可能(ただしホールド操作に限定される)
- 操作時のクリック感(フィードバック)は良好で反応は速い
▼ 実用性の補足ポイント
- ケースからの取り出しやすさは抜群(マグネット強度と引っかかりのバランスが優秀)
- 自動装着検出機能あり(アプリで片耳/両耳それぞれの挙動を細かく設定可能)
- 防水等級IPX4により、日常の汗や小雨にも対応
「Denon AH-C840NCW」は、高級感・使い勝手・軽快な装着感の三拍子が揃った完成度の高いワイヤレスイヤホンです。
ビジネスシーンにもフィットするシンプルなデザインと、装着時の快適性は、通勤・作業・音楽鑑賞などさまざまなシーンで活躍するでしょう。
Denon 「AH-C840NCW」の音質とノイズキャンセリングの実力

全体の音質傾向とおすすめジャンル
Denon 「AH-C840NCW」の音質は、繊細でナチュラルな表現力に優れた“ピュアオーディオ的”なサウンドチューニングが特徴です。
価格帯を超えた高解像度と音場表現により、音楽ジャンルを選べば非常に豊かなリスニング体験が得られます。
■ 音質の傾向
項目 | 特徴 |
---|---|
音の傾向 | フラットかつ繊細、柔らかく一体感のあるサウンド |
解像度 | 高め。特に中高音域の分離感と明瞭度が良好 |
音場 | 横方向に自然に広がる。スピーカーで聴くような抜けの良さが感じられる |
低音 | タイトで沈み込みは控えめ。派手さよりもナチュラルさ重視 |
中音 | 楽器とボーカルが自然に馴染み、色付けの少ない素直な描写 |
高音 | 刺激感を抑えた滑らかな質感。弦楽器やピアノの抜け感が非常に心地よい |
■ 相性の良い音楽ジャンル
- クラシック(特に小編成室内楽)
- ジャズ(ウッドベースやブラシドラムなど)
- アコースティック系(弾き語り、フォーク、アンビエント)
- 映画音楽 / サウンドトラック(情緒的な表現に優れる)
※ロックやEDMのような迫力系にはやや不向きで、パンチ力を求める人には物足りなさを感じる場合があります。
ノイズキャンセリング性能の検証
「AH-C830NCW」は、デノン製品の中でも優秀なノイズキャンセリング性能を誇ります。
実際に試したところ、特に中高音域(人の声やキーボード音)の遮音性が非常に高く、カフェやオフィスでの使用に適しています。
■ ノイキャン評価のポイント
評価項目 | 内容 |
---|---|
ノイズキャンセリング方式 | 適応型ハイブリッド方式(環境に応じて自動最適化) |
人の声・雑音の遮音 | 非常に高い(集中して作業可能なレベル) |
低音の遮断 | バスや電車の“ゴー音”はやや残るが、不快さは軽減されている |
実使用レビュー:
- タイピング音や会話が効果的にカットされ、音楽や作業への集中度が格段にアップ
- ANCの効果を最大限発揮するには「耳の密閉感」が重要。イヤピースのフィッティング調整も有効
外音取り込みと通話マイクの品質
■ 外音取り込み機能(トランスペアレンシーモード)
特徴 | 内容 |
---|---|
自然さ | ややホワイトノイズがあり、聞こえ方はやや不自然 |
無音時の違和感 | 外音取り込みONでも「モゴモゴ感」が残る |
聴き取りやすさ | 音楽再生中は周囲の音が聞き取りにくく、会話にはやや不向き |
補足:前作AH-C830NCWの方が自然に聞こえたという意見もあり、ここは進化というより“現状維持”または“やや退化”の印象。
■ マイク・通話品質
マイクはデュアルマイク構成で通話に対応。
ただし、実際の通話品質に関しては「前作より若干こもりがち」「ノイズ処理は良いが、声の明瞭さが今ひとつ」との声もあります。
- ノイズ除去:周囲の雑音はある程度抑えられる
- 声のクリアさ:やや丸みのあるトーンで、環境音と分離しきれていない印象
- ビジネス会議や音声メモ用途では問題ないが、プロユースには不向きか
「AH-C840NCW」の音質は、“聴き疲れしないナチュラルサウンド”を徹底追求したチューニングで、クラシックやジャズなどのアコースティック系ジャンルにおいて、他の2万円以下イヤホンとは一線を画す実力を持っています。
ノイズキャンセリングも実用性は十分で、特に「静寂と音楽の両立」を求めるユーザーにとって最適な選択肢となるでしょう。
Denon 「AH-C840NCW」を使用した私の体験談・レビュー

「AH-C840NCW」を実際に数日間使用してみて、まず真っ先に感じたのは「耳への負担の少なさ」と「ナチュラルで澄んだ音の鳴り方」でした。
決して“派手”な音ではないのに、気づけば自然と音楽に集中している――そんな不思議な魅力を持つイヤホンです。
■ 通勤・外出時の使用感
- 満員電車の中での使用(ノイキャンON)
周囲の会話や車内アナウンスがしっかりと抑えられ、ピアノや弦楽器の繊細なニュアンスがしっかり耳に届きました。低音ノイズのカットは完全とはいかないものの、通勤のストレスが一気に軽減される感覚がありました。 - 街中を歩きながらの使用(外音取り込みON)
正直なところ、外音取り込みの自然さにはやや不満がありました。人の声や足音が少しモコモコした音で聞こえ、“聞こえるけれど違和感がある”という印象。安全面から常用は避け、必要な場面に絞ってONにする使い方がベストでした。
■ 室内・作業環境での使用
- 在宅ワーク中のBGM用途
ノイキャンをオンにして静かな環境で流すクラシック音楽は、まるで自宅の一室がコンサートホールに変わったかのよう。特に弦の細やかな音や空気感まで再現されていて、仕事の集中力が自然と高まる効果を実感できました。 - Zoom通話でのマイク使用
声自体はしっかり拾ってくれていましたが、録音を聞き返すとややこもり気味。友人との通話レベルでは十分ですが、会議やプレゼンの用途では少し不安を感じる音質でした。
■ 音楽リスニングの印象とジャンル別評価
音楽ジャンル | 音質評価 / 印象 |
---|---|
クラシック(室内楽) | ★★★★★:バイオリンやピアノの余韻までクリアに響く |
ジャズ(アコースティック) | ★★★★★:ウッドベースやドラムブラシの空気感が丁寧に表現される |
フォーク・弾き語り系 | ★★★★☆:ボーカルとギターが自然に溶け合う、リラックス感あり |
ロック / ポップス | ★★★☆☆:分離感はあるが、低域の迫力や鮮烈さはやや物足りない |
EDM / ヒップホップ | ★★☆☆☆:重低音のパンチ不足。リスニングには向かない印象 |
■ 使用して気に入った点・気になった点
◎ 気に入った点
- 装着感が非常に軽く、長時間でも耳が痛くならない
- 音が刺さらず、聴き疲れしにくい
- ノイキャンの効果が想像以上に実用的(特に人の声・雑音)
△ 気になった点
- 外音取り込みのクオリティに物足りなさあり
- 高音質コーデック(aptX / LDAC)非対応なのが惜しい
- アプリのイコライザーが5バンドのみで調整の幅がやや狭い
■ 総括的な感想
「Denon AH-C840NCW」は、“音楽を聴くための道具”としての信頼感と満足感が非常に高いイヤホンでした。
スマートさや多機能性よりも、“原音の魅力を丁寧に届けること”を重視した設計であることが、実際の使用からも伝わってきます。
特に、「クラシックやアコースティックを落ち着いた環境でじっくり聴きたい」そんなリスナーにとっては、まさにぴったりの1台だと感じました。
日常に音楽の余韻を求める人には、ぜひ一度試してもらいたいモデルです。
Denon 「AH-C840NCW」に関するQ&A

Denon 「AH-C840NCW」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
「AH-C840NCW」はどんな音質傾向のイヤホンですか?
音の傾向は非常にフラットでナチュラル。特定の帯域を強調せず、繊細でピュアな表現が得意です。ジャズやクラシックなど、アコースティックなジャンルとの相性が抜群です。
ノイズキャンセリング性能は実用的ですか?
特に人の声やタイピング音など中高音域の遮音性が高く、カフェやオフィスでの使用に適しています。電車の走行音など低音ノイズの遮断はやや控えめですが、集中したい環境では十分な性能があります。
iPhoneとAndroid、どちらのユーザーに向いていますか?
両方に対応していますが、iPhoneユーザーとの相性がやや良好です。対応コーデックがSBC/AAC/LC3のため、Androidで高音質を求める方にはやや物足りない可能性があります(LDAC/aptX未対応)。
外音取り込み機能は自然に聞こえますか?
外音取り込み機能は搭載されていますが、ホワイトノイズや音の“モコモコ感”があり、自然さにはやや欠けます。会話用途では若干聞き返す場面が出てくるかもしれません。
長時間使っても耳が痛くなりませんか?
本体は片耳約5gと非常に軽量で、バランスの取れた設計により装着感も良好です。耳への圧迫感が少なく、長時間装着しても痛くなりにくいのが特徴です。
音量調整などの操作はイヤホン単体で可能ですか?
タッチパネルで再生・停止・曲送り/戻しのほか、音量調整やノイキャン切り替えもアプリ経由でカスタマイズ可能です。ただし、トリプルタップは固定操作(曲戻し)で変更できない制限があります。
アプリでできることには何がありますか?
アプリ「Denon Headphones」では、以下の操作が可能です:
- ノイズキャンセリング / 外音取り込みの切り替え
- 5バンドイコライザー(手動設定)
- タッチ操作の割り当て
- マルチポイント接続のON/OFF
- 自動装着検出の挙動設定
- ファームウェア更新・バッテリー残量確認
「AH-C840NCW」に関はどんな人におすすめですか?
以下のような方に特におすすめです:
- 高音質重視で音楽を“静かに楽しみたい”人
- ジャズ・クラシック・弾き語りなど繊細なジャンルが好きな人
- 多機能よりも「音の純度」にこだわる人
- 前作AH-C830NCWの音が好みだったが、利便性を求めている人
Denonの他のイヤホン(例:PerL ProやAH-C830NCW)との違いは?
「AH-C840NCW」は、PerL Proのようなパーソナライズ機能はありませんが、ピュアオーディオ的な音作りに特化したモデルです。前作AH-C830NCWと比較して、ノイズキャンセリングの強化、再生時間の向上、アプリ対応など、機能面で大きく進化しています。
ゲーム用途に使えますか?遅延は気になりますか?
LC3コーデックに対応しており、LC3接続ができるAndroid端末との組み合わせなら、非常に低遅延で快適です。ただし、専用のゲームモードなどは搭載していないため、LC3非対応機器ではやや遅延を感じる場合があります。
マルチポイント機能は安定していますか?
複数端末での切り替えもスムーズで、通話・音楽再生を行っても干渉が少なく、実用的です。在宅ワークやPC+スマホの二刀流ユーザーには非常に便利な機能です。
イコライザーはどの程度調整できますか?
アプリでは5バンドの手動イコライザーが利用可能ですが、プリセットは搭載されていません。調整範囲は±6dBで、低域の調整幅はやや狭く、低音強調のカスタムには不向きな傾向があります。
防水仕様はスポーツ使用に耐えられますか?
IPX4の生活防水仕様なので、軽い運動や汗程度なら問題ありません。ただし、激しい雨や水没には非対応です。ランニングやジムなどでの使用にはケースバイケースで注意が必要です。
ノイズキャンセリングのON/OFFは手動切り替え可能ですか?
タッチ操作やアプリからノイズキャンセリングと外音取り込みの切り替えが可能です。ただし、ノイキャンの強弱を段階調整することはできません。
イヤーピースの交換は可能ですか?市販品も使えますか?
ノズル径は標準的で、短め軸のイヤーピースであればサードパーティ製にも対応可能です。密閉性を上げたい場合は、少し柔らかめのシリコン製イヤピースを選ぶと快適に使えます。
Denon 「AH-C840NCW」レビューのまとめ

■ 製品ごとの総括比較(前作との違いを中心に)
項目 | AH-C840NCW(本機) | AH-C830NCW(前作) |
---|---|---|
音質傾向 | 繊細でナチュラル、ピュアオーディオ寄り | やや元気な音、低音と高音がやや強調 |
ドライバー構成 | 12mmバイオセルロース × フリーエッジ | 11mm×10mm ダイナミック |
ノイズキャンセリング | 適応型ハイブリッドANC、効果向上 | ハイブリッドANC |
外音取り込み | あり(やや不自然) | 自然さではやや上 |
アプリ対応 | あり(EQ/タッチ設定など) | 非対応 |
バッテリー持続時間 | 最大35時間(ケース込) | 最大19時間(ケース込) |
コーデック対応 | SBC / AAC / LC3 | SBC / AAC |
ワイヤレス充電 | 対応 | 非対応 |
マルチポイント | 対応 | 非対応 |
前作で指摘されていた「機能性の物足りなさ」を見事に克服し、実用性が大きく向上しています。
■ 評価ポイントまとめ
◎ 優れている点
- 音質は2万円以下とは思えない透明感と解像度
- クラシックやジャズとの相性が非常に高い
- ノイキャン性能が確かな進化を遂げている
- ワイヤレス充電・マルチポイント・アプリ対応で利便性が高い
- 長時間でも疲れにくい軽量設計&快適な装着感
△ 気になる点
- 外音取り込みの自然さはやや劣る(ホワイトノイズあり)
- aptX / LDAC 非対応(Android勢にはやや惜しい)
- アプリのイコライザーが5バンドで調整の幅が少ない
- タッチ操作のカスタマイズ性に一部制限あり(トリプルタップ固定など)
■ 向いている人
以下のような方には、非常におすすめできるモデルです。
- 1万円台で高音質なワイヤレスイヤホンを探している人
- クラシック、ジャズ、アコースティックなどをじっくり聴きたい人
- 日常使いでも長時間快適に装着できるイヤホンを求めている人
- 前作AH-C830NCWの音は気に入っていたが、機能不足が気になっていた人
- ノイズキャンセリングを仕事・作業用に実用的に使いたい人
■ 向いていない人
一方で、以下のようなニーズにはやや不向きかもしれません。
- ロックやEDMなど、パワフルな重低音を求める人
- 高音質コーデック(aptX AdaptiveやLDAC)を重視するAndroidユーザー
- 外音取り込みを自然な通話用として使いたい人
- タッチ操作を完全にカスタマイズしたい人
■ Denon 「AH-C840NCW」レビューの総括
Denon 「AH-C840NCW」は、単なるノイズキャンセリングイヤホンにとどまらず、オーディオブランドならではの音づくりに強いこだわりを持つ製品です。
フラッグシップ有線ヘッドホンと同じドライバ素材を用い、繊細で柔らかな音の響きを実現しながらも、現代のワイヤレスイヤホンに求められる利便性──マルチポイント接続、ワイヤレス充電、アプリ対応など──をしっかりと備えています。
音質に関しては、クラシックやジャズといった楽曲を自然体で楽しめるチューニングが施されており、派手さはないものの長時間聴いても疲れにくい、リラックス重視の“聴かせるサウンド”が魅力です。
また、ノイズキャンセリングの性能も実用レベルにあり、特に人の話し声や雑音を軽減する効果が高く、集中したい環境にもぴったりです。
一方で、高音質コーデック非対応や外音取り込みの不自然さ、タッチ操作のカスタマイズの限界など、細かな課題は残るものの、それらを補って余りあるほどの音質的完成度と快適な装着感を持ち合わせています。
日常の中で、自然で豊かな音を丁寧に楽しみたい──そんなユーザーにとって、「AH-C840NCW」は確かな満足を届けてくれる存在となるでしょう。
シンプルで飾り気のないそのデザインの奥に、音への深いこだわりが息づいているのです。
