「ワイヤレスイヤホンのケースに、本当に『蓋』は必要なのだろうか?」
2年前、そんな常識を覆すユニークなデザインでガジェット界に衝撃を与えたJBLの「WAVE BUDS」。
その斬新なスタイルは、「取り出しやすさが異常」「一度使うと戻れない」と熱狂的な支持を集める一方で、「落としそうで怖い」「汚れが溜まりそう」という懐疑的な声も生みました。
そして2024年、その待望の後継機「JBL WAVE BUDS 2」がついに登場しました。
前作で証明された「蓋なし=取り出しやすさ最強」という哲学はそのままに、今回はアクティブノイズキャンセリング(ANC)やマルチポイントといった、現代のワイヤレスイヤホンに求められる「必須機能」を惜しみなく搭載。
それでいて価格はアンダー1万円(約8,800円前後)をキープするという、驚異的なコストパフォーマンスを提げての帰還です。
しかし、スペック表が豪華になるほど、疑り深い私たちはこう考えます。
「機能詰め込みすぎて、器用貧乏になっていないか?」
「蓋なしデザインは、2年の時を経て進化しているのか?」
「安価なノイズキャンセリングなんて、どうせオマケ程度ではないのか?」
そんな疑問を解消するため、オーディオ機器を愛し、年間数十台のイヤホンを試聴する筆者が、実機を入手して徹底的に使い倒しました。
通勤ラッシュの満員電車から、静寂を求める深夜のデスクワーク、休日のランニングまで。
あらゆるシーンで検証した結果、見えてきたのは「スペックの数値だけでは語れない、強烈な個性と実用性」でした。
結論から言えば、これは「ズボラな人ほどハマる、音質妥協なしの最高の相棒」であり、1万円以下の市場勢力図を塗り替えるポテンシャルを秘めた一台でした。
この記事では、その理由を余すところなくお伝えします。
- JBL 「WAVE BUDS 2」の基本概要と進化点
- JBL 「WAVE BUDS 2」の実機でチェックするデザインと装着感
- JBL 「WAVE BUDS 2」の音質・ノイズキャンセリング・機能性の評価
- JBL 「WAVE BUDS 2」を使用した私の体験談・レビュー
- JBL 「WAVE BUDS 2」に関するQ&A
- iPhoneでも問題なく使えますか?
- 蓋がないケースですが、カバンの中で勝手に外れませんか?
- 「マルチポイント」はどのように切り替わりますか?
- スポーツやランニングに使っても大丈夫ですか?
- 音ゲーや動画視聴での音ズレ(遅延)はありますか?
- ワイヤレス充電には対応していますか?
- 片耳だけでも使えますか?
- 通話品質はどうですか?WEB会議で使えますか?
- イヤーピースを他社製に交換できますか?
- 蓋がないのでケース内部の汚れが心配です。掃除はどうすればいいですか?
- 「アンビエントアウェア」と「トークスルー」の違いは何ですか?
- イヤホン本体で音量調節はできますか?
- ケースのバッテリー残量はどこで確認できますか?
- 就寝用(寝ホン)として使っても耳は痛くなりませんか?
- アプリを使わなくても使用できますか?
- JBL 「WAVE BUDS 2」レビューのまとめ
JBL 「WAVE BUDS 2」の基本概要と進化点

JBLのエントリーライン「WAVE」シリーズ。
その最新作である本機は、単なるマイナーチェンジではありません。
まずはその基本スペックと、前作からの劇的な進化点を整理し、この製品の立ち位置を明確にします。
製品の主な特徴とスペック詳細
JBL WAVE BUDS 2は、カナル型(耳栓型)の完全ワイヤレスイヤホンです。
エントリーモデルという位置付けですが、その中身はもはやミドルクラスに片足を突っ込んでいます。
以下詳細スペックです。
| 項目 | JBL WAVE BUDS 2 の詳細仕様 | 備考・解説 |
| 価格 | 約 8,800円(税込・参考価格) | 昨今の物価高を考慮すると驚異的な価格設定。 |
| ドライバー | 8mm径 ダイナミックドライバー | JBL伝統のパワフルなサウンドを生み出す心臓部。 |
| 通信方式 | Bluetooth 5.3 | 接続安定性が高く、省電力性に優れた最新規格。 |
| 対応コーデック | SBC, AAC | iPhoneユーザー(AAC)には最適。Androidでも十分高音質。 |
| ノイズキャンセリング | 対応(アクティブノイズキャンセリング) | ついに搭載された待望の機能。 |
| 外音取り込み | 対応(アンビエントアウェア / トークスルー) | 2種類のモードを使い分け可能。 |
| マルチポイント | 対応(最大2台同時接続) | 仕事とプライベートをシームレスに行き来可能。 |
| 再生時間 | イヤホン単体:約10時間 / ケース込み:最大40時間 | ANCオフ時の最大値。ANCオンでも十分なスタミナ。 |
| 急速充電 | 対応(10分充電で約4時間再生) | 朝の支度中に1日分チャージ可能。 |
| 防水防塵 | イヤホン:IP54 / ケース:IPX2 | 雨や汗はもちろん、砂埃にも強いタフ仕様。 |
| 重量 | イヤホン片耳:約4.5g / ケース込み:約42.9g | 装着していることを忘れるほどの軽量設計。 |
| アプリ対応 | JBL Headphones アプリ対応 | 上位機種と同じ高機能アプリを使用可能。 |
| ワイヤレス充電 | 非対応 | コストカットポイント。有線充電のみ。 |
特筆すべきは、Bluetooth 5.3の採用による接続安定性の高さと、IP54という高い防塵防水性能です。
「IP54」の「5」は防塵等級を指し、粉塵が内部に侵入することを防ぎます。
これは、アウトドアやスポーツシーンでの使用を想定しているJBLらしい頑丈さの証です。
単に安いだけでなく、「長く使える道具」としての信頼性が担保されています。
先代「WAVE BUDS」からの決定的な3つの進化
初代WAVE BUDSを使用していたユーザー、あるいは旧モデルの在庫処分品と迷っている方のために、今作を選ぶべき「決定的な3つの進化」を解説します。
これらは、日々の使い勝手を劇的に変える要素です。
- アクティブノイズキャンセリング(ANC)の搭載
前作はイヤーピースによる物理的な遮音(パッシブノイズキャンセリング)のみでしたが、今作からはマイクで周囲の音を拾い、逆位相の音をぶつけて消すANCを搭載しました。
これにより、物理遮音だけでは防げなかった「電車の重低音」や「エアコンの駆動音」といった環境ノイズを電気的にカットできるようになりました。
「音楽への没入感」という点で、別次元の製品に進化したと言えます。 - マルチポイント接続への対応
現代のワイヤレスイヤホンにおいて、最も重要視される機能の一つがマルチポイントです。
スマホで音楽を聴いている最中に、PCでWeb会議が始まっても、設定画面を開くことなく自動で接続が切り替わります。
前作ではいちいちBluetooth接続を切断・再接続する必要がありましたが、この「手間」がゼロになりました。ビジネス用途や「ながら聴き」において最強のアップデートです。 - バッテリー性能と急速充電の強化
ケース込みの再生時間が最大32時間から40時間へと大幅アップしました。
これは1日2時間使用しても20日間充電不要という計算です。
さらに驚くべきは急速充電性能。
「10分の充電で約4時間再生(ANCオフ時)」というスピードは、競合他社と比較してもトップクラス。
忙しい朝、「充電し忘れた!」と気づいても、身支度をしている間に通勤往復分のバッテリーが確保できます。
最大の特徴「蓋なしケース」の構造と安全性
「蓋がないと、バッグの中でイヤホンが散らばるのでは?」
「ホコリが溜まって故障の原因になるのでは?」
これが購入を検討する方の最大の懸念であり、心理的なハードルでしょう。
しかし、実際に触ってみると、JBLがこの設計に固執する理由が理解できます。
■ 物理法則に挑戦する「磁力」の強さ
JBLはこの設計を実現するために、マグネットの強度と配置を徹底的に計算しています。
実際に検証しましたが、ケースを逆さにして思い切り振っても、イヤホンは微動だにしません。
イヤホン収納部が深く設計されており、かつ強力な磁力がイヤホンを底面に引きつけているためです。
取り外す際は、指でつまむのではなく、「親指でイヤホンを外側にスライドさせて押し出す」という独特のアクションが必要です。
この「意図的な動作」をしない限り、ポロリと落ちることは物理的にほぼあり得ません。
■ ホコリ問題への回答
「蓋がない=ホコリが入る」というのは事実です。
しかし、JBLのメンテナンス性は優秀です。
収納部はシンプルなすり鉢状になっており、綿棒やティッシュでサッと一拭きするだけで掃除が完了します。
蓋のヒンジ部分にホコリが詰まって取れなくなる、という「蓋ありケースあるある」な悩みから解放される逆転の発想とも言えます。
IP54の防塵性能も、このオープン構造を補完するための重要なスペックなのです。
JBL 「WAVE BUDS 2」の実機でチェックするデザインと装着感

毎日肌身離さず持ち歩くデバイスだからこそ、所有欲を満たす質感と、長時間つけていても苦にならない装着感は重要です。
実機を細部まで観察し、その作り込みをチェックしました。
指紋が目立ちにくい質感とカラーバリエーション
本体とケースは、マットな質感の樹脂素材が採用されています。
高級感のある光沢仕上げではありませんが、実用面ではこのマット仕上げが正解です。
- 耐汚性:
指紋や皮脂汚れが全くと言っていいほど目立ちません。
ハンドクリームを塗った手で触れてもベタつきが気になりにくいのは嬉しいポイントです。 - 耐傷性:
鍵や小銭と一緒にポケットに入れても、細かい擦り傷が目立ちにくいテクスチャ加工が施されています。 - デザイン哲学:
ケース前面に大きく配置されたJBLロゴは主張しすぎず、ガジェットというよりは「スポーツギア」のようなタフな印象を与えます。
カラーバリエーションは「ブラック」「ホワイト」「ブルー」「ピンク」の4色展開。
特に新色のピンクとブルーは、彩度を抑えたパステル調の上品な色合いで、ファッションのアクセントとしても機能します。
耳元に少しの色味を加えるだけで、無機質になりがちなデジタルライフが華やぎます。
小型化で実現した「耳に吸い付く」フィット感
イヤホン本体は「ビーンズ型(豆型)」と呼ばれる形状です。
前作と比較して、耳からの出っ張りが約1.7mm減少しており、より耳の奥に収まる設計になりました。
この「1.7mm」の差が、装着感に革命をもたらしています。
- エルゴノミックデザイン:
人間の耳の構造(コンチャと呼ばれるくぼみ)に完璧にフィットするよう計算された曲線を描いています。
スティック型(うどん型)のように下に伸びるパーツがないため、重心が耳の中央に安定し、首を激しく振ったり、ランニングで着地衝撃があってもズレることがありません。 - 密閉性:
JBL独自の「オーバルシェイプ(楕円形)」のノズルとイヤーチップを採用。
人間の耳穴は真円ではなく楕円形をしているため、この形状は理に叶っています。
隙間なくピタリと塞ぐことで、ANCをオンにする前から強力な遮音性を発揮します。 - 寝ホン適性:
耳からの飛び出しが少ないため、枕に頭を沈めても耳が痛くなりにくいです。
就寝前のASMRや音楽鑑賞用としても優秀なポテンシャルを持っています。
※注意点:
付属のイヤーチップはS/M/Lの3サイズ。
密閉性が音質とノイキャン性能に直結するため、購入後は面倒くさがらずに全サイズを試し、最適なフィット感を見つけることを強くおすすめします。
ケースからの取り出しやすさと携帯性
蓋なしデザインの真価は、日々のルーティンの中でこそ発揮されます。
一般的な完全ワイヤレスイヤホンを使用する場合、以下の動作が必要です。
- ケースをポケットから取り出す
- 両手を使って蓋を開ける(または器用に片手で弾く)
- イヤホンをつまんで取り出す
- 蓋を閉める
一方、WAVE BUDS 2のアクションはこうです。
- ケースを取り出す
- 親指でスライドして取り出す
「蓋を開ける」「蓋を閉める」という2つのアクションが消滅しました。
これは些細な違いに思えるかもしれませんが、1日に何度も出し入れするユーザーにとっては、蓄積されるストレスの差が歴然です。
ケース自体も非常にコンパクト(フリスクケースを一回り大きくした程度)で、ジーンズのコインポケットや、シャツの胸ポケットにもスルリと収まります。
丸みを帯びた形状は手の中に馴染み、無意識にいじりたくなるようなフィジェットトイ的な魅力すらあります。
JBL 「WAVE BUDS 2」の音質・ノイズキャンセリング・機能性の評価

ここでは、オーディオファンとしての厳しい目線で「音」と「機能」を深掘りします。
価格なりの妥協があるのか、それとも価格破壊なのか。忖度なしで評価します。
JBLらしい「量感ある低音」とクリアなボーカル表現
8mmのダイナミックドライバーが奏でるサウンドは、JBLの伝統である「バスサウンド」を継承しつつ、現代的なチューニングが施された「パワフル&クリア」な傾向です。
- 低音域:
間違いなくこのイヤホンの主役です。
バスドラムのキック音は「ドスン」と腹に響くような重みがあり、ベースラインのグルーヴ感も太く描写されます。
しかし、安価なイヤホンにありがちな「ボワついて他の音域を邪魔する」ような低音ではなく、輪郭の整った弾力のある低音です。
EDMやヒップホップを聴くと、思わず体が動き出すような高揚感があります。 - 中音域:
ここが前作からの大きな進化点です。
低音が豊かであるにもかかわらず、ボーカル(特に男性ボーカル)が埋もれずにグッと前に出てきます。
ポッドキャストやラジオ音声も非常に聴き取りやすく、「人の声」にフォーカスが当たっている印象です。 - 高音域):
刺さるような鋭さは抑えられ、長時間聴いても疲れにくいマイルドな仕上がりです。
シンバルの余韻やハイハットの刻みも必要十分に表現されますが、キラキラとした解像度を求めるというよりは、全体のバランスを整える役割に徹しています。 - ジャンル別相性:
- ◎ ロック・ポップス・EDM: 相性抜群。ライブ会場にいるような熱気を感じられます。
- ○ ジャズ・R&B: ウッドベースの響きが心地よい。
- △ クラシック: 繊細な弦楽器のニュアンスやホールの空気感を味わうには、少し音が元気すぎるかもしれません。
エントリークラスを超えたノイズキャンセリングの実力
「8,000円台のノイキャンなんて、気休めでしょ?」と思っていた筆者の予想は、良い意味で裏切られました。
- ノイズ低減効果:
電車内での検証では、走行中の「ゴーッ」という重低音ノイズを約7〜8割カットしてくれる印象です。
音楽を小音量でも流していれば、周囲の雑音はほぼ意識から消えます。
さすがに3万円クラスのハイエンド機(BoseやSony)のような「静寂の真空パック」とまではいきませんが、日常のストレスを軽減するには十分すぎる性能です。 - 風切り音:
屋外で使用した際、強い風が吹くとマイクが風を拾って「ボボボ」という音が多少入りますが、ビーンズ型の形状のおかげか、スティック型に比べると風の影響を受けにくい構造になっています。 - 圧迫感:
ANC特有の「耳が詰まるような圧迫感」は比較的少なめ。
長時間オンにしていても耳疲れしにくい、自然な効き味です。
待望の「マルチポイント」対応とアプリのカスタマイズ性
JBLの強みの一つは、エントリーモデルであっても上位機種と同じ専用アプリ「JBL Headphones」が使えることです。
このアプリの完成度が極めて高く、製品価値を大きく引き上げています。
■ アプリでできること(主要機能)
- 高精度イコライザー(EQ):
プリセット(JAZZ, VOCAL, BASSなど)を選ぶだけでなく、10バンドのグラフィックイコライザーで周波数ごとに細かく調整が可能。
「低音をもっと削りたい」「ボーカルをもっと立たせたい」といったマニアックな要望に応えてくれます。 - スマートオーディオ&ビデオモード:
通信品質を優先する「オーディオモード」と、遅延を最小限にする「ビデオモード」を切り替え可能。
ビデオモードにすると、YouTubeやNetflixでの口パクのズレがほぼ気にならないレベルまで改善されます。
ゲームプレイ時にも重宝します。 - ボイスアウェア機能:
通話中に自分の声をマイクで拾って耳に返す機能。
これの調整ができるため、耳栓をしたまま喋る時の「自分の声の大きさが分からなくなる不快感」を防げます。 - 操作カスタマイズ:
タップ操作(1回、2回、長押し)の割り当てを左右自由に変更可能。
音量調整をイヤホン単体で行えるように設定することもできます。
マルチポイントの挙動も非常に安定しており、PCでYouTubeを見ていてスマホに着信があると、瞬時に音声が切り替わります。
通話終了後は自動でPCの音声に戻るため、仕事の効率が格段に上がります。
JBL 「WAVE BUDS 2」を使用した私の体験談・レビュー

スペック解説だけでは伝わらない「生活の中でのリアルな使用感」をお伝えします。
1ヶ月間、メイン機として使い倒した私の日記的レビューです。
通勤ラッシュで実感した「0秒取り出し」の快適さ
毎朝の満員電車。乗り換えのタイミングや、車内アナウンスを聞くためにイヤホンを外す瞬間。
この「蓋なし」デザインが神がかっていました。
コートのポケットの中に手を入れた段階で、指先の感覚だけでケースの向きとイヤホンの位置が分かります。
ポケットの中でイヤホンを少しスライドさせておき、取り出すと同時に耳へ装着。
この一連の動作が流れるように行えます。
特に、片手にカバン、片手にスマホを持っているような状況下では、「親指一本で取り出せる」ことの恩恵は計り知れません。
他社のイヤホンを使っていた時の「ケースを開けるためにスマホを脇に挟む」という動作がいかに無駄だったかを痛感しました。
長時間のデスクワークでも疲れにくい装着感のリアル
私はライターという職業柄、1日中PCに向かって作業をします。
集中力を高めるためにBGMを流し続けるのですが、WAVE BUDS 2は3〜4時間着けっぱなしでも耳が痛くなりませんでした。
スティック型イヤホンだと、長時間装着時に耳の軟骨(珠間切痕)部分に棒の部分が当たって痛みを感じることがあるのですが、このモデルは耳の穴(外耳道)とコンチャの面だけで支えるため、圧力が分散されているようです。
また、物理ボタンではなくタッチセンサーなので、操作時にイヤホンを耳に押し込む必要がなく、耳穴への負担が少ないのも長時間使用における隠れたメリットです。
カフェ作業での遮音性と外音取り込みの使い勝手
週末によく利用するスタバでの使用感です。
ANCをオンにして「集中モード」に入ると、周囲の話し声やエスプレッソマシンの音が遠くに追いやられ、自分だけの書斎が出来上がります。
ホワイトノイズ(ANC特有のサーッという音)も非常に小さく、静かな曲を聴いていても気になりません。
そして秀逸だったのが「トークスルー機能」。
レジでの注文時や、店員さんがお水を注ぎに来てくれた時、左耳をポンポンと2回タップするだけで、再生音量が極小になり、マイクが外音を取り込みます。
イヤホンを外すという無粋な動作なしに「ありがとうございます」と自然に会話ができるスマートさは、一度体験すると手放せません。
取り込み音も自然で、マイクで拾ったような機械的な響きが少ない点も高評価です。
アプリのEQ(イコライザー)設定で激変するサウンド体験
デフォルトの音質も十分に楽しいのですが、私はアプリで少し調整を加え、さらに好みの音に仕上げました。
ここで、私が実際に設定して感動した「おすすめEQ設定」を共有します。
- 設定名: クリアボーカル&リッチベース
- 調整内容:
- 低音(32Hz〜64Hz): +2dB(少しだけ持ち上げて深みを出す)
- 中低音(250Hz〜500Hz): -1dB(少し下げて音の篭もりを取る)
- 中高音(2kHz〜4kHz): +3dB(ここを上げることでボーカルの艶とギターのキレが増す)
- 超高音(16kHz): +1dB(空気感をプラス)
この設定を適用すると、JBL特有の迫力はそのままに、女性ボーカルの息遣いやアコースティックギターの弦の響きが驚くほど鮮明になります。
「1万円以下のイヤホンでここまで音が変わるのか」と、オーディオ機器をいじる楽しさを再確認できました。ぜひ試してみてください。
意外と気になる?ワイヤレス充電非対応と実際のバッテリー持ち
正直に言えば、ワイヤレス充電(Qi)非対応なのは唯一にして最大の惜しいポイントです。
帰宅後、デスクの充電パッドにポンと置くだけで充電完了…という生活に慣れきっていた私にとって、USB-Cケーブルを探して挿すという動作は、最初のうちは少々手間に感じました。
ただ、救いなのが圧倒的なバッテリー持ちの良さです。
ケース併用で40時間も持つため、テレワークと通勤で毎日3〜4時間使っても、バッテリーが切れる気配がありません。実際に充電するのは週に1回、週末の夜だけ。
この頻度であれば、有線充電でもそこまで苦にはなりませんでした。
また、出かける直前に「充電がない!」と気づいても、10分充電すれば往復の通勤時間は余裕で持つため、バッテリーに関するストレスはワイヤレス充電がないことを補って余りあるほど低いです。
体験談の総括
私がこの1ヶ月で感じたWAVE BUDS 2の正体。
それは「生活に溶け込む、最強の日用品」です。
数万円する高級イヤホンは、音は良くても「傷つけたくない」「落としたくない」という心理が働き、扱いが慎重になりがちです。
しかし、WAVE BUDS 2はタフで、使いやすく、安価でありながら音質も機能も一級品。
気がつくと、手持ちの高級機よりも、このWAVE BUDS 2を無造作にポケットに突っ込んで出かける回数が増えていました。
「道具」としてこれほど信頼できるイヤホンは稀有な存在です。
JBL 「WAVE BUDS 2」に関するQ&A

JBL 「WAVE BUDS 2」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
iPhoneでも問題なく使えますか?
はい、非常に快適に使えます。
iPhoneが採用している高音質コーデック「AAC」に対応しているため、遅延が少なく高音質なサウンドを楽しめます。専用アプリ「JBL Headphones」もiOSに完全対応しており、すべての機能をiPhoneから設定可能です。
蓋がないケースですが、カバンの中で勝手に外れませんか?
通常の使用範囲ではまず外れません。
非常に強力なマグネットで固定されており、ケースを逆さにして振っても落ちないほどの吸着力があります。イヤホン収納部も深く設計されているため、カバンの中で他の荷物とぶつかって外れることは稀です。ただし、鍵などの鋭利なものと一緒にポケットに入れる際は、直接接触しないよう注意が必要です。
「マルチポイント」はどのように切り替わりますか?
再生停止・開始をするだけで自動的に切り替わります。
例えば、PCで動画を見ている時にスマホに着信があった場合、PCの動画を止めれば自動的にスマホの音声(着信音)に切り替わります。手動でBluetooth設定を開く必要はありません。事前に2台のデバイスとペアリング設定をしておく必要があります。
スポーツやランニングに使っても大丈夫ですか?
はい、適しています。
イヤホン本体は「IP54」の防塵防水性能を持っています。これは「粉塵の侵入を防ぎ、あらゆる方向からの水の飛まつに耐える」という等級です。雨や激しい運動による汗程度であれば問題なく使用できます。ただし、水没には対応していないため、プールやお風呂での使用は避けてください。
音ゲーや動画視聴での音ズレ(遅延)はありますか?
専用アプリの「ビデオモード」を使えばかなり軽減されます。
初期設定(オーディオモード)では多少の遅延を感じる場合がありますが、アプリから「ビデオモード」に切り替えることで、遅延を最小限に抑えられます。YouTubeやNetflixの視聴、カジュアルなゲームプレイには支障がないレベルになりますが、コンマ1秒を争う本格的な音ゲー(リズムゲーム)やFPSでは、わずかなズレを感じる可能性があります。
ワイヤレス充電には対応していますか?
いいえ、非対応です。
充電は付属のUSB Type-Cケーブルを使用した有線充電のみとなります。その代わり急速充電に対応しており、約10分の充電で約4時間の再生が可能です。
片耳だけでも使えますか?
はい、左右どちらでも片耳のみで使用可能です。
片方をケースに入れたまま、もう片方だけを耳に装着すれば自動的に片耳モード(モノラル)になります。通話時や、周囲の音を完全に聞きたい場合に便利です。
通話品質はどうですか?WEB会議で使えますか?
実用レベルで問題なく使えます。
周囲のノイズを抑えて声を届けるマイク性能があり、静かな室内であれば非常にクリアです。「ボイスアウェア機能」を使えば、自分の話し声をイヤホンから聞くことができるため、耳栓をした状態で喋る違和感も軽減されます。屋外の強風時などは多少ノイズが入ることがあります。
イヤーピースを他社製に交換できますか?
可能ですが、ケース収納時の干渉に注意が必要です。
ノズル形状は楕円形ですが、一般的な完全ワイヤレスイヤホン用のイヤーピースであれば装着できるものが多いです。ただし、WAVE BUDS 2はケース収納部がタイトな設計のため、高さのあるイヤーピースや傘の大きいイヤーピースを付けると、充電端子が接触せず充電できない場合があります。交換する際は「TWS専用設計(軸が短いタイプ)」のものをおすすめします。
蓋がないのでケース内部の汚れが心配です。掃除はどうすればいいですか?
綿棒やエアダスターでの定期的なお手入れを推奨します。
蓋がない構造上、どうしてもポケットの繊維や小さなホコリが溜まりやすくなります。1〜2週間に1度、乾いた綿棒でイヤホン収納部の底(充電端子付近)を優しく拭ってください。ホコリが溜まると充電不良の原因になります。また、PCのキーボード掃除などに使うエアダスターでシュッと吹き飛ばすのも効果的です。構造がオープンなので、逆に「掃除がしやすくて清潔を保てる」というメリットもあります。
「アンビエントアウェア」と「トークスルー」の違いは何ですか?
音楽を聴きながらか、会話に集中するか、の違いです。
- アンビエントアウェア: 音楽の音量はそのままで、周囲の環境音(車の音やアナウンスなど)を取り込みます。ランニング中や、外を歩く時に安全を確保したい場合に適しています。
- トークスルー: 音楽の音量を極限まで下げ(ほぼミュート)、人の話し声をマイクで増幅して聞き取りやすくします。コンビニのレジや、ちょっとした立ち話をする際にイヤホンを外さず会話するのに適しています。
イヤホン本体で音量調節はできますか?
はい、可能ですがアプリでの設定変更が必要です。
初期設定では音量操作が割り当てられていない場合がありますが、専用アプリ「JBL Headphones」の「操作のカスタマイズ」から、左右どちらかのタップ操作(1回タップで音量アップ、2回でダウンなど)に「音量コントロール」を割り当てることができます。
ケースのバッテリー残量はどこで確認できますか?
ケース前面のLEDインジケーターの色で判断します。
イヤホンをケースに出し入れした際などにLEDが点灯します。
- 緑色: バッテリー残量 十分あり
- オレンジ色: バッテリー残量 少なめ(充電推奨)
- 赤色: バッテリー残量 わずか(要充電) 詳細な残量(%表示)を知りたい場合は、イヤホンを接続した状態でアプリを開くと確認できます。
就寝用(寝ホン)として使っても耳は痛くなりませんか?
比較的痛くなりにくい形状ですが、個人差があります。
スティック型のように耳から飛び出す部分(軸)がないため、横向きに寝ても枕と干渉しにくいデザインです。ただし、完全に耳の中に埋まるほど薄型ではないため、長時間横向きで圧迫されると痛みを感じる場合もあります。ASMRなどを聴きながら仰向けで寝る分には非常に快適です。
アプリを使わなくても使用できますか?
使えますが、機能の50%も発揮できないため強くおすすめしません。
Bluetooth接続さえすれば音楽は聴けますし、初期設定のノイズキャンセリング操作も可能です。しかし、音質の調整(EQ)、操作ボタンの変更、ビデオモードへの切り替え、ファームウェアのアップデートなどはアプリが必須です。WAVE BUDS 2のコスパを最大化するためには、アプリの導入は必須と考えてください。
JBL 「WAVE BUDS 2」レビューのまとめ

最後に、JBL WAVE BUDS 2の総評と、どのような人におすすめできるか(あるいはできないか)を、競合製品との比較を交えてまとめます。
このモデルを選ぶべきメリット
- 唯一無二の「蓋なし」体験: 0.1秒でも速く音楽を聴きたい人への究極の回答。
- JBLブランドの音作り: 8,000円台とは思えない、リッチで楽しいサウンドクオリティ。
- 妥協なき機能性: ANC、マルチポイント、外音取り込み、IP54防水防塵、アプリ対応と、必要な機能が全部入り。
- 高機能アプリ: 数万円クラスのモデルと同じアプリ体験ができるコスパの良さ。
- ポータビリティ: 圧倒的な小ささと軽さで、荷物を減らしたいミニマリストに最適。
購入前に知っておくべき注意点(デメリット)
- ワイヤレス充電非対応: 充電はケーブル必須。
- 高音質コーデック(LDAC等)非対応: ハイレゾ相当のデータ転送は不可(ただし、ドライバーの質が良いので音は良い)。
- 装着センサーなし: 耳から外しても音楽は自動停止しない(片耳モードへの切り替えはスムーズ)。
- ホコリのメンテナンス: 定期的にケース内を拭く必要がある(綿棒推奨)。
同価格帯のライバル機(Anker等)との比較と選び方
1万円以下の市場は激戦区です。主なライバル機との比較をまとめました。
| 特徴 | JBL WAVE BUDS 2 | Anker Soundcore P40i | EarFun Air Pro 4 |
| 価格 | 約8,800円 | 約7,990円 | 約9,990円 |
| 形状 | ビーンズ型(蓋なし) | スティック型 | スティック型 |
| 音質 | 元気で楽しいドンシャリ | 重低音寄り | バランス型 |
| ノイキャン | 実用レベル(自然) | 強め | 非常に強い |
| 機能性 | シンプル&タフ | スマホスタンド機能など多機能 | LDAC対応などスペック番長 |
| ワイヤレス充電 | × | ○ | ○ |
| マルチポイント | ○ | ○ | ○ |
- Anker Soundcore P40i: ワイヤレス充電やスマホスタンド機能など「ギミックの多さ」と「ガジェット的な便利さ」を求めるならこちら。
- EarFun Air Pro 4: LDAC対応や最強クラスのノイキャンなど「カタログスペックの高さ」を重視するならこちら。
- JBL WAVE BUDS 2: 「音質の楽しさ」と「取り回しの良さ(蓋なし)」、そして「老舗オーディオブランドの安心感」を求めるなら間違いなくこれ。
結論:
「機能の数」ではなく、「使う瞬間の快適さ」と「音楽を聴く楽しさ」で選ぶなら、JBLに軍配が上がります。
おすすめできる人
- とにかくイヤホンの出し入れを面倒に感じている人(これが最大の理由になります)
- 1万円以下で、謎の中華ブランドではなく信頼できるメーカーの「良い音」を聴きたい人
- スマホとPC、2台のデバイスを頻繁に行き来するビジネスパーソン
- 初めてのノイズキャンセリングイヤホンを探している学生や社会人
- 耳の穴が小さく、スティック型のイヤホンだと不安定で落ちやすい人
- ランニングやジムでガシガシ使えるタフな相棒が欲しい人
おすすめできない人
- 自宅やオフィスにワイヤレス充電環境が整っており、ケーブル充電に戻れない人
- Androidスマホを持っていて、LDACなどのハイレゾコーデックで音質を極めたい人
- イヤホンを耳から外したら自動で音楽が止まってほしい(装着検知機能必須)人
- ケースに蓋がないと不安で夜も眠れないほど神経質な人
JBL 「WAVE BUDS 2」レビューの総評:1万円以下で手に入るJBLサウンドの最適解
JBL WAVE BUDS 2は、単なるエントリーモデルの枠を超えた意欲作です。
コストを抑えるべきところ(ワイヤレス充電、装着センサー、豪華な外箱)は大胆にカットし、ユーザー体験に直結する本質的な部分(音質、マルチポイント、ANC、アプリ、そして取り出しやすさ)には徹底的にコストをかける。
そのバランス感覚が見事としか言いようがありません。
特に「蓋なし」という個性は、一度慣れると他のイヤホンが「なんでいちいち蓋を開けなきゃいけないんだ?」と煩わしく感じるほどの魔力があります。
それは、音楽へのアクセス速度を極限まで高めた結果です。
通勤、通学、デスクワーク、そして家事の合間まで。
あなたの日常に、音楽という彩りを「もっと手軽に、もっと良い音で」プラスしたいなら、JBL WAVE BUDS 2は間違いなく、今一番推せる賢い選択肢です。
迷っているなら、この「蓋のない開放感」をぜひ体験してみてください。
きっと、あなたのポケットの定位置になるはずです。


