高級ヘッドホンの世界には、機能性だけでなく、クラフトマンシップや音響設計に対する情熱が込められた製品が数多く存在します。
その中でも近年注目を集めているブランドのひとつが「SIVGA(シヴガ)」です。
天然木材を用いた美しいハウジングや、自社開発の高性能ドライバーユニットで知られ、リスナーにユニークかつ上質なリスニング体験を提供しています。
今回取り上げるのは、そんなSIVGAが送り出す密閉型ヘッドホン「PENG(ペン)」です。
「PENG」は、同社の象徴ともいえる50mm径のダイナミックドライバーを搭載しつつも、従来機とは異なるサファイア複合振動板を新たに採用。
これにより、これまでのモデルにはなかった音色と表現力を実現しています。
また、名称に冠された「PENG」は、中国神話に登場する巨大な伝説の鳥「鵬」に由来するとされ、その名にふさわしいスケール感のある音作りが随所に感じられます。
7万円前後という価格帯も、高級機としての位置付けを明確にしており、SIVGAの本気度が伺える製品です。
この記事では、「PENG」の設計思想から音質傾向、他モデルとの比較、そして実際の使用感まで、幅広い視点でレビューしていきます。
音にこだわるリスナーや、次なる愛機を探している方にとって、有益な判断材料になるような情報をお届けできればと思います。

SIVGA 「PENG」の基本情報と設計思想

SIVGA 「PENG」は、SIVGAが手掛ける密閉型ヘッドホンの中でも、特に技術力と素材へのこだわりが強く反映された上位モデルです。
ここでは、ブランドとしての背景や製品名の意味、技術的な注目点などを整理しながら、「PENG」という製品がどのような思想で生まれたのかを紐解いていきます。
ブランドとしてのSIVGAの特徴
SIVGAは中国発のオーディオブランドでありながら、海外市場、特に日本でも着実にファンを増やしてきました。
最大の特徴は、木材を用いた温かみのあるデザインと自社開発のドライバーユニットによる音作りです。
SIVGAブランドの主な特徴:
- 天然木材のハウジング使用
- 50mm径の大型ダイナミックドライバーを中心とした設計
- 自社開発の振動板技術(ポリカーボネート系、チタン、LCPなど)
- 上位モデルでは金属シャーシとヘッドバンドの二重構造
- 長時間使用を想定した快適性重視のイヤーパッドと装着性
SIVGAは、見た目の美しさと音響性能を両立させた、職人気質を感じさせる製品づくりが支持されています。
「PENG」に込められた名前の由来と意味
「PENG(鵬)」という名称は、中国の古代神話に登場する巨大な鳥に由来します。
これは、単なる名前以上の意味を持ち、音のスケール感・包容力・圧倒的な空間表現を象徴するものと捉えられます。
一方で、「Peng」という言葉は英語圏のスラングとして「魅力的」「かっこいい」といった肯定的な意味も持ち、グローバル市場でも響きの良いブランドネーミングになっています。
このように、文化的背景とグローバルな感性を両立させるネーミング戦略は、SIVGAの国際展開を見据えた意欲の現れとも言えるでしょう。
サファイア複合振動板と50mmドライバの魅力
SIVGA 「PENG」の中核を成すのが、サファイア複合振動板を採用した50mm径のダイナミックドライバーです。
これは、同社のフラッグシップである平面駆動型「P2 Pro」でも使用された素材技術をダイナミック型に転用した、初のモデルです。
技術要素 | 詳細 |
---|---|
振動板構造 | サファイアドーム + LCP(液晶ポリマー)サスペンション |
ドライバー直径 | 50mm(自社開発) |
構造技術 | ダイヤモンドカット骨格構造・CNCアルミ加工フレーム |
安定化システム | 銅リングスタビライザーによる歪み低減 |
過渡応答性能 | 30%向上(LCPによる軽量かつ高剛性特性) |
インピーダンス | 約340Ω(要高出力アンプ) |
この複合振動板構造は、以下のような音質面での利点をもたらします:
- 高音域の繊細な伸びと透明感
- 中音域のナチュラルさと柔らかい余韻
- 低音の過度な膨らみを抑えた締まりある表現
- セミオープンに近い響き感覚を持つ密閉型のサウンド
さらに、振動板周辺には反響をコントロールするためのチャンバー構造や、共振を防ぐためのCNC削り出しシャーシを採用。
音質面での明確なビジョンと、素材選定へのこだわりが感じられる構成です。
SIVGA 「PENG」は、これまでSIVGAが培ってきた木材と金属の融合技術、装着感と音質のバランス設計、そして素材レベルでの音響調整という3つの要素が高次元で融合された製品といえます。
SIVGA 「PENG」の外観・装着感・ビルドクオリティ

SIVGA 「PENG」は、外観の美しさと物理的な造り込みの両面で、まさに「所有する喜び」を感じさせる高級ヘッドホンです。
ここでは、素材・構造・装着性といった観点から「PENG」の外観と品質を詳しく解説します。
ウッドハウジングとメタルフレームの高級感
SIVGAの象徴ともいえるのが、天然木材を活かしたハウジング。
その伝統は「PENG」でも健在であり、アフリカンゼブラウッド(African Zebrawood)を採用。
縞模様の美しさと密度の高い光沢感が印象的で、インテリアとしても映える上質な質感です。
- ハウジング素材:アフリカンゼブラウッド(高硬度・高光沢)
- フレーム素材:航空機グレードのアルミニウム(CNC加工)
- 仕上げ:ガンメタル調の陽極酸化処理
- 全体構成:樹脂パーツ不使用で金属と木材のみ
また、ヘッドホン全体は樹脂パーツをほぼ使わず、金属と木材のみで構成されており、高級機らしい堅牢さと質感が際立っています。
金属部の質感や加工具合も丁寧で、長期間の使用にも耐えうる設計です。
快適性を追求したイヤーパッドとヘッドバンド
「PENG」は見た目の重厚感に反して、装着時の快適性にも非常に優れています。
330gという重量を感じさせないのは、パッドやバンドに徹底して工夫が凝らされているからです。
- イヤーパッド素材:通気性に優れた布系(合皮ではない)
- 内部構造:低反発フォーム+角度付き構造(人間工学に基づく)
- ヘッドバンド:プレミアムラムレザー(吸いつくような手触り)
- ヘッドバンド構造:二重構造(アーチ+フレームで圧力分散)
項目 | 内容 |
---|---|
装着圧 | 自然でソフト、耳や頭頂部への局所的な負担を軽減 |
通気性 | イヤーカップ上部に通気孔があり、蒸れを大幅軽減 |
耳の当たり | 大型パッドで耳に触れず、長時間の使用でも痛みが出にくい |
可動性 | イヤーカップは180度回転可能、持ち運び時の収納性も高い |
フィット感 | 大型イヤーパッドと絶妙なアーチ形状で頭部にフィット |
このような工夫により、重さを感じさせずに長時間装着していられる点は、まさにSIVGAらしい仕上がりといえます。
密閉型構造と音漏れ・遮音性の実際
「PENG」は公式には「クローズドバック(密閉型)」として設計されていますが、構造的にはセミオープンに近い特徴を併せ持っています。
具体的には、ハウジング上部に開口部があり、そこから音がある程度外部に漏れるため、密閉型としてはやや音漏れがあるタイプです。
- 遮音性:外部の騒音はしっかり遮断される(外音遮断力は高め)
- 音漏れ:大音量時にはある程度漏れる(静かな空間では注意)
- 使用環境の目安:
- ◎:室内でのリスニング、ホームスタジオ、深夜の視聴
- △:図書館、静かなカフェなど周囲に配慮が必要な場所
この構造によって、外音を遮断しつつも、音場に開放感を持たせるという、バランス型のサウンドデザインが実現されています。
ビルドクオリティの総評
項目 | 評価 |
---|---|
素材の上質さ | ★★★★★(天然木+CNC金属) |
組み立て精度 | ★★★★★(隙間なし、ガタつきなし) |
装着快適性 | ★★★★☆(長時間でも疲れにくい) |
携帯性 | ★★★★☆(折りたたみ対応、専用ケース付属) |
音漏れ/遮音性 | ★★★☆☆(音漏れは少しあるが許容範囲) |
外観と装着感において、SIVGA 「PENG」は非常に完成度の高いヘッドホンです。
木材と金属の融合がもたらす美しさ、そして快適な装着性と堅牢な作りは、この価格帯におけるヘッドホンの中でも突出した存在感を放っています。
音質レビュー:SIVGA 「PENG」のサウンドプロファイル

SIVGA 「PENG」は、サファイア複合振動板とLCPサスペンションを搭載した50mmダイナミックドライバーによって、SIVGAらしい豊かな響きと繊細な音の描写を両立しています。
ここでは、「PENG」の音質傾向を帯域ごとに詳細に解説し、他モデルとの比較やEQ調整の可能性にも触れていきます。
高音域・中音域・低音域それぞれの傾向
「PENG」のサウンドは、寒色寄りながらも刺々しさのない滑らかさと、豊かな余韻を伴った空間表現が特徴です。
ドライバー素材の個性がしっかり音に表れており、クラシックやジャズなどの複雑な楽曲でも、情報量を失わずに描ききる力を持っています。
以下は帯域ごとの詳細な傾向です。
帯域 | 特徴 |
---|---|
高音域 | ・きらびやかで伸びがあり、セラミック系に似た鋭さと透明感 ・耳に刺さらず、適度に柔らかい余韻を持つ |
中音域 | ・自然なボーカル再生が得意 ・中域が沈み込まず前に出てくるため、人の声が聴きやすい ・反響音の処理が絶妙で、ホールで聴いているような立体感がある |
低音域 | ・過度な量感はなく、締まり重視 ・サブベースの押し出しは控えめ ・量より質、重厚で輪郭のある低音表現が可能 |
総じて、「派手な音作り」ではなく、丁寧な音像描写と空間表現を重視したニュートラル志向の音質です。
他モデル(SV023・P2 Pro)との比較
SIVGA 「PENG」は、同ブランドの他の人気モデルとも比較されやすく、それぞれの個性が明確に分かれています。
代表的な2モデル「SV023」「P2 Pro」との比較を通じて、PENGの立ち位置を明らかにしてみましょう。
モデル名 | タイプ | 特徴的な傾向 |
---|---|---|
SV023 | セミオープン | ・最も高音が出るモデル ・Vocalが前面に出る ・派手でわかりやすい音 |
P2 Pro | 平面駆動 | ・音の分離感が非常に高い ・中高域が明瞭 ・単音の芯が通った表現力 |
PENG | 密閉型 | ・響きと余韻の豊かさが魅力 ・寒色系ながら温もりがある ・音場が広く、和音の重厚さに優れる |
- SV023は「元気で抜けの良い音」が好きな人向け
- P2 Proは「情報量と精密な描写」を重視する人に最適
- PENGは「しっとりとした音、空間性、上品なまとまり」を求める人にフィット
音場・分離感・EQ調整の可能性
「PENG」は密閉型でありながら、広く感じられる音場と、定位感の優れた空間構築能力を兼ね備えています。
- 音場の広さ:セミオープンに匹敵。まるで木造ホールの中にいるような、自然な反響と距離感。
- 分離感:各楽器の位置が明確にわかる。重厚な和音でも「ごちゃつかない」設計。
- ボーカル定位:中音域に適度な張り出しがあり、センターに自然に配置される。
一方で、中高域にやや抑制された印象があるため、イヤフォン中心でリスニングしている人には少し物足りなく感じる可能性もあります。
その場合は、EQでの調整が有効です。
例:
- 2kHz〜4kHzを軽く持ち上げることで、ボーカルの抜け感が向上
- 8kHz以降を補正することで、さらに高域の透明感をプラス
こうした調整を加えることで、より自分好みの音に仕上げられるのもPENGの魅力です。
総合的な音質バランス評価
評価項目 | 評価内容 |
---|---|
解像度 | 高い。細部の描写が緻密で情報量豊富 |
音場 | 広く自然。密閉型としては異例の広さ |
音の分離感 | 優れており、多層的なサウンドも破綻しない |
音の傾向 | 寒色系寄りのニュートラル、バランス型 |
低音の質 | 締まり重視、適度な量感と重厚感を両立 |
高音の質 | 伸びやかで鋭くなりすぎない繊細なチューニング |
SIVGA 「PENG」を使用した私の体験談・レビュー

SIVGA 「PENG」を実際に使ってみた際の印象は、第一に「質感と音がしっかりリンクしている」というものでした。
木材と金属で構成された重厚な筐体から流れ出す音は、まさにそのビジュアル通り、落ち着きと風格を感じさせるものでした。
■ 使用前の第一印象:高級感と造りの丁寧さに驚かされる
箱を開けた瞬間に感じたのは、「これは工業製品というより“作品”に近いな」という印象です。
アフリカンゼブラウッドの美しい木目は、照明の下で表情を変え、見る角度によって立体感すら感じさせる仕上がり。
航空グレードアルミニウムのフレームはエッジがきちんと面取りされており、手に持ったときの冷たさと重みが精密機械としての完成度の高さを物語っています。
■ 装着時のリアルな感覚:重いのに「軽く感じる」フィッティング
重量は約330gと公表されていますが、実際に装着してみると「もっと軽いのでは?」と思うほど快適です。
その理由は以下の通り:
- ヘッドバンドが絶妙なアーチ形状を描いており、圧が一点に集中せず、頭全体に分散される。
- イヤーパッドが斜めに傾いた人間工学設計になっており、耳に押し付けるのではなく、そっと包むように収まる。
- 表面素材が布系なので、蒸れや汗によるベタつきが少ない。
私は1日3〜4時間連続でリスニングすることがありますが、頭頂部や耳の周囲に「熱がこもる」「痛くなる」といった不快感は一切感じませんでした。
■ 使用シーン①:ボーカル中心のアコースティック曲での没入体験
まずはしっとりとした女性ボーカルを中心に試聴しました。
声の出だしに含まれる息のニュアンスや、マイクに近づいた際の微細な空気感が非常に自然かつリアルに再現されます。
驚いたのは、「音が良い」よりも先に、「歌が近いのに刺さらない」という感覚を持ったこと。
これは高域の設計が「伸びる」けれど「尖らない」という非常に繊細なチューニングになっているからだと思われます。
■ 使用シーン②:クラシックで体験するホール感と分離力
次に弦楽四重奏や交響曲を聴いたところ、密閉型とは思えないほどの音場の広がりと楽器間の分離が印象的でした。
とくに良かったのは以下の2点:
- ホールに立って音を聞いているかのような反響の自然さ
- 複数のバイオリンやビオラの響きが「重なる」のではなく「重なり合う」描写
たとえば弦の細かいビブラートや、チェロが低く支える音の質感までも見えてくるようで、「空気を感じる音」という表現がまさにピッタリでした。
■ 使用シーン③:ポップスやエレクトロでの量感と芯の太さ
打ち込みやリズムセクションが強調された楽曲においても、「PENG」は低域がぼやけず、非常に明瞭かつタイトに鳴ります。
ただし、ズンズンと沈み込むようなサブベース感はやや抑え気味。
その分、ベースラインやキックの「質量」が伝わってくるタイプです。EQで低域を少し持ち上げると、より一般的なドンシャリ的快感にも近づきます。
■ 日常使いで気づいたポイント
- 音漏れは控えめながらゼロではない:静かな室内で音量を上げると、近くにいる人にはわずかに聞こえる。
- 通気性が高く、夏場でも蒸れにくい:布系イヤーパッドのおかげで、長時間の使用でもサラッとした感触が保たれる。
- イヤーカップが180度回転することで収納性が高い:付属のハードケースも作りがしっかりしており、持ち運びも安心。
- バランス接続(4.4mm)が基本仕様:スマホやPC直挿しでは鳴らしにくく、据え置きアンプとの組み合わせが必須。
■ 「PENG」を使用してみた感想総括
SIVGA 「PENG」は、リスナーに「音楽の空間」を体験させてくれる数少ないヘッドホンのひとつです。
低域が過剰に主張することなく、高域が刺さることもなく、それでいて各帯域が適切に分離される理想的なバランス。使用環境が整っていれば、その実力を最大限に発揮します。
日常使いの中でも、1日の終わりにゆったりと音楽を聴きながら過ごす時間に、これ以上ない“贅沢な一台”として選びたくなる。
そんな体験がSIVGA P「PENG」にはありました。
SIVGA 「PENG」に関するQ&A

SIVGA 「PENG」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
「PENG」はどんな人におすすめですか?
音楽をじっくり鑑賞したい人、高解像度な音質と自然な響きを両立させたい人におすすめです。特にクラシックやジャズ、アコースティック系のジャンルとの相性が良く、過度な演出がないバランス重視の音を好む方に向いています。
駆動にはどの程度のアンプ出力が必要ですか?
インピーダンスが340Ωと非常に高いため、据え置き型のヘッドホンアンプがほぼ必須です。ポータブルDAPやスマホの出力では力不足で、本来の音質を発揮できません。ハイゲイン対応機器を推奨します。
密閉型とのことですが、音漏れはどれくらいありますか?
完全密閉ではなく、上部に通気孔が設けられている構造のため、実質はセミオープンに近い音漏れがあります。大音量では外に音が漏れるため、静かな場所での使用時には注意が必要です。
低音の迫力はありますか?
「PENG」は低音の「量感」よりも「質感」や「締まり」を重視しています。ドンシャリ系のヘッドホンに慣れている方にはやや控えめに感じられるかもしれませんが、ベースラインの輪郭が明確で、輪郭ある重厚な低音が楽しめます。
長時間使用しても疲れませんか?
イヤーパッドやヘッドバンドの構造が人間工学に基づいて設計されており、装着時の圧力が自然に分散されるため、長時間使用しても疲れにくいです。素材も通気性のある布系で、夏場でも蒸れにくい仕様になっています。
ケーブルの変更は可能?バランス接続じゃないと使えない?
「PENG」は左右独立の3.5mmジャック仕様のリケーブル対応モデルです。標準では4.4mmバランスケーブルが付属していますが、3.5mmアンバランス変換ケーブルも同梱されており、通常のプレイヤーでも使用できます(ただし出力不足には注意)。
密閉型なのに音場が広く感じるのはなぜ?
「PENG」は密閉型でありながら、ハウジング上部に通気孔を設けた特殊構造と、ウッドハウジングの反響特性により、空間的な広がりを実現しています。開放型ほどではないものの、立体的な音場を感じられる設計になっています。
音楽以外にも映画やゲーム用途に使えますか?
高い分離性能と定位の明瞭さにより、映画のセリフやゲームの環境音も非常に聞き取りやすく、臨場感があります。ただし駆動力が必要なため、ゲーム機やテレビに直挿しするにはアンプが必要になる点に注意してください。
冬場や夏場で使用感に違いはありますか?
イヤーパッドの表面が合皮ではなく布系素材のため、夏でも蒸れにくく、冬場も冷たくなりすぎない点が快適さにつながります。長時間の使用でも肌との接触による不快感が少ない設計です。
音楽ジャンルごとの相性は?
「PENG」はバランス型のサウンド傾向で、クラシック・ジャズ・アコースティックなど空気感や余韻を重視するジャンルに非常に向いています。一方、EDMやヒップホップなど重低音重視の楽曲では、やや穏やかに感じる可能性があります。
イヤーパッドの交換は可能?純正以外でも使える?
イヤーパッドは交換可能ですが、独自形状のため社外品との互換性は限定的です。SIVGA製の純正交換パッドを入手するのが最も確実で、装着感や音質のバランスも保てます。
重量感は気にならない?
実測で約330gとやや重めの部類ですが、ヘッドバンドとイヤーパッドの設計が優れており、体感重量は軽く感じられます。装着バランスが良いため、個人的には数時間の使用でも疲労感はほとんどありませんでした。
音が地味に感じることはありますか?
「PENG」は派手さや強調された音作りではなく、自然でフラットに近い音色です。そのため、音楽の“ノリ”や“刺激”を重視する人には少し物足りなく感じることもあります。ただし、これは好みの問題であり、リスニングの目的次第とも言えます。
SIVGA 「PENG」レビューのまとめ

SIVGA 「PENG」は、音質・構造・装着感のすべてにおいて、ハイエンドヘッドホンとして非常に高い完成度を誇る製品です。
ここでは、各観点からその特長と評価ポイントを整理しながら、どのようなユーザーに向いているのか、そして購入に際しての判断材料となる情報をまとめていきます。
■ 音質面の総評
- 高音域:透明感と伸びがあり、セラミックや平面駆動に通じる繊細さ。刺さらず自然。
- 中音域:ボーカルが自然に浮かび上がる。ホール感のある空間表現で音に立体感。
- 低音域:重低音は控えめだが、芯があり輪郭が明確。量より質を重視した設計。
- 音場/分離:密閉型としては異例の広さ。楽器の配置が明確で、重厚な和音表現が秀逸。
■ デザイン・装着性・構造
- ゼブラウッドとCNC加工アルミによる極めて高い質感と剛性
- ヘッドバンドとイヤーパッドは人間工学設計で快適な長時間リスニングを実現
- 330gの重量を感じさせない装着バランス
- イヤーパッドは布系素材で通気性が良く、蒸れにくい設計
- 音漏れは若干あるため、使用場所は選ぶ必要あり
■ 実用性・環境要件
- インピーダンス340Ωのため、駆動には据え置き型アンプが必要
- ケーブルはリケーブル対応(左右独立3.5mm)で、付属の4.4mm→3.5mm変換アダプタで対応可能
- 専用ハードケースや高品位ケーブルなど、付属品も抜かりない
■ 他モデルとの比較で見える立ち位置
モデル名 | 特徴 | PENGとの違い |
---|---|---|
SV023 | セミオープン/派手な高音/元気系 | よりボーカル前面・高域が強いが音場は控えめ |
P2 Pro | 平面駆動/解像度重視 | 単音の明瞭さに優れるが、余韻や温かみは控えめ |
PENG | 密閉型/空間表現/バランス型 | 音の温度感と立体感のバランスが取れている |
■ 向いているユーザー/向いていないユーザー
おすすめのユーザー
- 空間の広がりや楽器の響きを楽しみたい人
- しっとりとした音、柔らかな余韻を重視する人
- 高音質と快適性を両立させたい本格派のリスナー
- アンプを含めたオーディオ環境を整えられる人
向いていない可能性のあるユーザー
- 低音重視・ドンシャリサウンドが好みの人
- 手軽にポータブル機器で使いたい人
- 音漏れのない完全な密閉型を求めている人
SIVGA 「PENG」レビューの総括
SIVGA 「PENG」は、その見た目から伝わる上質さと同じくらい、音の内側にも深い魅力が詰まったヘッドホンです。
サファイア複合振動板とLCPサスペンションが生み出す音は、寒色系の澄んだ音色をベースにしながらも、木製ハウジング特有の柔らかな響きと余韻を伴い、音楽に立体感と温度をもたらします。
細部まで丁寧に設計された装着感や、洗練されたビルドクオリティは、長時間のリスニングでも快適な体験を提供し、機能美と実用性の両立を実感させてくれます。
ただし、真価を引き出すためには相応の再生環境が求められ、手軽に扱える製品ではないという一面もあります。
それでも、このクラスならではの音楽的没入感は、確かな投資価値として耳と心に返ってくるはずです。
音に対する感性が成熟した今だからこそ、その違いに気づける。
SIVGA 「PENG」は、そんな音の深みに足を踏み入れたい人にこそ相応しい一台です。
