スマートフォンからイヤホンジャックが消えて久しい現代ですが、「お気に入りの有線イヤホンで、もっと良い音を楽しみたい」というニーズは日々高まっています。
ワイヤレスの手軽さも素晴らしいですが、じっくりと音楽の世界に浸りたい時には、やはり有線接続ならではの圧倒的な情報量とクリアなサウンドが欠かせません。
そんな時に大活躍するのが、スマホに繋ぐだけで手軽に音質をアップグレードできる「ドングルDAC(ポータブルUSB DAC)」です。
今回は、数あるオーディオブランドの中でも、美しいデザインと独自のサウンドで高い評価を得ている「TANCHJIM(タンチジム)」の新作モデルをご紹介します。
【今回レビューする製品:TANCHJIM SPACE II】
- 価格帯:
約1万5000円前後(手に取りやすいミドルクラス) - コンセプト:
超軽量・コンパクトでありながら、上位機種に迫る高音質を実現 - 主なターゲット:
毎日スマホで音楽を聴き、バッテリー消費や持ち運びの重さを気にせず高音質化したい方
この「SPACE II」は、単なる音の変換器ではありません。
圧倒的な軽さと、驚くほどの超省電力設計を備えた、まさに「日常使いの最適解」とも言えるモデルです。
本記事では、このSPACE IIがどれほどのポテンシャルを秘めているのか、細かなスペックの解説から始まり、上位モデル「SPACE Pro」との具体的な比較、専用アプリを使ったマニアックな遊び方までを徹底的に解説していきます。
あなたの音楽ライフを劇的に変えるかもしれない小さな相棒について、ぜひ最後までじっくりとご覧ください。
- TANCHJIM SPACE IIの基本スペックと特徴
- TANCHJIM SPACE IIの上位モデル「SPACE Pro」との比較
- 専用アプリによるTANCHJIM SPACE IIカスタマイズ性
- TANCHJIM SPACE IIを使用した私の体験談レビュー
- TANCHJIM SPACE IIに関するQ&A
- Q. iPhoneでも問題なく使うことはできますか?
- Q. マイク付きイヤホンを繋いで、通話やオンライン会議に使えますか?
- Q. 上位モデルの「SPACE Pro」とどちらを買うべきか迷っています。
- Q. ドングルDACを使うと、スマホのバッテリーがすぐに減ってしまいませんか?
- Q. 長時間使っていると、本体が熱くなったりしませんか?
- Q. SPACE IIは、どんな音の傾向のイヤホンと相性が良いですか?
- Q. 無音の時に「サーッ」というホワイトノイズは聴こえますか?
- Q. 4.4mmバランス接続と3.5mm接続では、どのような違いがありますか?
- Q. 本体側面のボタンで何が操作できますか?
- Q. パソコン(WindowsやMac)に繋いでも使えますか?
- Q. アプリの「パラメトリックイコライザー(PEQ)」は初心者には難しいですか?
- Q. 映画やゲームプレイ用の「サラウンド機能」はありますか?
- TANCHJIM SPACE IIレビューのまとめ
TANCHJIM SPACE IIの基本スペックと特徴

まずは、SPACE IIという製品の土台となる基礎体力、つまり基本スペックと、本機を語る上で絶対に外せない3つの大きな特徴から見ていきましょう。
専門的な数値が並ぶスペック表も、それが実際の使い勝手にどう直結するのかを紐解いていくと、非常に面白い発見があります。
超軽量・コンパクトなデザインと携帯性
ポータブルオーディオにおいて、音質と同等かそれ以上に重要になるのが「重さとサイズ」です。
どんなに素晴らしい音を奏でる機材でも、レンガのように重くて大きければ、次第に持ち歩くのが億劫になってしまいます。
SPACE IIは、この携帯性において他の追随を許さない圧倒的なアドバンテージを持っています。
以下の表で、デザインや物理的な仕様についてまとめました。
| 項目 | 詳細な仕様と得られるメリット |
| 重量 | 約15g。一般的な単三電池(約23g)よりも遥かに軽く、ケーブルの一部のように感じます。 |
| 本体素材 | アルミニウム合金(CNC削り出し)。軽量でありながら、外部の電磁ノイズを遮断し、高い剛性を誇ります。 |
| サイズ感 | 大人の指先にちょこんと乗るほどのミニマムサイズ。スマホの幅にすっぽりと収まります。 |
| カラー展開 | ガンメタル、ブラック、ブルーグラデーションの全3色展開。好みに合わせて選べます。 |
【圧倒的な携帯性がもたらす日常のメリット】
- ポケットの中が快適:
スマホに繋いだままズボンのポケットに入れても、ゴツゴツと邪魔になることがありません。 - 端子への負荷が少ない:
機材自体が非常に軽いため、スマホのUSBポートやイヤホンのプラグが重みで下に引っ張られる不快感が皆無です。
断線のリスクも減らせます。 - ファッション性の高さ:
特に「ブルーグラデーション」のような美しいカラーリングは、無骨なガジェット感を薄め、ファッションアイテムの一部としても映える仕上がりです。
これほど軽くてコンパクトだと、マグセーフ対応の専用アクセサリーなどでスマホの背面に固定しなくても、自然とイヤホンケーブルの延長線上のパーツとして、全く違和感なく使うことができます。
搭載されているDACチップと回路設計
音質の要となる心臓部、つまり内部構造も、非常に贅沢かつスマートに設計されています。
難しいオーディオの専門用語はなるべく避けて、直感的に分かりやすいリスト形式で、その凄さを解説します。
- シーラス・ロジック社製「CS43131」をデュアル搭載(2基搭載)
- 音が混ざらない:
左右のチャンネル(L側とR側)の音をそれぞれ独立したチップで処理するため、音が中央で混ざらず、立体的で非常に見通しの良いクリアなサウンドステージを生み出します。 - 効率的な設計:
このチップは、DAC(変換器)の中にアンプ(音を増幅する機能)が最初から組み込まれています。
そのため、本体内部の回路を非常にシンプルに保つことができ、後述するノイズの少なさと省電力性に大きく貢献しています。
- 音が混ざらない:
- 自社開発の「クリーンブリッジ(PureBridge)USB入力チップ」を採用
- 入り口でノイズを遮断:
スマホやPCから送られてくるデジタル信号には、実は目に見えない微細なノイズが含まれています。このチップは、信号の入り口でデータを綺麗に整流してくれます。 - 例えるなら:
浄水器のようなものです。
川の上流で水を徹底的に浄化してから、下流(私たちの耳)にピュアな水を届けてくれるイメージです。
- 入り口でノイズを遮断:
- 2種類の出力端子と、実用的なマイク入力
- 3.5mmシングルエンド端子:
一般的なイヤホンジャックです。
実はこの端子は「マイク入力」にも対応しています。
マイク付きイヤホンを繋げば、高音質のまま通話やオンライン会議、ボイスチャットが可能です。 - 4.4mmバランス端子:
より高音質でノイズの少ない、オーディオ愛好家向けの接続方式です。
左右の信号を完全に分離して伝送するため、ワンランク上のサウンドを楽しめます。
- 3.5mmシングルエンド端子:
省電力設計によるスマホバッテリーへの優しさ
スマートフォンでドングルDACを使うユーザー共通の、そして最大の悩みが「スマホの充電があっという間に減ってしまう」という問題です。
高性能なアンプを積んだDACを使うと、数時間でスマホのバッテリーが底をついてしまうことも珍しくありません。
SPACE IIは、この現代のポータブルオーディオにおける最大の課題を、以下の仕様で鮮やかにクリアしています。
【SPACE IIのバッテリー消費に対するアプローチと恩恵】
- 驚異の超低消費電力設計:
実測で「約0.4W」という、ドングルDACとしては異例の省エネ仕様を実現しています。
これは、アンプを内蔵した高効率なCS43131チップを採用している恩恵です。 - 発熱の徹底的な抑制:
電力を無駄に消費しないということは、それだけ熱に変わるエネルギーが少ないということです。
長時間ポケットの中に入れて使用しても、本体が不快なほど熱くなることがありません。 - 長時間のリスニングに余裕で対応:
通勤や通学の往復、あるいは長距離の移動中など、モバイルバッテリーを持ち歩かなくても、スマホのバッテリー残量に与える影響が非常にマイルドです。
どんなに音が良くても、スマホの電源が切れてしまっては元も子もありません。
高次元な音質と、日常的な使いやすさ(バッテリー持ち)を見事に両立させている点こそが、SPACE IIの最も評価されるべきポイントと言えるでしょう。
TANCHJIM SPACE IIの上位モデル「SPACE Pro」との比較

SPACE IIの購入を検討する際、どうしても価格帯が比較的近く、同じシリーズである上位モデル「SPACE Pro」と迷ってしまう方が多いはずです。
「少し予算を足してProを買った方が後悔しないのではないか?」という疑問に対し、ここでは両者の違いを明確に比較し、どちらを選ぶべきかのヒントをお伝えします。
スペック数値の違いと共通点
まずは、両モデルの主要なスペックを分かりやすい表で比較してみましょう。
| 比較項目 | TANCHJIM SPACE II | TANCHJIM SPACE Pro |
| 搭載DACチップ | CS43131 ×2基 (アンプ内蔵型) | CS43198 ×2基 (純粋DAC型) |
| 最大出力パワー | 235mW | 618mW (独立オペアンプ搭載) |
| 本体重量 | 約15g | 約17.2g |
| マイク入力(3.5mm) | 対応 | 対応 |
| ダイナミックレンジ | 132dB(実測値) | 131dB(実測値) |
| ノイズの少なさ | 極めて優秀 | 極めて優秀 |
| バッテリー消費 | 非常に少ない(省エネ) | やや多め |
この表を見ると、非常に面白い事実が浮かび上がってきます。
「ダイナミックレンジ」など、音の背景の静けさや純度を示す実測数値においては、なんとSPACE IIが上位モデルのProに肉薄、あるいはわずか1dBながら上回る部分すらあるのです。
つまり、純粋な「ノイズの少なさ」「音の変換精度の高さ」においては、両者はほぼ同格のトップエリートであり、人間の耳では聴き分けられないレベルでの高次元な争いをしていると言えます。
出力パワーと適したイヤホンの違い
では、両者の決定的な違いはどこにあるのでしょうか。それは「音を力強く押し出す力」、つまり【出力パワー】です。
【SPACE II(最大出力 235mW)の特徴】
- DACチップに内蔵された高効率アンプを使用しています。
- 世の中に存在する一般的な有線イヤホン(ダイナミック型やBA型)を、余裕を持って綺麗に鳴らしきるには十分すぎるパワーを持っています。
- 無駄な電力を必要としないため、省エネでホワイトノイズが極端に少ないのが特徴です。
【SPACE Pro(最大出力 618mW)の特徴】
- チップの外側に、独立した強力なアンプ(オペアンプ)を自由に組み合わせて搭載しています。
- SPACE IIの約2倍以上という圧倒的なパワーがあり、鳴らすために膨大な電力を必要とする「平面駆動型イヤホン」や、抵抗値の高い大型ヘッドホンも余裕でドライブ(駆動)させることができます。
- ただし、その圧倒的なパワーの代償として、スマホのバッテリー消費は多くなりがちです。
ターゲット層に合わせた選び方のポイント
以上の細かな比較を踏まえて、それぞれのモデルがどんなリスニングスタイルを持つ人にピッタリなのかを整理しました。
「大は小を兼ねる」ではなく、適材適所で選ぶことがオーディオ選びの鉄則です。
- SPACE IIが向いているのはこんな人:
- スマホのバッテリーを長持ちさせたい、充電の減りを気にしたくない方。
- 通勤・通学など外出先での使用が多く、1gでも軽いコンパクトさを求める方。
- 特殊な機材ではなく、一般的なイヤホンをメインで使っている方。
- ボーカルの繊細な表現や、ナチュラルで聴き疲れしない音を好む方。
- SPACE Proが向いているのはこんな人:
- 鳴らすのが難しい大型のヘッドホンなどを、ゴリゴリと力強く鳴らしたい方。
- 携帯性やバッテリー持ちを犠牲にしてでも、圧倒的な音の迫力、音圧、スケール感を最優先したい方。
- 室内やカフェなど、比較的落ち着いた環境で腰を据えて音楽を聴くことが多い方。
専用アプリによるTANCHJIM SPACE IIカスタマイズ性

前作の初代SPACEから、今回のSPACE IIへの進化において、最も劇的でユーザー体験を変えたのが、専用の「TANCHJIMアプリ」に対応したことです。
ただケーブルを繋いで音を出すだけの受け身の機械から、自分好みに音を創り上げることができる「インタラクティブなデバイス」へと大きな進化を遂げました。
アプリでできる基本設定とイコライザー
アプリを開くと、オーディオの楽しみを無限に広げる多彩な機能が用意されています。
- 公式・ユーザープリセットの利用機能:
- アプリ内のコミュニティ機能から、「真空管サウンド風」や「アナログレコード風」など、あらかじめプロや他のユーザーが作成した音質設定をダウンロードできます。
その日の気分や聴くジャンルに合わせて、ボタン一つで音のテイストをガラリと着せ替えることが可能です。
- アプリ内のコミュニティ機能から、「真空管サウンド風」や「アナログレコード風」など、あらかじめプロや他のユーザーが作成した音質設定をダウンロードできます。
- パラメトリックイコライザー(PEQ)の搭載:
- ここが最大の目玉です。
一般的な「低・中・高」しかいじれないイコライザーとは違い、「特定の周波数帯(例えば3kHzのボーカルのサ行が刺さる部分など)」をピンポイントで指定し、「どれくらいの幅で」「何デシベル減らす(または増やす)か」を精密に設定できるプロ仕様の機能です。 - これにより、手持ちのイヤホンの「ここがもう少しこうだったら最高なのに」という細かな弱点を外科手術のように修正し、自分だけの理想のサウンドを作り上げることができます。
- ここが最大の目玉です。
デジタルフィルターと出力モードの変更
イコライザー以外にも、音の「質感」や「余韻」の消え方を微細に調整する、マニアックで奥深い機能が備わっています。
| 調整機能名 | どのような変化をもたらすか |
| 出力モード切り替え | アンプの動作方式を「Class AB」と「Class H」から選択可能。 消費電力と音の響きのキャラクターをパチパチと切り替えて楽しめます。 |
| デジタルフィルター | 音の立ち上がりの鋭さや、余韻の滑らかさを微調整できます。 アップテンポな曲はキレ良く、バラードは余韻を長めにするなど、楽曲に合わせた調整が可能です。 |
| ゲイン調整 | 全体的な出力の強さ(High/Lowなど)を変更します。 ※本体側面のプラスマイナスボタンの操作でも手軽に変更が可能です。 |
アプリ利用時の注意点
このように非常に多機能でオーディオ好きの心をくすぐる優秀なアプリですが、導入にあたって1点だけ、非常に重要な注意点があります。
- 現在、このアプリは「Android端末専用」となっています。
- iPhone(iOS)からは、アプリ自体の提供がないため、PEQやフィルター変更といった内部機能を利用できません。
iPhoneユーザーの方が購入した場合、ケーブルを繋いで基本的な高音質を楽しむことや、本体ボタンでの音量・ゲイン調整は全く問題なく行えます。
しかし、細かい音質のカスタマイズを行いたい場合は、設定用に手元にあるAndroid端末やパソコンを一時的に繋いで設定を保存させる必要があります(設定自体はDAC本体に保存される仕様のようです)。
この点だけは、購入前にしっかりと留意しておきましょう。
TANCHJIM SPACE IIを使用した私の体験談レビュー

ここからは、私が実際にSPACE IIを日常生活の中に導入し、様々な楽曲や手持ちのイヤホンと組み合わせてじっくりと使い込んでみた際の、リアルな体験談と率直な感想をお届けします。
デザインと取り回しの良さに対する印象
パッケージを開封し、本体を指先でつまみ上げた瞬間、「軽い!」と声が出そうになりました。
オーディオ機器特有のズッシリとした重厚感はなく、毎日持ち歩くガジェットとしてのスマートさを極めたような佇まいです。
実際にスマホに接続して外へ持ち出してみた際の印象をまとめました。
- とにかくストレスフリー:
歩いていても、階段を登っていても、イヤホンケーブルが下に引っ張られる感覚がありません。
胸ポケットに入れても服のシルエットが崩れないのは嬉しいポイントです。 - 発熱とノイズの少なさ:
2〜3時間連続で使用しても、本体はほんのりと人肌程度に温かくなるだけで、不快な発熱は一切ありませんでした。
また、音楽を一時停止した無音状態の時にありがちな「サーッ」というホワイトノイズが全く聞こえず、背景の静寂さには驚かされました。 - 少し気になった点:
アルミ削り出しのボディはエッジ(角)が少しシャープなデザインのため、スマホの背面ガラスと裸のままカチカチと当たるのは少しヒヤリとしました。
気になる方は、スマホ側にケースをつけるか、DAC自体をポケットの別のスペースに入れるなどの工夫をすると良いでしょう。
音質の第一印象:ナチュラルで艶やかなサウンド
今回は、私が高く評価しているイヤホンの一つであるDUNUの「DaVinci」を4.4mmバランスで接続し、聴き慣れたJ-POPやアコースティックな楽曲を再生してみました。
第一印象として耳に飛び込んできたのは、非常にナチュラルで、しっとりとした艶のある音色です。
| 音域ごとの印象 | 詳細な聴こえ方 |
| 高音域 | アコースティックギターの弦弾きやシンバルがキラキラと明瞭に鳴りますが、耳に刺さる尖った部分は丁寧に丸め込まれており、長時間のリスニングでも全く聴き疲れしません。 |
| 中音域 | ここがTANCHJIMの真骨頂。 ボーカルの息遣いがリアルで、男性ボーカルの芯の太さも、女性ボーカルの繊細さも見事に表現します。 |
| 低音域 | ボワボワとだらしなく膨らむことがなく、非常にタイトでキレが良いです。 ベースラインが中音域の邪魔を一切しない絶妙なバランス感覚を持っています。 |
全体として、特定の帯域を無理に持ち上げて派手に聴かせるような「作られた音」ではなく、楽曲が本来持っている空気感を素直に、そして美しく引き出してくれる優等生なサウンドだと感じました。
SPACE Proとの音質比較と違い
せっかくなので、同じ楽曲、同じイヤホンを使って、上位モデルのSPACE Proとも交互に繋ぎ変えて聴き比べを行ってみました。
- SPACE Proを聴いた印象:
圧倒的なパワーの余裕からくる「アタック感の強さ」が際立ちます。
キックドラムの沈み込みや、低音の躍動感・パンチ力が力強く、楽器が鳴っている空間(奥行きや広がり)が立体的でスケールが大きいと感じました。
オーケストラやEDMなどを聴くとテンションが上がります。 - SPACE IIを聴いた印象:
空間の広大な広がりや迫力こそProに一歩譲りますが、その代わり「一つ一つの音の輪郭」が非常にクッキリと、シャープに描き出されます。
モニターライク(分析的)な側面があり、どの楽器がどこで鳴っているかが非常に把握しやすい、見通しの良いサウンドです。
ボーカルやメロディーラインの際立ち方
SPACE IIをじっくりと聴き込んでいくうちに、この機種が持つ最大の魅力、美味しいポイントに気付きました。それは「ボーカルとメインメロディーの圧倒的な近さと際立ち方」です。
前述の通り、低音が非常にタイトに整理されているため、人間の声の帯域(中音域)をマスキングして覆い隠すものが何もありません。
結果として、ボーカリストが一歩前にスッと出てきて、すぐ耳元で優しく歌ってくれているような、鳥肌が立つほどの生々しさを味わうことができます。
しっとりとしたバラード、弾き語り、あるいは声優さんの声がメインとなるアニソンなどを聴いた時の没入感とボーカルの艶やかさは、このモデルならではの特権と言って良いでしょう。
相性の良いイヤホン選びのコツ
様々なイヤホンを繋ぎ変えてテストを繰り返した結果、SPACE IIと抜群の相性を見せる組み合わせの傾向が見えてきました。
それは、低音が少し強めに出る傾向(ドンシャリ傾向)のイヤホンとの組み合わせです。
- 低音が強いイヤホン × SPACE IIの化学反応:
低音モリモリのイヤホンをパワフルなDACに繋ぐと音が渋滞してクドくなることがありますが、SPACE IIに繋ぐと、暴れていた低音がシュッとタイトに整理整頓されます。
そして、低音に隠れがちだった中高音がクリアに抜け出してきて、イヤホンの良さを活かしつつ、非常に聴きやすく美しい優等生サウンドへと生まれ変わるのです。 - フラットなイヤホン × SPACE IIの場合:
元々あっさりした音のイヤホンだと、少し迫力不足に感じるかもしれません。
その場合は、前述の専用アプリのイコライザーを使って、低音部分を少しだけ持ち上げてあげると、理想的なバランスに仕上がります。
体験談の総括
数週間にわたり、私のメインのポータブル環境としてカバンに忍ばせて使い倒しましたが、結論として「外に持ち出して日常使いするなら、SPACE IIは最高のパートナーである」という確固たる思いに至りました。
静かな自室で腰を据えて聴くならProの迫力も捨てがたいですが、電車の走行音や街の雑踏の中では、15gという軽さと、スマホのバッテリーを全く気にしなくて良い安心感が何よりも勝ります。
それでいて、ボーカルがここまで明瞭に聴き取れるクリアなサウンドを提供してくれる点は、スペック表の数字だけでは測れない「圧倒的な実用性の高さ」だと実感しました。
TANCHJIM SPACE IIに関するQ&A

TANCHJIM SPACE IIに関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
Q. iPhoneでも問題なく使うことはできますか?
A. はい、音楽を聴くための高音質DACとしては、iPhoneでも全く問題なくご使用いただけます。
ただし、音質を細かくカスタマイズできる「TANCHJIM専用アプリ」が現在はAndroidのみの対応となっています。そのため、iPhoneからはパラメトリックイコライザーやデジタルフィルターの変更ができない点だけ、あらかじめご注意ください。
Q. マイク付きイヤホンを繋いで、通話やオンライン会議に使えますか?
A. はい、可能です!
3.5mm端子側はマイク入力(4極)に対応しているため、マイク付きの有線イヤホンを接続すれば、高音質なまま通話やボイスチャットを快適に行うことができます。
Q. 上位モデルの「SPACE Pro」とどちらを買うべきか迷っています。
A. 選ぶポイントは「使い方」と「繋ぐ機材」です。
外出先で手軽に使いたい方や、スマホのバッテリー消費を抑えたい方、一般的なイヤホンを愛用している方にはSPACE IIが圧倒的におすすめです。一方、鳴らすのが難しい大型ヘッドホンを愛用している方や、バッテリー消費を犠牲にしてでも圧倒的なパワーと躍動感を優先したい方にはSPACE Proをおすすめします。
Q. ドングルDACを使うと、スマホのバッテリーがすぐに減ってしまいませんか?
A. その点はSPACE IIの最も得意とする部分です。
実測で約0.4Wという驚異的な超低消費電力設計を実現しているため、他の一般的なドングルDACと比較しても、スマホのバッテリー消費は非常にマイルドです。長時間の通勤・通学でも安心してお使いいただけます。
Q. 長時間使っていると、本体が熱くなったりしませんか?
A. 超省電力で設計されている恩恵により、長時間の連続再生を行っても、本体が「ほんのりと人肌程度に温かくなる」くらいで済みます。
不快な発熱や、熱によるノイズの発生といった心配はほとんどありません。
Q. SPACE IIは、どんな音の傾向のイヤホンと相性が良いですか?
A. SPACE II自体が「ボーカルが際立つクリアでタイトなサウンド」を持っているため、元々「低音が少し強め(ドンシャリ傾向)のイヤホン」と非常に相性が良いです。
暴れがちな低音をSPACE IIがシュッと綺麗に整理整頓してくれるため、隠れていた中高音がスッキリと抜け出し、見事なバランスの優等生サウンドへと生まれ変わります。
Q. 無音の時に「サーッ」というホワイトノイズは聴こえますか?
A. いいえ、ホワイトノイズは全くと言っていいほど気になりません。
背景は漆黒のように静かで、クリーンな環境からスッと音が立ち上がる高次元なノイズレス設計に仕上がっています。
Q. 4.4mmバランス接続と3.5mm接続では、どのような違いがありますか?
A. 4.4mmバランス接続は、左右の音声信号を完全に分離して伝送するオーディオ専用の規格です。
一般的な3.5mm接続と比較してノイズが混入しにくく、より立体的でセパレーション(音の分離感)に優れたサウンドを楽しむことができます。SPACE IIのポテンシャルを最大限に引き出したい場合は、4.4mmバランス端子を搭載したケーブルやイヤホンの使用を強くおすすめします。
Q. 本体側面のボタンで何が操作できますか?
A. 本体側面の物理ボタン(プラス・マイナス)では、直感的な「音量調節」が可能です。
スマホをポケットに入れたままでも手元で操作できるため非常に便利です。また、このボタンの操作によって、アンプの出力の強さ(ゲイン設定)を切り替える機能も備わっています。
Q. パソコン(WindowsやMac)に繋いでも使えますか?
A. もちろんご使用いただけます。
付属のUSB Type-Cケーブル(必要に応じて付属のUSB-A変換アダプター)を使用することで、パソコン用の外部DACとして認識されます。スマホでの外出時だけでなく、自宅でのPC作業中や動画鑑賞の際にも手軽に高音質化の恩恵を受けることができます。
Q. アプリの「パラメトリックイコライザー(PEQ)」は初心者には難しいですか?
A. 音の帯域(周波数)をピンポイントで指定して調整するため、一般的なイコライザーよりも少し専門的です。
しかし、使いこなせば手持ちのイヤホンの細かな弱点を見事にカバーできます。また、どうしても難しく感じる場合は、公式コミュニティで他のユーザーが作成したプリセット設定をそのままダウンロードして適用できる機能もあるため、初心者の方でも手軽に音の変化を楽しむことができます。
Q. 映画やゲームプレイ用の「サラウンド機能」はありますか?
A. SPACE IIは音楽のピュアな再生と、本体の軽量化・省電力化に特化したシンプルな設計となっているため、上位モデルであるSPACE Proに搭載されているような専用の「ゲーミングモード」や「サラウンド設定」は備わっていません。
しかし、基礎となる音の解像度が非常に高く、有線接続ゆえに音の遅延もないため、通常の動画視聴やゲームプレイであっても、スマホへの直挿しよりはるかに臨場感のあるクリアなサウンドを体験いただけます。
TANCHJIM SPACE IIレビューのまとめ

ここまで、TANCHJIMの意欲作「SPACE II」の魅力について、様々な角度から深く掘り下げて解説してきました。
最後に、これまでの情報を整理し、あなたのオーディオ選びの最終的な羅針盤となるように総括を行います。
SPACE IIがおすすめな人
- スマホのバッテリーを最優先したい方:
外出先で充電の減りを気にせず、長時間のリスニングに没頭したい方に最適です。 - フットワークの軽さを重視する方:
重さ約15gの超コンパクトボディは、毎日の持ち歩きのストレスを完全にゼロにしてくれます。 - ボーカル曲をこよなく愛する方:
輪郭のハッキリしたクリアなサウンドで、歌声の艶や息遣いを間近で感じたい方に強く推奨します。 - 手持ちのイヤホンの音をスッキリさせたい方:
低音が強めのイヤホンのバランスを整え、見通しの良い音へとチューニングしたい方にぴったりです。
SPACE Proを選んだ方が良いケース
- ドライブの難しい機材をお持ちの方:
平面駆動型イヤホンや抵抗値の高い大型ヘッドホンをメインで使用している場合。 - スケール感や迫力を最優先したい方:
携帯性や省エネよりも、音楽のダイナミズム、低音の圧倒的な躍動感を求める場合。 - 音の深みや奥行きを重視する方:
楽器とボーカルの全体的な調和や、広大なサウンドステージを楽しみたい場合。
携帯性と利便性の高さの再確認
現在のドングルDAC市場において、「高音質であること」はもはや大前提となりつつあります。
その中で差別化を図るための最も大きな要素が「いかに日常に溶け込み、ストレスなく使えるか」です。
SPACE IIの約15gという軽さと、約0.4Wの超省電力設計は、毎日使う上でのハードルを極限まで下げてくれます。
さらに、マイク入力にも対応しているため、音楽を聴いている最中に電話がかかってきても、そのまま高音質で通話ができるなど、スマートフォンの利便性を一切損なうことなく完結できる点は素晴らしいの一言に尽きます。
コストパフォーマンスの評価
約1万5000円という価格設定は、オーディオ初心者の方にとっては少し勇気のいる金額かもしれません。
しかし、独立したデュアルDAC構成、4.4mmバランス接続への対応、高級感のあるアルミ削り出しボディ、そして何より上位機種に肉薄するノイズレスなクリーンサウンドを踏まえれば、そのコストパフォーマンスは極めて優秀であると断言できます。
初めて本格的なドングルDACを購入する方のファーストチョイスとしてはもちろん、すでに高価なプレイヤーを持っている方の身軽なサブ機としても大いに活躍してくれるでしょう。
アプリを活用した長期的な楽しみ方
Androidユーザー限定という制約は残るものの、TANCHJIMアプリによる拡張性の高さは、この製品を長く愛用できる決定的な理由になります。
ただ繋いで音楽を再生するだけでなく、パラメトリックイコライザーを駆使して「自分だけの理想の音」を探求するプロセスは、オーディオという趣味の醍醐味そのものです。
買った時が完成形ではなく、使い手の工夫次第でいくらでも音が進化していく余白を残している点は、ガジェット好きの探究心を大いに満たしてくれます。
TANCHJIM SPACE II最終的な総合評価
TANCHJIM SPACE IIは、決して「上位機種の機能を削って安くしただけの廉価版」という枠には収まりません。
「超軽量」「超省電力」「ボーカル際立つクリアサウンド」という、非常に明確なコンセプトと哲学を持ち、ポータブルオーディオとしての実用性を極限まで高めた、完成度の高い名機です。
スマホの音を良くしたいけれど、重くて面倒な機材は持ち歩きたくない。
毎日の通勤通学を、もっと鮮やかで楽しい時間に変えたい。
そんなあなたの願いを、この小さなデバイスはきっと叶えてくれるはずです。
ぜひ、お気に入りのイヤホンをSPACE IIに繋いで、これまで聴こえなかった新しい音楽の景色に出会ってみてください。

