【徹底レビュー】ULTRASONE Signature FUSION Open Back|開放型モニターの正解か?音質・装着感を完全網羅

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出典:アユート
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ドイツの老舗ヘッドホンメーカーULTRASONE(ウルトラゾーン)が放つ、プロフェッショナル向け「Signature」シリーズ。
その中でも、多くのファンが待ち望んでいたモデルがついに登場しました。

それが、「Signature FUSION Open Back」です。

これまで密閉型が中心だったSignatureシリーズにおいて、この「Open Back(開放型)」の登場は、単なるバリエーション追加以上の意味を持ちます。
それは、同社が長年追求してきた「S-Logic」という空間オーディオ技術が、開放型という物理的な筐体を得て、ついに「音の完全な解放」へと到達したことを意味するからです。

約5万円というミドルクラスの価格帯でありながら、上位機種に肉薄するスペックと、開放型ならではの抜けの良さを兼ね備えた本機。

  • 「密閉型のFUSIONと何が違うのか?」
  • 「DTMやミックス作業で本当に使えるのか?」
  • 「長時間つけていても疲れないのか?」
  • 「エージングで音はどう変化するのか?」

この記事では、実際に「Signature FUSION Open Back」を100時間以上使い込み、その音質、装着感、そして導入する価値について、Webライター兼ブロガーである筆者の視点から徹底的にレビューします。

 

  1. ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」の概要とスペック
    1. 製品の基本スペックと密閉型「FUSION」との違い
    2. プロユースを想定した付属品とビルドクオリティ
    3. デザイン:ゴールドのアクセントと「Made in Germany」の品格
  2. ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」の独自の音響技術と装着感がもたらす恩恵
    1. S-Logic3とDDF技術が作り出す「自然な定位感」
    2. スウェード素材採用による装着感の向上と通気性
    3. 長時間作業でも疲れにくい重量バランスと側圧設計
  3. ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」の音質詳細レビュー:ウォームかつ俯瞰的なモニターサウンド
    1. 帯域バランス:刺さりのない高域と正確な低域描写
    2. 音場と分離感:開放型ならではの「見通しの良さ」
    3. 解像度:楽曲の粗を探せる分析力とリスニング性の共存
  4. ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」を使用した私の体験談・レビュー
    1. DTM・ミックス作業での実用性評価:定位の正確さ
    2. リスニング用途での感想:ジャンルによる相性チェック
    3. ゲーミング・動画視聴における没入感と空間表現
    4. 比較検証:密閉型「Signature FUSION」とどちらを選ぶべきか
    5. 比較検証:上位機「MASTER MkII」や「PURE」との立ち位置の違い
    6. 体験談の総括:プロの道具でありながら、普段使いもできる万能機
  5. ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」に関するQ&A
    1. 開放型ですが、音漏れはどれくらいしますか?
    2. スマホやPC直挿しでも十分な音量が出ますか?
    3. 「S-Logic」は聴こえ方に癖があると聞いたのですが?
    4. FPSなどのゲーム用途には向いていますか?
    5. バランス接続(4.4mm)は試すべきですか?
    6. エージング(慣らし運転)は必要ですか?
    7. イヤーパッドは交換できますか?
    8. メガネをかけたままでも痛くなりませんか?
    9. 上位機種の「Signature MASTER MkII」と迷っています。価格差(約4万円)の価値はありますか?
    10. 開放型ということは、低音がスカスカではありませんか?
    11. 同じ開放型モニターの「SONY MDR-MV1」と比べてどうですか?
    12. 開放型ですが、持ち運びはできますか?
    13. ASMR動画の視聴には向いていますか?
    14. S-Logicの効果を最大限に引き出す「装着のコツ」はありますか?
  6. ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」レビューのまとめ
    1. Signature FUSION Open Backのメリット(良かった点)
    2. Signature FUSION Open Backのデメリット(気になった点)
    3. このヘッドホンが強くおすすめな人
    4. 他のモデルを検討すべき人(ミスマッチなケース)
    5. 価格以上の価値はあるか?コストパフォーマンス評価
    6. ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」レビューの総評:開放型モニターヘッドホンの新たな最適解

ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」の概要とスペック

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出典:アユート

まずは、このヘッドホンがどのような立ち位置の製品なのか、基本的なスペックと製品の全体像を把握していきましょう。
カタログスペックの裏側にある「意図」まで読み解きます。

製品の基本スペックと密閉型「FUSION」との違い

「Signature FUSION Open Back」は、その名の通り、既存の密閉型モデル「Signature FUSION」をベースに、ハウジングを開放型へと再設計したモデルです。
しかし、開発背景を探ると、単に「穴を開けただけ」の製品ではないことが分かります。
ドライバーの制動やバックチャンバーの空気の流れなど、開放型に合わせてゼロベースでチューニングが施されています。

以下に、兄弟機である密閉型「Signature FUSION」との詳細比較表を作成しました。

項目Signature FUSION Open BackSignature FUSION(密閉型)備考
形式開放ダイナミック型密閉ダイナミック型Open Backは音漏れあり
ドライバー45mm チタンプレイテッド・マイラー45mm チタンプレイテッド・マイラー同一素材だがチューニングは別
インピーダンス32Ω32Ωスマホでも駆動可能な低負荷
再生周波数帯域8 – 40,000 Hz8 – 40,000 Hzハイレゾ対応
出力音圧レベル98dB104dB開放型のため能率はやや低い
重量(ケーブル含まず)約290g約292gほぼ同等だがバランスが違う
イヤーパッド素材スウェードシープスキンレザー音響特性に合わせた素材選定
市場価格(目安)約50,000円約40,000円

深掘り解説:チタンプレイテッド・マイラー・ドライバーとは?

搭載されている45mmドライバーは、「マイラー(ポリエステルフィルム)」という軽量で強靭な素材に、「チタン」を蒸着(コーティング)させたものです。

  • マイラーの特性:
    非常に軽く、信号に対する反応(レスポンス)が速い。
  • チタンコーティングの役割:
    剛性を高めることで、分割振動(ドライバーが歪んで動く現象)を抑制する。
    これにより、「スピード感のある低域」と「歪みのないクリアな高域」を両立させています。
    特に開放型では、ドライバーの動きがそのまま音に直結するため、この高剛性ドライバーの恩恵が密閉型以上に顕著に表れます。

プロユースを想定した付属品とビルドクオリティ

ULTRASONEの「Signature」シリーズは、スタジオや現場での過酷な使用を想定したプロフェッショナルラインです。
そのため、付属品も「おまけ」レベルではなく、実戦に即したクオリティのものが選定されています。

開封して驚くのは、その豪華なケーブル類です。
以下の3本が標準で付属します。

  1. 3.5mmステレオミニプラグ(1.2m): ポータブルオーディオやスマホ、ノートPCでの作業用。取り回しが良く、デスク上でも邪魔になりません。
  2. 6.3mm標準プラグ(3.0m): スタジオコンソールや据え置きアンプでの制作用。長さが十分にあるため、ラック裏の機材に繋いでも動き回れます。
  3. 4.4mmバランスプラグ(1.4m): ここが最重要ポイントです。

なぜ4.4mmバランスケーブル付属が凄いのか?

通常、モニターヘッドホンといえば3.5mm/6.3mmのシングルエンド接続が主流です。
しかし、近年のハイエンドDAPやUSB-DACは、左右の信号を完全に分離して伝送する「バランス接続」でこそ真価を発揮します。

別途購入すれば数千円〜1万円はするバランスケーブルが標準付属している点は、「最初から最高性能で聴いてほしい」というメーカーの強いメッセージと言えるでしょう。

また、付属の「Signatureキャリングケース」は、セミハードタイプで非常に堅牢です。内部はヘッドホン形状に合わせて成形されており、輸送中の振動で本体が暴れることはありません。
交換用ケーブルやUSBメモリなどを収納できるメッシュポケットも備えており、スタジオ間の移動が多いエンジニアにとっても心強い味方です。

デザイン:ゴールドのアクセントと「Made in Germany」の品格

本体のデザインは、Signatureシリーズ共通の「プロ用ツール」としての無骨さを残しつつ、所有欲を刺激するエレガントな仕上がりです。

Made in Germanyの刻印:
ハウジング下部には「Made in Germany」の文字。ULTRASONEはドイツ・バイエルンの自社工場で、熟練工がハンドメイドで組み立てを行っています。
この「ドイツ製」という事実は、単なるブランドステータスではなく、左右のドライバーのマッチング精度(左右差のなさ)や、製品寿命の長さを保証する品質の証でもあります。

マットブラックの筐体:
指紋や皮脂汚れが目立ちにくい梨地仕上げのような質感。
プラスチック製ですが安っぽさは皆無で、むしろ高密度なエンジニアリングプラスチックの信頼感があります。

ゴールドのロゴとメッシュ:
ハウジングには「ULTRASONE」と「Signature」の文字がゴールドで立体的に刻印されています。
開放部のメッシュの奥に見えるドライバーユニットも機能美を感じさせます。

 

ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」の独自の音響技術と装着感がもたらす恩恵

Signature FUSION Open Backイメージ画像
出典:アユート

ULTRASONEを選ぶ最大の理由は、他社にはない独自の音響技術にあります。
多くのヘッドホンメーカーが「周波数特性のフラットさ」だけを追求する中で、ULTRASONEは「聴こえ方の自然さ」を追求し続けています。

S-Logic3とDDF技術が作り出す「自然な定位感」

ULTRASONEの代名詞とも言える特許技術「S-Logic(エス・ロジック)」。
本機にはその最新世代である「S-Logic 3」が搭載されています。
これを理解せずして、FUSION Open Backは語れません。

従来のヘッドホンが抱える問題点:
通常のヘッドホンは、ドライバーが鼓膜に向かって一直線に音を発射します。
これは音の情報をダイレクトに伝える反面、「頭の中で音が鳴っている(頭内定位)」という不自然な感覚を生み、脳が距離感を補正しようとして疲労(聴き疲れ)を引き起こします。

S-Logic 3がもたらす革命:

  1. オフセット配置:
    ドライバーを鼓膜の軸から下前方にずらして配置しています。
  2. 外耳反射の利用:
    音は直接鼓膜に入らず、一度「外耳(耳介)」に当たって反射してから耳の中に入ります。
  3. 自然な空間認識:
    人間は普段、外耳での音の反射によって音の方向や距離を認識しています。
    S-Logic 3はこのプロセスをヘッドホン内で再現することで、「まるでスピーカーで聴いているような」自然な前方定位と距離感を実現します。

さらに、「DDF(Double Deflector Fin)」という技術も組み合わされています。
これはドライバーの一部を覆う赤いフィン(整音板)のようなパーツです。
これが音響的なレンズの役割を果たし、中高域の直接音をコントロールします。
これにより、S-Logic特有の「広がり」に加え、「ピンポイントな定位(音の芯)」を両立させることに成功しています。

聴覚保護という隠れたメリット:
S-Logic技術は、同じ音量感を得るために必要な音圧レベルを数dB下げる効果があると言われています。
つまり、鼓膜への負担を減らしながら満足のいく音量でモニタリングができるため、耳を大切にするミュージシャンやエンジニアにとって、健康面でも大きなアドバンテージがあります。

スウェード素材採用による装着感の向上と通気性

密閉型FUSIONでは遮音性の高いシープスキンレザーが採用されていましたが、Open Backではスウェード素材が採用されています。
これは単なるコストダウンやデザイン変更ではありません。

  • 音響的な理由:
    レザーは音を反射しますが、スウェードは適度に吸音します。
    開放型の場合、ハウジング内での不要な反射を抑え、よりクリアな音抜けを実現するためにスウェードが最適解だったと考えられます。
  • 装着感の劇的向上:
    肌触りは非常に滑らかで、サラサラとしています。
    レザー特有の「夏場のペタつき」や「冬場のヒヤッと感」がありません。
  • 通気性:
    開放型のハウジング構造とスウェードの微細な通気性が相まって、耳周りの熱を効率よく逃がしてくれます。
    数時間に及ぶミキシング作業において、この「蒸れなさ」は集中力を維持するために不可欠です。

長時間作業でも疲れにくい重量バランスと側圧設計

本体重量は約290g。
最近の軽量ヘッドホンと比較すると決して軽くはありませんが、装着すると不思議なほど重さを感じません。

側圧の最適化:
側圧は「Signature PURE」などのエントリーモデルと比較すると、ややマイルドに設定されています。
首を振ってもズレないホールド感を保ちつつ、こめかみが痛くならない絶妙なテンションです。
また、アーム部分の剛性が高いため、長期間使用しても側圧がヘタりにくいのもプロ機材らしい点です。

ヘッドバンドの工夫:
ヘッドパッド部分もスウェードメッシュ素材で覆われており、内部のクッションは頭頂部の形状に合わせて沈み込みます。
これにより、「点」ではなく「面」で重さを支える構造になっています。

 

ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」の音質詳細レビュー:ウォームかつ俯瞰的なモニターサウンド

Signature FUSION Open Backイメージ画像
出典:アユート

ここからは、肝心の音質について深掘りしていきます。
試聴環境には、PCからRME製のオーディオインターフェースを経由した6.3mm接続と、高級DAP(iBasso DX320)を使用した4.4mmバランス接続の両方を用い、100時間のエージング完了後の状態で評価を行いました。

帯域バランス:刺さりのない高域と正確な低域描写

一聴して感じるのは、「極めてバランスが良いが、決して退屈ではない」という点です。

  • 高域:
    ULTRASONEといえば「煌びやかな高音」が特徴ですが、FUSION Open Backの高域は非常に洗練されています。
    「刺さる」一歩手前で綺麗に収束するため、シンバルの金属音や金管楽器の倍音が美しく伸びますが、耳に痛くありません。
    特に10kHz以上の「空気感」を司る帯域の表現力が豊かで、ハイレゾ音源のポテンシャルを存分に引き出します。
  • 中域:
    ここが密閉型との最大の違いかもしれません。
    ボーカルやギター、スネアドラムなどの主要な楽器が、非常に有機的でウォーム(暖かみのある)な質感を持っています。
    モニターヘッドホンにありがちな「カサカサした乾いた音」ではなく、適度な潤いと艶があります。
    これにより、ボーカルの感情表現や弦楽器の胴鳴りがリアルに伝わってきます。
  • 低域:
    開放型になると低域が逃げてスカスカになりがちですが、FUSION Open Backは驚くほど芯のある低域を鳴らします。
    45mmドライバーが空気を大きく動かすため、サブベース(超低域)の量感もしっかり確保されています。
    ただし、密閉型のような「頭を揺らすような音圧」ではなく、「音階がはっきりと見える、解像度の高い低域」です。
    ベースラインの動きやキックのディケイ(減衰)が手に取るように分かるため、低域の処理(EQやコンプ)が非常にやりやすいと感じました。

音場と分離感:開放型ならではの「見通しの良さ」

密閉型のSignatureシリーズは「濃密な情報の洪水」というイメージですが、Open Backはそこに「広大なスペース」が加わります。

S-Logic 3の効果もあり、音場は左右に広いだけでなく、前方への奥行きもしっかりと感じられます。
「音が左右の耳の真横から鳴る」のではなく、「自分の斜め前方にあるスピーカーから鳴っている」ような錯覚を覚える瞬間があります。

また、音の分離感(セパレーション)は特筆すべきレベルです。
オーケストラなどの編成の多い楽曲でも、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの位置関係が団子にならず、それぞれの楽器の間に「空間(隙間)」があることが感じ取れます。
この「隙間」が見えることこそが、ミックス作業における最大の武器となります。

解像度:楽曲の粗を探せる分析力とリスニング性の共存

解像度は価格帯(約5万円)を考えると、間違いなくトップクラスです。
「モニターサウンド」というと、粗探しをするための冷徹な音をイメージするかもしれませんが、FUSION Open Backは「全体を音楽的に楽しみつつ、フォーカスすれば微細なノイズも発見できる」という、二律背反する要素を両立しています。

例えば、ボーカルトラックに乗ってしまったリップノイズや、ギタリストが弦を擦る音、ペダルを踏む音などの微細な環境音もしっかり拾います。
検聴用としても信頼できる精度を持ちながら、リスニング時にはそれらが音楽の「リアリティ」として機能するようなチューニングが見事です。

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ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」を使用した私の体験談・レビュー

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スペックや一般的な音質評価だけでなく、私が実際に様々なシチュエーションで使い込んだ「生の声」をお届けします。
Webライターであり、ブログ運営者でもある私の視点から、このヘッドホンの実用性を多角的に検証しました。

DTM・ミックス作業での実用性評価:定位の正確さ

私は普段、趣味で楽曲制作を行いますが、ミックス作業におけるFUSION Open Backの信頼性は「革命的」と言っても過言ではありません。

具体的には、「パンニング(左右の配置)」と「リバーブの調整」において迷いがなくなりました。
密閉型ヘッドホンで作業をしていると、低域がこもって聴こえるため、ついつい低域を削りすぎたり、リバーブをかけすぎてお風呂のような音になってしまうミス(いわゆるヘッドホンミックスの弊害)が起きがちです。

しかし、FUSION Open Backは適度に音が抜けるため、各トラックの「素の音」と「エフェクト音」の境界線が明確に見えます。
「ボーカルを少し奥に引っ込めたい」「ハイハットを右30度に配置したい」といった微細な調整が、モニターに映し出された波形をいじるかのように直感的に行えました。
この「意図した通りに音が配置できる」という感覚は、作業効率を劇的に向上させてくれます。

リスニング用途での感想:ジャンルによる相性チェック

仕事中のBGMや、リラックスタイムのハイレゾリスニングにも使用しました。

  • ジャズ・クラシック(◎):
    ベストマッチです。ホールの空気感、観客の咳払い、指揮者の息遣いまで再現します。
    特にピアノの打鍵音の生々しさは鳥肌ものです。
  • ロック・ポップス(○):
    ギターのカッティングのエッジ感が気持ちよく、スネアのアタックも小気味よいです。
    ボーカルが近くに定位するため、歌モノにも最適です。
  • EDM・ヒップホップ(△〜○):
    サブベースもしっかり出ますが、クラブのような「身体で感じる重低音」を求めるなら、密閉型の「Signature FUSION」や「Pure」の方が迫力という意味では楽しいかもしれません。
    Open Backはあくまで「ベースラインを分析的に楽しむ」鳴り方です。

ゲーミング・動画視聴における没入感と空間表現

意外な伏兵だったのが、FPSゲームでの使用です。
「足音がどこから聞こえるか」という定位感が勝敗を分けるFPSにおいて、S-Logic 3の空間表現能力は驚異的です。

一般的なゲーミングヘッドセットが「右!左!」という大雑把な定位なのに対し、FUSION Open Backは「右斜め前、距離10メートル、壁の向こう」といった距離感を含めた精密な定位を提供してくれます。
また、開放型であるため自分の声がこもらず、ボイスチャットをしていても違和感がありません。
長時間プレイしても耳が蒸れない点も含め、実は「最強のゲーミングヘッドホン」の一つではないかと感じました。

比較検証:密閉型「Signature FUSION」とどちらを選ぶべきか

多くの人が迷うであろう、同シリーズの密閉型との比較です。
両方聴き比べた結論としては以下の通りです。

  • Signature FUSION(密閉型)を選ぶべきケース:
    • 録音(レコーディング)時のモニターとして使いたい(マイクへの音漏れ厳禁)。
    • 外出先やカフェ、騒がしいオフィスで使用したい。
    • 低音の「圧」や「密度」を最優先し、EDMやハードロックをメインに聴く。
  • Signature FUSION Open Back(開放型)を選ぶべきケース:
    • 自宅でのミックス、マスタリング、編集作業がメイン。
    • 静かな部屋で使用する環境がある。
    • 長時間使用しても疲れない「抜けの良さ」と「装着感」を求める。
    • アコースティック楽器やボーカルの自然な響きを重視する。

比較検証:上位機「MASTER MkII」や「PURE」との立ち位置の違い

  • vs Signature MASTER MkII(約9万円):
    MASTER MkIIは、まさに「音の顕微鏡」です。
    解像度、トランジェントの速さ、情報の密度において、やはり上位機種の貫禄があります。
    しかし、その分「聴き疲れ」もしやすいシビアな音です。
    対してFUSION Open Backは、解像度はMASTERに肉薄しつつも、より「音楽的な心地よさ」を残しています。
    絶対的な性能差はありますが、リスニングも含めた「使いやすさ」ではFUSION Open Backが勝る場面も多いです。
    価格差4万円を考えると、コスパはFUSION Open Backの圧勝です。
  • vs Signature PURE(約3万円):
    PUREは「元気で楽しい音」ですが、低域がやや支配的で、全体の解像度や分離感ではFUSION Open Backに明確な差をつけられています。
    また、装着感(側圧の強さ)においてもFUSION Open Backの方が圧倒的に快適です。
    予算が許すなら、迷わずFUSION Open Backへのステップアップをおすすめします。

体験談の総括:プロの道具でありながら、普段使いもできる万能機

使い込んでみて感じたのは、「懐の深さと適応力」です。
仕事道具として厳格なモニター業務をこなせる実力を持ちながら、休日にNetflixで映画を見たり、お気に入りのプレイリストを流す際にも「良い音だなあ」とリラックスして使える。

この「オン・オフ両用できるバランス感覚」こそが、私がFUSION Open Backを最も気に入ったポイントでした。
リケーブル(4.4mmバランス接続)による音質向上シロも残されており、長く付き合える相棒になると確信しています。

 

ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」に関するQ&A

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ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。

開放型ですが、音漏れはどれくらいしますか?

盛大に音漏れします。
ハウジングのメッシュ部分から音がそのまま外に抜ける構造のため、スピーカーで小音量で鳴らしている程度には漏れます。 図書館、静かなオフィス、電車やカフェでの使用は周囲の迷惑になるため推奨しません。あくまで「自宅や防音室などのプライベート空間」での使用を前提としてください。また、レコーディング時にマイクがヘッドホンの音を拾ってしまうため、ボーカル録音時のモニターとしても不向きです。

スマホやPC直挿しでも十分な音量が出ますか?

音量は取れますが、USB-DACの使用を強く推奨します。
インピーダンスは32Ωと低いため、スマートフォンやPCのイヤホンジャックでも十分なボリュームを稼ぐことは可能です。 しかし、出力音圧レベルが98dBとモニターヘッドホンにしてはやや低め(能率が少し悪い)であることと、搭載されている45mmチタンプレイテッドドライバーのポテンシャルを引き出すためには、ある程度の駆動力が必要です。 数千円クラスのドングル型DAC(USB-DAC)を噛ませるだけでも、低域の締まりや空間の広がりが劇的に向上します。

「S-Logic」は聴こえ方に癖があると聞いたのですが?

S-Logic 3は非常に自然で、違和感はほとんどありません。
初期のS-Logic搭載機は「独特の響き」を感じることもありましたが、本機に搭載されている最新の「S-Logic 3」は非常にナチュラルなチューニングが施されています。 「音が変な方向から聴こえる」といった違和感はなく、「耳のすぐ横ではなく、少し離れた位置で鳴っている」という自然な距離感を感じられるはずです。むしろ、一般的なヘッドホンの頭内定位(頭の中で音が鳴る感覚)が苦手な方こそ、試してみる価値があります。

FPSなどのゲーム用途には向いていますか?

極めて向いています。「足音の定位」は最強クラスです。
S-Logic 3による空間表現能力のおかげで、音の方向だけでなく「距離感」まで正確に把握できます。敵が壁の向こうにいるのか、階下にいるのかといった情報を耳から正確に得られるため、FPS/TPSプレイヤーには特におすすめです。 また、開放型で自分の声がこもらないため、ボイスチャットをしていても非常に快適です。

バランス接続(4.4mm)は試すべきですか?

環境があるなら、絶対に試すべきです。
付属の4.4mmケーブルを使用することで、左右のチャンネルセパレーション(分離感)が向上し、音場がさらにクリアになります。 特に「Signature FUSION Open Back」は空間表現に優れたヘッドホンなので、バランス接続による恩恵が分かりやすい機種です。対応するDAPやオーディオインターフェースをお持ちであれば、ぜひ標準の3.5mm/6.3mmとの違いを楽しんでください。

エージング(慣らし運転)は必要ですか?

必須ではありませんが、50〜100時間程度行うと音が馴染みます。
チタンプレイテッド・マイラードライバーは剛性が高いため、開封直後は高域が少し硬く感じたり、低域の動きが渋く感じることがあります。 普段通り音楽を聴いていれば自然にエージングされますが、本来の滑らかな音質になるまでには多少時間がかかると考えておくと、「思ったより高音が硬い?」という初期の誤解を防げます。

イヤーパッドは交換できますか?

はい、交換可能です。
イヤーパッドは消耗品ですが、ULTRASONE純正の交換用イヤーパッド(スペアパーツ)が販売されています。 Signatureシリーズはマグネット着脱式ではなく、「はめ込み式」や「被せ式」に近い構造ですが、ユーザー自身で交換できる設計になっています。スウェード素材はレザーに比べて加水分解(ボロボロになる現象)には強いですが、汗をかいた後は乾いた布で拭くなどのケアをすると長持ちします。

メガネをかけたままでも痛くなりませんか?

多くのユーザーにとって、痛みは少ない部類です。
採用されているスウェードパッドが非常に柔らかく、形状追従性が高いため、メガネのツル(テンプル)を圧迫しにくい構造です。 また、側圧も強すぎないため、「メガネユーザーに優しいヘッドホン」と言えます。ただし、ツルが極端に太いフレームの場合は、数時間の使用で多少の圧迫感を感じる可能性はあります。

上位機種の「Signature MASTER MkII」と迷っています。価格差(約4万円)の価値はありますか?

「絶対的な解像度」を求めるならMASTER、「音楽的な心地よさ」ならFUSION Open Backです。
MASTER MkIIは、音の粒子の一つ一つを分解するような「鬼気迫る解像度」があり、マスタリングエンジニアなど微細なノイズ除去が必須な方には価格差以上の価値があります。 しかし、作曲、編曲、ミックス、そして普段のリスニングまでを1台でこなしたい場合、FUSION Open Backの方が音の角が取れていて聴きやすく、コストパフォーマンス(満足度)はFUSION Open Backの方が高いと感じる方が多いはずです。

開放型ということは、低音がスカスカではありませんか?

いいえ、量感は十分あり、むしろ「質の高い低音」です。
「開放型=低音が出ない」というのは一昔前の常識です。45mmドライバーを搭載した本機は、バスドラムの重みやベースの太さをしっかりと表現します。 密閉型のように「ハウジング内で響いて増幅された低音」ではないため、最初はあっさり感じるかもしれませんが、慣れると「本来の低音はこういう音だったのか」と気づける、見通しの良いリアルな低音です。

同じ開放型モニターの「SONY MDR-MV1」と比べてどうですか?

「軽さと立体音響」ならSONY、「音楽的な実体感」ならULTRASONEです。
話題のSONY MDR-MV1は驚異的に軽く、360 Reality Audioなどの立体音響制作に特化したフラットな特性ですが、音が少し軽く感じる場合があります。 対してFUSION Open Backは、ドライバーの剛性が高く、キックやベースの「音の芯」や「厚み」をしっかり描写します。「作曲や楽器の演奏チェックに使いたい」「リスニングでも楽しみたい」という場合は、FUSION Open Backの方が音に説得力を感じるでしょう。

開放型ですが、持ち運びはできますか?

はい、非常に優秀です。このクラスでは珍しく「折りたたみ」可能です。
多くのハイエンド開放型ヘッドホン(ゼンハイザーHD600系やベイヤーダイナミック製品など)は折りたたみができませんが、Signatureシリーズはハウジングを内側に折りたたむことができます。 付属のキャリングケースもコンパクトに収まるため、スタジオ間を移動するエンジニアや、出張先のホテルで作業したいクリエイターにとって、携帯性は最強クラスです。

ASMR動画の視聴には向いていますか?

実は「隠れた名機」です。ゾクゾク感が違います。
ASMRは「音の距離感」が重要ですが、S-Logic 3技術は耳介の反射を利用するため、マイクに向かって囁かれている位置関係がリアルに再現されます。 特に、耳かき音や炭酸の泡音などの微細な音(マイクロディテール)を拾う能力が高く、開放型特有の抜けの良さのおかげで、長時間聴いても聴き疲れしにくい点もASMR向きです。

S-Logicの効果を最大限に引き出す「装着のコツ」はありますか?

「耳の穴をドライバーの中心に合わせる」のがポイントです。
S-Logicは耳の形状を利用して音を響かせるため、ヘッドホンが極端にズレていると本来の定位が得られません。 装着する際は、ハウジングの中で耳が変に折れ曲がっていないか確認し、「ドライバーの中心と耳の穴の位置」が合うようにヘッドバンドの長さを調整してください。ベストな位置が見つかると、スッと音場が広がる瞬間(スイートスポット)があります。

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ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」レビューのまとめ

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※画像はイメージです

ULTRASONE「Signature FUSION Open Back」は、プロフェッショナルな精度と快適なリスニング体験を両立させた、非常に完成度の高い開放型モニターヘッドホンです。

価格帯は約5万円と、上位機種に比べて手が届きやすい設定ながら、搭載されている技術・音質・作り込みはミドル〜ハイエンドクラスに匹敵

長時間の作業でもストレスを感じにくい装着感と、情報過多にならない自然なモニターサウンドは、多くのクリエイターや音楽愛好家にとって大きな魅力となるでしょう。

Signature FUSION Open Backのメリット(良かった点)

  • 自然な空間表現: S-Logic 3と開放型構造の相乗効果により、スピーカーライクな立体的な音場を実現。
  • 絶妙な装着感: スウェード素材のパッドと適度な側圧で、メガネを掛けていても痛くなりにくく、長時間の作業でも快適。
  • 高い解像度と分離感: 楽曲の構成要素をしっかりと把握できるモニター能力と、バランス接続によるチャンネルセパレーションの良さ。
  • 豪華な付属品: 4.4mmバランスケーブルや高品質なセミハードケースが標準付属し、追加投資が不要。
  • 所有欲を満たすデザイン: ドイツ製ハンドメイドの質感とゴールドロゴの高級感。

Signature FUSION Open Backのデメリット(気になった点)

  • 音漏れ: 開放型なので当然ですが、盛大に音漏れします。家族がいるリビングや図書館、電車内での使用は不可能です。
  • 環境音の遮断性: 外の音も入ってくるため、PCのファンノイズやエアコンの音が大きい環境では、静寂なパートのモニター精度に影響が出る可能性があります。
  • コネクタの特殊性: 採用されている3.5mm 4極スクリューロック式端子は非常に堅牢ですが、汎用の3.5mmケーブルだと奥まで刺さらない場合があり、サードパーティ製のリケーブル選定には注意が必要です(純正ケーブルが十分高品質なので大きな問題ではありませんが)。

このヘッドホンが強くおすすめな人

  • DTM・ミックス作業をするクリエイター: 特に自宅スタジオでの作業用メイン機として、スピーカーの代わりとなる定位感を求めている人。
  • 長時間ヘッドホンを使用する人: 耳蒸れや聴き疲れに悩んでおり、少しでも耳への負担を減らしたいユーザー。
  • 開放型のモニターヘッドホンを探している人: ベイヤーダイナミックやゼンハイザー、AKGといった定番ブランドとは違う、ULTRASONE独自の「S-Logic音場」を体験したい人。
  • ゲームや映画も高音質で楽しみたい人: 没入感と正確な定位感を両立したいゲーマーや映画ファン。

他のモデルを検討すべき人(ミスマッチなケース)

  • 録音ブースでのモニター用途: 音漏れするため、コンデンサーマイクがヘッドホンの音を拾ってしまいます。密閉型の「Signature FUSION」や「MASTER MkII」を選びましょう。
  • 脳を揺らす重低音が欲しい人: クラブミュージックなどで物理的な振動を求める場合は、密閉型の方が満足度は高いでしょう。
  • ポータブル用途で外出先に持ち出したい人: 音漏れの問題で公共の場では使えません。

価格以上の価値はあるか?コストパフォーマンス評価

実売約5万円という価格は、ヘッドホンとしては決して安くはありません。
しかし、以下の要素を総合的に考慮すると、コストパフォーマンスは極めて高いと断言できます。

  1. ドイツ製ハンドメイドという品質への信頼性。
  2. 3本のケーブル(特に4.4mmバランスケーブル)と堅牢なケースが付属するパッケージングの良さ。
  3. 上位機種譲りのS-Logic 3チタンプレイトドライバーを搭載し、10万円クラスに匹敵する解像度を持っていること。

もしこのクオリティの音をスピーカー環境で再現しようとすれば、吸音材やルームチューニングを含めて数十万円の投資が必要になります。
それを5万円で、しかも場所を取らずに手に入れられると考えれば、これは非常に賢い「投資」と言えるでしょう。

ULTRASONE 「Signature FUSION Open Back」レビューの総評:開放型モニターヘッドホンの新たな最適解

「Signature FUSION Open Back」は、ULTRASONEが長年培ってきた技術と、現代のクリエイターやリスナーが求めるニーズが見事に融合(FUSION)した傑作です。

モニターヘッドホンとしての正確性を保ちつつ、開放型ならではの「解放感」と「音楽的な楽しさ」を手に入れた本機は、あなたの音楽制作、そしてリスニング体験を間違いなく「新しい次元」へと引き上げてくれるでしょう。

もし、あなたが「信頼できるモニターサウンド」と「長時間使える快適さ」の両立に悩み、ヘッドホン選びの迷宮(スパイラル)に迷い込んでいるのなら、このヘッドホンがその出口になるはずです。
ぜひ一度、その自然で美しいサウンドを体験してみてください。

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