完全ワイヤレスイヤホン全盛のいま、充電の手間や遅延から解放され、手軽に極上のサウンドを味わえる「低価格な有線イヤホン」の人気が再燃しています。
そのエントリー有線市場において、常にベンチマークとして君臨してきたのが「水月雨(MOONDROP)」の「竹(CHU)」シリーズです。
初代の衝撃的な登場、そしてリケーブルに対応して大ヒットを記録した前作「竹II」を経て、満を持して登場した最新作が「竹III -CHU3-」です。
「5,000円前後の限られた予算内で、これ以上の進化ができるのか?」というオーディオファンの高いハードルを、今作は軽やかに飛び越えてきました。
本機が目指したのは、派手なアピールではなく「日常の中でずっと聴いていたくなる心地よさ」と「圧倒的なボーカル表現」です。
- 本機の注目ハイライト
- 据え置き価格:前作と同水準のアンダー5,000円をキープ
- 歪み率0.05%以下:上位クラスに迫る徹底的な低歪み設計
- 音作りの進化:従来のシャープ路線から、ふくよかで立体的な美音へ
本稿では、水月雨「竹III -CHU3-」の仕様や設計思想、外観の仕上げ、前作との明確な差別化ポイント、そして実際の試聴体験に基づいた細やかなサウンドインプレッションに至るまで、徹底的に掘り下げてお届けします。
有線イヤホンを初めて手にするビギナーから、気軽かつ高品位に扱えるサブ機を探しているオーディオ愛好家まで、幅広い読者に向けてその真価をわかりやすく紐解いていきます。
- 水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-の基本情報と進化ポイント
- 実機開封と竹III -CHU3-のビルドクオリティの徹底チェック
- 前作「竹II -CHU2-」との構造・設計の違いを比較
- 水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-を使用した私の体験談レビュー
- 水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-に関するQ&A
- Q. スマートフォンに直接挿して使えますか?
- Q. 前作「竹II -CHU2-」とは何が一番違いますか?買い替える価値はありますか?
- Q. ゲーム(FPSなど)や映画鑑賞に使えますか?
- Q. マイクは付いていますか?通話やテレワークに使えますか?
- Q. 音漏れや遮音性はどうですか?電車内や静かなオフィスでも使えますか?
- Q. リケーブル(ケーブル交換)をしたい場合、どんな規格を選べばいいですか?
- Q. イヤーピースを市販のものに変えたいのですが、注意点はありますか?
- Q. 初心者ですが、エージング(慣らし運転)は必須ですか?
- Q. 金属アレルギー体質ですが、装着しても肌荒れしませんか?
- Q. 音が小さく感じたり、低音がスカスカに聴こえたりする場合の対処法は?
- Q. USB-C直結で使えるタイプ(DSP内蔵版)は発売されていますか?
- Q. 普段1〜2万円クラスの有線イヤホンを使っていますが、サブ機として満足できますか?
- 水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-レビューのまとめ
水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-の基本情報と進化ポイント

エントリークラスの常識を覆す基本スペックと価格設定
「竹III -CHU3-」を手にしたときに誰もが驚嘆するのが、その徹底した価格設定です。
金属ダイキャスト成形による高精度なハウジング、新開発の複合振動板ドライバー、そして耐久性に優れた着脱式リケーブル機構を備えながら、メーカー希望小売価格は4,950円(税込)という、前作から実質据え置きとなる戦略的プライスを維持しています。
近年のポータブルオーディオ市場では、主要な金属部材や電子部品の原価高騰、さらには輸送コストの上昇に伴い、後継モデルの価格帯が一段引き上げられる事例が後を絶ちません。
そうした厳しい環境下において、あえて初心者が気軽に手を伸ばせる5,000円以下のアンダーゾーンを踏襲しつつ、内部コンポーネントの基本性能を劇的に底上げしてきた点に、ブランドとしての強い誇りとエントリー市場に対する責任感が表れています。
| 項目 | 詳細スペック | 実用上のポイントと特徴 |
| 製品名 | 水月雨(MOONDROP) 竹III -CHU3- | 大人気エントリーシリーズの第三世代モデル |
| 形式 | 密閉ダイナミック型(インイヤー) | 耳への収まりが良い小型オーバルシェイプ |
| ドライバー構成 | 10mm径高性能ダイナミックドライバー(1DD) | 単一ドライバーならではの自然な位相特性を追求 |
| 振動板構造 | Al-Mg合金ドーム + デュアルポリマーサスペンション | 剛性と柔軟性を高度に両立させた新開発コンポーネント |
| 磁気回路 | 高磁束密度 N52ネオジムマグネット | 約1.5テスラ級の強力な磁束で振動板を高速駆動 |
| ボイスコイル | CCAW(銅クラッドアルミ線) | 超軽量化により微小な信号への追従性を向上 |
| 音響ノズル | 真鍮製CNC高精度切削ノズル | 金属特有の制振性により不要な共振と音の濁りを抑制 |
| インピーダンス | 16Ω(@1kHz) | 抵抗値が極めて低く、出力の小さな端末でも鳴らしやすい |
| 感度 | 118dB/Vrms(@1kHz) | 高感度設計によりスマホ直挿しでも十分な音圧を確保 |
| 非線形歪み率(THD) | 全帯域 0.05%以下(@1kHz, 94dB) | 上位クラスや平面駆動型に匹敵するピュアな出音を実現 |
| 周波数応答範囲 | 12Hz~50,000Hz(有効:20Hz~20,000Hz) | 人間の可聴域を完全にカバーしハイレゾ帯域まで追従 |
| コネクタ規格 | 0.78mm 2Pin(半埋め込み・フラット両対応) | 断線時のケーブル交換やバランス接続への換装に対応 |
| 付属ケーブル / プラグ | 約1.2m ブラック被膜撚り線 / 3.5mm L字金メッキ | しなやかで取り回しが良く、断線リスクを低減するL字型 |
| 実勢販売価格 | 4,950円(税込) | 前作から据え置きとなる圧倒的なコストパフォーマンス |
スペック面において特に注目すべきは、16Ωのインピーダンスと118dB/Vrmsという高い感度です。
一般的なスマートフォンに付属するUSB-C変換アダプタや、ノートPCに標準搭載されている3.5mmイヤホンジャックへ直接接続するだけでも、音が痩せることなく豊潤なダイナミクスと十分な音量を簡単に引き出すことができます。
ドライバー構造の刷新による音質アプローチの変化
今作における音響設計の核心部は、新規に開発された10mmダイナミックドライバーの内部構造にあります。
単一のダイナミックドライバーで全帯域をカバーする構成だからこそ、振動板の素材選定と物理的なエッジ設計が音質を決定づけます。
- アルミニウム・マグネシウム(Al-Mg)合金ドームの採用
- 中央部のドームには、軽量性と極めて高い剛性を併せ持つAl-Mg合金を採用。
- 高周波帯域における分割振動(振動板のたわみによる音の歪み)を徹底的に抑え込み、クリアでハイスピードな音の立ち上がりをサポート。
- 新開発「デュアルポリマー複合サスペンションエッジ」の搭載
- ドームを支える外周部のエッジ(サスペンション)に、物性の異なる2種類の高分子ポリマー素材を組み合わせた複合構造を導入。
- 振動板が前後へ大きく振幅する際のリニアリティ(直進性)を飛躍的に高め、大音量時や重低音再生時でもストロークの乱れを解消。
- この構造改革により、全帯域にわたる歪み率(THD)を「0.05%以下」という、エントリークラスの常識を覆す驚異的な低歪みレベルへ抑え込むことに成功。
- 最先端測定システムに基づく独自ターゲットカーブの導入
- 業界標準の高性能音響測定システム(B&K 5128等)を用いた高度な音響シミュレーションを実施。
- 従来の単一的なハーマンターゲットカーブへの追従から脱却し、最新の音響心理学に基づいた独自カーブ(PO/AVGDF/JM-1をベースとした目標特性)を設定。
- 人間の耳が過敏に反応しやすい帯域のピーキーな刺激を丁寧に丸め込み、中低域の量感と立体的な奥行きを付加。
単に解像度をアピールするために高域を尖らせる安易な手法を完全に排し、歪みのない土台の上に豊かで自然な倍音を積み重ねる、きわめて本格的なHi-Fiアプローチが採られています。
VGP2026 SUMMERでの受賞実績と市場からの高い期待度
国内屈指の規模と厳正な審査で知られるオーディオビジュアルアワード「VGP2026 SUMMER」において、竹III -CHU3-は並み居る競合モデルを抑え、栄えある受賞を果たしました。
| 受賞カテゴリ | 受賞タイトル | 審査において高く評価されたポイント |
| イヤホン・ヘッドホン部門 | 金賞 | 5,000円以下とは思えない低歪み性能と、肉厚で生々しいボーカル描写力 |
| 特別アワード | コスパ大賞 | 亜鉛合金製ボディの質感、リケーブル機構、実用的なポーチ同梱のトータル価値 |
国内外の著名なオーディオ評論家や大手量販店のバイヤーが実機をブラインドテストに近いシビアな環境で審査するVGPにおいて、部門トップの「金賞」のみならず、全体の価格対効果を称える「コスパ大賞」をダブル受賞したという事実は、本機の実力が本物であることの決定的な裏付けです。
発売直後から各種SNSや専門店店頭でも絶大な支持を集め、有線エントリーカテゴリーの新たな決定版として市場を席巻しています。
実機開封と竹III -CHU3-のビルドクオリティの徹底チェック

パッケージ内容と充実した付属品の実用性
水月雨のパッケージングといえば、製品ごとに異なるオリジナルキャラクターが描かれた美麗なアートワークがお馴染みです。
竹IIIのパッケージも、ブランドの世界観を存分に味わえるアーティスティックなイラストが目を引くコンパクトな化粧箱となっています。
外箱を開封すると、内部には型抜きされた高密度ウレタンクッションが敷き詰められており、輸送時の衝撃から金属製のイヤホン本体を確実に保護しています。
| 同梱品リスト | 仕様と外観の特徴 | 実用面でのインプレッション |
| イヤホン本体 | 亜鉛合金ダイキャスト製(L/R表記あり) | 剛性感あふれる丁寧なマット塗装仕上げ |
| 着脱式ケーブル | 0.78mm 2Pin端子 / 3.5mm L字金メッキプラグ | 細身でしなやか。衣服との摩擦ノイズを低減 |
| シリコンイヤーピース | 汎用シリコン製(S / M / L 各1ペア同梱) | 傘にしっかりとしたコシがあり、高い密着性を確保 |
| キャリングポーチ | ブランドロゴ型押し入りレザー調ソフトケース | マグネット式フラップを採用。傷を防ぎ携帯性良好 |
| 付属書類 | 日本語対応取扱説明書、品質合格証 | イラスト入りの装着ガイドが日本語で記載され親切 |
アンダー5,000円のイヤホンでは、コスト削減のために簡素なビニール袋や薄手の不織布ポーチでお茶を濁す製品も散見されます。
しかし竹IIIには、水月雨のロゴが型押しされた上質なレザー調ポーチが標準で付属します。
内部に十分なマチが確保されており、ケーブルを軽く巻いた状態で引っかかりなくスムーズに収納できるため、カバンの中に無造作に入れて持ち歩くようなデイリーユースでも、金属ハウジング同士がぶつかり合って傷つく心配がありません。
アシンメトリーなミニマルデザインと金属製ハウジングの質感
イヤホン本体を取り出した瞬間に伝わってくるのは、エントリーモデルの枠を超えた高密度な金属の凝縮感です。
筐体には高精度な亜鉛合金ダイキャスト成形が採用されており、樹脂製イヤホン特有のプラスチッキーな軽薄さは微塵も感じられません。
- 左右非対称(アシンメトリー)の意匠設計
- 右側ユニット(R):洗練されたモダンな書体で「MOONDROP」のタイポグラフィを配置。
- 左側ユニット(L):シリーズの象徴である「竹の葉」をシンプルに抽象化した1本のミニマルライン。
- 左右で異なるグラフィックを持たせることで、薄暗い場所でも左右の判別が直感的に行える実用的なメリットを兼備。
- カラーバリエーションの質感
- ブラック:表面にきめ細やかなマットブラスト塗装が施されており、指紋や皮脂がほとんど目立たないシックで都会的な仕上がり。
- シルバー:金属本来の無垢でソリッドな輝きが際立ち、精密機器としての道具感が強調されたインダストリアルな風合い。
- 立体的なフェイスプレート形状
- 前作の丸みを帯びたドーム形状から一新され、中央部に向かって滑らかにくぼむ「インバースカーブ(すり鉢状)」を採用。
- 光の当たる角度によって陰影が美しく変化し、指先で摘まみ上げた際のホールド感も大幅に向上。
内側のシェルの継ぎ目やベントホールの縁の処理に至るまでバリや歪みは一切見当たらず、工作精度の高さは一万円前後のミドルクラスイヤホンと比較しても遜色ありません。
リケーブル対応コネクタと付属ケーブルの取り回しやすさ
イヤホン本体の上部には、自作オーディオやサードパーティ製ケーブルで広く普及している「0.78mm 2Pin規格」のコネクタが採用されています。
- コネクタの接続構造
- ハウジング側にわずかな段差を設けた「半埋め込み型」の形状を採用。
- プラグ側をしっかりとホールドするため、日常使用でのピンの曲がりや脱落リスクを最小限に抑制。
- 特殊な専用規格ではないため、市販されている一般的なフラット2Pinタイプのアップグレードケーブルとも幅広く互換性を維持。
- 付属ケーブルの使い勝手
- 前作の透明被膜(経年劣化による変色が懸念されたタイプ)から、しなやかで落ち着きのある「ブラック被膜撚り線」へ変更。
- 非常に柔らかくクセがつきにくいため、冬場の寒冷時でもケーブルが硬化せず、胸元に擦れた際のタッチノイズも最小限。
- 機器側プラグには、ポケット内での曲げストレスに強い「L字型3.5mm金メッキプラグ」を採用。
- 留意点
- ケーブルの分岐部(Y字スプリッター)に、左右のコードの長さを調節して顎下で絞るための「スライダークリップ」が付属していません。
万が一の断線時でもケーブル単体を交換して長く愛用できるだけでなく、将来的にバランス接続(4.4mmプラグ等)ケーブルへ換装して音質向上を図るステップアップの道が開かれている点は、オーディオ初心者にとっても大きな魅力です。
前作「竹II -CHU2-」との構造・設計の違いを比較

フェイスプレート形状とベント配置による音響設計の改良
「竹III」と前世代モデル「竹II」を並べて比較すると、一見するとコンパクトなオーバルシェイプを継承しているように見えますが、内部チャンバーと通気経路の設計思想には大きな違いがあります。
- 前作「竹II」の音響アプローチ
- ベント(通気孔)は主に耳に触れるハウジング内面を中心に配置。
- 耳孔との密閉度を高め、音圧をダイレクトに耳奥へ送り込むことで、エネルギッシュでキレのあるドンシャリサウンドを構築。
- 新作「竹III」の音響アプローチ
- ハウジング内面だけでなく、フェイスプレートのくぼみ部分にも巧みにベントを増設。
- ドライバー背面の背圧を効率的に外部へ逃がす開放的なエアフロー構造を確立。
- 振動板が背圧の干渉を受けずに自然にストロークできるようになり、音場が左右だけでなく前後・奥行き方向へと立体的に拡大。
この通気構造の改良により、カナル型イヤホン特有の「耳が詰まるような不快な気圧感」が劇的に解消されました。
その反面、極端に騒々しい環境では外音を適度に通す傾向があるため、設計意図としては「静かな環境で広々とした音の広がりとボーカルの余韻を味わう」方向へ明確にシフトしています。
ノズル構造の変更点とイヤーピース選びの注意点
耳へ直接音を導くステム(音導管)部分には、音響的な内部損失と剛性に優れた真鍮製CNC高精度切削ノズルが採用されています。
真鍮は不要な高域の共振を打ち消し、音の芯をタイトに整える効果があります。
前作「竹II」では、ノズル先端の金属フィルターがネジ込み式で着脱できる構造を採用していました。
清掃やフィルター交換が可能な反面、長期間使用したりイヤーピースを頻繁に付け替えたりするうちにネジが緩んでしまうという課題を抱えていました。
これに対し「竹III」では、ノズルとフィルターが強固に組み上げられた一体固定構造へと刷新されました。
これによりパーツの緩みや脱落の心配がなくなり、日々のメンテナンス性と道具としての剛性感が一段と向上しています。
- イヤーピース選定のアドバイス
- ノズル口径の特性:音導管の外径が一般的なイヤホンよりもやや太めに設計されています。付属のシリコンイヤーピースはジャストフィットするように作られていますが、脱着には少し指先の力が必要です。
- 市販イヤーピースとの互換性:社外品(SpinFit、SednaEarfit、Final Eタイプなど)へ換装する場合は、軸の内径が細すぎるタイプを避け、一般的な4.0mm〜4.5mm径に対応した標準モデルを選ぶとスムーズに取り付けられます。
- ノズル長の考慮:ステムの長さ自体は標準的〜やや短めです。極端に背が高い(軸が長い)イヤーピースを装着すると、ハウジングが耳の外側へ飛び出して密閉度が落ち、低域が抜けてしまう原因になるため、標準的な全高のイヤーピースを推奨します。
新旧スペック比較から読み解く目指したサウンドの方向性
竹IIから竹IIIへ、どのような設計変更とチューニング思想の転換が行われたのかを一目で把握できるよう、詳細な比較表を用意しました。
| 比較項目 | 前作:竹II -CHU2- | 新作:竹III -CHU3- | 進化と変化の狙い |
| 振動板エッジ素材 | 単一複合素材エッジ | デュアルポリマー複合サスペンション | 振幅のリニアリティを高め、低音の歪みを徹底排除 |
| 非線形歪み率(THD) | 標準的な低歪みレベル | 全帯域 0.05%以下(超低歪み) | 濁りのない純度の高いディテール再現 |
| 音響ノズル構造 | ネジ込み着脱式真鍮ノズル | 一体型高精度真鍮CNCノズル | パーツ緩みを防ぎ、剛性感と耐久性を向上 |
| 背圧コントロール | ハウジング内面ベント中心 | フェイスプレート+内面デュアルベント | 鼓膜への圧迫感をなくし、奥行きのある音場を創出 |
| サウンドの基調 | 明るく明瞭、キレのあるドンシャリ | 豊潤で密度感の高い、落ち着いた美音傾向 | 聴き疲れをなくし、ボーカルの実体感を極限まで向上 |
| 高音域の質感 | パキッと抜ける華やかで鋭い出音 | カリッとした芯に余韻が溶け込むジェントルな響き | サ行の刺さりを完全に抑え、長時間の試聴に最適化 |
| 低音域の質感 | タイトでスピード感のあるアタック | ふわりと広がる包容力のあるウォームな重低音 | アコースティックな胴鳴りと楽曲の土台を豊かに再現 |
| 空間表現(音場) | 左右方向に広がる平面的なステージ | 前後・奥行きを感じさせる立体的な3D音場 | 伴奏の中でボーカルが半歩前へ浮かび上がる定位感 |
| 実勢価格 | 約4,950円 | 約4,950円(据え置き) | コストパフォーマンスの指標をさらに一段引き上げ |
この比較から明らかなように、竹IIIは前作の単なるブラッシュアップ版ではありません。
竹IIが持っていた「元気で派手なポップス向けサウンド」に対し、竹IIIは「ドライバーの低歪み化と音響空間の再構築によって、歌声の肉声感と楽器の自然な余韻をとことん味わうHi-Fiサウンド」へと成熟を遂げています。
水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-を使用した私の体験談レビュー

ファーストインプレッション:箱出し直後の自然な鳴りっぷり
実機が手元に届き、外箱から取り出してすぐに3.5mmプラグを接続し、音を鳴らした瞬間のファーストテイクは驚きの連続でした。
通常、金属系の振動板ドームを採用したダイナミック型イヤホンは、エージング(慣らし運転)を行う前のいわゆる「箱出し」状態だと、高域の端々に金属特有のシャリつきや尖りが出やすく、低域も硬く突っ張るような鳴り方になりがちです。
しかし竹IIIは、最初の一音目から耳を刺すようなトゲトゲしさが全くなく、非常に滑らかで落ち着いたトーンを奏でてくれました。
新開発のデュアルポリマーサスペンションエッジと、全帯域0.05%以下という低歪み設計の恩恵が、エージング前の初期状態から如実に現れている印象です。
- 箱出し直後の印象
- 刺激的な高域のピーク感が綺麗に抑えられており、耳当たりが極めてマイルド。
- 中低域にしっかりとした厚みがあり、音がスカスカに感じられる場面が一切ない。
- 約50時間のエージングを経た変化
- 中低域の余分な膨らみが程よく落ち着き、ベースラインの輪郭と音階がより明瞭に。
- ボーカルの息づかいやピアノの減衰音が一段と滑らかになり、空間の奥行き感が深化。
箱出し直後から即戦力として満足のいく高音質を楽しめる扱いやすさを持ちながら、じっくり鳴らし込むことで本来の艶やかな響きが引き出されていく、オーディオ機器としての奥深さを存分に体感できます。
装着感と遮音性のテスト:長時間のリスニングで見えた快適さ
イヤホンを日常的に使い続ける上で、音質と並んで極めて重要な要素が「装着時の快適性」です。
竹IIIを自室での作業、長時間のデスクワーク、さらにはリラックスタイムに至るまで様々な場面で装用し、テストを行いました。
- 耳への収まりとフィット感
- ハウジング全体が非常に小ぶりで、耳甲介腔(耳のくぼみ)の内側に綺麗に収まります。
- 外耳道の入り口周辺の軟骨にハウジングの角が当たって痛むような箇所が一切なく、耳が小さめの方でも無理なく装着可能。
- 前方から見たときの耳からの飛び出し量がごく僅かなため、装着姿が非常にスマート。
- 重量感と長時間の疲労度
- 亜鉛合金ダイキャスト製のため、手で持った瞬間には心地よい金属の重みを感じます。
- しかし、耳に装着するとイヤーループ形状のケーブルとイヤーピースによって重量が巧みに分散されるため、装着中に耳が下に引っ張られるような重苦しさは皆無。
- 気圧の抜けと遮音性
- フェイスプレートと内面に設けられたベントが的確に機能しており、カナル型特有の「耳が塞がれるツンとした圧迫感」がほとんどありません。
- 鼓膜へのストレスが非常に少ないため、3〜4時間連続で装着して音楽を聴き続けても耳の疲労感が極めて少ないのが大きな美点です。
- ただし、背圧を逃がす開放的なベント構造を持つため、完全密閉型の遮音特化イヤホンと比較すると、電車の走行音や周囲の話し声は適度に入り込んできます。
静寂を作り出すというよりは、自室や静かなカフェ、オフィスなどで自然な音場を楽しむ用途にジャストフィットします。
帯域別のサウンド検証:低域の量感とボーカルの立体的な表現力
竹IIIのサウンドバランスを一言で定義するなら、「豊かな中低域の土台の上に、滑らかで肉厚なボーカルが浮かび上がるアコースティック美音系」です。
従来の竹シリーズが持っていたタイトで硬質なトーンとは明確に一線を画しています。
低音域(Low)
重低音を鋭角的に叩きつけてくるタイプではなく、中低域を中心にふわりと柔らかな広がりを持たせた、包容力のあるチューニングです。
- 量感と鳴り方:
量感そのものはエントリークラスとしてはかなり多めで、どっしりとした安定感があります。 - 輪郭と質感:
タイトに削ぎ落とすスピード重視の低音ではなく、ウッドベースの豊かな胴鳴りや、バスドラムの空気が揺れるような温かみのある余韻を美しく表現します。 - 分離感:
低音のエネルギーが豊富でありながら、主役であるボーカル帯域へ不快に被ってモヤつかせることがないため、音楽全体の豊かな土台として心地よく機能します。
中音域・ボーカル(Mid)
本機の最大のハイライトであり、アンダー5,000円クラスにおいて頭ひとつ抜きん出ているのがこの中音域です。
- ボーカルの実在感:
声の周波数帯域が低域から高域まで密度感高く詰まっており、歌声が細身にならず、しっかりとした厚みと肉声感を持って耳に届きます。 - 定位と距離感:
前作竹IIのようにボーカルが耳元へグイグイと迫ってくる鳴り方ではなく、伴奏から半歩ほど引いた絶妙な距離感で、立体的な音場の中央にスッと定位します。 - 表現の質感:
男性ボーカルの深く太い響きから、女性ボーカルの艶やかなブレスの抜けまで、掠れやトゲを感じさせることなく極めて滑らかに描き分けます。
サビに入った瞬間の突き抜け感もクリアで、ボーカルを中心に据えた楽曲を聴く上では同価格帯に敵なしの完成度です。
高音域(High)
シンバルのアタックやアコースティックギターのストロークを繊細に描き出しつつも、耳への優しさを徹底したジェントルな鳴り方です。
- 音のディテール:
粒立ちの良さと上品な余韻が両立しており、金属製ドームらしいクリアな芯がありながらも、刺激的なピーク感は見事に削ぎ落とされています。 - 刺さり耐性:
サ行の刺さりや硬質な耳障り感が一切なく、高域が過敏に響いて聴き疲れしてしまう心配がありません。 - 滑らかさ:
バランスド・アーマチュア型を搭載せず、高品質なダイナミックドライバー1発のみで帯域を繋いでいるため、中域から高域への音のグラデーションが驚くほどシームレスで自然です。
ジャンル別マッチング:バラードやアコースティック音源での真価
実際に様々なジャンルの音源をじっくり聴き込み、竹IIIの得意とするシチュエーションと、好みが分かれそうなポイントを検証しました。
| 音楽ジャンル | 相性度 | 具体的なサウンドの傾向と聴きどころ |
| J-POP・歌モノ | ★ | 主旋律のボーカルが際立ち、歌詞の一語一語がスッと頭に入ってくる。サビの広がりが心地よい |
| アニソン・声優ソング | ★ | 女性ボーカルの透明感や息づかいが艶っぽく再現され、キンキンとした刺さりが皆無 |
| バラード・ピアノソロ | 極上 | ピアノの打鍵音の凛とした響きと、部屋の奥へ溶けていく美しい残響に深く没入できる |
| アンビエント・劇伴 | 極上 | 低域の柔らかな空気感と圧迫感のない空間表現がマッチし、映画サントラやゲーム音楽の余韻が染み渡る |
| ジャズ・アコースティック | ◎ | アコースティックギターの弦の鳴りやウッドベースの温かみが生々しく、極めて有機的な響き |
| ハードロック・メタル | 〇 | 聴き疲れはしないものの、ディストーションギターのエッジやツーバスの強烈なアタック感はややマイルド |
| 高速EDM・クラブ系 | 〇 | サブベースの超低域の沈み込みや電子音のシャープなキレ味を求める場合、少し音が優しすぎる印象 |
特に胸を打たれたのは、アコースティックピアノとボーカルだけで紡がれるような静かなバラード楽曲です。
鍵盤を叩いた瞬間のクリアなアタックから、ハウジングを通じて空間へスッと消えていくリバーブの消え際までが極めて美しく描写され、いつまでもその余韻に浸っていたくなります。
また、ゲーム音楽のしっとりとしたエンディングテーマや、ストリングスが重なる劇伴音楽を味わうのにも最高の相性を発揮してくれます。
駆動環境による変化:スマホ直挿しからポータブルDAC接続まで
16Ω/118dB/Vrmsという鳴らしやすさを備えた竹IIIですが、接続する再生機器のグレードによってどのような音質の変化が現れるのかを確かめました。
- スマートフォンの3.5mm変換アダプタ直挿し
- 音量不足を感じることは一切なく、中低域のボリューム感と聴き取りやすいボーカルを手軽に楽しめます。
- YouTubeの動画視聴やアニメの配信コンテンツ、ポッドキャストなどでは、人の声が前に出てくるため非常に快適です。
- ポータブルDACアンプ(ドングルDAC)接続
- 小型DACアンプ(Cirrus Logic製やESS製DACチップ搭載機など)を介することで、0.05%以下を誇るドライバーの素性の良さが一気に開花します。
- 低音の輪郭がキュッと引き締まり、背景のノイズフロアが下がることで、空間の奥行きや微小な残響がより鮮明に浮き上がります。
- ハイパワーな据え置きアンプ環境での注意点
- 本機は非常に感度が高いため、駆動力の高すぎる据え置きヘッドホンアンプや高ゲイン設定で鳴らすと、低域のエネルギーが出すぎて全体のバランスが重たく崩れてしまう場合があります。
- アンプ環境で使用する際は、「ローゲイン」を選択し、ボリュームを適度に抑えて鳴らしてあげるのが、本機の端正なバランスを保つための秘訣です。
体験談の総括
数週間にわたり様々なシチュエーションで竹IIIを使い込んできましたが、総じて伝わってきたのは「無理な演出を一切排した、誠実でオーガニックな音作り」の素晴らしさです。
低価格帯のイヤホンでは、店頭での短時間の試聴でインパクトを与えるために、高域を意図的にシャリつかせたり、低音を過剰に膨らませたりするモデルが少なくありません。
しかし竹IIIはそうしたギミックに頼ることなく、新開発ドライバーの低歪み化と精緻なエアフロー設計によって、音楽の芯となる中低域の厚みとボーカルのリアリティをとことん追求しています。
長時間耳に入れていてもまったく疲れを感じさせないその仕上がりは、単なるエントリーイヤホンの枠を超え、日常のリスニングに寄り添う最良のパートナーとなってくれます。
水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-に関するQ&A

水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-に関して、よく聞かれそうな質問とその回答をまとめました。
Q. スマートフォンに直接挿して使えますか?
A. 3.5mmイヤホンジャックのある端末であればそのまま使えます。イヤホンジャックがないスマートフォンの場合は、USB-CやLightningに対応した「3.5mm変換アダプタ」または「ポータブルDAC(ドングルDAC)」を接続することで問題なく使用できます。非常に鳴らしやすい設計(16Ω/118dB)のため、変換アダプタ直挿しでも十分な音量と音質が得られます。
Q. 前作「竹II -CHU2-」とは何が一番違いますか?買い替える価値はありますか?
A. 音の傾向と空間表現が大きく異なります。竹IIは「高域が明るく抜ける、キレの良いドンシャリ系」でしたが、竹IIIは「中低域に厚みがあり、ボーカルが肉厚で滑らかな美音系」へと進化しました。また、ベント設計の見直しにより音場の奥行きが増し、耳への圧迫感も軽減されています。落ち着いた音でじっくり歌声やアコースティックな響きを聴きたい方には、十分に買い替える価値があります。
Q. ゲーム(FPSなど)や映画鑑賞に使えますか?
A. RPGやアドベンチャー、映画鑑賞には非常に適しています。中低域の広がりとボーカル・セリフの明瞭感が高いため、豊かな臨場感やサントラの情緒をしっかり味わえます。一方で、FPSなどで敵の微細な足音の位置をピンポイントに割り出すような「シビアな定位感・鋭いエッジ感」を最優先する場合は、専用のゲーミングイヤホンの方が明確に聞き取りやすい場面があります。
Q. マイクは付いていますか?通話やテレワークに使えますか?
A. 標準付属のケーブルにはマイクやリモコンは搭載されていません。そのため、そのままでは通話用のマイクとしては使えません。ただし、本機は「0.78mm 2Pin」のリケーブルに対応しているため、市販のマイク付き2Pinケーブルに付け替えることで、Web会議や通話にも活用できるようになります。
Q. 音漏れや遮音性はどうですか?電車内や静かなオフィスでも使えますか?
A. 音漏れについては、一般的な常識の音量で聴く分には周囲に漏れる心配はほとんどありません。ただし、ドライバーの背圧を逃がすベント(通気孔)が設けられているため、遮音性は完全密閉型のイヤホンに比べるとやや控えめです。電車内などの騒々しい場所では走行音が適度に入り込んできます。自室や静かなオフィス、カフェなどの環境でのリスニングに最も適しています。
Q. リケーブル(ケーブル交換)をしたい場合、どんな規格を選べばいいですか?
A. 端子規格は「0.78mm 2Pin」に対応しています。コネクタ部がわずかに窪んだ「半埋め込み型」になっているため、一般的な埋め込み対応2Pinケーブルはもちろん、平らなフラット2Pinケーブルも多くのものが適合します。QDCタイプ(カバー付き2Pin)やMMCX端子のケーブルは装着できませんのでご注意ください。
Q. イヤーピースを市販のものに変えたいのですが、注意点はありますか?
A. 真鍮製ノズルの外径がやや太め(大口径)に設計されています。そのため、内径が極端に細いイヤーピースは装着時に強い力が必要になったり破れたりするおそれがあります。一般的な4.0mm〜4.5mm前後の内径を持つ製品(例:SpinFit CP100+、AZLA SednaEarfitシリーズなど)が適しています。また、軸が長すぎるタイプを選ぶと耳から浮きやすくなるため、標準的な全高のものがおすすめです。
Q. 初心者ですが、エージング(慣らし運転)は必須ですか?
A. 必須ではありません。新開発のサスペンションエッジと低歪みドライバーのおかげで、箱から出して最初の一音目から角の取れた自然な音を楽しめます。ただ、50時間ほど日常的に音楽を流し込むことで、中低域の響きがよりほぐれ、ベースラインの輪郭やボーカルの滑らかさが一段と引き出されていきます。過剰に構えず、普段通りに音楽を聴きながら音の変化を楽しむのがおすすめです。
Q. 金属アレルギー体質ですが、装着しても肌荒れしませんか?
A. ハウジング表面には丁寧な塗装が施されており、肌に直接触れるノズル部分もイヤーピースで覆われるため、過度に敏感でなければ日常使用で問題が生じる可能性は低いです。ただし、重度の金属アレルギーをお持ちの方や、汗をかきやすい環境で金属シェルが直接耳の皮膚に長時間密着する場合は、肌トラブルを防ぐため樹脂製(プラスチック製)ハウジングのイヤホンを検討した方が安心です。
Q. 音が小さく感じたり、低音がスカスカに聴こえたりする場合の対処法は?
A. ほとんどの場合、イヤーピースの密閉(フィット感)が合っていません。耳穴との間にわずかでも隙間があると、低域が外へ抜けてしまい、スカスカとした軽い音になってしまいます。まずは付属のイヤーピースを1サイズ大きいものに変更し、耳の奥へ少し回しながらしっかり密着させてみてください。
Q. USB-C直結で使えるタイプ(DSP内蔵版)は発売されていますか?
A. 現行の標準モデルは「3.5mmステレオミニプラグ仕様」のみの展開です。スマートフォン等のUSB-Cポートに直接接続したい場合は、市販の「USB-C to 3.5mm変換アダプタ」または「ポータブルDAC」を介してご使用ください。水月雨の過去シリーズでは後からType-C直結モデル(DSP版)が追加された前例もあるため、今後のラインナップ展開にも期待が集まっています。
Q. 普段1〜2万円クラスの有線イヤホンを使っていますが、サブ機として満足できますか?
A. 十分に満足できる実力を持っています。全帯域0.05%以下の歪み率と精緻な真鍮ノズルによる音の濁りの少なさは、1万円クラスの定番機と比較しても引けを取りません。過度な刺激がなく聴き疲れしにくい音響設計のため、「メインの高解像度機でじっくり聴き込む合間に、肩の力を抜いて長時間の作業用BGMを流すサブ機」として非常に相性が良い一本です。
水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-レビューのまとめ

竹III -CHU3-を選ぶべき最大のメリット
竹III -CHU3-がオーディオ市場にもたらした最大の価値は、アンダー5,000円という誰でも手に取れる価格でありながら、ハイエンド機の設計思想を惜しみなく注ぎ込み、クラスを超越した音楽体験を実現した点にあります。
- ボーカルの実在感と密度感:
歌声の生々しさ、滑らかさ、立体的な定位感において、同価格帯のライバル機を大きく突き放すクオリティ。 - 全帯域0.05%以下の超低歪み:
歪みのないクリーンな音像により、音源本来の繊細なニュアンスをありのままに再現。 - 所有欲を満たすビルドクオリティ:
亜鉛合金ダイキャスト成形の重厚な質感と、洗練されたアシンメトリーデザイン。 - 将来性のあるリケーブル構造:
汎用性の高い0.78mm 2Pin規格を採用し、断線時の交換やバランス接続への拡張に対応。 - 徹底的に耳に優しい音響設計:
刺激的なピーク感を削ぎ落としたジェントルな高域と、圧迫感のない開放的なベント設計。
購入前に把握しておきたい留意点
非常に完成度の高い竹IIIですが、購入後のミスマッチを避けるために、以下のキャラクターについては事前に理解しておく必要があります。
- 鋭いキレやソリッドな刺激を求める用途には不向き:
ハードロックの攻撃的なギターリフや、スピード感あふれる高速EDMで鼓膜を鋭く刺激したい方には、音が優しく落ち着きすぎていると感じられる可能性があります。 - ケーブルスライダーの非搭載:
付属ケーブルの分岐部に長さ調整用スライダーがないため、顎下でキュッとケーブルを絞りたい方は留意が必要です。 - 遮音性能はマイルド:
背圧を抜くベントが効いているため、密閉特有の圧迫感がない反面、騒々しい電車内や雑踏では周囲の環境音が適度に入り込んできます。
前作からの乗り換えを検討している方へのアドバイス
前作「竹II -CHU2-」を現在愛用している方にとって、竹IIIへの移行や買い増しは十分に価値のある選択です。ただし、両者のサウンドの方向性は明確に差別化されています。
| リスナーの好み・用途 | おすすめのモデル | 判断のポイント |
| 明るくキレのある音が好き | 前作「竹II」をキープ | 爽快な高域の抜け感と、元気でメリハリの効いたドンシャリサウンドを楽しめる |
| 歌声の質感や厚みを重視したい | 新作「竹III」へ移行 | ボーカルの肉厚感、中低域の包容力、空間の奥行きが劇的に向上 |
| 長時間のデスクワーク・勉強 | 新作「竹III」へ移行 | 刺さりのない優しいトーンと開放的なベント構造により、耳の疲労感が大幅に軽減 |
単純な優劣というよりも、エネルギッシュな竹IIに対し、竹IIIはより豊潤で落ち着きのあるアコースティックサウンドへと成熟を遂げています。竹IIの元気なトーンを知っている方ほど、竹IIIの大人びた表現力の進化を新鮮に楽しめるはずです。
おすすめできるリスナーと活用シーン
竹III -CHU3-は、その高い基本性能と癖のない使い心地から、以下のような幅広いリスナーに自信を持っておすすめできます。
- 初めて本格的な有線イヤホンを手にするビギナー:
スマートフォンの付属イヤホンや安価なワイヤレス機からのステップアップとして、有線ならではの音の濃密さと解像度を手軽に体験したい方。 - テレワークやオンライン授業で長時間イヤホンを着ける方:
耳穴への圧迫感が極めて少なく、優しい鳴り方のため、BGMを何時間流し続けても集中力を妨げられません。 - J-POP、アニソン、バラード、劇伴音楽の愛好家:
主旋律であるボーカルとピアノ、アコースティック楽器の美しさを最良のバランスで堪能したい方。 - すでに高級機を所有しているオーディオ愛好家:
屋外への持ち出しやベッドサイドでのリラックス用として、気兼ねなくラフに使えて音質に妥協のない優秀なサブ機を探している方。
水月雨(MOONDROP)竹III -CHU3-総合評価とコストパフォーマンスへの結論
4,950円という据え置きの価格を維持しながら、新開発ドライバーによる超低歪み化、筐体デザインの洗練、耐久性の向上、さらには上質なレザー調ケースの同梱まで成し遂げた企業努力は、称賛以外の言葉が見当たりません。
派手な音圧で一時的なインパクトを演出するのではなく、「長く聴き続けられる心地よさ」と「歌声の美しさ」を愚直に追求したその完成度は、2026年現在のアンダー5,000円クラスにおいて、間違いなく頂点に君臨する実力を誇ります。
ワイヤレスイヤホンが全盛を極める現代だからこそ、竹III -CHU3-が提示する「ケーブルを差し込むだけで、いつでも極上のピュアサウンドが広がる」という原点回帰の魅力は、私たちの心に深く響きます。
スマートフォンの普及やサブスクリプションサービスの発展により、手元には膨大な高音質音源が溢れています。
その音楽が本来持っている温かみや歌い手の情熱を、一切のストレスなく耳元へ届けてくれる本機は、エントリー市場における新たな歴史の到達点です。
これから有線の世界に足を踏み入れる初心者から、良質な日常の音を求めるすべての音楽ファンにとって、決して後悔のない最高の選択肢となることを確信しています。

